世の中の時計好きには2種類の人種がいると思う。一方は機械時計の魅力に魅せられた人達。限定モデルのスピードマスターが発売されると聞けば西に走り、ロレックスの掘り出し物のアンティークがあると聞けば東に走る人達だ。他方は、時計のギミックや機能に魅せられた人達だ。時計に付いているセンサーの数を競ったり、飛行機の中で気圧を計ったり、ソバ屋のTVのチャンネルを時計で変えちゃったりする人達ね。
僕はどちらかといえば後者。もちろん、機械時計も好きだしいくつか所有しているが、あやしい機能を持つ時計が出ると聞くとすぐに買っちゃうクセを持ってたりする。今回のネタはそんな時計のひとつだ。
僕が最初に買った電波時計はマルマンの「グリニッジ」という置時計。たしか、7~8年前に4万程度で購入したような記憶がある(記憶が定かじゃないから、間違っているかもしれないけど)。この時計を買ったときははっきりいってちょっと感動した。
まず、時計の時刻を合わせるためのギミックがないのだ。普通の時計の時刻を合わせるときは、ダイヤルなり竜頭なりをぐるぐる回して(デジタルならボタンだね)合わせるんだけど、「グリニッジ」にはこういう操作は必要ない。時計の前面に付いているボタンを押すと、勝手に標準電波を受信して、勝手に時刻を合わせてくれるというわけだ。
ちなみに、コイツは一日一回自動的に標準電波を受信して時刻を合わせる機能があるため、まず時計が狂うということはない。時計自体は普通のクォーツなので月差+/-10秒程度の狂いはあるが、毎日正確な時間に自動的に合わせてくれるため。ほとんど誤差がないといっても過言ではないだろう。
自宅に一台正確な時計(マスタークロック)があると、非常に便利。たとえば、他の時計の時刻合わせは普通はどのようにするだろうか。NHKの時報や、NTTの時報を聞いて合わせるかな。でも、マスタークロックがあればいちいちNHKの時報をチェックしたり、NTTの時報を聞く必要もない。家中の時計をこのマスタークロックに合わせて直しちゃえばいいわけだ。もちろん、パソコンの内蔵時計を合わせるのにも使えるハズだ。
ところが、最近はとっても安い値段の電波腕時計があるのでした。最近買ったのは「グリニッジ」と同じくマルマンの「Get Wave」という腕時計。消費税(5%)込みで8,977円也でした。コイツは腕時計の中にアンテナを内蔵し、「グリニッジ」と同じように標準電波を受信して時刻を合わせてくれる。きっと電波を受信するから「Get Wave」って名前なんだろう。
「Get Wave」は毎正時に標準電波を受信して時刻を調整してくれる腕時計だ。マニュアルで標準電波を受信して時刻を調整することも、もちろん可能。ちなみに、時計本体はクォーツだ。つまり、「グリニッジ」と同じようにいつでも正確な時刻を知ることができるわけだ。ただし、腕時計ということで、受信感度は非常に弱い。置き時計タイプの「グリニッジ」ではたとえパソコンの横に置いて有ろうと、きっちり標準電波を受信して時計を勝手に合わせてくれるが、「Get Wave」はパソコンなどが近くにあるとダメ。受信に関しては結構シビアな作りになっている。とはいえ、時刻の調整は毎正時に行われるので普段腕につけている限りは、問題ないハズだ。
また、電波の感度を表示してくれる機能や、何日間電波を受信できなかったかを表示する機能もあるので、しばらく電波を受信していないようなら、受信感度の良い場所を見付けて調整するという使い方をすることもできるようになっている。
この標準電波には短波帯を利用したJJY(5/8/10MHz)と長波帯を利用したJG2AS(40KHz)があり、どちらも茨城県のNTT名崎無線送信所から発信されている。ちなみに、電波時計が受信する標準電波はJG2AS(40KHz)が利用されている。
標準電波には原子時計がベースになっている日本標準時(JST)に関する情報が乗っているため、電波時計は正確に時刻を合わせることができるわけだ。ちなみに、放送電波やNTTの時報などは、すべてこのJSTがベースになっている。
ただし、JG2AS(40KHz)の標準電波はカバーエリアが約500Kmと狭いため、中部地方より南や東北地方より北では受信することは困難だ。もちろん、カバーエリア内でも発信地より遠ければ遠いほど感度が落ちることになる。そのため、郵政省では平成9年から10年にかけて、長波標準電波送信施設の建設を計画しているようだ。この施設は福島県に建設が予定され、現在のJG2ASの10倍の出力で計画されるため、実現されれば日本全国どこででも標準電波を受信することができるハズだ。
インターネットにはNTP(Network Time Protcol)を使った標準時サーバもあり、そのサーバに接続すれば正確な時刻を知ることはできるが、ダイヤルアップでいちいち接続するのも面倒。やっぱ、電波時計のように勝手に時刻を合わせてくれるのが理想だ。もし、電波時計にパソコンへのインターフェースがあれば、電波時計の情報を読み取ってパソコンの時計を合わせるということも簡単にできるハズ。どこかで、商品化してくれれば絶対買うんだけどどうでしょうか……。
[Text by 広野忠敏]