'98/2/12~2/15 開催(現地時間)
開催地:ニューオリンズ
ここアメリカでは、日本での黎明期がそうであったように、デジタルカメラはまだ高価なビジネス用途向けのPCへの入力機器というイメージが強い。それは、日本に比べて、銀塩カメラの価格帯が一段と安く、100ドル以下の簡易コンパクトカメラが数多く市場に出回っている国であることを考えると、なんらおかしくはない。やはり現状の大半のモデルは企業で購入するビジネスユースの製品として位置づけられている。このあたりは日本国内での現在の状況とは大きく異なる点といえる。
今回は、こちらでも登場しはじめたメガピクセル機についてレポートしよう。
●プリンターとの連携で高画素化に向かう「HP PhotoSmart C20」
アメリカでは屈指の技術力とブランド力を誇るHP。とくに最近ではFlashPixフォーマットの開発4社に名を連ねたり、昨年は写真画質をうたう「PhotoSmart」シリーズのプリンタやスキャナ、デジタルカメラをメインにした、かなり大規模なデジタルイメージング普及キャラバンを組むなど、デジタルフォトの世界に対して、実に活発な動きを見せている。
実際に昨年の夏前あたりは、PhotoSmartブランドで販売されているHPのデジタルカメラ(コニカ Q-EZのOEMバージョン)が、パソコン店での販売台数でトップになっている。
そこで今回のPMAでは、新製品として一気に100万画素クラスのモデルを投入し、フォトクォリティーのプリンターとセットで新たな市場を狙っている。その一役をになう新鋭機がこの「PhotoSmart C20」だ。
このモデルは、お察しの通り、「コニカ Q-M100」をベースにしたメガピクセルモデル。しかし、先代は同一デザインだったが、今回のC20では、HP独自のコンパクトカメラ風ボディーをまとって登場した。
写真でも分かるように、アメリカ人好みのボリューム感のあるデザインを採用。ボディーカラーもプリンターにあわせたクリーム系の柔らかな色調で、なかなかオシャレな雰囲気を備えている。もちろん、中身はQ-M100なので、解像感も十分に高く、大きく見やすい光学ファインダーの採用で、気持ちよく使えるモデルに仕上がっている(スペックはQ-M100のものを参照。なおサイズは5×3.15×1.9インチとやや大きめ)。
価格は699ドルと、意外に安めに設定されている。多少クラスは違うが、同じく今回のPMAで発表され、話題をさらった「富士フイルム FinePix700」(現地名MX-700)が799ドルというプライスであることを考えると、なかなかいい線の価格設定となっている。もっとも、アメリカでは499ドルを超えるモデルは、パーソナル用途を見込めない。しかし、その価格帯にメガピクセル機が徐々に近づきつつあるのは確実だ。
HPのアプローチはちょうど日本でのエプソンのものに似通っている。とくにプリンタとデジタルカメラとの組み合わせという、一種のデスクトップ・プリントの世界は、国土が広くラボが近くにあるとは限らないアメリカ市場ではかなりの説得力を持つものだけに、今後の展開が大いに楽しみだ。
韓国のSAMSUNGは、銀塩カメラ全盛の時代からPMAの常連だ。しかも同社は、5年くらい前からデジタルカメラにも積極的に取り組んでおり、アメリカではすでに41万画素の3倍ズーム付きモデル「SSC-410N」を発売している、実績のあるメーカーだ。
【SSC-410N】 |
【DIGIMAX 100のパネル】 |
写真で見る限り、なかなかオシャレでスマートなモデル。質感は分からないが、なかなか高品位な雰囲気のモデルに仕上がっているようだ。
リリースから主だったスペックをピックアップすると、まず、CCDは1/3インチ100万画素タイプ(1,156×866ピクセル)。レンズは単焦点式で、ピントはもちろんAFを採用している。ファインダーは液晶式のみだが、1.8インチのTFT。記録媒体はコンパクトフラッシュカードで、記録フォーマットはJPEG準拠。
さらに発表資料によると、記録速度は約1秒と高速だ(画像サイズの表記はないが……)。また、インターフェイスには通常のシリアルのほか、シッカリとUSBも採用されているのも特徴。電源は単3形4本となっている。サイズは136×66×45mm、重さは260gとあるのでさほど大きくはない。
まだ現物を見ていないので、なんともいえないが、少なくとも、日本のメガピクセルモデルとは異なったデザインコンセプトだ。より未来的な雰囲気を醸し出しており、アメリカ市場でのウケもなかなか良さそうな、注目すべきモデルといえる。
また同社は「DIGIMAX 30」と呼ばれる、例のIntelのデジタルカメラキットを採用したモデルも、今回のPMAで発表。こちらはアクリル越しではあるが、きちんと実機も展示されていた。しかし、間近で見ると、かなり大柄で、しかも液晶モニターもなく、記録媒体もデジタルカメラの世界ではややマイナーなインテルのミニチュアカードを採用するなど、実用的ではあるが、あまり食指が動くタイプではない。もちろん、このモデルはWindows 98のシステムにプリインストールされている機能により、USBでカメラとPCを接続するだけで、簡単に画像データの読み出しができるシステムになっている。Windows 98ユーザーにとっては、なかなかユーザーフレンドリーな存在になることが予想される。なお、価格は楽に300ドルを超えるようで、内蔵メモリー専用機なら液晶付きのVGAモデルがもっと安い価格で入手できることを考えると、やや割高感があるのは否めない。
【DIGIMAX 30のスペックシート】 |
□「SSC-410N」の製品情報
http://www.samsungcamera.com/prod_d410n.html
□「DIGIMAX 30」の製品情報
http://www.samsungcamera.com/digimax.html
●メガピクセル機の低価格化の先兵となるか!?「Kodak DC200」
さて、日本ではすでに発表、発売までされているシンプルなメガピクセル機「Kodak DC200」も、アメリカではこのPMAでようやく発表になった。機能的には日本版と全く同じものであり、その点では目新しいニュースではない。
だが、実販価格だけは別だ。まず、アメリカ市場では、現在、2倍ズーム付きの「DC210 ZOOM」はストリートプラスで899ドルと、日本の実販価格に比べると、2倍近い開きがある。しかし、今回発表された「DC200」では、一挙に300ドルも安い599ドルと、かなり大胆な価格設定となっている。もちろん、まだ日本国内よりも高いわけだが、日本ではDC210とDC200では標準小売価格で1万円しか違わないことを考えると、なんとも不思議なプライシングといえる。
おそらく、Kodakはこの「DC200」で、アメリカ市場でのメガピクセル機の価格破壊を企んでいる。前述のとおり、米国では499ドルというプライスに、ひとつの分かれ目がある。しかし、一気にそこまでは落とせないにしろ、ポストカード程度のプリントなら十分に写真に迫る表現力を誇るモデルになら、プラス100ドルのメリットがあると判断するユーザーも多いだろう。
しかも、アメリカでのKodakの存在は、日本とは比べものにならないほど、高いシェアとブランド力を持っており、デジタルカメラの世界でも事実上のプライスリーダーといえる。大げさにいえば、Kodakが動けばアメリカの写真市場は変わる。それほどの影響力を持っている。そのKodakが599ドルのデジタルカメラで、よりパーソナルに近い、新たな市場を狙っている。この戦略的な価格設定からみて、写真業界の巨人であるKodakが本気でデジタルカメラを始めとしたデジタルイメージングの普及を狙って動き始めたことは明らかだ。そして、DC200はその先兵として、市場に送り込まれた戦略的なモデルと感じた。
□PMAのホームページ
http://www.pmai.org/
□PMA 98のホームページ
http://www.pmai.org/convention/pma98.htm
□関連記事
プロカメラマン山田久美夫のPMA 98現地レポートインデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980216/pma_i.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm
('98/2/16)
[Reported by 山田 久美夫]