【イベント】

山田久美夫のCOMDEX Fall '97レポート
~記録媒体編~



 今回のCOMDEXの大きな目玉となったのが、大容量メディアやメモリーカードといった、各種の記録媒体といえる。傾向としては大容量化をメインとした来春発売予定の「DVD-RAM」、低価格指向のSyQuest「Spar Q」。FD互換により次世代フロッピーを狙うものとして、富士とソニーが共同開発し、COMDEXで初お目見えとなった200MBフロッピーである「HiFD」、'96年に松下寿などから発表された120MBフロッピー「Super Disk」。さらに携帯端末やデジタルカメラなどモバイル系を重視したものとしては、40MBの超小型ディスクIOMEGA「Clik!」、超薄型カードSanDisk「MMC」などがあり、各社ともブースの前面にこれらを配置し、積極的にアピールしていた。


●いよいよ現実のものとなった「DVD-RAM」

 規格関係で統一性が図られなかった「DVD-RAM」だが、会場ではもともとかなり積極的な姿勢を見せていた松下東芝のブースで「DVD-RAM」ドライブの展示やデモが行なわれ、なかなかの人気を博していた。今回は両社ともPC組込型のドライブがメイン。いくらCDやPDとの互換性があるといっても、標準搭載用としてはドライブ単体が高価なこともあり、むしろ組込型を積極的に進めることで量産効果を向上させ、低価格化を狙う戦略的な動きという感じもあった。デモはやはり大容量と、ある程度高速な読み出しが可能なこともあって動画が中心。松下はDVD-RAMの特性を生かして、MPEG2を使った動画編集のデモを展開していた。

□関連記事
書き換え可能な大容量光ディスク関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970904/rw.htm

【松下】

【東芝】



●どっちが勝つか!「HiFD」vs「Super Disk」

 一方、同じ大容量系のディスクでも、より現実的なものとして普及が見込まれるのが、3.5インチフロッピードライブの上位互換を実現している、いわゆる次世代フロッピーといえる。もちろん、以前から各社とも大容量化を目指してきたわけだが、いずれも鳴かず飛ばずだった。しかし、'96年に松下寿などが発表した120MBの「Super Disk」に加え、今回のCOMDEXで初めて公開された富士写真フイルムソニーが共同開発した200MBの「HiFD」という、大本命が登場。会場でも熱い火花を散らしていた。

 まず、初公開された「HiFD」だが、これは既報の通り、同じドライブで3.5インチフロッピーも読み書きができ、しかも専用ディスクを使うことで200MBという大容量ディスクドライブとしても利用できる、汎用性の高いメディアだ。会場では共同開発のソニーと富士フイルムブースで展示やデモが行なわれており、とくに一等地にブースを構えているソニーはかなり積極的なデモを繰り返していた。もちろん、すでにOEM組込用のドライブの展示も行なわれており、こちらは'98年はじめから出荷が開始されるというもの。気になるドライブの価格は「普通のFDDよりも高価になる」という程度の回答しかえられなかったが、メディアに関しては「Zipと同等か、若干高めになるかも……」ということだった。現地ではZipが実販で14.99ドルが相場なので、同価格帯だとしても容量が2倍になるわけだ。
 記録再生は意外なほど速く、ブースのデモでは小さな画面サイズではあるが、リアルタイムでの動画再生が行なわれていた。

 また、ソニーブースではノート用の対応ドライブも展示されていたが、こちらは完全なプロトタイプで、現時点では早期に市販されるという感じではないという。また、アメリカで大ヒットしているデジタルマビカにこのドライブが採用されれば……と思い聞いてみたところ、残念ながら現時点ではドライブを電池駆動することがまだ少々難かしく、それほど簡単に実現できるわけではないとの回答を得た。

□「HiFD」のニュースリリース(和文)
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj284.html
□関連記事
【10/14】ソニーと富士フイルム、現行3.5インチFDと互換の200MB FDD「HiFD」を共同開発
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971014/hifd.htm

【HiFD】


 一方、会場内で意外なほど目に付いたのが、米IMATION社、米Compaq Computer社、松下寿工業が共同開発した120MBの3.5インチフロッピー互換ディスクである「Super Disk」。こちらは松下やIMATIONはもちろんだが、マクセルなどでもデスクトップ機への組み込み用ドライブやディスクを前面に展示しており、かなり積極的な展開を図っていたのが印象的。こちらは発表が速かったこともあって、すでにSuperDisk組み込みマシンという展開が現実のものとなっているようだ。

□「Super Disk」の製品紹介(英文)
http://www.imation.com/dsp/ls120/index.html

【SuperDisk】


 とにかく、現時点でも1.44MBのディスクでは如何ともし難い状況になっているPCの世界だけに、これらのメディアへの期待は大きい。しかし、現状ではこの2つを含め、複数の規格が争っている状態であり、ユーザー側はとまどいを感じる部分もあるし、とくにこの手のメディアはPCに詳しくない人が使うケースが多いこともあって、どのような展開になって行くかが大いに注目される。


●アッと驚く超小型40MBメディアIOMEGA「Clik!」

 '96年のCOMDEX Fallでは20MBの小型メディアを発表したIOMEGAだが、'97年はその発展形として、より現実的な製品として40MBの超小型ディスクメディア「Clik!」を発表。構造的にはHDDドライブのディスク部分だけを取り出して交換式にした感じのものだが、とにかく、その薄さと小型さには感心する。しかも、メディアの価格も40MBで9.99ドルとかなり手頃な設定だ。もっとも、PCには専用のドライブが別途必要で、価格は199ドルとまずまず。残念ながら、PCMCIAドライブで直接読めるような変換アダプターは用意されていない。
 アメリカではZipドライブがかなり普及しており、同社の知名度が高いこともあって、ブースでの人気は上々。プロトタイプながらも、コダック DC50 ZOOMの「Clik!」対応機や携帯端末などの試作も展示されていた。

□「Clik!」の製品紹介(英文)
http://www.iomega.com/product/clik/index.html



●1GBでドライブ199ドル、メディア33ドルのSyQuest「SparQ」

 可搬性の大容量メディアといえば、日本ではMOが有名だが、ここアメリカでは数年前までSyQuestがその代名詞となっていた。しかし、IOMEGAのZip、Jazドライブの普及や今回のDVD-RAMの登場で、少々焦り気味。そこで今回はそれを挽回すべく、1GBメディアでしかもドライブの価格が199ドル、メディアが33ドルという低価格化を実現した「SparQ」を展開。ドライブはパラレルもしくはE-IDEで利用でき、シークタイムも12msと一昔前の大容量HDD並みの速度を実現。当面のライバルとなる、ほぼ同容量の「Jazドライブ」に比べても1GBで33ドルというメディアの安さでは大きなアドバンテージがある(こちらでは100MBのZipがかなり普及しており、メディアの価格もこなれてきたが、それでも15ドル前後が相場のようだ)。しかし、いくらメディアが安くなっても、1GBのカートリッジが大量に売れるとは考えにくく、消耗品で儲けるこの手のビジネスとしては、厳しいものがありそうだ。

□「SparQ」の製品紹介(英文)
http://www.syquest.com/products/m_sparq.html



●スマートメディア対抗?SanDisk「MMC」

 メモリーカード関係では、CFカードでも有名なSanDiskが今回新たに携帯機器用に開発した超薄型メモリーカードである「MMC」(マルチメディアカード)を発表。サイズ的にはスマートメディアよりもさらにコンパクトで、サイズ的には32×24mmで厚みはわずか1.4mm。容量は2~10MBまでがラインナップされており、'98年には32MB、2001年には128MBまで可能になるという。価格はOEM向けのもので見ると、同容量のスマートメディアに似通った設定となっているようだ。このカードは今後急速に発展するモバイル系の記録メディアとしての位置付けがメインで、PC用の超小型ドライブアダプターも同時に発表されていた。
 また同社は今回、60MBのCFカードと400MBのPCMCIA Type3カードも新たに発表し、ラインナップの大容量化にも積極的な姿勢をみせていた。

□「MMC」のニュースリリース(英文)
http://www.sandisk.com/products/mmc.htm


('97/11/21)

[Reported by 山田 久美夫 ]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp