AMUAMUの「アキバの楽屋から」第11回

秋葉原

月1回連載:ショップの側から見た秋葉原事情

AMUAMUの「アキバの楽屋から」 第11回

ショップの腕の見せどころ? CPU市場 急展開

TEXT:AMUAMU


 「アキバの楽屋から」は、秋葉原のパソコンショップ店員である「AMUAMU」が、ショップの側から見た秋葉原事情を、月1回お送りするコーナーです。(編集部)


 11月後半よりCPUの動向が非常に激しくなってきました。価格だけでなく、商品の出荷状況やラインナップの移り変わり、そして新製品の話題などCPU関連は話題に事欠かない状況です。逆に動きが早いとショップにとっては辛い状況となってくるのですが、まずは各CPUごとに動向を取り上げていきます。

■AMD K6/233(233MHz)

 おそらく11月のCPU市場で一番動きが早かったのではないでしょうか。前回のこの連載(11月17日掲載分)で筆者は次のように書いていました。

「AMD K6/233MHzが無い。無い。無い!」

 ちょうど、AMD K6/233MHzが一番市場に無かった頃で、筆者にとってもショップにとっても我慢の限界に達しそうな時期だったことを覚えています。秋葉原に少量入荷しても、プレミアム価格的にどのショップの販売価格も上がっていて、それでも買いたいというユーザーがひっきりなしに「K6/233在庫ありませんか?」と聞いてくるような状況でした。

 ところが、前回の連載が掲載されてから1週間と経たないうちにAMD K6/233MHzはダムが崩壊したように市場に一気に流れ込んできました。

 前兆はありました。11月の中頃から妙に、国内・海外問わず「AMD K6/233MHzの在庫を持っている。買わないか?」という売り込みが増えてきました。ただし、この時点では市場にほとんど無い状況だったため、価格は高かったです。筆者の知っている限りでは、怪しいルート(^^;から最高価格で5万円近くという、めちゃくちゃに高い価格が提示されていたようです。

 ダムが崩壊したように市場に一気に流れ込んでくると同時に、値段も急激に下がっていきました。逆に飽和状態になるほどの量が出荷されてきたとも言えます。
 そんな状況だったので、中には、タイミング悪く高い価格のK6/233MHzを買ってしまって困ったショップもあったのではないかと思います。
 どのタイミングでCPU等を仕入れるか、タイミングで価格に大きな開きがあるわけですが、このあたりがショップの仕入れの腕の見せどころではあります。物が欲しいために、高くても仕入れるか、それとも安いのが来るまでじっと辛抱するか。もっとも、これはショップの方向性にもよります。


■AMD K6/200 (200MHz)、K6/166 (166MHz)

 233MHzとは対照的に、市場から減ってきているのは200MHzと166MHzです。特に166MHzは完全に生産終了に向かっており、残るは流通在庫と店舗在庫のみとなりつつあります。すでに店頭から消えているショップが増えているようですが、買いたいと思う人は急いでショップに走らないと買えないでしょう。

 200MHzの生産は続くのですが、出荷される量は極端に減りつつあり、価格も一時期より少し上がりつつあります。AMDの話によりますと、出荷する全てのK6シリーズを10としたとき、233MHzを8、200MHzは2の割合で出荷していくとのことです。前記したように166MHzはゼロです。

 AMDとしてはK6は売れているから、利益率の高く単価の高い高周波数の商品に絞り、利益率の悪い166MHzを強制的に終了させるという流れに持っていくのでしょう。
 ショップとしては、安くて数の出るK6/166MHzや200MHzを中心にして欲しいのですが……特に200MHzは人気が一番高いですし。ラインナップも266MHzが出るまでの間、200MHzと233MHzだけでは少々寂しい気もします。

 おそらく'98年の早いうちから出荷の始まるAMD K6/266MHzですが、これが出ると、今度は200MHzが終了に向かいそうで怖いです。実際のところ、200MHzまでしか対応していないマザーボードを所有している人は多いのではないかと思うので、もっと出荷して欲しいところなのですが。


■intel Pentium IIシリーズ

 Pentium IIは円安の影響か、少し値上がり気味ではあります。安い商品が入ってこないです。値上がり傾向は避けられないと思いますが、これも12月中の一時的なものかもしれません。ただし、値上がりといってもそれほど大きな値上がりではなく、元々値段が高いPentium IIなので微々たるものと感じる人も多いかもしれません。

 先日、233MHzを扱っているお店が少ないことから「生産終了ですか?」とユーザーに聞かれましたが、物がないわけではなく売れないからどこのショップも仕入れないのだと思います(筆者のショップもです)。実際には出荷されています。233MHzは値段が高い割に性能が悪く、コストパフォーマンスは良くありません。ただしこれに関しては1月にテコ入れが入るようで、233MHzに関しては一気に値段が落ちるようです。現状では233MHzを買うより、少し無理してでも予算を増やして266MHzあたりを買うのがベストではないかと思います。


■Intel MMX Pentiumシリーズ

 MMX Pentiumは値段の動きは多少の上下があるものの横ばい状態です。安定していますので、この年末は買い時かもしれません。ただ、ショップとして思うところはかなりAMDに押されているということです。Socket7の市場はショップの店頭市場ではAMDの勝ち状態が続いている気がします。


■Cyrix 6x86MX、6x86Lシリーズ

 とにかく安い! コストパフォーマンスがナンバーワンなのは確かですが、なぜかあんまり売れません。外部クロックが分かりにくかったり、昔のイメージがユーザーにこびりついているからなのかもしれません。

 そんな中で、6x86MX-PR166の生産終了の噂が耳に入ってきました。確かに1万円台前半では利益率が相当悪いでしょうから、仕方がないのかもしれませんが。実際は流通在庫や店頭在庫で結構ありますので、当分は店頭から消えないと思いますが、値下がりは今後あまりしなくなるでしょう。

 非常にコストパフォーマンスの高い6x86Lシリーズは完全に生産終了状態です。残るはショップの店頭在庫のみに近くなってきていると思います。安いマシンを組むときに一番便利で、お勧めだったんですけどね。やはりこれもCyrixとしては利益が取れないから止めざるを得なかったと思います。最後に6x86Lをたくさん仕入れたショップは、同じ価格帯で販売されるCPUが少ないことから価格競争も少なく、利益を取りつつ販売できるので、ショップにとって良い商品になっていると思います。


■今後のCPU動向と買い時

 12月中に来る新しいCPUはIDTのWinChip C6プロセッサです。筆者の意見としては「出るのが遅すぎた」というところでしょうか。9月から10月ぐらいに出ていればまだ面白かったのですが、今からではちょっと辛いかもしれません。性能も同クロックのMMX Pentiumに比べて落ちますから、値段の勝負となるわけですが、値段の勝負になるとCyrixがめっぽう強いですから、厳しいと言えます。

 聞いた話によりますとIDT C6はあくまでも技術の蓄積と市場にアピールするための材料であり、「来年出るC6+に期待してくれ!」と話しているようです。そこまで言われるとC6+に期待してしまいますが、また出荷が遅れてタイミングを外さないで頂きたいところです。

 '98年の早い時期にはPentium II 333MHzと、AMD K6/266MHzが控えています。ただ、値段もそれ相応になるようなので、現在は、それらについては気にしないで、店頭に並んでいるCPUを買うのが賢いかもしれません。
 ただし、AMD K6/266MHzはかなり性能が良いようですから、どうしても気になるところです。K6/266MHzが出てから300MHzを出すのはそれほど難しくないとも言われており、'98年前半は立て続けにAMDのパワーが炸裂しそうです。

 CPUの市場は今後もさらに面白くなってくると思います。値段の動きの激しさはさらに増してくると思いますし、新製品も続きます。ユーザーの視点からすれば楽しみですが、ショップとしては仕入れに細心の注意を払う必要があり、仕入れの腕が特に問われる商品です。パソコンを全く知らない人から見れば「小石」とか「剣山?」とか言われるような小さい商品(Pentium IIはファミコンカセットですね)が面白い市場を作っているのは不思議でしょうがないですけどね(笑)。

■■11月の秋葉原ショップ動向■■

●パソコン市場の景気はここが底?

 11月は話に聞く限りではどこのショップもあまり売れなくて景気が悪いとのこと。「どこどこのショップはやばい」とかそういう噂もひっきりなしにあるのは景気が悪いことを良く示していると思います。

 そんな中でも、秋葉原には新規開店のショップやパーツを扱うショップが急激に増えて来ました。「パーツは儲かる」と思っているのかもしれませんが(一昔前に比べたらあまり儲からないと筆者は思うのですが)実際のところはどうなんでしょうかね。価格変動が激しいのでリスクも伴いますが、うまくいけば儲かるところもあると思います。ハイリスク・ハイリターンな商売であると筆者は思うのですが。

 しかしながら、11月でパソコン市場の景気は底が来たかもしれません。12月のボーナス商戦は好調のような感じがあります。また1月から3月にかけては、年度末ということもあり、企業系の購入が増えてくると予想されますから、景気は上がっていくのではないかと筆者は期待しています。

●相変わらず好調なノートパソコン

 景気が悪くても唯一好調な商品はノートパソコン。特定機種が中心となりますが、売れる機種は飛ぶように売れる。どの機種も品不足に近い状況です。PC98-NXもノートパソコンは好調のようです。デスクトップはいまいちですが……。

 しかしよく売れるのはLibrettoシリーズ。ミニノートの分野では本当に圧倒的な強さを誇っています。なぜここまで売れるのか逆に疑問なほど。対抗機種のNECmobio-NXは液晶がSTNというのが悪いのかいまひとつ。Let's note miniも売れるのですが、品不足状況はずっと続いています。

 筆者はVAIO PCG-505を買おうか非常に悩んでいます。この機種も非常に人気が高いのです。前回の連載にも書きましたが、何よりもかっこいいです。筆者の場合は財布と相談中でしょうか。(^^;

●Win95 OSR2の話題

 Windows 95のOEM版、OSR2ですが、11月の末頃から、OSR2.1にInternet Explorer 4.0が組み込まれた形で出荷されてきました。これはOSR2.5ではありません。
 当初、OSR2.5はOSR2.1にIE4.0が付いてきて一部機能アップがあるだけ、という噂もあったのですが、実際にはOSR2.1にIE4.0が付いてきた新バージョンが来てしまった。それではOSR2.5はどうなるのでしょうか?
 実際に日本語版が出荷されるのは'98年になりそう。どんな変更が加わってくるのか気になるところです。

 来月の連載は12月のボーナス商戦の報告と、売れた商品を再度確認してみたいと思います。お楽しみに。

[Text by AMUAMU]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp