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後藤弘茂のCOMDEX Fall '97基調講演レポート

'97/11/17~21(現地時間)開催

 COMDEX Fall '97の開幕を明日に控えた16日夜7時から、米Microsoft社会長ビル・ゲイツ氏による基調講演が開始された。今回はこの基調講演が前夜祭として行なわれたため、例年通り初日からの参加日程で組まれている日本からのパッケージツアーではほとんど参加できなかった。PC Watchでは「Weekly海外ニュース」でおなじみの後藤 弘茂氏によるレポートをお届けする。(編集部)



●「ゲイツ氏、海兵隊将校とバスケットボールスターをステージに呼ぶ」

基調講演  「これはどこかで見た憶えが……」
 米国ラスベガス、COMDEXの初日(展示会前夜)の午後7時から始まった、Microsoft会長兼CEO、ビル・ゲイツ氏のキーノートスピーチで、しょっぱなからこう感じた業界関係者は少なくなかったに違いない。じつは、今回のスピーチの前半のまくら部分で使われたビデオやトークの大半は、9月に開催したソフトウェア開発者向けカンファレンスPDC(Professional Developers Conference)などで使ったもの。もちろん、PDCは開発者向けで、COMDEXは一般向けと、リスナーには大きな違いはあり、ほとんどの聴衆にとってはこれでも新鮮だったにちがいないが、Microsoftが今回のスピーチで新味を出すことにそれほど力を入れなかったのは確かだ。

 じつは、新味がなかったのはイントロだけではない。キーノートスピーチの内容も、ジョークの部分を取り除けば、ゲイツ氏がこの1年間語ってきたことの総まとめ的な雰囲気で、大きなサプライズはなかった。もっとも、それではゲイツ氏のスピーチはなにも面白みがなかったかというとそうではなく、Microsoftのビジョンのひとつひとつに対してゲストを呼び、具体的な例を紹介するという演出は、それなりにわかりやすく、観客にも受けていた。

海兵隊  まず、ゲイツ氏は、コンピュータネットワークを神経のように張り巡らし、組織を生物のように把握できるようにする「digital nervous system」のビジョンを説明。その例として米海兵隊の少佐を壇上に呼んだ。少佐は、海兵隊のイントラネットシステムなどを紹介。また、海兵隊ではあらっぽく扱っても大丈夫な頑強さが情報機器にも求められているとして、ヘビーデューティ仕様のPCを“投げ捨て踏みつけ”るというデモを見せた。また、Windows CEのH/PCで戦略地図を表示、そのデジタル地図上に表示された部隊にペンにより指示するだけで部隊に命令を伝達できるというシステムを説明した。


ピンクジープ  続いて、ゲイツ氏は今後はスモールビジネス(中小企業)市場が情報産業にとって成長する市場になるという見方を示し、その例として、ジープツアーを開催する「Pink Jeep」を紹介した。複雑なツアーのスケジュールの管理などにPCを利用して、効率をアップしているという内容だった。
バスケット選手  つぎに、ゲイツ氏は、Webを取り入れることで個人の生活が変わる「Web Life Style」について説明。その例としてバスケットボールのスター選手Kareem Abdul-Jabbar氏をステージに上げた。ゲイツ氏はAbdul-Jabbar氏を見上げながら、Abdul-Jabbar氏のホームページを紹介。このデモは、スター選手の知名度で、大きな拍手を呼んでいた。
 このように、具体的な製品や戦略の説明ではなく、事例とおおまかなビジョンの説明がほとんどを占めた今回のスピーチのなかで、具体的なMicrosoftの製品の紹介にもっとも近かったのはWindows NT 5.0に関するデモだった。ゲイツ氏は、Windows NT 5.0の「もっとも重要なことはTCOの削減」だと語り、そのための技術のひとつ、インテリミラーリングを実際に試して見せた。まず、1台のPC(Windows NT 5.0β)でローカルのディスクにファイルを作成、その後、そのマシンがクラッシュして使えなくなったという状況を設定した。次に、違うPCを持ち出し、それにネットワークなどを接続、ログオンすると、サーバーによって自分の設定が復元され、サーバー上にミラーリングされていた自分のファイルも復元されるというもの。もちろん、こうした過程でユーザーはミラーリングを意識する必要はない。

 じつは、2ヶ月前のPDCで、Microsoftはこのインテリミラーリングのデモで、一部失敗、うまく働かないという失態を見せてしまった。Windows NT 5.0の売り物のフィーチャなのに、不安が大きいことを示してしまったわけだ。今回は、その雪辱でとりあえずはたした。

 さて、このように、今回のキーノートでは、ゲイツ氏はもっぱらおおまかなビジョンと事例の説明に終始し、司法省やJavaといった、Microsoftを取り巻く重大な問題についてはジョークの中でしか触れなかった。これは、つい先週の「Microsoft Share Holders 97 Meeting」のトランスクリプトの中で、Microsoftバッシングの雰囲気を“魔女狩り”だと、激しく非難したゲイツ氏と同じ人物とは思えないほどだ。もちろん、Sun Microsystemsや司法省に対する攻撃的な部分もスピーチのなかにもあったのだが、それは自虐の部分を巧みに取り入れたジョークの中だけで、正面切っての攻撃はなかった。

 肩すかしと感じるほどおとなしかったゲイツ氏のスピーチは、Microsoftバッシングを少しでも抑えるための一般向けの顔ということなのだろうか。

□COMDEX Fall '97のホームページ(英文)
http://www.comdex.com/comdex/owa/event_home?v_event_id=38

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp