【周辺】

プロカメラマン山田久美夫のデジカメレポート

対決!! 81万画素モデル


エプソン CP-500

VS

オリンパス C-820L


 いまや高画素クラスでは定番となった81万画素クラス。35万画素クラスに比べて約2.5倍ものデータ量を備えたハイクオリティークラスであり、価格的にも35万画素モデルに近いレベルになりつつあることから、このクラスのモデルを購入しようと考えている人も多いことだろう。また、今秋から登場するであろうメガピクセルクラスに比べ、データが軽いうえ、サービス判程度のプリントサイズならば十分な解像度を備えていることもあって、今後は“ポスト35万画素クラス”といった感じになりそうな気配もある。

 そこで今回は、この夏に登場し、人気を二分している81万画素モデル「エプソン CP-500」「オリンパス C-820L」の2機種の製品版を実際に日常的に使用した結果と、実写比較をレポートしよう。


●似通ったスペックと異なるコンセプト

 この両機は、スペック的に見て、かなり似通ったモデルといえる。実際にスペック表を比較してみると、驚くほど一致している部分が多い。というのも、この両機はいわば異母兄弟のようなもので、いずれもサンヨーとの共同開発に近い形で成り立っているモデルなのだ。もちろん、どの程度、自社開発をしているのかは知る由もないが、CP-200やC-800Lなどに比べると、自社開発比率はかなり高まっていることは、カメラの外観を見ても容易に想像が付くだろう。

 さて、オリンパスにとって「C-820L」は大ヒット作である「C-800L」の後継機であり、エプソンにとって「CP-500」は初の高画素モデルといえる。

 また、オリンパスはもともとカメラメーカーであり、コンパクトカメラの世界ではかなりのシェアを獲得していることもあって、同社にとってデジタルカメラはパソコンへの入力機器というよりも、近い将来訪れる“コンパクトカメラの置き換え”への布石といえる。

 それに対してエプソンは、世界屈指のプリンターメーカーであり、PC本体はもちろん、周辺機器に至るまでの幅広い商品展開を図っているメーカーだ。そのため、デジタルカメラはある意味で、プリンターの周辺機器といえる。さらに将来はプリンターとペアで、一般家庭への普及が見込まれるという視点に立脚した展開も図れるわけだ。その意味で、この両メーカーは、同じ81万画素モデルを発売していながらも、それぞれ異なった視点からの商品展開を図っているわけだ。



●サイズと携帯性は「C-820L」が圧倒的に有利

 さて、具体的に実機を比較してみよう。デザイン的には、いずれもなかなか個性的で、好みが分かれる部分がある。なかでも、「C-820L」のデザインはコンパクト機の延長上にあることは明確で、“カメラ”としてみて、違和感のないものに仕上がっている。もっとも、価格なりの質感を伴っているかというと、やや疑問を抱く部分もある。一方、「CP-500」はレンズ回りが個性的で、しかもこの部分がメインスイッチになっているうえ、レンズや光学ファインダーのカバーも兼ねているなど、実用的な側面もきちんと考えられている。

 サイズの違いは一目瞭然。CP-500に比べて、C-820Lは明らかにひと回りは小さい。デジタルカメラの場合、フィルム式カメラと違って、CCDの画素数(サイズではない)の違いがそのまま外寸の違いになるわけではないが、それでも「C-820L」の小ささはかなりのもの。実際に「富士 DS-20」(35万画素)と比較しても大差ないほど。もっとも、小さいのは横幅のみで、高さや厚みはCP-500とさほど変わらない。とはいえこれだけコンパクトになると、普段から気軽に持ち歩ける。まあ、若干重たい感じもあるが、それでも、携帯性の点では十分に合格点といえる。

 一方、「CP-500」は、元祖81万画素モデル「C-800L」に比べれば小さいが、やはり納得ずくでなければ持ち歩かないレベルのサイズといえる。もっとも、同社のCP-100に比べれば確かに小さくはなっているが……。

「C-820L」と「CP-500」 「C-820L」と「CP-500」 「C-820L」と「CP-500」
【上:C-820L、下:CP-500】



●持ち易さは「CP-500」がやや有利

看板
【CP-500で撮影】
看板
【C-820Lで撮影】
 では、実際にカメラをホールドした感じはというと、大きめのグリップを採用した「CP-500」のほうが安定感がある。また、「C-820L」はコンパクト化のためにレンズがボディー端に位置しているので、レンズ部に指がかかりやすい点が気になる。とくに、光学式ファインダーで撮影する場合には、レンズ部に指がかかっていても気が付かないケースが多く、私自身も何度か指が写ってしまった。その点、「CP-500」の場合には、レンズ周辺のデザイン上、レンズに指がかかることが少なく、このようなミスは皆無だった。

 もちろん、コンパクトカメラの場合には、もっと小さな機種が数多く存在するが、レンズがボディーの中央にあるため、指が写り込むケースが少ないわけだ。このあたりは、オリンパスも重々承知しているだろうが、機能と内部のレイアウトの関係で、一番“効率のいい”位置がボディー端というわけだ(これはDS-20をはじめとした多くのモデルにも共通しているが、コダックだけは頑なにレンズをボディー中央に寄せようと努力している)。



●好みが分かれる操作性

噴水
【CP-500で撮影】
噴水
【C-820Lで撮影】
 操作性に関しては、どちらのモデルも一長一短があるが、オリンパスの方が機能が少ないこともあって、比較的わかりやすい。とはいっても、C-800Lに比べて機能が増えていることもあって、各モードで1機能1ボタンではなくなっている部分も多い。また、画像の記録モードは3種あるが、本体のみではVGAかXGAの切り替えしかできず、XGAモード時の圧縮率の変更はパソコン経由でなければ設定できない点には疑問を感じる。

 一方、エプソンも操作性はよく考えられており、頻繁に利用する機能はきちんと押しやすい位置にレイアウトされており、日常的な使用には不都合はない。しかし、画像の一覧表示や詳細な機能設定などをする場合には、メニューがやや分かりにくい感じもある。

 なお、使用感を大きく左右する画像の記録時間は、両機ともにかなり長く、液晶モニター使用時で約11秒、不使用時で約7秒と、いずれも軽快というレベルではなく、ぎりぎり実用レベルという感じだ。



●スイッチONで任意の設定になる「CP-500」、常にデフォルトに戻る「C-820L」

 しかし、実際に使っていて、一番大きな違いに感じられるのが、液晶モニターとストロボの扱いだ。まず、オリンパスの場合には、撮影時の標準設定では「液晶モニターOFF、ストロボ自動発光」になっている。そして、メインスイッチを一度OFFにすると、前回にユーザーが設定した液晶やストロボモードは反映されず、必ず標準設定に戻ってしまう。

 それに対して、エプソンはもともと、液晶表示のON/OFFをスライドスイッチで設定するタイプなので、当然のことながら液晶ONで撮影していれば、次回もメインスイッチONとともに点灯するわけだ。また、ストロボモードも保持されるので、常時ストロボOFFで撮影することもできる。

 これは一見、些細な違いのようだが、デジタルカメラの大きなメリットが、この液晶モニターの存在と、オートホワイトバランス機能による異種光源下での自然な色再現だと考えている筆者にとって、「C-820L」の設定に疑問を感じる部分がある。もちろん、これまでのコンパクトカメラは一度OFFにしたら、一番確実に写る先の標準設定に戻るのが常識だったわけで、オリンパスはそれを踏襲しているわけだが、デジタルカメラにもそのままこれを踏襲するというのは考え物だ。

 もっとも、C-820Lは光学式ファインダーがメインになることもあって、ファインダーの見え味はCP-500よりも良好。CP-500もデジタルカメラの光学ファインダーとしてはなかなか良くできている部類だが、C-820Lのほうが明るくてコントラストも高く、カメラメーカーの面目躍如という感じだ。

 なお、液晶モニターはいずれも低温ポリシリコンTFTで、こちらの表示品質や表示速度の点では大きな差異は見られなかった。



●気になる記録媒体の違い

「C-820L」と「CP-500」
【上:C-820L、下:CP-500】

 両社とも、今回のモデルで初めて交換式のメモリーカードを採用したわけだが、記録媒体は期せずして、オリンパスが「スマートメディア」、エプソンは「コンパクトフラッシュ」となっている。

 前者はスマートメディアでも、3.3V仕様のカード専用であり、従来からの5Vカードは装着できるものの、使用することができない。標準では4MBカードが1枚添付されており、今月25日にはようやく8MBカードも発売される。待望のフラッシュパスも今秋には登場するという。

 後者はコンパクトフラッシュカードのため、現状でも最大で30MBカードまで市販されているため、大容量化という点では有利に見える。しかし、20MB以上のカードはFATの構造が異なり、現時点では「CP-500」は対応できず、事実上は15MBカードまでとなる(ほかのコンパクトフラッシュ採用の機器でも、対応できるものとできないものがあるというので、PDAなどで大容量媒体の購入を考えている人は、販売元に問い合わせたほうがいいだろう)。

 そのため、カードの容量は、C-820Lが8MB、CP-500が15MBカードまでとなるわけだ。もちろん、CP-500は4MBの内蔵メモリーを備えているため、カードがフルになれば、カードを抜いて内蔵メモリーで撮影するという手もあり、単純にメモリー交換をせずに撮影できる枚数で比較すると、CP-500のほうが有利だ。

 もっとも、スマートメディアの8MBカードは標準小売り価格でも8,000円台なので、同一容量のCFカードよりも安価という点も見逃せないメリットといえる。個人的には、スマートメディアでは何度かデータの損失を経験しているので、信頼性という点では若干の疑問を感じる部分もあるのだが……。



●ほぼニュートラルな色の「CP-500」、ややグリーン寄りの「C-820L」

壁
【CP-500で撮影】
壁
【C-820Lで撮影】

 さて、気になる写りだが、撮影条件によって、意外に両機の違いが感じられるケースがある。まず、解像度でいうと、同じCCDを採用していることもあって、きわめて大きな違いがあるわけではない。しかし、細部を比較してみると、「CP-500」のほうが若干シャープに感じられる。これはおそらく、撮影後のソフトウエア的な処理で輪郭を強調しているものと推察できる。そのため、斜め方向の直線部などを見ると、CP-500のほうがわずかにジャギっぽく感じられることもあるが、画面全体から受ける印象としては、こちらのほうがシャープに見えるわけだ。もちろん、このような絵作りは好き嫌いがあるだろうが、最近はダイレクトプリントなど、パソコンを経由せずに利用される機会や、画像処理ソフトを使わずに利用されるケースが増えているので、この程度の輪郭強調がしてあったほうが、最終的に好印象となる可能性が高い。


子供
【CP-500で撮影】
子供
【C-820Lで撮影】
ビル
【CP-500で撮影】
ビル
【C-820Lで撮影】

 一番大きな違いが見られるのが、色の再現性だ。端的にいうと、「CP-500」はほぼニュートラルであり、ごくわずかにマゼンタ寄り。「C-820L」は全体にカラーバランスがややグリーン寄りになる傾向が認められた。これらの傾向は以前紹介した両機のベータ版モデルとは異なる色傾向であり、製品版になって若干のチューニングがなされたものと思われる。

 もちろん、カラーバランスには個人的な好みの問題も絡んでくるため、一概に善し悪しを判断するわけにはゆかないが、あえていえば、「CP-500」のほうが素直な色再現性を実現しているといえる。実際に「C-820L」のグリーン方向への偏りは、かなり微量ではあるが、グリーンがかぶることにより、画像全体にクリアな印象が薄れる傾向がある。とくに人物撮影では、肌色が若干暖色系になる「CP-500」に比べ、やや見劣りがする結果となっている。ここでは両機の画像を比較しているので、その違いが明瞭に見られるカットも多いが、実際にC-820Lのカットだけを単体で見た場合には、ここで感じられるほど偏って見えないわけだが、それでもやや気になるレベルといえる。

 実は「CP-500」はベータ版では「C-820L」と同じようなグリーン傾向が見られたが、製品版ではきちんと直ったわけだ。もっとも、青空の色などを見るとやや紫色っぽい感じもあり、マゼンタ寄りの色が気になる人もいるとは思うが……。

 また、色の彩度という点で見ると、CP-500のほうが若干強調される傾向がある。忠実度という点で見れば「C-820L」のほうがいいわけだが、見栄えの良さという点で見ると、CP-500に歩がある感じがする。


夜景
【CP-500で撮影】
夜景
【C-820Lで撮影】

 全体に、「CP-500」の画像は、最終的な画像の印象がニュートラルな感じになるように、画像に微妙なチューニングがおこなわれている感じだ(輪郭や彩度をやや強調した方が、人間は印象に近い色と認識する)。一方、「C-820L」は現物に忠実な再現性を目標とした絵作りといえる。もっとも、この両機ともに、微妙な絵作りが難しいといわれる補色系CCDを採用したモデルだけに、これらのチューニングもかなり微妙なバランスで成り立っているものと思われる。

 なお、両機ともに、最近採用する機種が多くなった、撮影光源別のカラーバランスの固定機能がない点は不満だ。いずれもオートホワイトバランス専用で、とくに人間の目で見て暖かみが感じられるタングステン光下でも、その色合いを完全に補正してしまう設定には不満を感じる。さらに、暗いシーンに比較的弱い点も両機に共通しており、このあたりは今後の大きな課題といえそうだ。露出関係では、「C-820L」だけに露出補正機能が搭載されている点は高く評価したい。



●付加機能は各社各様。ソフトの充実度はCP-500の圧勝

河原
【CP-500で撮影】
河原
【C-820Lで撮影】
橋
【CP-500で撮影】
橋
【C-820Lで撮影】
 付加的な機能は両モデルで、考え方が異なる。「CP-500」の場合には、モノクロやパノラマ、デジタルズームといった機能があり、結構楽しく撮影することができる。また、PM-700Cにカメラを直結してのダイレクトプリント機能も同社らしいユニークな点だ(もっとも、プリント速度はかなり遅いが……)。

 一方、「C-820L」はスマートメディア内のメーカーエリアにパノラマソフトを備えている。とはいっても、これは別のアプリケーションでの本格的なパノラマ合成を助けるもので、カメラ単体でパノラマ化できるわけではない。また、同社の4MBカードを購入することで、メーカーエリア内のデータを使ったカレンダーの作製やプリクラ風の背景合成をカメラ単体で楽しむことができる。そのため、別売の直結式昇華型プリンターでも、パソコンなしでこれらを楽しむことができるわけだ。

 また、付属アプリケーションの充実度という点では、いうまでもなく「CP-500」の圧勝。とくに、画像関係のアプリケーションを持っていない人にとって、CP-500の付属CDの存在はかなり大きなものといえる。もちろん、ケーブル接続キットまで同梱されているので、本機を購入しただけで転送から処理まですべてが楽しめるわけだ。

 「C-820L」は、別売の接続キットにフレンドリーなインターフェースを採用した「Kai's Photo Soap」が付属している点が魅力だ。実際に「Photo Soap」だけでカレンダーやポストカードの作製ができるため、これだけでもかなり楽しめる。



●性能重視の「CP-500」、携帯性重視の「C-820L」

バイク
【CP-500で撮影】
バイク
【C-820Lで撮影】
花
【CP-500で撮影】
花
【C-820Lで撮影】
 今回はさまざまな側面から両機を比較した。こうしてみると、明らかに異なる部分もあれば、ほとんど差がない部分もある。そのため、どのポイントを重視するかで、自ずと両機の評価は変わってくるだろう。

 さて、8月22日付けの「デジタルカメラ・ランキング」では、「CP-500」を2位、「C-820L」を4位としている。その理由は本文中にも多少記したが、簡単に言えば「CP-500」のほうがデジタルカメラならではのメリットを享受できる部分が多いという点だ。端的に言うと、液晶ファインダーをメインスイッチONとともに即座に使用できる点、ストロボモードが保持される点、カード交換をせずに大量の撮影をこなすことができる点などがあげられる。さらに、撮影後の色補正をしなくても実用になるレベルの色再現性、カメラとしての持ち易さといった点でも「CP-500」のほうが勝っている部分といえる。

 もちろん、「C-820L」も「C-800L」で不満に感じていた部分の大半がきちんと解消されている点では、高く評価できる。さらに、カメラにとってかなり重要なポイントとなる携帯性は明らかに「CP-500」を凌駕しており、常時携帯を考えるのならば、本機のほうが有利だ。また、一部新聞紙上では「C-820L」の上位機種の自社生産をおこなうといった報道もなされており、こちらも大いに期待したい。実際に同社は今春に、最新のCMOSに似た特徴を備えた新しいタイプの撮像素子である「CMD」を発表しており、こちらの動向も注目される。その意味では、将来的に上位機種が登場することで、本機は中級機として位置づけられる可能性もあるわけだ。

 かなり乱暴ないいかただが、小型化よりも高性能さを重視する製品展開を得意とするエプソン、機能を落とさずにドラスティックな小型軽量化を得意とするオリンパスと、両社の社風がよく現れた製品という見方もできるわけだが、その意味であえて両機の特徴をいうとすれば、性能重視の「CP-500」、携帯性重視の「C-820L」といえる。いずれもなかなか完成度が高い高画素モデルなので、あとは、自分の目的をよく考えて機種をセレクトすることになるだろう。



□セイコーエプソン株式会社のホームページ
http://www.epson.co.jp/
□「CP-500」ニュースリリース
http://www.epson.co.jp/epson/japanese/whatsnew/1997/970428.htm
□オリンパス光学工業株式会社のホームページ
http://www.olympus.co.jp/index.html
□「CAMEDIA C-820L」ニュースリリース
http://www.olympus.co.jp/LineUp/Digicamera/c820l.html

□参考記事
【4/28】エプソン、1,024×768ドット出力で89,800円のデジカメ「カラリオ CP-500」発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970428/epson.htm
【6/19】オリンパス、スマートメディアを採用したデジタルカメラを2機種発売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970619/olympus.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm

■注意■

('97/9/3)

[Reported by 山田 久美夫 ]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp