AMUAMUの「アキバの楽屋から」第10回

秋葉原

月1回連載:ショップの側から見た秋葉原事情

AMUAMUの「アキバの楽屋から」 第10回

'97年末の注目商品とその裏側

TEXT:AMUAMU


 「アキバの楽屋から」は、秋葉原のパソコンショップ店員である「AMUAMU」が、ショップの側から見た秋葉原事情を、月1回お送りするコーナーです。(編集部)


■年末商戦近づく!

 10月が終わり11月に入りました。年末商戦に向けて各メーカーより新製品が出揃いつつあります。新製品が秋葉原の店頭に並ぶまでにはいろいろな裏側もありますのでそのあたりに触れつつ、ショップの店員から見た年末商戦注目の商品とその情報を取り上げていきます。


■ノートパソコン

 秋葉原をはじめパソコンショップ業界が落ち込んでいる今、動きが良くて大幅な伸びを示している数少ないアイテムのひとつがノートパソコンです。サブノートやミニノートから、省スペースデスクトップを狙った大きいノートまでさまざまですが、どのタイプも好調です。ある程度のユーザーがデスクトップパソコンを買う時代は終わり、2台目としてのノートパソコンや、会社や家庭でスペースの無い場所でのノートパソコン需要が大きくなってきたのでしょう。企業でも、ノートパソコンを大量導入するところが増えてきたようです。そうしたノートパソコンの中でも注目の商品を、一番売れるサブノート系中心に取り上げたいと思います。

●注目度No.1? かっこいいノートVAIO PCG-505

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971015/sony1.htm

 そのノートの発表を見たとき筆者は「かっこよすぎる!参った!」と唸ってしまいました。ユーザーの心を掴む商品といえます。「本体マグネシウム合金製」というところが何よりも良い。ウォークマンのように持ち歩き、かっこよさを演出してくれるのでは無いかと思われます。「持っていてかっこいい」「人に見せて自慢できる」「実際の使用にも十分耐える仕様」等サブノートパソコンの重要条件を全て満たしています。サブノートとしては筆者イチ押しの商品です。

 さて、このSONYのノートですが、ショップにとっては結構大変な商品です。まずひとつは、メモリの増設をSONYのサービスセンターでしか受け付けない(工賃は税別6,000円)。メモリも一緒に売ることにより利益幅をとるショップにとっては悩みの種です。従来のノートはショップやユーザーが手軽に増設できるのが良いところではあったのですが……。

 2つめは、メーカーの出荷・販売体制です。販売を開始して良いのは出荷の1週間前。つまり11月13日よりと決められており、仕入れ価格もその数日前にしか教えてもらえません。ショップにとっては予約販売を速く始めたいところなんですけどね。

 3つめは、オプションについてです。ポートリプリケータまでオプションになっているのですが、オプションは本体に比べて出荷量が少ないのが世の常です。本体と一緒に購入したいユーザーが多い中、オプションがどのくらい本当に出荷されるかが気になってしかたありません。ポートリプリケータぐらいセットにして欲しかったです……。

 さらに出荷に関して。なんでもこのノートは諏訪の工場で作っているらしいのですが、ショップからの発注を1週間の初めに受けて週末に納品するという体制で、在庫をSONYとして持たないとのこと。確かに不良在庫は怖いかもしれませんが、ここまで徹底されてもショップとしてはつらいですね。

●Panasonic Let's note mini

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971030/letsnote.htm

 これもすごい。A5サイズというLibrettoを少し大きくしたサイズながらSVGA(800×600ドット)表示が出来るというのはびっくりです。正直なところ、本家のLet's noteシリーズは一時期の勢いを感じず、「そろそろLet's noteの時代も終わりか?」と思っていたところなのですが、一気に復活。この商品の販売は最近始まっているのですが、かなり好調です。あとは今月末にどのくら出荷されてくるかが気になるところ。いつもLet's noteシリーズは出荷数が少なくて泣かされているので、今回もそうなるのではないかと気になります。手に入れたい人は早めに買った方が良いかもしれません。値下がりするより先に物がなくなることが多いです。

●三菱 Pedion

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970909/pedion.htm

 まず言えるのは「値段が高い」ということです。確かにCPUはMMX Pentium 200MHz~233MHzというハイスペックですがCD-ROM等が付いていないなど考えるとかなり高いです。その薄さと軽量さは特筆されますが、逆に「こんな軽くて薄いものにこんな高い価格を支払うのか……」という抵抗感は否めません。値段が高いので、いくら魅力的な商品でも買うユーザーが少ない。大手量販店はのぞいて、ショップにとってはあまり前面に出されることは少ないかもしれません。

●東芝 Libretto70、60、モバイルパックII

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971029/libretto.htm(Libretto 70)

 いまやミニノートの代名詞となり、相変わらずこの分野では圧倒的強さを見せるLibrettoシリーズ。その分、ショップ同士の価格競争も厳しい商品なのですが売れる商品であることは確か。Libretto60も先月ぐらいからがくんと値段が下がり、また売れていますし、Libretto60に携帯電話通信カード・FDD等が付属しているモバイルパックIIも人気です。

 そして新製品のLibretto70。MMX Pentiumを搭載したモデルも10月末に発表されましたが、やはり人気は高いです。しかしLet's note miniなどに比べると、スペック的にも売れ行き的にも少々見劣りしないでも無いですが……なんか年末商戦用に急いで出した場つなぎ的商品のような気が筆者はするのですが……どうなんでしょう。ただしLibrettoシリーズの人気が高いもう一つの要因は「価格が安い」という事です。比較的手軽に買えるその価格設定は特筆されるところです。「小さい=安い」という人間の先入観に妙にマッチしているのも人気のひとつでしょう。年末商戦でもショップにとって重要な商品となることは間違いないです。

●IBM ThinkPadシリーズ マルチメディアモデル

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971104/ibm.htm

 一定した人気を持つThinkPadシリーズ。この年末商戦ではノート本体自体にほとんど変更点は無く、CD-ROMドライブやFAXモデムをセットにしたマルチメディアモデルを投入して来ました。ThinkPadシリーズのショップにとって大きな特徴は「売れ行きに波が無く安定した人気と売れ行きがある」ということです。他のノートの旧機種が型落ちで投げ売りされているのにThinkPadシリーズが本体に変更を加えなくても売れるというのは完成度が高いという事でしょう。商品も潤沢に供給され、価格も良い価格帯なのでショップとしては一番販売しやすい商品とも言えます。ただこの商品はお店同士の値段差が結構離れているので購入を考えている人はいろいろなお店の価格を調べると良いかも。

●ASUSTeKノート

 サブノートではありませんが、マザーボードのメーカーとして有名な台湾ASUSTeK社が作る、省スペースデスクトップ用途をターゲットとしたノートパソコンも取り上げたいと思います。この手のノートは差別化が難しく、どのメーカーの物も似たり寄ったりなのですが、このASUSTeK社のものはPentium IIにアップグレード出来るという、特筆すべき点があります。

 モバイルモジュールと呼ばれるモバイル用MMX Pentiumとチップセットを搭載しているのですが、このモジュールは将来Pentium IIとPentium II用のチップセットのモジュールと互換性があり換装が可能なのです。ノートパソコンでCPUを入れ換えるということ自体珍しいですが、それがMMX PentiumからPentium IIへ換装が出来るというのはすごいと思います。

 また、ビデオカードやCD-ROMドライブも将来アップグレード出来るという、従来のノートパソコンの常識を破る商品です。将来出てくるビデオチップに対応したモジュールが出たときに換装することが出来るとのこと。またCD-ROMドライブを将来DVD-ROMドライブに入れ替えることが出来るという、本当にデスクトップ並みの拡張性があります。

 ASUSTeKでは初のノートということで安定性や作りの面で問題が出ないか心配なところはありますが、期待できるノートでしょう。11月末までには出荷したいようです。


■マザーボード

 この連載の前回に「440BXが早く出てきそうだ」と書きましたが、サンプルは出てきそうですが、結局製品自体の出荷開始は1月以降になりそうです。440LXが出てからあまり時間が経たないのに、さっさと次のチップセットを出すことにメーカーなどが難色を示したというのも一つの原因ではないかと思います。少々残念ではありますが……。

 ということで、年末商戦は440LXでマザーボードは決まりでしょう。Pentium IIも値段が下がってきていますし、この年末はPentium IIパソコンやCPU、マザーボードがたくさん売れることを期待したいですね。

 もうひとつ気になるアイテムはSocket7 + AGPバスを搭載したマザーボード。まだ入荷数が少ないですが、飛ぶような売れ行きを示しています。AGPビデオカードも安くなり、どうやら1万円を切る商品が出てきたようです。マザーボードの価格も2万円前後と、従来のSocket7マザーボードと変わらない値段なので、マザーとAGPビデオカードを一緒に買い換える人が増えるかもしれません。

 またASUSTeKから新しいマザーが11月末に出てくるようです。半年近く前にアナウンスされながらも実物が出てこなかったお化けマザー(サーバー用途向け)「P/I-P65UP8」です。当初噂されていたスペックより、さらにすごくなってくるようですが、PCIバスが8本やintel 960チップによるI2O(インテリジェントI/O)の提供など、気になるところがたくさんあります。従来の「P/I-P65UP5」のCPUカードと同じ物を使用するので、PentiumProのDualやPentium IIのDualが実現できます。もちろん、その分値段もかなり高そうですが……。


■CPU

 AMD K6 233MHzが無い。無い。無い!
 大手メーカー数社が自社のパソコンに導入したため最悪の品不足状態です。相変わらず歩留まりは悪いようですし、AMD K6266MHzとかK6-3Dとか言っている場合じゃないです。海外経由の価格は暴騰している上に、物もないという最悪な状況。国内の正規代理店からも来ないですし本当に困ってしまいます。

 こんな状況を横目に徐々に売れ行きが良くなっているのがCyrix 6x86MXシリーズ。値段差も付いていますし、233MHzも出荷が順調になってきていることもあり売れ行きは確実に上向いています。今後どうなるか楽しみではあります。


■その後のWindows95 OSR2.1

 前回取り上げたWindows95 OSR2.1の販売方法ですが、セットではなく同梱する必要があるようです。マザーボードにOSR2.1同梱はOKとのこと。ただしあくまでもOSR2.1は付属品であり、メインに来ることは無い(来てはいけない)と考える必要があるそうです。
 そして次のバージョンことWin95 OSR2.5は来月あたりではないかと筆者は予測しています。Internet Explorer4.0のバグ問題などが関係あるか分かりませんが、延びているようです。ユーザーの手に渡るのはいつになるやら。

 また必然的にその次のバージョンの噂もありますが、それに関してはまだ先のことですから、何も分かりません。今度こそOSR3.0ですかね? Windows98はまだずっと先。そして一番注目されるWindows NT5.0もまだまだ先ですから。

 それと、気になる噂としてはWindows95に新しいバージョンのService Packが出るのではないかという噂。どのような機能修正がされるのか分かりませんし、本当に出るのかどうかも分かりませんが、こんな噂もあると覚えておくと良いかもしれません。


■年末に期待するところ

 年末ボーナスが出ることもあり、必ずやこの停滞した市場が再び活性化して売れ行きが延びると信じています。ノートパソコンを中心に魅力的な商品もありますので、どうなるか非常に楽しみではあります。年末商戦の結果は1月のこの連載で取り上げますが、良い結果だったと書けるように皆さん買って下さいね。

[Text by AMUAMU]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp