ゆっくりと価格が下がるのは生産技術の安定や、技術開発費の償却が進んだと思えば良いのですが、ガクンと落とされるとなんかねぇ……。「下げるなら最初から安い値段で出せよ!」と言いたいところなのですが、最初は利益を取りたいという気持ちもショップの店員からしてみれば共通の意識があって、非常に理解できるところ。
ユーザーとメーカー、双方の気持ちがよく分かるので、つらいところですね。(^^;
しかしながらショップとしてはこのような激しい値下げは好まないことは連載の第5回で書いたとおりです。本当に厳しい日々となっています。
筆者は毎週欠かさずPC WatchのCPU価格調査をExcelに入力して傾向を分析しています。そのデータからここ3ヶ月の平均価格だけを抜き出して表とグラフを作りましたので、時間があるようでしたらご覧ください。
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970814/cpuprice.htm
1)Intel Pentium II
まずPentium IIですが、比較的緩やかな値下がりをしています。といっても266MHzは3ヶ月で4万円近く値下がりしているのですが、急激な値下げがあったのは、5月から6月初めにかけてで、1ヶ月に23,000円弱値下がりしています。6月から8月にかけては非常に緩やかな値下がりとなっています(2ヶ月で1万円強)。普通はこのぐらいの値下がりなので、Pentium IIはこのまま安定した形で値下がりしていくのでは無いかと予想できます。Pentium IIは最速CPUとしてちゃんとした位置をキープしているようです。
266MHzと233MHzは6月以降ほぼ平行して価格が変動しています。安定した価格変動をしている事がここからも伺えます。300MHzやECC付266MHzが出てきましたが、それほど大きな変動にはつながりそうにありません。300MHzは266MHzのように前半は急激に値下がりして、価格バランスが良いところで安定して266MHzや233MHzと平行しなが ら値下がるのでないかと思います。
2)Intel MMX Pentium
一番価格の変動が激しいのがMMX Pentiumでしょう。5月と8月の価格差を出すと以下のようになります。
MMX Pentium 233MHz 42,008円 (5/31 ~ 8/2、5/24は初物価格なので除外)
MMX Pentium 200MHz 34,402円 (5/2 ~ 8/2)
MMX Pentium 166MHz 24,293円 (5/2 ~ 8/2)
233MHzはたった2ヶ月の間に4万円以上値下がりしています。価格帯がもとから低い166MHzでさえ、これだけ値下がりすることに驚きを覚えます。4月にIntelが出したロードマップ&価格の値下げ予定表ではこのような値下がりは予定されて無かったと聞いています。もともと233MHz版は今年の9月初め頃登場予定だったと聞いた記憶があるのですが、IntelはよっぽどAMD K6の躍進に脅威を覚えたのでしょうか、5月にいきなり登場してびっくりしました。さらに全く予定として聞いていなかった266MHz版まで秋に登場すると先日聞いてびっくりの連続です。IntelはPentium IIにユーザーの移行を促すんじゃなかったんですかね?
お客さんへのセールストークで「MMX PentiumのSocket 7はもう終わりで、これからはPentium IIのSlot 1の時代ですから、ちょっと高いですけどPentium IIを買いません?」とIntelの話を信じて喋っていた筆者はどうすれば良いの?(苦笑)
このままですと当分Socket 7が主流のような気がするのですが……。Pentium IIも今はなんとか手が届く値段帯になっており、Intelの話もまんざら嘘ではないです。しかし一番売れるミドルレンジの価格帯は競争が激しいこともあり、当分はSocket 7のCPUが主流だと思われます。
今後の価格変動ですが、おそらくさらに下がるでしょう。AMD K6との競争もあり、どこまで下がるかわかりません。これ以上加速することはないと思うのですが。どこかに底値があるのだと思いますけど筆者は知りません。CD-ROMドライブやFDD、メモリのような単純なパーツは生産原価が比較的わかりやすいので底値が予想できるのですが、CPUはわかりにくいです。CPUの生産原価や研究・開発費用はどのくらいなのでしょうか? ご存知の方は教えてくださるとうれしいです。
3)AMD K6
AMD K6は同一クロックのMMX Pentiumより必ず低い価格で推移しています。シェアを取ろうと躍起になっているのもありますが、きちんと「Intelより安くて高速」という発表当時のキャッチフレーズを守っているのは素晴らしいと思います。AMD K6は同一クロックのPentium IIと同等のスピードが得られるという謳い文句を考えると、
素晴らしいコストパフォーマンスです。
価格の変動はMMX Pentiumが前述のように急激に値下がりしているのと同じように急激に値下がりしています。
AMD K6 233MHz 30,602円 (6/21 ~ 8/2)
AMD K6 200MHz 38,769円 (5/2 ~ 8/2)
AMD K6 166MHz 16,120円 (5/2 ~ 8/2)
特に顕著なのはK6 233MHzでしょう。1ヶ月ちょっとの間に実に3万円以上値下がりしています。この値下がりの仕方はまるっきりMMX Pentium 233MHzと同じです。同じ事が200MHzにも言えて、MMX Pentium200MHzとK6 200MHzはほぼ平行しながら値下がりしています。
現時点で軍配をあげるとするなら筆者はAMDの勝ちとするでしょう。実際に筆者のショップにおける販売合計数はIntel CPUの方が多いですが、200MHz前後のCPUだけに絞ってみるとAMD K6はMMX PentiumやPentiumとほぼ同等の数売れています。自作をする人やアップグレードユーザーは完全にK6を受け入れたと判断して良いでしょう。メーカー製パソコンでの使用がほとんど無いので全体のシェアは大きく増えたとは言えないですが、Intelが独占状態だった市場に大きな風穴を開けたのは確かです。
さて今後の価格変動ですが、7月上旬頃まではどちらかというとAMDが先に値段を下げていてIntelが追っているような感じでしたが、中旬頃から奪われたシェアを必死に取り戻そうとIntelの方が先行して値段を下げてきて、AMDが合わせて下げるような感じです。Intelとしては安くしないと、大手メーカー製パソコンの市場までAMDに参入を許してしまうのではないかという危機感があるのではないでしょうか?
とりあえずAMD K6もMMX Pentiumと同じ傾向で、どこまで下がるか先が読めません。
4)Cyrix 6x86 、6x86MX
かなり劣勢。頑張ってください……。個人的には応援しています。
一方、実は調子がいいのが6x86L-PR200。かなり安くなってきたので多くの人が手を出しているようです。対応マザーボードの選択肢も増えましたし、CyrixのCPUの中ではベストチョイスではないかと思われます。もうすぐ生産終了という噂も聞かれますので、購入を検討している人は逃さないように!
5)Intel Pentium (Classic Pentium)
Classic Pentiumも値段がここ3ヶ月でちゃんと下がっており、200MHzは2万円強。166MHzは1万円強下がっています。さて今後も下がるかというとちょっと状況が他のCPUとは違います。なにが違うかというと確実に「もうすぐ生産終了」なのです。特に顕著にその状況がわかるのが200MHzでしょう。安い価格で販売していたところはどこも完売となり、比較的高い価格で販売していたお店が残っているので平均価格がここ2週間ほどで上がっています。筆者のショップにはもう200MHzはほとんど残っていません。
166Mhz、150MHz、133MHzはもう少しの間流通すると思いますけど、今後はあまり値段が下がらず、むしろ少しながら上がる可能性もあります。まだまだビジネス向けなら十分な力があると思うのですが……。MMX Pentium 166MHzを使えとIntelは言いそうですが……。
2)MMX Pentium、K6
ショップの店員がこういう事言って良いのかわかりませんけど、今は「待ち」でしょう。価格競争が一段落するまで待つのが得策かもしれません。
3) Classic Pentium
急いで買いに行った方が良いかもしれません。ただMMX Pentium166MHzやK6 166MHzの値段が今のClassic Pentium並に下がるかもしれませんけど。
4)その他のCPU
買いたいときに買うので良いのではないかと思います。特に激しい価格変化もありませんからね。
こうした仕入れ方法は、一時的な在庫切れを頻繁に起こしやすいという問題があります。しかしショップにとって今回のように価格変動が激しいときは在庫をかかえて赤字になるより、在庫を少なくして在庫切れを起こす事を予想できるけど、やるしかありません。PC Watchの価格調査でもこの傾向があらわれています。7月26日調査情報で、レポート内にこういう報告が書かれていました。
「全体的には扱いショップ数(サンプル数)が減っているのが目につき、特にMMX Pentiumの200MHzは前回の24店から今回は15店と大きく減少している 」
これは一時的な物不足という側面もあるかもしれませんが、大きな理由はショップが在庫を少なくしている結果と思われます。土曜日は秋葉原で一番売れる日ですが、調査する時間帯によっては売り切れていたお店も多いのでしょう。
このようにショップは価格の変動になんとか付いていこうとしています。IntelとAMDが起こしている価格戦争の風に振り回されて飛ばされないよう必死なのです。早くこの異常な価格変動をやめて欲しいものです。切実なショップの人間の願いですね(^^;
■■7月の秋葉原ショップ動向■■● 暑い!!!
そういえばAKIBA HotLine!でも取り上げられていましたが、7月19日前後に秋葉原駅前広場では「インターネットショー」なるイベントをやっていました。この日は非常に良い天気だったこともあり、4月の消費税アップ後としては一番たくさんの人が秋葉原界隈を歩いていたような気がします。イベント効果かな? 暑い中イベントをやっていたメーカーの方々お疲れさまでした。でもあの暑い中でも来てくれているお客様には感謝したいですね。暑すぎると売れ行きが鈍ると今まで思っていたのですがそんな事もなく、ちゃんと売れていたので嬉しいかぎりです。
大きな原因としてはCPUの価格変動があまりにも激しすぎて、ユーザーがCPU単品だけでなくパソコン本体についても様子見状態に入ってしまったことが考えられます。CPU価格大戦争がこんなところまで波及してきているのです。参ったもんだ……
今後の目玉は、なんといっても8月末のIntel 440LXとAGP-BUSですね。OSの対応はまだですが、ドライバでなんとか対処する形で動くようです(現時点までに試したサンプルですとスピードは完全に出せていない)。そして最速CPUであるPentiumII300MHzの登場と話題は続きます。商品としては面白い物が揃ってくるので楽しみではあります。一ユーザーとしてはCPU価格の変動も気になるところです。さてさてどうなるのやら……。
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[Text by AMUAMU]