NetWorld+Interop '97 Tokyoで見つけた注目ハードウェア6月4~6日に幕張で開催された「NetWorld+Interop '97 Tokyo」(以下N+I'97)で見つけた注目ハードウェアを紹介しよう。今回はComputex Taipei '97やCOMDEX/Spring'97と時期が重なったため、かなり慌ただしい取材になってしまったが、各社の新製品や未発表製品を見ることができた。
MN128-SOHOのライバルは誰だ?現在、パーソナルユーザー向けのISDN機器で最も注目度が高いものと言えば、やはりNAT機能をサポートしたISDNダイヤルアップルータだろう。古河電工のMUCHO、富士通のNetVehicle-Iと低価格のISDNルータが発売されたが、今週にはいよいよNTT-TE東京/ビー・ユー・ジーのMN128-SOHOの出荷が開始される。果たして、他のメーカーはどのような対抗策を打ち出してくるのか。
まず、パワーユーザーに人気のRT100i/102iシリーズを発売するヤマハのは、2つの製品を参考出品していた。RT80i(仮称)はMN128-SOHOを強く意識した製品で、アナログポートを2つ備え、DSUや電源部を内蔵している(写真上左)。現行のRT100i/102iの下位モデルに位置する。 一方のRT140i(仮称)はRT200iとの中間に位置する製品だ(写真上右)。発売は秋頃を予定しているが、価格は未定。RT80iは当然MN128-SOHOなどと同じ価格帯を狙ってくるはずだ。RT100/102iシリーズはGUI設定ツールがないため、初心者にはやや難易度が高かったが、今回の製品でも添付するかどうかはまだ検討中のこと。実績のある製品だけに、ぜひ初心者にも使いやすい環境を提供して欲しいところだ。
ISDNカードなどでおなじみのエルミックシステムもWebRamp Entreという新製品を参考出品していた(写真上左)。こちらはISDNダイヤルアップルータに4ポートのハブを組み合わせたもので、RT80i同様、アナログポートを2つ備えている。アナログポートはコールウェイティングや三者通話など、INSネットの各機能をサポートしている。DSUのないタイプとDSU内蔵タイプがラインナップされ、予定価格はそれぞれ6万円前後、7万円前後となっている。Windows及びMacintosh対応の設定ユーティリティWebRampWizが添付されており、初心者でも簡単にセットアップが可能としている。かなり期待できそうな製品だ。 NTTインターナショナルもPACESETTER SOHOというISDNダイヤルアップルータを出品していた(写真上中央)。こちらも4ポートのハブとアナログポートを2つ備えている。最近の外付けモデムよりわずかに大きい程度のコンパクトなボディが特徴だ。価格設定次第では期待できそうな商品だ。 NetVehicle-Iを販売する富士通は、6月2日に発表したばかりのNetVehicle-EX3を出品していた(写真上右)。これも4ポートハブと2つのアナログポートを備え、6万8800円という低価格を実現。出荷は6月27日を予定している。ただし、DSUを内蔵しながら、S/T点を備えていないため、他のISDN機器が増設できないのが難点。なお、すでに発売中のNetVehicle-Iの機能強化は詳しい内容が発表され、予定通りに作業が進めば、来週中にはNetVehileのホームページで公開される予定だ。 N+I'97というイベントの性格から考えて、ISDNルータはかなり多く出展されるのではないかと予想していたが、意外にも初お目見えはヤマハ、エルミックシステム、NTTインターナショナル、富士通の5機種しかなかった。そもそも個人ユーザーにどの程度、ISDNルータの需要があるのかがわからないというメーカーの読みがあるのかもしれないが、MN128-SOHOという起爆剤が登場した時期だけに、各社の頑張りに期待したい。
意外に少ない56kbpsモデム
K56flex陣営の目新しいところとしては、NECが出品したCOMSTARZ MULTI560(写真上左)くらいだ。NECがK56flex対応製品を発売したということは同社が運営する、BIGLOBEにアクセスポイントが設置されることを意味する。しかし、正式なアナウンスはまだない。これではユーザーが買いたくても手を出せないというのが本音だろう。 その他には、ビジネスショーで出品されていたTDKのDF5614E(写真上右)、すでに出荷が開始されている日本モトローラのModemSURFR 56Kなどを見かけたが、その他はあまりめぼしい製品を見かけることはなかった。むしろ、アクセスサーバ側の出展が多く、「K56flex陣営はインフラ構築の段階か?」という印象すらあった。
また、MEGAHERZブランドで販売しているPCカードモデムにも56kbps対応のCC1560Jが出品された(写真上右)。残念ながらおなじみのXJACKではないが、2万9800円とこちらもかなり安い。 さらに、同社のブースではx2 Technologyに対応したソニーのSMD-560も展示されており、着実にx2 Technologyを盛り上げようという意気込みが感じられた。
ISDN機器は嵐の前の静けさ?
まず、最大のシェアを持つNECからはAtermIT25DSUが出展された。AtermIT25DSUは昨年販売されていたAtermIT45DSUと現行モデルのAtermIT55DSUの中間に位置する製品で、非同期/同期PPP変換による64kbps同期通信モード、V.110/57.6kbps非同期通信モードをサポートし、アナログポートも2つ備えている。スペックと外見はAtermIT45DSUと同じように見えるが、アナログポート回りの機能が強化されており、価格もDSU内蔵モデルでは最安値の3万4800円に設定している。「ISDNにはしたいけど、128kbpsまではいらないよ」というユーザーにもおすすめできる製品だ。 ちなみに、事業部は異なるが、企業通信システム事業部ではターミナルアダプタをワイヤレス化した製品を参考出品していた。DTE速度は230.4kbpsまで対応し、ワイヤレス部は2.4GHz帯を利用している。残念ながら、それ以上の詳しい情報は得られていない。
むしろ、同社のブースで気になったのはISDNターミナルアダプタ対応のFAXソフトだ。ご存じのように、パソコンからファクシミリへの送信にはFAXモデムとFAXソフトが必要になる。ISDN化することで、インターネットやパソコン通信サービスへの接続はほぼISDNターミナルアダプタのみに移行できるが、ファクシミリへの送信ができないため、まだFAXモデムを手離せないでいる人も多い。そこで、ISDNターミナルアダプタにFAX機能を付加し、パソコン側で専用のFAXソフトを使うことで、FAX送受信を可能にする環境を提供しようというわけだ。同社ではRVS Datentechnikが開発した『RVS-COM』(写真上右)、NTT中国メディアサプライが開発した『まるち急便』という2つのソフトのデモンストレーションを行なっていた。 RVS-COMはすでにヨーロッパなどで利用実績があり、G3FAXとの送受信、ファイル転送、リモートコントロール、ボイスメールなどの機能を持っている。ただし、接続するISDNターミナルアダプタに対応したドライバが必要なようだ。一方のまるち急便はG4FAXとの送受信、ファイル転送などの機能を持っている。G3FAXとの送受信はFネットを利用することなる。こちらも対応機種が限られており、現在はNTTアドバンステクノロジのAT-64DSbox、アレクソンのALEX-128/HGに限られている。ともに、まだ詳しい情報は公開されていないが、ISDNターミナルアダプタの新しい活用方法として注目できそうだ。
USロボティックスは以前から何度となく参考出品していたSportsterISDN 128Kを展示していた。価格も3万6800円に決まり、あとは6月末には出荷を待つばかり。ちなみに、この製品にはDSU内蔵モデルとDSUなしのモデルがラインナップされている。 全体的には見てみると、ルータをのぞくISDN機器はあまりパッとしないというのが正直な感想だ。しかし、国内のISDN普及はまだ始まったばかり。各社の新製品の噂なども伝わってきており、今のところは嵐の前の静けさといった感もある。Windows World Expo '97の各社の出展内容に期待しよう。
その他に目についたもの最後に、その他に目についた製品を紹介しよう。
ISDNターミナルアダプタのMP/128kbps接続時のパフォーマンスをフルに引き出す高速シリアルカード。プラネットコミュニケーションズはすでにFS-460という2ポート版高速シリアルカードを販売しているが、N+I'97では1ポート版のFS-550を出品していた。FS-460が1万2800円であることを考えれば、標準価格で1万円以下が期待できそう。 松下電工はSOHO向けの情報配線システムを展示していた。写真では少し見にくいが、左のパネル内にはルータやDSUが収納されており、宅内をネットワーク化することにより、どの部屋からでもハブとISDNルータを介してインターネットに接続できるようにしているそうだ。同社はオフィスだけでなく、家庭内でも情報配線の効率化を実現する製品を数多く販売している。増改築のプランがある人は要チェック。
以前、物欲道修行記で紹介したUSロボティックスのPilotというPDAがいよいよ日本でも発売されることになった。今回発売されるのは新型のPalm Pilot Professionalで、日本語マニュアルなどがついて5万9800円。 また、USロボティックスは米国で販売している会議用電話システムConferenceLinkも展示していた。まだ参考出品の段階だが、UFOみたいなデザインでかっこいい。オフィスの会議室などに設置しておくとなかなか便利そうな製品だ。正式発売を期待したい。
[Text by 法林岳之] |