レポートインデックス


プロカメラマン山田久美夫のPMA 98現地レポート 第4弾

~JVCの光学10倍ズーム付きVGAモデル「GC-S1」正式発表! ほか~


PMA 98

「PMA 98 (Photo Marketing Association International)」

'98/2/12~2/15 開催(現地時間)

開催地:ニューオリンズ



●JVCの光学10倍ズーム付きVGAモデル「GC-S1」正式発表!

 CESでは型番もない完全なプロトタイプだった、JVC(日本ビクター)の10倍ズーム付きモデルが、今回は「GC-S1」という名称で正式発表された。

 大まかなスペックも公開されており、レンズはF1.6の10倍ズーム。CCDは1/4インチ35万画素のVGAタイプ。シャッター速度は1/8~1/1,000秒。メモリーはCFカード(4MBカードが付属)。液晶は1.8インチTFT。インターフェイスはシリアルのほか、IrDA(IrTran-P)、ビデオアウトを備える。電源は単3型4本。ボディーサイズは129×74×39mm、重さは260gとなっている。アメリカでの発売時期は今春、価格は699ドルとアナウンスされている。

【GC-S1】
GC-S1スペックシートGC-S1背面 GC-S1正面

GV-HT1スペックシート  また、CESで同時発表された超薄型プリンタも「GV-HT1 Mini Video Printer」という名称で正式発表され、カメラと並んで展示されていた。発表リリースによると、「GV-HT1」はサイズが130×36.5×94.5mmで、重さは345gと若干重め。解像度は217dpiで、階調は64階調と少ない。ペーパーサイズは86×54mmで、プリント速度は1枚70秒かかる。プリントモードは、全面プリントのほか、2,6,8分割プリント、モノクロ&セピア、カレンダーや9種類のテンプレートも用意されるという。インターフェイスはIrDA(IrTran-p)とシリアル(Windows&Mac)、ビデオ入出力はNTSC対応となっている。電源は充電式のリチウムイオンとAC電源。発売時期はearly Summerで、価格は799ドルとかなり高価になっている。


バイオレットリボン

 また、「GC-S1」と「GV-HT1」には、PMAで注目を集め高く評価されたモデルだけに贈られる「バイオレットリボン」が飾られており、アメリカではそのコンセプトが評価されているようだ。

 実際に同社ブースには「GC-S1」のデモ機がきちんと用意されており、自由に撮影や再生をすることができた。

 しかし、デモ機を見る限り、液晶のレスポンスやAF速度、ズーミングなどが猛烈に遅く、実用上不具合を感じるレベルにある。とても長年ビデオカメラを作っているメーカーとは思えないほどレスポンスが悪い。また、画質も備え付けのモニタ画面で見る限り、レンズの色収差などが明確に見られる。

 前回のCESでも触れることはができたのだが、プロトタイプということで、あえて言及しなかった。しかし、今回は正式発表。しかも、大切な商談の場にもかかわらず、まったくプロトタイプの域をでていない印象だ。到底、このレベルのままで製品化されるとは思えない状態で、製品版での大幅な改良を期待したい。



●実販130ドル!? 超低価格モデルを出品した「FORMOSA DIGITAL」

超低価格モデル 超低価格モデル

 今年のPMAでも、台湾や韓国メーカーが続々、デジタルカメラ市場に参入してきている。なかでも、実販価格で130ドル!という低価格モデルを参考出品し、注目を集めていたのが台湾の「FORMOSA DIGITAL」だ。

 最初に取材したときには248ドルと聞いたのだが、これはリストプライス(日本での標準小売価格に相当する)で、ストリートプライスでは130ドルになるという。まだ、プロトタイプの状態だが、8月には量産が始まる。

 今回発表されたものは、デザインが異なる2つのモデル。いずれも、かなり個性的なデザインで、凹凸が少ないため、胸ポケットなどにも気軽に収納できる点が大きな特徴となっている。

 機能的にはとてもシンプル。まず、CCDは35万画素タイプで、レンズはパンフォーカスの単焦点式(35mmカメラ換算で32mm相当)。記録媒体は1MBの内蔵式のみ(記録フォーマットはJPEG)。光学式ファインダーとストロボを内蔵しているが、液晶モニタやビデオ出力機能はない。インターフェイスはシリアルのRS-232Cのみ。電池はコンパクトカメラ用としてポピュラーなリチウム電池のCR123となっている。サイズは106×63×32mm、重さは123gと軽量だ。


超低価格モデル  プロトタイプとはいえ、ブースには実写できるモデルが用意されており、会場内で撮影した画像をインクジェットプリンターで出力し、サンプルとして配布していた。外観はちょっと安っぽく、オモチャ的な感じもあるが、そのサンプルを見る限り、夜景や屋内でのストロボ撮影や、ストロボなしでの屋内カットも結構よく写っている。もちろん、B6版程度にプリントしたものを見るとかなり甘さを感じるが、メモ用としては必要十分な画質を実現しているのにはちょっと感心してしまった。もう少し高級感があれば、日本でもそれなりの需要がありそう。しかし、ポケットサイズで気軽に使えるVGAモデルが130ドルとは、凄い時代になったものだ。

 日本の各メーカーは高画質で高付加価値のモデルへシフトしており、このような低価格VGAクラスは手薄な状態。やはりデジタルカメラもスキャナのように、低価格帯のものは台湾や韓国勢がメインになってしまうのだろうか?。個人的にはちょっと残念だ。



●Kodak、5インチベイ用APSフィルムスキャナと新型USBカメラ

 PMA会場を入ると、メイン通路の正面に「Kodak」の赤いロゴが目に入る。アメリカ市場にどれだけ日本メーカーが進出してきても、Kodakの存在は強大であり、アメリカの写真業界のリーダー的存在であることに、何らかわりはない。

 今回のPMAでも、初日早朝の発表会で、PhotoNetで有名な米PictureVision社の事実上の買収を発表し、さらなるデジタルイメージング分野の強化を図った。さらに、数多くのデジタルフォト関連機器も今回のPMAで発表している。先にレポートした「DC200」もその一つだが、ここではよりPC寄りの製品について紹介しよう。

FD500 FD500ix
 いまやレンズ付きフィルムでは完全に主流となったAPSフィルム。このAPSという規格は、Kodakを中心に、富士写真フイルム、キヤノン、ニコン、ミノルタの5社が共同開発したもので、発表当初からスキャンやデータ管理の容易さを考慮したものとなっており、銀塩フィルムとデジタルイメージングの架け橋という意味合いが強い製品だった。実際に富士やミノルタ、キヤノンなどは早期からAPS用のスキャナを開発し製品化してきたが、今回のPMAでようやく、KodakがAPS用フィルムスキャナを発表した。

 このスキャナーには「FD300」と「FD500ix」の2機種があり、さらに外付けタイプのほか、5インチベイに収納できる内蔵タイプも用意されている。解像度は2400dpiで、APSフィルムのフルスキャンでは1,500×2,625ピクセル(約12MB)の画像がスキャンできる。また、これ以外にもフォトCDの4BASEに相当する1,000×1,750ピクセル(1,600dpi)、BASE相当の500×875ピクセル(800dpi)のスキャンもできる。

 操作はいたって簡単で、スキャナ前面の蓋を開けて、APSフィルムをカートリッジごと差し込むだけでOK。あとはコマを選んでスキャンボタンを押すだけ。操作画面もPCの知識があまりなくても、感覚的に操作できるように工夫されている。また、5インチベイに収納するため、光源には発熱が少ないLEDを採用している点も大きな特徴。なお、「FD300」と「FD500ix」は基本的なスペックは同じだが、後者はAPSフィルムの表面に塗布されている磁気層に読み書きができる。


操作画面 パッケージ

 結構面白いのがパンフレットで、「このスキャナを使うとPCのディスクスペースがセーブできる」とある。なんのことかと思うと、40枚撮りのAPSフィルムに納められた写真をデジタル化し、保存するとデータ量は約590MBになるが、APSフィルムとこのスキャナを使い、必要に応じてスキャンすれば、HDDの容量がセーブできると説明しているのだ。つまり、銀塩フィルムが本来備えている膨大なデータ全てを、常時デジタル化して利用するのではなく、APSフィルムを“巨大な記録媒体”にして、必要なときに必要なデータだけを取り出すという考え方だ。詭弁に思えるかもしれないが、ある意味でこれは真実といえる。近年のKodakの主張は、デジタルとアナログのいいところだけを積極的に利用しようというものだ。今回のフィルムスキャナはそれを可能にするためのツールというわけだ。なお、このモデルの日本での展開は未定という。

DVC323 DVC323パッケージ

 また、Kodakが以前から販売しているUSB対応の静止画撮影機能を重視したビデオ会議カメラも、今回低価格化され新製品として登場している。「DVC323」というモデルで、高解像度で正方画素のプログレッシブスキャンCCDを採用することで、静止画では640×480ピクセルのVGA画像をキャプチャーでき、動画時は320×240ピクセルでの撮影ができる。ピント合わせ機能もあり、12.7cmまでの接写もOKだ。

 インターフェイスはUSB。そのため、Windows 95のOSR2以上が前提となっている。価格は169ドルと比較的手頃。最近は台湾や韓国系メーカーでかなり低価格なものも登場しているが、本機はKodakらしい画質へのこだわりを持ったモデルになっている。なお、こちらも日本国内での発売は未定という。


●PMAの話題をさらった「富士フイルム FinePix700」

富士フイルムブース MX-700 MX-700
 「今年のPMAの見どころは?」と現地の人に聞くと、ほとんどの人が「やっぱり、『富士のMX-700』でしょう」という。日本では一足先に発表されていたわけだが、こちらでは今回のPMAが初めて。それだけに会場での人気も高く、商談が集中する初日などは手に触れるのが難しいほど人を集めていた。実は私自身、会場内でも持ち歩いて撮影していたのだが、とにかく大変で、質問責めにあうこともしばしば。

 現地では「MX-700」と呼ばれるFinePix700だが、ほぼ日本向けバージョンと同じもの。ただひとつ違うのは、例の“美肌モード”が省かれている点だ。やはりアメリカでは人種差別で問題になる可能性があるための配慮という(もっとも、デモ機は外観はMX-700だが、中身はFinePix700そのもので、機能は残っていた)。

 アメリカでの価格は799ドルとアナウンスされており、日本国内とさほど変わらないレベル。もっとも、アメリカではこの価格帯でもコンシューマ向けではなく、すでにビジネスマーケット向けの製品というイメージが強い。

BIG JOB DS-250HD また、防塵防滴仕様の「BIG JOB DS-250HD」は、アクリル越しの参考出品にとどまっており、デモも行われていない。結構アメリカ人好みのデザインだと思うのだが、ターゲットとなる防塵防滴が不可欠な工事記録写真などの市場が、アメリカにはあまりないことが大きな要因となっているようだ。

シーワールドのキャラクタ 同ブース内では、愛嬌を振りまきながら可愛い着ぐるみたちが歩き来場者を楽しませている。これは、アメリカで富士が協力しているテーマパークであるシーワールドのキャラクタという。いかにもアメリカのイベントらしい、微笑ましい演出だ。


□PMAのホームページ
http://www.pmai.org/
□PMA 98のホームページ
http://www.pmai.org/convention/pma98.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm

('98/2/16)


[Reported by 山田 久美夫]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp