AMUAMUの「アキバの楽屋から」第9回

秋葉原

月1回連載:ショップの側から見た秋葉原事情

AMUAMUの「アキバの楽屋から」 第9回

マル秘!? Windows95 OSR2.1の正しい買い方

TEXT:AMUAMU


 「アキバの楽屋から」は、秋葉原のパソコンショップ店員である「AMUAMU」が、ショップの側から見た秋葉原事情を、月1回お送りするコーナーです。Web版ではメール版掲載から約1週間後に公開します。(編集部)


■再び購入熱上がるOSR

 Windows 95の次のバージョンであるMemphisがWindows 98という名前となり、リリースが'98年にずれ込むことがはっきりしました。さらに、発売が'98年の6月末以降になることが追って公表されました。

 このような状況下で、一時期下火となっていたWindows 95のOEMバージョンであるOSR2.1の購入熱が上がってきたようです。この連載の第2回「MSの秘密?OSR2を一般売りしないわけ」でも取り上げましたが、たった半年ぐらいでかなり状況が目まぐるしく変わっているので、今回再びOSRを取り上げたいと思います。
 以下では半年前の状況と現在の状況を比較したり、第2回掲載後に判明した情報も述べますので、第2回の連載を読んでいない読者の方は、予備知識として読んでいただければ幸いです。

第2回:「MSの秘密?OSR2を一般売りしないわけ」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970305/akiba2.htm


■OSRの現在のバージョンは2.1

 この連載の第2回でOSR(OEM Service Release)について取り上げた時点は、OSRのバージョンがちょうど2から2.1に移行する時期にあたります。当時、一部の大手メーカーがノートPCなどにいち早く2.1を導入していたと記憶しています。
 現在ではOSRのバージョンは、ほぼ完全に2.1に移行済みです。ちなみにOEM向けのパッケージはバージョンが上がっていますが、一般向けに販売されているWindows 95はあまり変わっていません。

 2から2.1になったことの一番の目玉はUSBのサポートです。USBのドライバが入っており、各種USB機器が使える“はず”です(まだUSB機器が出揃っていないので使えるとは断言し難い)。それまでのOSRや一般向けに販売されているWindows 95ではUSBは使えませんし、ドライバもマイクロソフトから正式には配布されていません。
 このほか、OSR2.1では細かいところで変更がなされていて、ダイヤルアップでインターネットに繋げる機能など各種ソフトが強化されており、実際の使用面での便利さも向上しています。

 バージョンが上がり、USB対応を初めとした機能アップがいくつもある。しかもWindows 98のリリースが伸びた。こうした事情により、OSR2.1に魅力を感じる従来ユーザーが多いのではないかと思います。


■USBの機能は現在必要か? 

 魅力的に移るOSR2.1ですが、実際に従来ユーザー(特に自作ユーザー)にとって必要なものなのでしょうか?
 やはり一番気になるのはUSB対応がどうなのかということでしょう。現在日本で実際に手に入るUSB対応機器で代表的なものとしては、NECのAtermIT65Proが挙げられます。これが出たときに「一気にUSB機器が出るか?」と思ったのですが、そうはいかなかったようです。なぜか他のメーカーからはろくに出てきません。

 その理由としてはやはり、OSR2.1を持っているユーザーしか使用できないということが一番に挙げられるでしょう。AtermIT65Proは普通のシリアル接続もサポートしているのでUSBが使えないユーザーでも問題ありませんが、他の機器となるとそうもいかないでしょう。キーボードをUSB接続と従来の普通の接続両方をサポートするとなると価格は倍になってしまい、売れなくなる可能性があります。マウスなども同様です。

 USB対応機器として出てくるものの多くは基本的に低価格な製品です。価格が上がってしまうと、魅力が感じられなくなってしまいます。

 もっとも、OSR2.1が手に入りさえすればUSBが利用できるかというと、まだそうも言いきれないようです。OSR2.1のユーザーでトラブルが起きている人もいます。まだまだドライバは開発途上という感が否めません。

 しかし、マシンやマザーボードには以前からUSBのコネクタだけは付いています。「動かしてみたい。使ってみたい」と思うのが人情でしょう。また、年末にかけてマウスやキーボード・USBハブ等の一部商品が流通してくるようです。そうなれば、余計に使ってみたくなります。やはりMemphisことWindows 98が出るまで我慢しなくてはならないのでしょうか?

 USBに関しては、NECのPC98-NXのようにUSB ONLYのマシンが出てきていることから、今後の対応製品の状況がどうなるか、正直いってつかみにくくなっています(筆者は、NECのUSBに対する積極性は素晴らしいと思います)。手っ取り早いのは、OSR2.1が誰でも気軽に買えるようになることなのですが、なかなかそうもいかないのが難しいところです。


■OSRの単体販売は基本的に出来ない

 第2回の連載の時にも書きましたが、ショップはOSRの単体販売は認められていません。OSRに付属している「ソフトウェア使用許諾契約書」上に書かれている該当部分の要旨は次のようになっています。

「新しいコンピュータシステムあるいはコンピュータシステムコンポーネントに付随していない場合使用できない」

 このように、明記してあります。販売店もこの契約書に縛られていますので、契約上使用できないものを販売するのは問題があるわけです。単体での販売はもちろん、CD-ROMドライブやHDD・マザーボード等の機器とOSRの2点セットにしても結局は契約書に違反しており、たとえショップで購入したものでも、ユーザーは使用する権利を持たないわけです。

 敢えて使用した場合には、契約書違反となり、強く言うと販売しているショップも使用しているユーザーもマイクロソフトに訴えられる可能性があります(実際には、訴えられることはそうはないと思いますが)。

 ちなみに、「コンピュータシステムコンポーネント」とはDOS/Vショップでよく販売している「組立キット」もしくは「DIYキット」などの名称で販売されているようなパーツのセット品のことを指すと考えるのが一般的ではあります。
 DECなどのようなメーカーでも、HDDやメモリが乗っていないマシン本体と、オプションのメモリやHDDを購入し、OSRをバンドルしてユーザーに組み立ててもらうキットの販売をしていますので、「コンピュータシステムコンポーネント」というのは、そういったケースを想定して書かれていると思われます。
 ところが、ここに抜け穴があるのです。


■マル秘!? OSR2.1の最低限システムでの購入法

 ※この原稿をメール版に掲載した後、マイクロソフトの見解が分かりました。注記をご覧下さい。

 OSR2.1を手に入れたい。このユーザーの欲望を満たすため、契約書に違反せず最低限のパーツを購入することでOSR2.1を手に入れる方法が、連載第2回を掲載した後に分かりましたので、PC Watch読者へ秘密に教えたいと思います(これだけ公なところに書いてなにが秘密だ(^^;)

 前記したようにOSR2.1は「ソフトウェア使用許諾契約書」の以下の条項に縛られているため単体では購入・販売出来ません。

「新しいコンピュータシステムあるいはコンピュータシステムコンポーネントに付随していない場合使用できない」(要旨)

 ポイントは「コンピュータシステムコンポーネント」のところです。このコンピュータシステムコンポーネントとは具体的には何を指し示すのでしょうか。これも契約書上に明記されています。

「記憶装置やマザーボードなどのコンピュータシステムコンポーネント」(要旨)

 この文章の最初の2項目がポイントです。具体的には、「記憶装置やマザーボードなど」としか明記されていないため、専門家に聞くと法的な解釈をした場合、『記憶装置とマザーボードがあればコンピュータシステムコンポーネントと見なしても問題がない』ということです。

 気になるのは、最後に付く「など」という言葉ですが、この言葉は非常に曖昧であり、法的に縛られるものではないというのが専門家の意見です。少々拡大解釈気味で、ギリギリの線であるのは確かですが、この解釈に従えば、記憶装置とマザーボードがあれば問題ないといえそうです。

 さて、このうち「記憶装置」とは何を指し示すのでしょうか? パソコンを動かすときに必須な記憶装置といいますと代表的なものは「メモリ(RAM)」もしくは「ハードディスクドライブ(HDD)」だと思います。どちらも「記憶装置」にあてはまりますが、ソフト自体を記憶するという意味合いとも解釈出来るため、「ハードディスクドライブ」と考えるのが順当だろうとのことです。
 そこで、まとめると以下のようになります。

『ハードディスクとマザーボードさえ購入すればOSR2.1は契約書に違反せず買える(販売できる)』

 ということです。この形で販売してマイクロソフトからクレームが来たという話は聞きません(他のセットではクレームが来る)。ユーザーとしてもショップの販売方法に目を配り、最低限マザーボードとHDDがセットになっているOSR2.1を購入するようにした方が良いと思います。ちょっと価格が高くなってしまいますが、契約に違反して使用するより、正しい購入方法を選択して堂々と使いたいものですね。

注:マイクロソフトの見解が判明!

 上述してあるのは、専門家に相談した場合の法的解釈ですが、本稿をメール版に掲載した後、筆者がマイクロソフト担当者に確認し、マイクロソフトの見解が得られました。それによると、「マザーボードとOSR2.1のセットであれば、問題ない」ということが分かりましたので、ここにお知らせします。


■■9月の秋葉原ショップ動向■■

●消費が冷え切っている…

 寒い……かなり寒い。消費が冷え切っているため、売れ行きは伸びがない。目新しい技術や新製品がなく、ショップとしても、何を中心に据えて販売すれば良いのか困ってしまいます。こういう状況になると、いつも厳しい秋葉原価格競争がさらに激化してきます。少しでも売り上げを伸ばそうとするため、必然的に価格競争が始まるわけです。そうすると数を売っても売り上げは伸びない、利益は削られる。結局はショップ同士の潰し合いの様相となってくるので、この寒い冬の時代を乗り切れすに脱落していくショップが出てくるのではないかとも思われてきます。ユーザーとして見たときは安くなることは喜ばしいですけどね。(^^;

●Memphisが遠ざかっていく…

 MemphisことWindows 98の発売がどんどん遠ざかっていきます。年末に間に合わないと聞いたときには「3月の年度末商戦があるからそれまでの辛抱」と思っていたのですが、さらにそれにも間に合わない。ひぃ~何をネタにして売れば良いのかわからないぃ~。ショップはメーカー(特にマイクロソフトやIntelなど)にネタを提供してもらわないとかなりつらいですね。「ネタが無い=ユーザーも大金を出して買いたいと思うものがない」ということですから。

●年末にかけての展望

 新製品として期待しているのは、Intelが出す次のチップセット「440BX」です。どうやら当初の予定より早まりそうで、場合によっては年末商戦に間に合うか?という状況です。外部クロック100MHzの早さはどのくらいになるのか楽しみではあります。しかし、当初はかなり高めの価格設定で来るのではないかと予想されます。

 また、同じくIntelが従来のCPUの価格を値下げするのではないかと思われます。10月末もしくは11月は、年に数回あるIntelの値下げ発表時期にあたりますから、どのくらい下がるか楽しみではあります。

 そして今回取り上げたマイクロソフトのOSRですが、次のバージョンであるOSR3(?)の出荷が迫っているような感じがあります。基本的にOSRの新バージョンについては発表や案内などは出ないので、OSR2.1を発注したはずなのにいつの間にか新しいバージョンに切り替わっているというのが通常です。ですから、いつからOSRの新バージョンが出荷されるとか、どのマシンに新バージョンが搭載されている、などということは出荷されて1~2ヶ月経ってからでないと、ユーザーには分からないと思います。

 もしかしたら年末商戦にはOSR3(?)が出てくるかもしれません。そうなると少しは面白く、そして売れる要素が少しは出てくるのですが……淡い展望をショップは胸に秘めています。

[Text by AMUAMU]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp