【コラム】 |
●Intelがグラフィックスとメモリコントローラの統合化へ
先週は、予想通り、Intel関連の刺激的なニュースがあふれた。Intelが先週開催した開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」があったためだ。しかし、IDF自体は、Intel幹部のキーノートスピーチのあとは、肝心な部分を掘り下げた解説は薄く、ちょっと肩すかしだったようだ。目玉としては、キャッシュレス版Pentium II「Covington」とローコストPC仕様「Basic PC」の登場と、Slot 2版Pentium IIのデモといったところか。ただし、IDFで公開された情報以外にも、業界筋のも含めてIntel関連の新ニュースは多く、先週でかなりIntelの戦略は見えてきた。
まず、大きな変化はシリコンへのインテグレートの方向を明確にしたことだ。「Intel's Basic Instinct 」(COMPUTER RESELLER NEWS,2/19)は、Intelが'99年に周辺機能をチップセットに統合すると報じている。たとえば、グラフィックス機能とメモリコントローラを統合化するといったアプローチを取るという。ただし、Albert Yu上級副社長のIDFでのキーノートスピーチ「Beyond The Spec」のトランスクリプトを読んでも、これに関して、具体的にいつどんなカタチでという詳細は、オフィシャルにはしていない。しかし、それでもIntelが統合化の方向に進み始めたという意味は大きい。もちろん、ここから先、半導体の微細化が進むと、インテグレーションを進めなくてはいけないというのは業界のコンセンサスだったわけだが、これまでIntelだけはそうした流れに背を向けているように見えた。それだけ、米Cyrix社のMediaGXのような統合化チップセットの潜在的な脅威は大きいと見たということだろうか。
●次々世代チップセットのメモリインターフェイスはまだ発表されず
Intelの次々世代チップセットのメモリインターフェイスの動向も、IDFの最大の関心事のひとつだった。Intelは、これまでは100MHz SDRAMの次はDirect RDRAMへと移行するとロードマップを敷いてきたが、今年になって、突然、SDRAMとDirect RDRAMを両サポートする新インターフェイス「P133L」をIntelが用意しているというニュースが出てきた。その発表の場がIDFではないか、と見られていたわけだ。ところが、フタを開けて見たらこの新インターフェイスについては一切発表はなかった。予想は大きく狂ったわけだ。
ただし、「Intel Offers OEMs Insurance In Synchronous RIMM Modules 」(Electronic Buyer's News,2/20)によると、その代わり、IntelはDirect RDRAMへのより穏便な移行パスとなるメモリモジュール仕様を提示したという。Direct RDRAMでは、RIMM(Rambus in-line memory module)と呼ばれるメモリモジュールを使うことになっている。記事によると、今回発表されたのは、そのRIMMでSDRAMをサポートするSynchronous RIMM (S-RIMM)という仕様だそうだ。つまり、事実上Direct RDRAMとSDRAMの両サポートの方向を明かしたと同じことになる。だが、DDR SDRAMやSLDRAMなどをサポートするかどうかは明らかではないようだ。DDR SDRAMのサポートはありそうな話だが、Direct RDRAMとSLDRAMはともに256MビットDRAM世代をターゲットにしている競合技術であることを考えると、SLDRAMのサポートはどうもまゆつばのような気がする。
●Intelがグラフィックスカードを発売!?
Intelのグラフィックスチップ「Intel740」関係のニュースも多かった。業界の関心事のひとつは、Intelが自社ブランドのグラフィックスカードを出すかどうか。これに関して「Intel to Make Its Own 3D Boards 」(Computer Retail Week,2/18)は、Intelのカード製品は">「Express Graphics」という名称になると、具体的な製品名までスクープしている。また、台湾発のニュース「Intel readies mobile version of new 3-D graphics chip 」(InfoWorld,2/18)では、Intel740のモバイル版を同社が計画しているとも報じている。もっとも、これは何も驚くには当たらない。Intelは米Chips & Technologies社の買収で、ノートPC用グラフィックスチップ技術をすでに手に入れているからだ。
このほか、次世代64ビットMPU「Merced」関連のニュースも多かった。「Curtain lifted slightly on Merced processor 」(Electronic Engineering Times,2/20)では、Mercedに関して新たに明らかになった情報を突っ込んで記事にしている。たとえば、当たり前の話かも知れないが、MercedはPentium IIとはバスプロトコルが変わる。MPUの形状はカートリッジスタイルになり、MPUコアと2次キャッシュが収められ、コアロジックは入らない。また、MercedシステムでもSDRAMとDirect RDRAMのどちらもサポートされるという。このほか、「OEMs can expect Merced samples later this year 」(Electronic Engineering Times,2/20)では、Intelが今年後半にOEMメーカーにMercedのサンプルを出荷し始めると報じてる。
●IntelがSamsungを救う?
Intelに関しては、Samsungへの資本参加(すでにSamsungグループの一部企業には資本参加している)がウワサになっているが、これについてもニュースが多かった。「Intel considers bailout of Samsung 」(Electronic Engineering Times,2/20)は、関係筋からの情報として30億ドル程度が提示されていると報じ、その理由としてIntelとSamsungの緊密な関係を指摘している。たとえば、SamsungはPentium II用SRAMの重要な供給元であり、エンベデッドDRAM技術を使ってIntel傘下のChips & Technologiesのノート向けグラフィックスチップ製造をする予定であり、さらにIntelと家電製品の共同開発で提携もしている。つまり、IntelとしてはSamsungが韓国経済危機に巻き込まれて沈没してしまってはたいへん困るというわけだ。
●Windows 98のリリースキャンディデートがいよいよ登場
さて、Intel関連以外のニュースに目を向けると、これが先週はさびしかった。そのなかでも目を引いたのは、Windows 98のリリースキャンディデートが出たというニュースだった。リリースキャンディデートというのは、文字通り、正式版の候補となるバージョンで、リリース版の機能はすべてほぼ完成形で入っている。通常は、このあと1ヶ月から1ヶ月半ほどでゴールデンマスターが出て来て、それで出荷へと向かうわけだ。つまり、リリースキャンディデートが出るということは、Windows 98が完全に秒読み状態に入ったことを意味する。「Win98 May Be Spring Surprise 」(Computer Retail Week,2/23)によると、Windows 98リリースキャンディデートは、先週末に配布されたという。これが本当だとすると、今ウワサされている5月出荷説も信憑性を持ち始めることになる。ただし、このニュースを見ても、正式なリリース日に関する情報は混乱していてまだ明確ではない。ある情報筋からとして、5月15日にプレスされ、市場に出るのは6月25というスケジュールを報じているが、Microsoftのスケジュールはどんどん変わるので、もしこれが本当だとしてもあてにはならない。
すでにこのコラム「Microsoftは判決前にWindows 98リリースを強行する」で説明した通り、Microsoftは連邦地方裁判所の仮命令の有効な間でも、現状のWindows 98をそのまま出荷できると確信したと思われる。しかし、リリースキャンディデートを出すとなると、司法省がそのまま黙っているかどうかはわからない。また一波乱あるかも知れない。
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【1/30】「Microsoftは判決前にWindows 98リリースを強行する」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980130/kaigai01.htm
('98/2/25)
[Reported by 後藤 弘茂]