AMUAMUの「アキバの楽屋から」第2回

秋葉原

新連載(月1回更新):ショップの側から見た秋葉原事情

AMUAMUの「アキバの楽屋から」 第2回

MSの秘密? OSR2を一般売りしない理由

TEXT:AMUAMU

 連載2回目の「アキバの楽屋から」は、秋葉原のパソコンショップ店員である「AMUAMU」が、ショップの側から見た秋葉原事情を、月1回お送りするコーナーです。
 メール版では毎月月末掲載予定、Web版ではメール版掲載から数日後に公開します。(編集部)


■OSR2とは?

 マイクロソフトが一般売りしている製品ではないのですが、Windows 95の新しいバージョンとして、OSR2と呼ばれるものがあります。'96年の末から'97年の始めにパソコン雑誌で多く取り上げているので、ご存じの方も多いかもしれません。OSR2とは「OEMSERVICE RELEASE2」の略です。パソコンメーカーが自社のマシンにWindows 95をプリインストールして、出荷する時に使われる商品です。俗に「OEM版」などと呼ばれます。多くのパソコンショップのショップブランドマシンでも使われています。

 OSR2は従来のWindows 95に比べてかなり機能アップを図っています。FAT32やInternet Explorer 3.01などの標準搭載、PCカード関連機能の強化など、機能アップの内容を事細かに書いているときりがないほど多いのですから、それらは雑誌等の記事に任せます。興味のある方はインプレスのDOS/V POWER REPORT 1月号などを読むと良いでしょう。ただし、雑誌等は「一般公開しないのはなぜだろう?」のように書いている場合が多いです。多くのユーザーも欲しがっているかもしれません。しかしながら筆者は販売店側の立場として考えますと、アップグレード版や製品版のように提供しなくて正解だと思っています。なぜそう思うかは後述します。


■新しい機能から生まれた弊害

 OSR2には雑誌等があまり取り上げていない問題点があります。それらの問題のいくつかを列記したいと思います(これ以外にも多少の問題を含んでいます)。

 1)ちょっと古いマシンだと動かない場合がある。
 2)古いドライバをインストールしても動かない場合がある。

さらに、FAT32を利用していると、以下のふたつの問題があります(*編集部注1)。

 3)OSR2 と Windows NTを一台のマシンで共存できない(Dual BOOTができない)
(*注1)  4)ディスクユーティリティを中心に動かないソフトが少ないながらある。

このような問題は新しいOSが出れば必ず伴うことで、Windows 95が出たときも同じような問題が出たのですが、OSR2は今までに比べて顕著に問題が出る傾向があります。
 まず1)と2)の問題ですが、これは理由がはっきりしています。OSR2はWindows 95がプリインストールされている新しいパソコンにインストールされるOSですから、古いパソコンで動かすことを想定する必要がないわけです。

 3)の問題は従来のWindows NTが新しい機能であるFAT32をサポートしていないため、動きません。Windows NT 4.0と共存して使いたいユーザーも多いと思うのですが……。
 4)の問題もFAT32に起因することが多く、従来のソフトがFAT32へのアクセス方法を持っていないためです。これは時間が解決してくれる問題だと思いますが、古いWindows 3.1用ソフトやDOSのソフトでは時間では解決されない問題でしょう。

*編集部注1 メーカーの多くはFAT16フォーマットで出荷している。3)4)の問題は、メーカー出荷時のFAT16のまま使用する場合には気にする必要はない。
*注1 OSR2はFAT16(従来のモード)での使用も可能ですが、多くの利点がなくなってしまいます。FAT16ならばWindows NTも使用可能らしいですが未確認です。LIFEBOAT社のSYSTEM COMMANDER3 というソフトが3月末に発売される予定ですが、これを使えばFAT32でもOSの切り替えが可能らしいです。


■OEM向けという選択の利点

 上記のようにOSR2には歓迎される機能も追加されているのですが、その分問題も抱えているわけです。しかしながら問題の多くは古いマシン、古いソフトに起因する問題ばかりです。マイクロソフトは新しいマシンでしか動かさないことを想定している分、古いマシンとの互換性を捨てて、思い切って新しい機能を実装できたともいえます。これらの新機能が次のバージョンのWindowsであるMemphis(Windows 97?)で取り込まれる予定であることから、「実験」の意味合いも含んでいるのかもしれません。

 もし現在のOSR2をどのユーザーでも手に入れるような形にしたらどうなるでしょう?
 動かないマシンや問題が発生するマシンが多発し、マイクロソフトのサポートセンターはパンクしてしまうでしょう。またパソコンを作って販売しているメーカーやパソコンショップも、昔に売ったマシンやパーツへの問い合わせ等が殺到し、従来のサポートが出来るかどうか非常に疑問です。小さなパソコンショップにとっては死活問題になるかもしれません。これが最初に書いた「提供しなくて正解」と思う理由です。メーカーやショップはこういう問題も考えなくてはならないのです。

 このような事が容易に想像できるため、単品販売やアップグレード、アップデートなどの手段を提供するならば、新しい機能を取り込むことは出来なかったでしょう。マイクロソフトはOEM向けという限られた市場で、新しいハードウェアで動かすことを念頭にしたからこそ、新しい機能を取り込むことが出来るという判断をしたと想像できます。
 さらにOEM向けはマイクロソフトによるエンドユーザーへのサポートがありません。サポートはプリインストールして販売している、メーカーやパソコンショップが請け負うことになるのです。必然的にメーカーやパソコンショップは問題のない構成のパソコンを作り、インストールして販売することになります。筆者としてはマイクロソフトのこの戦略は正しく、理にかなっていると思います。


■OSR2は従来ユーザーは手に入れられない?

