非同期通信レポート 第28回

COMDEX/Japan'98」 Telecomレポート

TEXT:法林岳之

'97/4/8


注目製品を探せ!

 '98年4月6日から9日まで幕張メッセで開催されているCOMDEX/Japan'98。初日のレポートにもあったように、天候にも恵まれず、内容的にも今ひとつ低調なものだった。そんな中で見かけた注目の製品をいくつか紹介しよう。


PHSの新しい活用形

NTTパーソナル テレメトリングシステム
NTTパーソナル テレメトリングシステム
 合併の噂話や役員の交代、膨大な累積赤字と、暗いニュースばかりが伝えられているPHSだが、今回はNTTパーソナル出展し、新しいPHSの活用形を展示していた。

 NTTパーソナルのブースで、まず目についたのがコカコーラの巨大なベンダー(自動販売機)だ。これはPHSを使ったテレメトリングサービスのデモンストレーションで、自動販売機の上にある灰色の丸みを帯びた箱がその正体というわけだ。

 テレメトリングとは自動販売機の売上状況や故障などをPHS網を通じて、会社に伝えるといった遠隔管理システムのことで、今後のPHSの活用例として最も期待が寄せられているもののひとつだ。自動販売機だけでなく、無人駐車場や電光掲示板などにも応用することが可能だ。ユーザーには直接関係ないけど、妙なボックスをつけた自動販売機がもうすぐお目見えすることになりそうだ。


NTTパーソナル 位置情報提供サービス
NTTパーソナル
位置情報提供サービス
NTTパーソナル 多地点監視システム
NTTパーソナル
多地点監視システム

 この他には、ドラえホンで一気に注目を集めた位置情報提供サービス、テレメトリングサービスを活かした多地点監視システム、オフィスの電話をPHS化するオフィスステーションサービスなどのデモンストレーションが行なわれていたが、なかでも人気が高かったのはパルディオEメールなどの新サービスに対応したスーパーパルディオ551Sだった。

 ちなみに、同社ではこれらの新サービスを利用するために『パルディオメ~ラ~』というアプリケーションソフトを提供しているが、対応するPHS端末が限られており、モバイルユーザーに人気の高いパルディオ321Sも対象機種外となっていた。ところが、COMDEX/Japan'98初日に『パルディオメ~ラ~』のバージョンアップがアナウンスされ、パルディオ321Sも対象機種に加えられている。パルディオ321Sでは本体のバージョンアップが必要になるが、手数料も1,000円と安いので、検討してみる価値はあるだろう。

ビクター INTAMESSA
ビクター INTAMESSA
 一方、こちらはビクターのブースで見かけたINTAMESSAという製品。一般ユーザーにはあまり縁のない商品だが、要するにオフィス向けのPHS対応PBXだ。

 外見は以前のレポートで紹介したPHS対応ISDNターミナルアダプタのTN-CS1に似ているが、こちらはさらに規模が大きく、60台の子機を収容できるというもの。内線通話や転送などの機能はもちろん、'98年上期にリリースされるバージョンではデータ通信も可能になり、'98年半ばにはFAXやボイスメール機能まで搭載するという。

 ちなみに、こうしたオフィス向けのPHSシステムは、いわゆる事務系のオフィスよりも、利用者が常に定位置に居ない可能性が高い物流センターや工場、大規模な店舗などで利用されるケースが多いそうだ。巷ではPHSがうまく活用されていないなどと言われているが、やはり使われるところではしっかり活用されているわけだ。



TDKからPHS&LANカード登場

TDK LAN&PHSデータ/FAXカード
TDK
LAN&PHSデータ/FAXカード
 さて、今回のCOMDEX/Japan'98で、唯一の新製品(笑)とも言えるのが、TDKの『LAN&PHSデータ/FAXカード』だ。参考出品となっているが、過去の事例から考えて、正式発表はそう遠くないと考えられそうだ。機能的には同社が販売しているデジタル携帯&LANカードの『DFL9610』の通信部分をPHS用に置き換えたものだが、消費電力を600mWに抑えるなどの工夫も見られる。28.8/33.6/56kbpsモデムの消費電力が1,000mW以上であることを考えれば、かなりバッテリーの消耗を抑えることができそうだ。

 こうしたPHS&LANカードの機能をまとめたマルチファンクションカードは個人的にも欲しかった製品で、正式な発売がとても待ち遠しい。特に、今回のCOMDEX/Japan'98でもよく見かけたWindows CE2.0マシンやLibretto70のように、PCカードスロットが限られたマシンには最適のPCカードと言えるだろう。

 ところで、Windows CE2.0マシンと言えば、すでにNECモバイルギアIIシリーズの出荷が開始されているが、対応するPCカードが純正以外にほとんどなく、設定に苦労するユーザーが多いようだ。そこで、TDKではWindows CE2.0マシンで同社製PCカードを利用するときのドライバなどを提供する予定だそうだ。現在、カタログに掲載されている大半の製品をWindows CE2.0マシンで動作させられるようになるとのことだ。TDKからの情報提供に期待しよう。



Windows CE2.0マシン対決

 先月、いよいよ日本語版が発表されたWindows CE2.0マシン。今回のCOMDEX/Japan'98では、発表されて間もない新製品が展示されていた。

NEC モバイルギアII
NEC モバイルギアII
日立 ペルソナ
日立 ペルソナ

 NECのモバイルギアIIはすでに出荷が開始されており、量販店などではカラー液晶モデルが売り切れていることもあるほどの人気ぶり。対する日立ペルソナは高速なSH-3/100MHzを搭載しており、同社初のWindows CEマシンながら注目を集めている。

 ともに、デスクトップ機並みのキーピッチを確保したキーボード、カラー液晶ディスプレイ、連続8時間のバッテリー駆動とスペックが似通っているが、展示状態も写真の通り、よく似ている(笑)。それぞれのブースで、相手方のマシンとの比較を語るユーザーが見受けられたのも印象的だった。

 会場で触った限りは、それほど大きな差は感じられなかったが、個人的にはデジタル携帯電話やPHSがそのまま接続できる(通信用カードがいらない)ペルソナの方に期待している。ただ、Windows CEマシンについてはまだノウハウが非常に少ないだけに、メーカー側のサポートが気になるところだ。はたして市場の反応はどうだろうか。


56kbpsモデムからxDSLの時代へ

 さて、通信ネタで最も注目度が高い56kbpsモデム。国際標準規格のV.90の勧告のメドが立ったことで、今回は新製品の参考出品を期待していたのだが、残念ながら何も見ることができなかった。しかし、モデムチップなどを製造する日本ルーセント・テクノロジー(Lucent Technologiesの日本法人)のブースでいくつか興味深い話を聞くことができた。

日本ルーセント・テクノロジー 56kbpsモデムチップセットデモ
日本ルーセント・テクノロジー
56kbpsモデムチップセットデモ
日本ルーセント・テクノロジー 56kbpsモデムチップセットパネル
日本ルーセント・テクノロジー
56kbpsモデムチップセットパネル

日本ルーセント・テクノロジー DSP1646
日本ルーセント・テクノロジー
DSP1646
 同社はK56flex用のモデムチップセット(DSP)を提供してきたが、同社製モデムチップセットを搭載したモデムはファームウェアを書き換えるだけで、V.90に対応できる予定だ。しかも、Rockwell International製チップを搭載するK56flex対応モデムをアップグレードするときと違い、V.90とK56flexの両方に対応できるそうだ。ちなみに、同社製チップはコンパックヒューレット・パッカードIBM、NEC、ソニー東芝などのPCに供給されている。アップグレードサービスの最終的な判断は、各メーカー次第だが、両対応になる可能性があるのはユーザーとしてもうれしいところだ。

 また、今回は新しいモデムチップセットを使ったサンプルボードも展示していた。アメリカ本社のWebサイトにも情報が掲載されていないが、型番から想像すると、V.90/K56flex用として新たに供給するモデムチップセットのようだ。ちなみに、写真右奥にあるのはノートPCやPDAなどに内蔵するためのものだ。

 さて、同社ブースではもうひとつ面白い話を聞くことができた。NTTフィールドテストを開始したことで、国内でもxDSLがにわかに注目を集めているが、InternetWatchでも既報の通り、IntelMicrosoftCompaqなどが地域電話会社と組み、『Universal ADSL Working Group(UAWG)』という業界団体を設立し、'98年にはITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)に標準規格を提案しようとしている。

 このUniversal ADSLは通信速度を1.5Mbpsに抑えることにより、従来のxDSLで指摘されていたISDNとの干渉などの問題をクリアし、音声とデータ通信チャンネルを分けるためのスプリッタを必要としないものになる予定だ。もちろん、同社も規格策定に参加しており、すでにチップの開発も進めているそうだ。このUniversal ADSLが標準化され、実際に製品が登場するときは、現在の56kbpsモデムの機能も包含されると言うのだ。

 つまり、PCに内蔵されているモデムのモジュラージャックを従来のアナログ回線に接続すれば、V.90/K56flex対応モデムとして、xDSLがサービスされているところではUniversalADSLモデムとして、それぞれ使えるようになるというわけだ。もちろん、ノートPCやPDAに内蔵するモデムも、数年後(1~2年後?)には同様の形になる可能性が高いそうだ。国内ではNTTがサービスするか否かという問題は残されているが、『モバイルPCでMbpsクラスのネットサーフィン』なんて、なかなか面白そうだ。



ISDN先進国ドイツからの出展

TELES Video Conference System
TELES Video Conference System
 ここ数年で急速に普及し、今やインターネットユーザー以外にも注目されている日本のISDN。しかし、世界的にはもっとISDNが普及している国がある。そう、ISDN先進国のドイツだ。COMDEXと言えば、やはりトレードショーであるだけに、海外からの出展企業も多い。今回はドイツから出展した2社に注目してみた。

 まず、最初に紹介したいのがTELESだ。筆者自身も名前だけは聞いたことがあったが、今回はじめて同社の製品群を見ることができた。TELESはドイツで最大のシェアを持つISDN関連企業で、ISDNターミナルアダプタからISDNカード、デジタル電話、ISDN用PBX、ISDN用LCRといったISDN機器、ISDNを使ったビデオカンファレンスシステム、統合テレフォニーアプリケーションなどのISDN関連ソフトウェアまで、幅広い製品を取り扱っている。

 たとえば、右の写真のビデオカンファレンスシステムは、同社のISDNカード、CCDカメラ、ソフトウェアをセットにしたもので、1セット(片方のみ)400ドル程度で販売している。ISDNを利用しているため、インターネットを介して接続したときと違い、セキュリティが確保され、スループットも保証されている。日本でも同様の製品が売られていたことがあるが、約20万円近い価格設定がされていたことを考えると、かなり割安だ。


TELES ISDN TA
TELES ISDN TA
TELES ISDN FON
TELES ISDN FON

 また、外付けISDNターミナルアダプタやデジタル電話機も展示していた。外付けISDNターミナルアダプタは、日本の液晶ディスプレイ付きに較べると、かなりシンプルだが、機能はしっかりとサポートされている。しかし、個人的に欲しくなったのは、やはりデジタル電話機の方だ。日本でもS-1000S-2000というデジタル電話機が販売されているが、TELESのISDN.FONは質実剛健なデザインで、日本製品にはない雰囲気を持っている。同社のWebサイトの情報に寄れば、価格的にはかなり安いので、日本でも販売して欲しいところだ。気になる日本向けの販売だが、今回のCOMDEX/Japan'98で代理店や取引先が見つかれば、ぜひ日本市場に参入したいとのことだ。どこか扱ってくれませんかねぇ。

RVS Datenteknik GmbH RVS-COM
RVS Datenteknik GmbH
RVS-COM
 一方、ソフトウェアで目についたのは、RVS Datenteknik GmbHRVS-COMだ。Telecom Watchでも何度か紹介しているが、RVS-COMは電話やFAX、ファイル転送、留守番電話、リモートコントロールなどの機能を実現するISDN統合テレフォニーアプリケーションだ。特に、FAX機能は重要で、これを使うことにより、FAXモデムをほぼ利用しなくて済むようになる。

 RVS-COMはすでに日本語化され、国内ではメガソフトからフル機能版が発売される予定になっている。オムロンアイワアレクソンのISDNターミナルアダプタには機能限定版がバンドルされており、国内で販売されている他のISDNターミナルアダプタも順次対応してくるようだ。

 今回、RVS Datentechnik GmbHに取材したところに寄れば、G4FAXとの送受信が可能なプロフェッショナル版を発売する計画もあるそうだ。FAXソフトで定評のあるメガソフトとの連携により、RVS-COMがさらに日本の環境にマッチした製品に仕上げられていくことを期待したい。


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp