非同期通信レポート 第29回

非同期通信レポート 第27回

ナンバー・ディスプレイはどうなってるの? 
【その3】

TEXT:法林岳之

 2月からサービス開始したNTTのナンバー・ディスプレイサービスですが、「いまひとつよく分からない」「ISDN回線からの利用はどうなるのか」など、読者の方からもいくつかご質問をいただきました。そこで、法林岳之氏によるナンバー・ディスプレイサービスのレポートをお届けすることにしました。3回に分け、25日より3日連続で短期集中連載します。(編集部)

【2/25】
ナンバー・ディスプレイはどうなってるの?(その1)
・大混乱のナンバー・ディスプレイサービス
・ナンバー・ディスプレイとは?
・ナンバー・ディスプレイの効能と狙い
・CTI技術への応用
【2/26】
ナンバー・ディスプレイはどうなってるの?(その2)
・不十分な事前告知がトラブルを招く
・利用者の不勉強だけでは済まされない


他の通信事業者との接続

 電話と言えば、NTTが提供するアナログ回線ばかりを想像してしまうが、携帯電話やPHSとの接続はどうなっているのだろうか。NTTでは発信者番号通知に関わるコストの負担について、「自網自負担」という原則を掲げている。これは「自社の発信者番号通知のために掛かったコストは自社で負担する」ということだ。各事業者はこの原則に乗っ取ってサービスを提供しているのだが、PHSのようにバックボーンとしてNTTのISDN回線を利用している例もあるため、コストの調整ができず、まだ通知できないケースが多い。NTTのアナログ回線とISDN回線から見た場合の相関関係は以下のようになる。ややわかりにくい図になってしまうが、ご了承いただきたい。

着信先の回線
アナログ回線 ISDN回線 PHS デジタル携帯電話
NTT網活用型 独自網型
アナログ回線からの発信 ×
ISDN回線からの発信
発信元の回線
アナログ回線 ISDN回線 PHS デジタル携帯電話
NTT網活用型 独自網型
アナログ回線への着信
ISDN回線への着信
備考 ◎=追加料金なしに利用可能、○=追加料金を支払えば利用可能、
△=一部利用可能、×='98年2月現在は利用不可能

 発着信元の回線の内、まずPHSについて説明しよう。PHSにはNTTのISDN回線を利用するNTT網活用型と、地域系NCCの回線を利用する独自網型の2種類がある。独自網型PHS事業者としては、アステルグループアステル北海道/東北/中部/北陸/四国の5社がある。この内、東北/中部/四国がアナログ回線及びISDN回線との発信者番号通知をすでに提供している。しかも追加料金を必要としていない。

 NTT網活用型PHSでもアナログ回線に発信したとき、発信者番号通知ができるPHS事業者があるが、なかには同一区域外のときは通知できないなどの制限が残されているところもある。ただ、いずれのPHS事業者も'98年春をめどに、アナログ回線及びISDN回線との発信者番号通知サービスを開始する予定で、現在、各事業者間で調整中とのことだ。

 携帯電話についてはアナログ回線及びISDN回線との発信者番号通知を実現しており、基本料金の範囲内でサービスを提供している。基本料金が高いことを考えれば、当然とも言えるが、いち早く対応した点は評価できる。

 また、この表には掲載していないが、日本テレコムDDIテレウェイ(日本高速通信)といった長距離系NCCの市外電話サービスを介して接続したときも発信者番号は受け渡される。関東地区で人気急上昇中の東京電話についても同様だ。

 こうして見ると、各事業者間の番号通知はまだ利用できないケースがあり、本格的に利用できるのは今春以降ということになる。いわゆる帰るコールは会社からではなく、携帯電話やPHSからの発信が多いことを考えると、PHS事業者との通知ができないというのはかなり不便だ。このことからもオプション機能として提供されているナンバー・リクエストを利用するのは、現時点では少々無謀ということになる。逆に、各事業者で通知できるようになれば、利用価値の高いサービスということになるが、それにしては現在のナンバー・ディスプレイ対応端末機器は機能が不足している。内蔵時計と連動し、夜間は指定した電話番号のときしか応答しないという機能も考えられるのだが……。


ナンバー・ディスプレイの利用価値

 さて、最後に、これらの情報を踏まえ、はたしてナンバー・ディスプレイの利用価値について考えてみよう。

 まず、サービスそのものに対しては、電話に対する捉え方次第だ。「一応、鳴れば出るけど、別に出なくてもいいじゃん」という考え方なら、無理に契約する必要もない。電話機を買い換える必要もなければ、ムダな出費もないからだ。

 逆に、携帯電話やPHSなども含め、コミュニケーション手段を積極的に活用したいというのなら、1カ月だけでも体験してみるといいだろう。最低でも月々400円の出費が必要になるが、相手の電話番号が見えることにより、今までになかった新しい電話の使い方を発見できるかもしれないからだ。ただ、端末機器に関しては、前述のように若干の注意が必要であることを忘れないで欲しい。

 企業については、かなり利用価値が高いと見るべきだろう。特に、営業関係の仕事では、アレンジ次第で大きな威力を発揮するはずだ。ただ、日本のナンバー・ディスプレイはアメリカなどで提供されているCallerIDと若干仕様が異なるため、CTI技術への応用は独特なノウハウが必要になるかもしれない(この点は筆者も勉強不足なので、ご容赦いただきたい)。

 また、回線別に見たとき、ISDN回線は負担が大きいのが気になる。ご存じのように、ISDN回線では従来から発信者番号通知サービスが提供されている。ただ、今回のナンバー・ディスプレイについては新たな機能が追加されたため、その分の費用負担を求めるというのがNTTの言い分だ。

 しかし、発信者番号通知機能がないアナログ回線に機能を追加して400円、すでに発信者番号通知機能があるISDN回線に機能を追加して600円というのは、どう考えても納得がいかない。なぜ1.5倍もの料金を請求されなければならないのか。百歩譲ったとしても、アナログ回線と同額にすべきだ。ISDN回線はこれからのNTTにとって最も重要なサービスのひとつではなかったのか? いくらアナログ回線より契約数が少ないとは言え、すでにアナログ回線よりも高い基本料金を払っているISDN回線のユーザーに対し、より大きな負担を求めるというのはどうだろうか。こんなことをしているようでは、ISDN回線の普及も足踏みしてしまい兼ねない。ぜひ見直しを期待したい点だ。

 ナンバー・ディスプレイはNTTの目論見とは裏腹に、トラブルによって名を広めることになった。サービス開始前後に感じた不満は多いが、サービスそのものはなかなか面白いものと言えるだろう。ひょっとしたら、今までになかったまったく新しいコミュニケーションのスタイルが確立されるかもしれない。ただ、告知や周知を含め、NTTの反省とさらなる企業努力が必要不可欠であることは言うまでもない。

(おわり)

[Text by 法林岳之]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp