【リレー連載 物欲道修行記】


リレー連載 物欲道修行記

第43講 デジカメの伝道師:山田久美夫

 今回は、西川師範がル・マン取材でフランスへご出張中のため、COMDEX/Springから帰られたばかりの山田久美夫先生にゲストでご登場いただきました。パソコンを使い込んだユーザーほど、使い心地を左右する入出力デバイス(キーボード+マウスとディスプレイ)にこだわり、お金も惜しまない傾向が見られます。月産ン百枚(原稿用紙だとン千枚か?)という原稿を書かれる山田先生もその例にもれず、キーボード大好きのヒトで、今回はCOMDEXで新規に購入されたものを中心に、キーボードに対する思い入れを書いていらっしゃいます。
(101/104配列でキーは重め・ストローク深め・クリック感があるのが好きな編集担当)

キーボードを笑うものは、キーボードに泣く!

IBM keyborad  何を隠そう、私はキーボードが大好きで、海外、とくにアメリカに取材に行くたびに、新しいキーボードを仕入れてくるという癖がある。もちろん、日本にいても、原稿が猛烈にたまってくると、耐えられなくなって、気分転換の意味もあって、新しいキーボードを購入してしまう(ときには、素敵なキーボードの魅力に負け、思い余ってキーボード一体型マシン、つまりはノートPCを買ってしまうこともあるくらいだ)。  なにしろ、カメラのように手のひらに収まるサイズなら、そのものすべてが五感に訴えるキッチリとしたインターフェースを備えていなければいけないが、パソコン、とくにデスクトップPCになると、極端な話、キーボードとマウスとモニターさえ、キッチリしていれば、あとはどうでもいいといった世界がある(とくに、原稿書きはエディター専門なので、マシンの処理速度はさほど気にならない場合もある。画像処理は別だけど……)。

 もちろん、人間の感性に訴えるという意味でいうと、たとえばビデオボードによって、“ウインドーが開くときやスクロール時の描画に得も言われぬ味がある……”なんて、粋な世界があるのかもしれないが、凡人の私は、残念ながら、そこまでの悟りの境地に至っていない(まあ、Macintoshの世界では、これって明確にあると思いますよ。やはり、一瞬で味気なくウインドーが開いてしまう最新モデルは、味わいがないですよね。この粋な世界を楽しむなら、68000のマシンが一番です! そもそもWindowsマシンが結果のみを重視するものなら、Macintoshはその過程までも楽しめる点が一番の違いですよね>Macファンのみなさん)。

 もちろん、私の場合、本職はカメラマンのはずなのに、なぜか原稿執筆に追いまくられていて、何を間違ったのか、連載だけで毎月10本も抱えるという、そら恐ろしい毎日を送っている(しかも単発モノも同じくらいあるんだよね……)。そうなると、おのずと、キーボードを叩いている時間がかなり多くなり、自然と、キーボードにはうるさくなるというわけだ(単に好きなだけという話もあるけど)。

 しかしまあ、人間、不思議なもので、キーボードを変えると、マシンまで一新したような気分になれるし、また新たな意欲が沸いてくる。なんだか、こうしてキーボードをとっかえひっかえしていると、一時期それなりに凝った車いじりを思い出すんですね。
 私の場合、どんなものでも、実用本位なところが哀しいが、それでも一台の車(VW GOLF2)の、タイヤを変え、ステアリングを変え、サスペンションを変え、ショックのセッテングを変え、シートを変え、ブレーキパッドを変え、ブレーキディスクを変え、ブレーキホースを変え、各種オイルを変え、添加剤を変え、ワイパーを変えては、楽しんでいた、あの頃とさほど変わらない世界なのかもしれない……。


わずか10ドルで手に入れた、超正当派キーボード
「IBM PS2 Space Saving Keyboard」

 さてさて、そんな私が先日のCOMDEX取材などで仕入れてきて、最近かなり気に入っているキーボードなどをいくつか紹介しよう。

 まずは、今回の最大の収穫はなんといっても、COMDEX会場内で即売(在庫処分?)されていた、我が憧れのキーボードである、IBMの初代PS2用キーボード。これを、たったの10ドル!!で入手したことだ。これは知る人ぞ知る名品(だと思う)だ。このキーボードは、パソコンというよりもオフコンに近いイメージのもので、とにかく近年、これほど贅を尽くしたキーボードにはお目に掛かったことがないほどの逸品。

IBM keyboard IBM keyboard IBM keyboard
 どこがいいのかというと、まず、キーボード自体の造りが実にシッカリしており、最近のものとはレベルが違うほどの高級感が感じられる。手にすると、ズッシリと重く、とにかくその自重だけでキーボードが揺れたり、ずれたりすることがなく、実に存在感にあふれている。
 さらに、キータッチ自体も、実にしっかりとした質感と存在感を備えている。タッチはかなり重めで、他に類を見ないほど十分なストロークを備えている。しかも、(構造は知らないけど)キーを押すといかにもその下にあるスイッチがONになったという確かな感触が、指先に伝わってくるところがいい。つまり、キーを押し込んでゆくと、途中でわずかにストロークが重くなり、その直後にカチャという音がするんですね。そして、さらに押し込むと、スプリングが縮まる確かな感触のあとに、キーストロークがフルにボトムする。ですから、最近のペコペコとしたストローク感のないキータッチとは全く違った、余韻を感じさせるキータッチなんです。ちょうど、このストローク感を車の足回りで例えると、最近のキーボードが、ワンダーシビック前後のホンダ車のそれに似ているのに対して、このキーボードはメルセデスのように硬質でしなやかな感触と、ハイドロマチック系シトロエンの懐の深さに通じるところがあるんですね……(余計に分からないって?)。  また、キー表面の処理も適度にザラッとしていて抵抗感があるところがいいし、キー上面のR(曲面)のつけかたにも味がありますね。最近のキーボードのキートップって、いいものもあるけど、なんだか人に媚びた感触がありますよね。でも、このキートップの感触には“個の主張”を感じますよね……。いいなあ~。


たまには“黒”で決めたい!
「IBM 104 Keyboerd Blaek」&「マイクロソフト インテリマウス黒」

 そうそう、今回COMDEXで買ってきた、もう一つのキーボード。「IBM 104 Keyboerd Blaek」についても簡単に紹介してしまいましょうね。
IBM black keyboard IBM black keyboard black Intellimouse

 これは日本で売っているIBMのアプティバ系のブラックキーボードとほぼ同等のものなんですが、やっぱり、104キーボードは、日本語関係のキーがないので、スペースキーの幅が広めだし、私のようなローマ字入力派には不必要で目障りなカナキーがないので、実にスッキリしているところがいいですね。まあ、キータッチはそこそこという感じで、ストロークはやや深めですけど、押し込んだときの抵抗感がなく、スカスカで、なんとも頼りないもの。でも、それはそれで、いいんです。これはもともと、日本では入手できない“インテリマウスの黒”!といっしょに使うつもりで、半分冗談で購入したんですから……。

 でも、最近、ちょっと話題になっている“インテリマウスの黒”ですけど、アトランタのComp USAという、アメリカでも最大級のパソコンのスーパーマーケットチェーンで、実際に目にした瞬間に、惚れ込んでしまいましたね。もう、「こ、これだぁ~」という感じで……。見ていると、なんだか、スターウォーズのダースベイダーを連想させる、なんともいえない、黒光りするマウスなんですが、いいんですよ、カッコが。店で見ているときから、我が愛用のComp USA特製マウスパットの上に置くと、さぞかしかっこいいだろうなあ~という想像が脳裏を駆けめぐったと同時に、これはぜひとも、黒いキーボードとペアで使わなければイカン!という観念に駆られてしまったんですね。
Black keyboard & mouse  それで、実際にこの両方をセットしてみると、これが実にカッコイイ! ですけど、マウスはともかく、キーボードは先のものとか、後記の、もっと気に入ったものがありますから、誰かが我が家に取材に来たときに、これでカッコをつけようかなあ~と思っているんですね、はい。


意外に軽快な「FM-Vデスクトップ機用キーボード」

 それで、先ほど紹介した「IBM PS2 Space Saving Keyboard」が結構気に入って使っていますが、ひとつ、困ることがあるんですね。というのは、キータッチがあまりに重いので、文章が堅くなりがちなんですね。これは半分、こじつけっぽく感じるかもしれませんけど、キータッチっていうのは、かなり文体や文章のテンポに影響すると思うんですね。ですから、このPS2キーボードも、「である」調の文体のときには、なかなか緊張感が出ていいんですが、口語調の軽めの文章を書くときには、その軽快さがなかなかでないんですね。ですから、“それに”って書くところが“そのうえ”になっていたりするんですね(そんな目で見ると、この文章も、途中でキーボードを変えているのが、分かってしまうかも……)。
 そんなときに、つまり口語調の文章や、短時間にとにかく大量の文章を書かざるを得ない(1時間当たり3000文字前後)ときには、また、違うキーボードが登場するんですね……。

FMV keyborad FMV keyborad  そのひとつが、な、なんと、「富士通・FM-V」シリーズ用のキーボードなんですね。とはいっても、キーボードなんて、コストダウンの影響をかなり受けやすいところ(本来はこんなことじゃ、イカンのですが……)。そのため、いまも、私が使っている、昨年始めに購入したものと同じ感触のものかどうかは、定かではないのですが、これがですね、なかなかいいんですよ。

 配列はごく一般的な106系で、どちらかというと、無味乾燥というか、没個性という感じのシロモノ。また、ストロークも標準的なものですけど、押したときのトルク感が適度なんですね。といっても、決して重い部類ではなく、むしろ軽い部類なのですが、スカスカ系ではなく、押し始めからボトムに至るまでの過程で、その重さというかトルク感がほとんど変わらない点がいいんですね。さらに、押し切ったときに指に伝わるショックも比較的柔らかいので、疲れが少ない点も好感が持てますね。また、キートップのサイズも適度で、キートップの質感もざらざら系でも、すべすべ系でもない、ごく中庸なものです。


意外な逸品発見!「サンワサプライ ワイヤレス86キーボード」

 そんなこんなでCOMDEXから帰ってきて、現地でも毎晩ほぼ徹夜で原稿を書いていたんですけど、やっぱり、帰国すると原稿の山。なにしろ、この一週間でざっと計算しても60ページ近い原稿を入れないとイカン状態になってしまったんですね。しかも、連日のようにデジタルカメラ関連の発表はあるし、関連の取材もあるし、講演もあるので、毎日昼間は外出……。こうなると、もうダメ。結局、土日で20ページ以上入れないと無理!という状況になったところで、打ち合わせがあったビルの一階にあって偶然立ち寄ったパソコンショップ(東京の芝にあるダイエーのパソコン専門店「メディアバレー」)で見つけたのが、コレ。「サンワサプライ ワイヤレス86キーボード」(実売13000円)。

FMV keyborad FMV keyborad  偶然の出会いとはいえ、これはなかなかの逸品! 私にとって、これがワイヤレスである必要性なんて、全くないんですけど、とにかく、そのキータッチが独特なんですね。キーボード自体は86系ですから、英語版でテンキーなしの、ちょっと独特なキー配列ですけど、キーボード全体のサイズがかなり小さめなのにも関わらず、キートップのサイズは割とゆったりとしていて、イメージ的には初期の98ノート系のキーなんですね(キータッチはあんなに無節操じゃありませんけど)。
 で、キータッチは、なんというか、まか不思議な感じ。具体的にいうと、薄型設計のため、ストロークは結構ショートなんですけど、スカスカではなく(初代の98NLのようにパカパカ系ではない!)、結構しっとりとした感じ。ショートストロークもので、こんなトルク感を感じるキーボードって少ないですよ。それで、キーを押し込むまでに必要な力(重さ)自体は、比較的軽量なんですね、これが。
 それで、この手のショートストローク系キーボードというのは、タッチさえ良ければ、実にスピーディーでレスポンスのいい、軽快な感触が楽しめるのが魅力なんですね。雰囲気はちょっと違いますけど、このキーボードに比較的近い感触を備えているものとしては、モバイルギアのキータッチですね。あれも、モバイル系ではなかなかの逸品だと思いますけど、このワイヤレスキーボードは、それを上回る感触の良さと軽快さを備えいるんですね。しかも、輸入物のパッケージの外箱に、日本語のシールを貼っただけの、実に簡素というか、シンプルなものなんですが、そんなこともあって、私にとって不必要なカナ表示がないのもいいですね……。もっとも、リターンキーやファンクションキーがきわめて小さいのが欠点ですけどね。

 結局、このキーボードのお陰で、私が一番ノリのいいときの最高速である、1時間当たり3000文字強という猛烈なペースを6時間以上も続けることができたんですから、これはもう相当なもの(きっと、端から見ると、気が狂ったようにキーボードを打っているでしょうね)。その甲斐あって、土日で20ページ以上、なんとか入稿することができました(といっても、私は、エンジンがかかるまで、時間がかかるんで、毎日そんなペースで仕事をしているわけじゃありませんよ! そんなことしたら、ホントに死んじゃいますから)。

 とまあ、そんなこんなで、結構、キーボードひとつで楽しんでいる私。いつの間にか、Mac用まで含めると、20以上のキーボードが転がっているという状態になってしまいました(ハハハ、バカですねえ~)。まあ、それはともかく、キーボードなんて、高くても1万円前後ですし、安価なものなら数千円ですから、実用性はもちろんですけど、趣味として考えても、コレって、なかなか素敵な世界だと思うんですよ。もちろん、キーボードによって、微妙なキー配列が変わったりしましから、そのあたりは結構慣れが必要でしょうけど、コレがホントに、思いのほか、楽しめるもんですよねえ~。

 そろそろ手持ちのパソコンに飽きてきたあなた。本体を買い換える前に、一度、より自分の目的にあったキーボードを変えてみると、同じモデルでも、意外なほど軽快に感じられると思いますよ! ぜひ、一度、お試しアレ。


Web版専用
おまけ!
COMDEX取材で買った、おみやげ&かわりもの

 今回のCOMDEXは意外に会場が狭かったし、内容もそれなりだったので、会場内の細かなブースを回ったり、市内のカメラ店やパソコン店をまわって、市場調査(!?)をし、いろいろ買い込んできました。そんなものをいくつか紹介しましょう。
たまごっちモドキ  まずは、会場で最終日に手に入れた、例の「たまごっちもどき」。さすがにブースの写真は撮れなかったので(購入後にカメラを向けたら、血相変えて拒否された!)、とりあえず、こんな感じのもの。価格は20ドルと意外に高かった。
PhotoStarter kit  市内のカメラ店をまわると、どの店にもデジタルカメラが置いてあって、ビックリ! しかも、市内最大手のチェーン店「WOLF CAMERA」では、すでにインターネット上でのプリント受付まで、独自に開始しているなど、意外なほど積極的! そこで買ってきたのがコレ。「PC PhotoStarter kit」(19.9$)。これは普通のカラーネガフィルムと画像処理ソフト「MGI Photo Suite」と、解説書のセット。しかも、このフィルムで撮影したものを同店に持って行くと、現像後、無料でフロッピーにデータを書き込んでくれるか、同社のサーバー上に画像を保存しておいてくれるというサービス付き!
Photo Pad  また、同店のDP受け取り窓口の横には、写真を挟んで楽しめる「Photo Pad」というマウスパッドも売ってました。これは昨年からアメリカで販売されているもので、マウスパッドに写真を挟めるだけでなく、パッドの上面の絵柄がちゃんとフレーム風になっていて、なかなか見栄えがいいもの。価格は約10ドル前後ですけど、これはなかなか楽しめますし、日常的に写真を楽しむアメリカ人ならではの発想ですよね。
PhotoGrapher  また、こちらは数年前から売っている「PhotoGrapher」というソフト。これは写真の撮り方をパソコン上で学べる一種のシミュレートソフト。たとえば、露出を学ぶときには、画面上でカメラのシャッター速度を変えると、写真の明るさが変わって、露出アンダーやオーバーの画像をシミュレートできたりする。もちろん、構図やシャッターチャンスなどもパソコン上で学ぶことができる。これのデジタルカメラ版でも、どこかで作らないかなあ~。
$1 toy shop  最後にコレは完全なオマケですけど、アトランタ市内にある「1$均一屋さん」(日本の100円均一と同じ)で買ってきたおみやげ。これ、全部、1$なんですよ! オモチャも、工具も……。ですから、今回の我が子(3人もいます!)のおみやげは、1$均一ばっかり。実は一昨年にアトランタに取材にいったときも訪れた店なんですけど、なんか日本の100円均一屋さんよりも楽しめますよね。ちなみに、この店では1$でパソコンソフト(ゲームが中心ですけど)も売っていたんですけど……(さすがに店で写真を撮るのははばかられるので、ごめんね)。しかしまあ、アメリカって、何度行っても、違った楽しさがありますよね。いいなあ~。

[Text by 山田久美夫]



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