AMUAMUの「アキバの楽屋から」第8回

秋葉原

月1回連載:ショップの側から見た秋葉原事情

AMUAMUの「アキバの楽屋から」 第8回

Intel 440LX & AGP登場!
ショップの救世主となるか?

TEXT:AMUAMU


 「アキバの楽屋から」は、秋葉原のパソコンショップ店員である「AMUAMU」が、ショップの側から見た秋葉原事情を、月1回お送りするコーナーです。
Web版ではメール版掲載から約1週間後に公開します。(編集部)


■正直言って売れ行きが悪い!

 8月は売れ行きがあまり良くありませんでした。夏バテというより、新製品が全くないに等しい状態だったのでユーザーも様子見状態なのかもしれません。パソコンショップ業界全体が低調なのはいくつかの報道機関でも言われていますが、そのとおりのようです。今年の1月~3月のような勢いがまったく感じず、ユーザーの購買意識もいまいち高くありません。今までのような急激な伸びはなくなってきた状況です。

 またCPU、メモリを始めとして全てのパーツが値下がりしているので、前年比で130~150%の売り上げ件数をこなして、やっと'96年並みの売上金額が立つという状態ですから、ショップにとってはかなり厳しいところかもしれません。


■品不足のダブルパンチ

 CPUとHDDの品不足も目立つ月でした。CPUはAMDが特に深刻で、すでに幾つかのところで報じられたように、歩留まりが悪いために思うように生産量が上がらないようです。そのあおりが秋葉原のショップにも来ています。またIntelのCPUは秋・冬商戦(米国ですとクリスマス商戦)に向けて大手メーカーが、パーツの確保に入っているためか品不足気味でした。IntelのCPUと同じことがHDDにもいえます。メーカー製パソコンによく使われる2GBから3GB前後のIDE HDDが少ないこと少ないこと。確保するのに必死という状況です。

 売れ行きがいまいちの中で、数少ない売れ筋商品が品切れしていると、売上もどんどん悪くなります。「売れ行きがいまいち」+「品不足」のダブルパンチという状態でした。


■ Intel 440LX & AGP登場!

 そんな低調な8月の終わり、大きな目玉商品となるIntel 440LXチップセットとAGP(Accelerated Graphics Port)が登場してきました。「大きな目玉商品となる」と前回書きましたが、どちらかと言えば「目玉商品となって欲しい」という願望の方が強いかもしれません。(^^;
 しかし、そんな440LX & AGPも、目玉商品となりショップの救世主となるには、まだ力不足が否めません。


■440LX & AGPは現時点では救世主になれない!

理由その1:OSの未対応・相性

 まずAGPがMemphisことWindows 98を前提とした仕様(というかマイクロソフトの対応がまだ)のため、パフォーマンスが出てこないことが挙げられます。現時点ではIntelの提供するドライバで動かすことしか出来ません。またこれに関係することとして、相性問題が発生しやすいです。現に、一部マザーボードとAGP対応ビデオチップに相性があり、動かないという例はすでに報告されていたりします(ドライバのバージョンアップですぐ解決すると思いますが)。とりあえず筆者はnVIDIAのRIVA128を採用したAGPビデオカードがお勧めですね。相性問題も現時点で聞きませんし、何よりその素晴らしいパフォーマンスは特筆に値します。このチップはある超大手メーカーも採用することが決まっているようですし、一押しですね。

理由その2:大手メーカーが440LX採用したパソコンを出さない

 理由のその2としては、大手メーカーが440LXとAGPを搭載したパソコンを440LXの発表と同時に出していない、ということが挙げられます。発表と同時に採用したパソコンのリリースを流したメーカーは直販系メーカーのDELLとGateway2000のみ。大手メーカーであるNEC・富士通・IBM・COMPAQ等は静観しています。
 先日発表があったノート用のMMX Pentium 233MHzのときは各社一斉に新製品を発表しているのと比べて、この差は……。

 やはりこれはOSの対応がまだということと、Pentium II + 440LX + AGPの組み合わせは価格が高めになり、パーソナルユースに向かないということでしょうか。
 大手メーカーが採用しないと、一般ユーザーへの440LXチップセットとAGPという言葉の広まりが悪く、知らない人が多いという状況となります。大手メーカーが採用した場合、それを前面に出して雑誌広告やテレビ広告など各種メディアを通して広まるため、一般ユーザーの抵抗感が非常に小さくなります。ショップや小さなメーカーがどんなに頑張って広告を出しても、大手メーカーのテレビ広告一本にはかなわないと思います。

 たくさんの人に440LXやAGPという単語が知られれば、上級ユーザーでなくてもショップにAGP搭載パソコンを求めて買いに来たりするわけです。または、パーツのアップグレードを考えたりするわけです。大手メーカーが採用をしなかったのは、ショップにとってかなりのマイナス要素ではないかと思います。

理由その3:AGPビデオカードの種類が少ない・出荷量もまだ少ない

 もう一つの理由は、選択肢となるAGPビデオカードの種類がまだ少ないということです。さらに、ビデオカードに載るビデオチップの種類だけで言えば、まだほんの数種類しか出荷されていません。選択肢が少ない中ではユーザーもまだ手が出しにくでしょう。
 種類が少ないのは相性問題が多かったり、ビデオボードメーカーの技術的蓄積が足りなかったりするのが理由ではないかと思います。また、チップの出荷量が少ないのは、大手メーカーがAGPチップを採用した本体を出さないため、気合を入れた生産がまだ出来ない状態ではないかと思われます。

理由その4:一番の理由。Pentium II + 440LX + AGPはまだ高い!
 最後の理由は価格。440LXとAGPを搭載したパソコンはPentium IIを搭載する必要があり、必然的に販売価格も高くなります。DOS/Vショップでの主力はPentium IIに移ってきていますが、まだまだMMX Pentiumも売れますし、AMD K6やCyrix 6x86MX等のSocket7CPUがあります。AGPという規格はビックタイトルなのですが、Pentium IIという限られた市場だけに特化しているのがもったいない。AGPビデオカードもすでに1万円前半の販売価格からあり、低価格なパソコンにも十分搭載可能です。IntelのPentium IIへ移行させようという戦略はわかりますが、市場はまだ付いていけないというのが正直な感想です。
 しかしながらSocket7 + AGPを実現するマザーボードもじきに出てくるでしょう。これがどれだけ早く出てくるかによってはAGPフィーバーもありえるかもしれません。



■このまま低調なままなのか?

 消費税が引き上げられた今年の4月以降は低調な月が続いています。去年の同じ時期より売っても売り上げは伸びない。パソコン販売業界のバブルは去ったのかもしれません。

 Windows 95の次のバージョンもWindows 98として来年になってしまい、今年はパソコン業界にとって厳しい年なのかもしれません。ですが来年はWindows 98やIntel440BXチップセット等など、新しいものがたくさん出てきます。パソコンショップにとって今年は我慢の年なのかも知れませんね。

[Text by AMUAMU]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp