NTTパーソナル IP-1D |
NTTパーソナル パルディオ341S |
まず、左上の写真を見て欲しい。どこかで見たことはないだろうか。そう、昨年のCOM JAPAN'97のレポートで紹介したあのPDA、三菱電機の『ワイヤレス携帯情報端末』だ。当時、どのキャリアから発売されるのかと随分と話題になっていたが、5月18日にNTTパーソナルから『インターネットパルディオ/IP-1D』として発表され、今回のビジネスシヨウで初お目見えとなった。16階調液晶表示、HTML3.2準拠のWWWブラウザを搭載するなど、インターネットを本格的に楽しめるPDAに仕上げられている。出荷は8月の予定だが、今回のビジネスシヨウでは一足先に実機を操作することができる。
一方、右側は5月14日に発表された新パルディオシリーズのひとつで、PCユーザーが最も期待する『パルディオ341S』だ。従来から販売されていたパルディオ321Sの事実上の後継にあたるモデルだが、大幅に小型化されたのが特徴だ。今回はモックアップ(模造品)しか展示していないが、データカードを持たない他のPHSと変わらないところまでコンパクトにまとめられている。ちなみに、データカードの部分はPCMCIA Type2よりも小さく、通常のPCカードスロットにはアダプタを介して接続するようになる。もちろん、アダプタはパッケージに同梱される。インターネットパルディオ/IP-1D、パルディオ341Sともに、個人的にも非常に物欲を刺激される商品だ。
この他にも、位置情報サービスの『いまどこサービス』やインターネット接続サービスの『パルディオネットサーフィン』のデモを行なうなど、内容的にも見るものが多い。ちなみに、同社では出展内容を同社のページ上で公開しているので、会場に足を運べない人はこちらをご覧いただきたい。
C-Phone Home |
「2台でイチキュッパ」のCMで、グンと知名度を上げたNTTのテレビ電話『Phoenix mini』。イチキュッパと言っても198,000円だから、今ひとつ現実感がわかないんだけど、確実にテレビ電話の時代に近づいているようだ。
左は米C-Phone社が開発した『C-Phone Home』というテレビ電話システムだ。国内では株式会社ピーナッツクラブが輸入し、システム・ダイナミックスが販売する。筐体にはCCDカメラ、V.34/33.6kbpsモデム、マイクなどを内蔵し、テレビにつないでリモコンを操作するだけで簡単にテレビ会議ができるという代物だ。ITUのテレビ会議標準化方式のH.324に準拠し、NTSC/PAL切り替え機能を搭載するなど、機能的にはかなりしっかりしている。上位モデルのISDN回線用『C-Phone Pro』では、相手先がアナログかISDNかを自動判別する機能を備えるなど、かなり本格的。価格はアナログ版が2台で198,000円、ISDN+アナログ版が2台で268,000円と、やや高めだが、手軽に使えるという点は注目に値する。
シャープ ISDN電話 |
シャープ ISDN電話(拡大) |
一方、テレビではなく、電話そのものをテレビ電話化してしまったのがシャープのテレビ電話だ。昨年秋のCOMDEX/Fall'97でも出品されていたが、当時は単に置いてあっただけ。今回はコンパニオンのおねえさんが実際に電話で話せるところまで開発が進んでいる。担当者の弁によれば、価格的には先行するPhoenix miniよりも安くしたいとのこと。2台で10万円くらいだったら、編集部との打ち合せ用に買ってもらうんだけど(笑)。
NTT W-1000T |
NTT IPMATE1200RD |
今回、前述のインターネットパルディオと並んで、個人的に欲しくなってしまったのがNTTのISDNコードレスホン『W-1000T』だ。ISDN電話にはシンプルな『S-1000』、留守番電話機能が付いた『S-2000』があるんだけど、今どき、コードレスホンがないのでした(PHSを子機にできるTAはあるけどね)。でも、このW-1000Tが登場すれば、ようやくデジタルな電話環境が揃うことになる。
NTT ISDNステーションComBase |
ただ、正直なところを言っちゃうと、やっぱり子機はちょっと大きめだし、デザインも今ひとつという気もしなくない。それに値段がちょっと心配……。S-2000で29,800円だから、きっと5万円くらいしちゃうんでしょうか。 > NTTさん
ISDNルータの『IPMATE 1200RD』も展示されていた。こちらは見てもわかる通り、富士通のNetVehicle-fx3のOEM。せっかくいい製品なんだから、もっと派手にデモをすればいいような気もするんだけど、わりと地味な展示でした。
そして、続いてはこちら。ISDNにちょっと詳しい人ならご存じのISDNステーション『ComBase』だ。IrDAステーションとして機能を持つだけでなく、ICカードを挿すと自動的にメール利用環境を設定してサーバーから読み込んだり、デジタルカメラからの画像を転送したり、通常の公衆電話としても使えるというマルチな公衆電話(と言っていいのか?)。姿形もなかなかサイバーで強烈なんだけど、ボク自身としてはちょっと前に立つのに勇気が……。
NTTドコモ モバイルF |
今回のビジネスシヨウで最も競争が激しいのが携帯電話だ。さすがに、端末数で3,000万を超えるマーケットだけに、キャリア側の意気込みが違うよね。
まず、国内トップシェアのNTTドコモは、新製品、参考出品の製品、そして次世代携帯電話などのデモを行なっている。新製品では、つい先日、発表された合体変形メカのモバイルF、折り畳み式のN206Sなどを展示している。モバイルFは本体下側に接続するアタッチメントを交換することで、PCカードスロットに装着できたり、モバイルZ(ザウルスのOEM品)に接続できるようにしているのが特徴。ただ、残念なのが会場では実機を触れないこと。合体変形メカが売りなのに……。
参考出品の方はかなり充実している。参考出品とは言え、いずれも製品化が確実で、正式発表を待つばかりのものだ。京セラの『DataScope』は今さら説明するまでもないけど、DDI/セルラー向けに販売されているDataScopeのNTTドコモ向けバージョン。パネルなども若干、変更されている。
『Dialo』は東芝のPHS内蔵PDAのGENIOを携帯電話向けにしたものだ。ボディがグレーになったため、かなり雰囲気が異なる。速度的なものや電話帳がGENIOよりも改善されていれば、期待できるかもしれない。ただ、インターネットパルディオを見た後だと、もうひとつインパクトに欠けるのも事実。
DataScope for DoCoMo |
NTTドコモ Dialo |
そして、次世代携帯電話。こちらはNTTドコモとDDI/セルラーグループが火花を散らしている。
NTTドコモはW-CDMA(Wideband-CDMA)という方式を支持しており、すでにシステム実験も開始している。今回は端末のモックアップを展示し、W-CDMAという方式に関する解説も行なっている。端末のデザインもなかなかカッコいいんだけど、実際に始まるのが2000年以降ということを考えると、まだちょっと実感が……。
NTTドコモ W-CDMA試作端末(ビデオ付き) |
NTTドコモ W-CDMA試作端末(PCカード) |
これに対し、一部では今年7月からサービスが開始されるのがDDI/セルラー陣営のcdma-Oneという方式だ。こちらはバックグラウンドノイズの低減する8kbps EVRC(Enhanced Variable Rate CODEC)、通信品質の劣化が起こりにくいパスダイバシティ技術、瞬断を防ぐソフトハンドオーバーなどが特徴で、来年4月には全国レベルでのサービスが提供される。データ通信速度は当面14.4kbpsまでだが、来年にはパケットで64kbpsを実現し、2000年以降はさらなる高速化を目指している。また、2002年のワールドカップ開催時には韓国の通信事業者との間で、国際ローミングも実現したいとしている。
DDI/セルラーグループ cdmaOneサービス |
DDI/セルラーグループ イリジウム |
さらに、DDI/セルラーグループのブースでは、衛星携帯電話サービスのイリジウムのコーナーも用意されている。国内では今年9月からサービスが開始される予定で、すでに予約サービスも受け付けている。料金は国内利用でも1分間2.61ドル(約350円)、世界利用では1分間6.54ドル(約890円)とかなり高いんだけど、世界を飛び回るようなビジネスエリートの方々にはそんなに高くないのかも……。
次世代携帯電話に関しては今の段階でどちらがどうとは言えないが、こういう分布図になっているんだということは今回の各社の展示で理解できる。また、それぞれのシステムの内容についても把握できる。モバイルコンピューティング環境にも大きく影響を与えることになりそうなので、ぜひチェックしておきたい。
[Text by 法林岳之]