後藤弘茂のWeekly海外ニュース
【ニュースサイトWatch】

Intelが2種類のローコストPentium IIを'98年後半に投入 ほか


●Appleがジョブズ路線を発表

 先週末のニュースサイトは、今週月曜日の米Apple Computer社の戦略発表の話題で持ちきりだった。このメールが届く頃には、すでに米国で発表が行われているはずだが、とりあえず、どんなウワサが流れていたかを振り返ってみよう。簡潔に一覧表にしてくれているのは「Pros and Cons of the Jobs Blueprint」(Businessweek)で、それによると、PowerPC 750搭載新ラインナップ、Dell Computerライクの直販体制、それにOracleのサーバーソフトを使ったNetwork Computer「Macintosh NC」の発表などが予想されていた。この内容は、各サイトでほぼ共通している。しかし、なかには「Is Apple Thinking Intel-ligent?」(TechWeb,11/7)のように、Intelチップ版Mac OSというウワサもあるという報道もあった。

 今回のAppleの発表は、ジョブズ体制になってから初めての具体的な戦略発表。つまり、ジョブズ路線のお披露目ということになる。「Apple plans to sell online Direct sales bold but risky」(San Jose Mercury News,11/8)によると、そのためにジョブズ氏は、わざわざ'84年に彼がオリジナルMacintoshを発表した会場を舞台に選んだという。さて、ジョブズ氏は、昔の神通力を取り戻し、Apple社員やマスコミ、Apple支持者たちを熱狂させることができるだろうか。


●Intelは2種類のローコストPentium IIを'98年後半に投入

 次は、Intel関連ニュース。先週話題になったのは、なんと言ってもPentium IIの'98年のロードマップだ。Intelは、明らかにサブ1,000ドルPCの潮流という現実を直視し、それに合わせたロードマップの大幅変更を行ったようだ。最大のポイントは、これまでIntelのロードマップでは見かけなかったサブ1,000ドルマーケットに向けたMPUを設定。そして、'98年の後半に、Pentium IIをそのクラスにまで落とし込むことにしたことだ。ちなみに、今年の夏までの公式ロードマップでは、そのあたりのポジションにはまだMMX Pentiumが座っていた。

 では、このローコスト市場に向けたPentium IIはどんな製品になるのか。「Intel Plans 266MHz Pentium II For Low-Price PCs」(COMPUTER RESELLER NEWS,11/5)によると、IntelはPentium II 266MHzで2次キャッシュを省いたバージョンを投入するという。これは、'98年の第3四半期に発売するもので、サブ1,000ドルと1000~1,500ドルクラスのPC向けだそうだ。このキャッシュレス版Pentium II 266MHzも、従来通りSlot 1(Pentium II用のスロット)のを使うが、これまでのPentium IIのようにカートリッジで覆わないため、ずっと薄くなるという。おそらく、先週このコーナーで伝えた「Slit 1」という変な新しいコネクタ名がニュースに出てきた理由はここにあるのだろう。しかし、Slit 1という名前ではどうやらなさそうだ。また、Intelは、第4四半期には今度はPentium II 300MHzで、2次キャッシュを同じダイ(半導体本体)にインテグレートしたバージョンを、1,000~1,500ドルクラスのPC向けに投入するという。

 この新しい2バージョンのPentium IIを投入する理由はコストだ。サブ1,000ドルPC向けには100ドル程度のMPUしか採用できないが、現在のPentium IIではそこまでコストを落とせない。それは、「Intel plans low-end version of Pentium II」(Computerworld,11/5)によると、今のPentium IIの場合、カートリッジにMPUと一緒に入れている2次キャッシュ用SRAMチップがあるためだという。Intelでは、現在他のメーカーから購入しているこのSRAMを省くことで、製造コストを100から80ドルにできると、この記事では指摘していう。ただし、その場合は、IntelがこれまでSocket7(Pentium系用ソケット)に対してのSlot 1の優位点として来た2次キャッシュバスの分離という利点はなくなることになる。パフォーマンス的には今のPentium II 266MHzよりも下がると見られている。となると、2次キャッシュインテグレート版Pentium IIまでのつなぎなのかも知れない。

 しかし、大容量のSRAMの統合してなおかつダイサイズを小さくして歩留まりを上げるというのは、結構ハードルが高いと業界では言われている。Intelの突然の2次キャッシュ統合に、業界は興味津々というところだろう。ちなみに、Intelはキャッシュインテグレート版Pentium IIのSRAM容量や製造プロセス技術などはまだ明かしていないようだ。


●Pentiumバグのニュースが再び

 さて、Intelと言えば、Pentiumのバグのニュースがまたネットを駆けめぐっている。「Pentium bug surfaces」(CNET NEWS.COM,11/7)や「The Net reacts to Pentium bug」(CNET NEWS.COM,11/9)が報じているものだ。それによると、どうやらPentiumの正式のインストラクション以外の命令で、PentiumとMMX Pentiumをフリーズさせることができるらしい。これが本当なら、通常のソフトでは何も問題は生じないが、その命令を入れ込んだ破壊プログラムを作ることが可能ということになる。

 Intelにとっていやなのは、この話がまたまたネットでどんどん情報が広がりつつあるらしいこと。'94年に、Pentiumの浮動小数点演算ユニットに不具合があった時には、ネットでどんどん話が広まり、それに対してIntelが初期の対応を誤ったために、最終的にチップの交換を申し出なければならなくなってしまった。それにこりたのか、こないだのPentium IIバグ騒動の時には、できるだけ迅速に対応をした。まあ、今回は過去の不具合とはタイプが違う問題のようだが、どうさばくのだろう。


●SunもIA-64サポートへ?

 もうひとつIntel関連のニュースを続けよう。「Sun Expected to Announce Intel Collaboration」(InformationWeek,11/7)によると、米Sun Microsystems社も、同社のUNIX「Solaris」をIntelのIA-64プロセッサに移植するパートナーシップを今週発表する予定だとという。これが本当なら、Hewlett PackerdとDECに続き、今度はSunも自社UNIXをIA-64に移植するということになる。もちろん、Sunの場合は、SPARCを捨てるというわけではないだろうが、それにしても、IA-64は人気がある。IA-64がサーバー市場ではかなり強力なチップだと、認められているということなのだろうか。


●IBMが新技術を使った16.8GBのHDDを発表か

 IBMが16.8GBの3.5インチHDDをCOMDEXで発表すると報じているのは「IBM UnveilsPowerful Disk Drive, Confirms Plans to Join Two Units」(The Wall Street Journal,11/10、有料サイト、 http://www.wsj.com/ から検索)だ。これは、以前IBMが発表したGiant Magneto-Resistive(GMR)ヘッドという技術を使ったもので、記録密度を一気に8倍に高めてこの容量を達成したという。価格は895ドル。デスクトップも、いよいよ10GB超の時代に入るのか。


●Microsoft包囲網に上院とテキサス州が加わる。

 今週も、Microsoft包囲網のニュースは続く。今回、Microsoft攻撃に加わったのは米国上院とテキサス州。「Hatch eyes Microsoft」(The Seattle Times,11/4)によると、上院司法委員会で議長をつとめるオリン・ハッチ議員は、インターネットと反トラスト法に関するヒヤリングで、Microsoftを徹底的にターゲットにしたらしい。Microsoftにとって不運なのは、ハッチ議員がNovellのお膝元ユタ州の選出だったことだという。まあ、でももともとの原因はMicrosoftの側にあるような気がする。

 一方テキサス州はMicrosoftを、同社に対する反トラスト法の疑いに関する調査を妨害したとして提訴した。「Texas Sues Microsoft For Antitrust Interference」(COMPUTER RESELLER NEWS,11/7)などが伝えているが、ようはMicrosoftの顧客企業は、反トラスト法の調査に関してMicrosoftに事前に報告するようにという秘守義務契約を結ぶことを要求しており、それがテキサス州の調査に対する情報提供の妨害になっているというもの。テキサス州の件に関しては以前このコーナーで「Microsoftに新たな反トラスト法捜査の手が」と題して扱ったが、Microsoftに対しての調査を行っている州は他にも何州かあり、Microsoftにとってはこのまま火が広がって行くというのは、結構悪夢のシナリオに違いない。それでも強硬姿勢を崩さないところがなかなかMicrosoftらしいが。

【参考URL】
□テキサス州のニュースリリース
http://www.oag.state.tx.us/WEBSITE/NEWS/RELEASES/971107cs.htm
□Microsoftのニュースリリース
http://www.microsoft.com/corpinfo/press/1997/Nov97/NDAS.htm


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('97/11/11)

[Reported by 後藤 弘茂]


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