 しかしながらアップグレード等の手段が用意されていないことから、従来のユーザーからの反発があることは確かです。特にこれだけ雑誌等に書かれますと、手に入れたいと思うのが素直なユーザーの感想だと思います。従来ユーザーは次のバージョンのWindowsである、Memphisがリリースされるまで、現時点では新機能に触れることができないわけです。

 そういう隙間を狙って、OSR2を単品販売に近い形で隠れて販売しているパソコンショップが存在するようです。もちろんマイクロソフトが認めているわけではなく、OEM販売の契約に違反していると思われます。「単品販売に近い形」というのは、例えばCD-ROMドライブとOSR2をセットで販売していたりするわけです。マイクロソフトはもちろん認めていないやり方ですが、実際に存在し、マイクロソフトに見つからないようにゲリラ的に販売しているようです(*注2)。しかも普通より高額で販売している場合もあるようです。それでも売れてしまうというからユーザーの欲望は果てしない……。

 しかし気をつけてほしいのは、このような販売方法をとるショップに問題があるのはもちろんですが、ユーザーもOSR2に付いている「ソフトウェア使用許諾契約書」に違反することになるので、ユーザーにも問題があるのです。契約書にはきっちりと「新しいコンピュータシステムに付随していない場合は使用できない」と明記してあります。

 組み立てキットとして新しいマシンの部品一式と、OSR2をセットに販売しているショップもありますが、これは新しいシステムの販売と見なされるようで問題ないそうです。
 あとは新しいマシンを買ってそれで使うしかないですね。そのマシンをベースにし、アップグレードやパーツの入れ替え等をすれば問題ないと思いますけどね。それでも一つのマシンを買うわけだから高くつきますね。

*注2 筆者もメモリとOSR2をセットにして売っているお店を1回だけ見かけたことがあります。


■OSR2は今後どうなる?

 今販売されているマシンの多くはOSR2かもしれませんが、どうやらすでにOSR2.1という次のリリースバージョンが出ているようです。筆者はまだ見ていないのですが……これでやっとUSBがサポートされるようです。ですがUSB機器がまだ全くない状態なので意味がないかな?(*注3)

 さらにOSR3が出るという噂も耳に入ってきました。本当か嘘かさっぱりわからないですけど、出るとしたらなにが変わるのかな?(*編集部注2)

*注3 マシン側のUSBコネクタはたくさん見るのですけど、実際の機器はいつ頃出てくるのだろう?
*編集部注2 編集部よりOSRのバージョンについてマイクロソフトに確認したところ、「現行のOEMバージョンはOSR2.1で、USBをサポートしている」、OSR3については「まったく予定がない」との回答を得た。


■Memphisではどうなる?

 それでは次のバージョンであるWindowsであるコードネームMemphis(Windows 97?)ではどうなるのでしょうか? OSR2以降で追加された新機能のほとんどは、Memphisでサポートされると発表されている機能です。Memphisはアップグレード出来る手段が提供されると思われます。そうなるとOSR2で出た問題が再発し、今度はサポートに殺到するのではないかと想像できますが、リリースまでまだ時間があることからいくつかの対処が考えられます。  まず最初に考えられるのは旧機種で使えるようにマイクロソフトがMemphisを開発しているのではないかという事です。何らかの手段を提供していくのではないかと想像できます。
 もうひとつはサポート体制の充実ではないかと思われます。マイクロソフト自身もサポート体制をさらに強化し、さらにメーカーやパソコンショップへは、サポート体制を強化する必要性に迫られています。

 筆者個人としてはMemphis全体よりInternet Explorer 4.0の方が非常に気になります。先日Internet Explorer 4.0のデモを見たのですが、かなりすごいです。これは期待大です。まもなく英語版のβテストも始まるのではないかという話もありますが、早く出て欲しいものです。


■3月の販売店は?

 OSR2とは全然別の話になってしまうのですが、3月に入って決算セール時期となり秋葉原をはじめとして、まだ少し寒いのに、販売合戦が加熱してくるでしょう。特に3月で目玉になりそうなのはソフトでMicrosoft Office 97、ハードウェアですとintelの新チップセット 430TXを使ったマザーボードでしょうか。どちらも品不足が見込まれていますが、問い合わせ殺到中です。

 消費税も上がる前の最後のチャンスですし、私も自宅用に何か買おうかな?

[Text by AMUAMU]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp