【法林岳之の非同期通信レポート】

法林岳之の非同期通信レポート 第19回

「Windows World Expo/Tokyo'97」Telecomレポート

TEXT:法林岳之


Windows World Expo/Tokyo'97で見つけた注目の通信関連機器

 6月25~28日に幕張で開催されている「Windows World Expo/Tokyo '97」で見つけた注目の関連機器を紹介しよう。6月はじめに、NetWorld+Interop '97 Tokyoが開催されたためか、予想以上に通信関連製品は少なかったが、新製品などを中心にいくつか面白い製品を見つけることができた。今回はメーカー別にご紹介しよう。


NECはAterm IT65Proを出品

AtermIT65Pro
 国内で販売されているISDNターミナルアダプタで、最大のシェアを持つNECのAtermシリーズ。つい数日前に発表された新製品AtermIT65Proが今回のショーで早くも展示されていた。

 外観は従来のAtermIT55シリーズをベースに機能を拡張し、バックライト付き液晶ディスプレイを装備しただけのようにも見えるが、実はまったくの新設計となっている。なかでも注目なのがパソコンと接続するインターフェイスにUSBを採用した点だ。

 USB関連機器はキーボードやマウスなどを皮切りに、CCDカメラ、デジタルカメラなどが登場し、モデムやISDNターミナルアダプタはかなり先になるだろうと言われていたが、大方の予想を覆して真っ先に登場したというわけだ。USBを装備したパソコンに接続すれば、シリアルポートの性能による制限もなくなるため、128kbps同期通信モードのパフォーマンスをフルに引き出すことができる。もちろん、RS-232Cポートも装備しているので、USBのないマシンでも利用することができる。かなり魅力的な製品と言えるだろう。

 出荷は7月中旬の予定で、従来のAtermIT55シリーズ、先月末に発表されたAtermIT25DSUも併売され、AtermIT65Proは上位モデルとして販売されるようだ。今から出荷が待ち遠しいが、それまでにちゃんとUSBが使えるマシンも欲しくなりそうだ(笑)。



56Kbpsモデムのラインナップを充実させるダイアモンドマルチメディア

SupraExpress 56e
 ダイアモンドマルチメディアと言えば、ビデオカードの印象が強いが、Supraブランドで販売されるモデムも目が離せない。海外では最も早くK56flex対応モデムを販売したことでも知られている。

 今回のショーでは外付けタイプ、ISAバス用内蔵タイプ、PCMCIAタイプの合計3種類の56kbpsモデムを展示していた。外付けタイプとISAバス用内蔵タイプは間もなく出荷が開始され、PCMCIAタイプは今夏の出荷を目指して開発中とのこと。ダイアモンドマルチメディアは、56Kbpsモデムのラインナップが最も充実したメーカーということになる。


SupraExpress 56i SupraExpress PCMCIA

 価格の方もリーズナブルで、外付けタイプが2万4800円、内蔵タイプが2万2800円となっている。いずれもフラッシュメモリを採用しているため、ユーザー側でアップグレードすることが可能。搭載チップはダウンローダブル版で出荷される予定だ。


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IBMx2 Technology対応56Kbpsモデムを展示

IBM 56Kbpsモデムカード
【IBM 56Kbpsモデムカード】
IBM ISDNカード
【IBM ISDN PCMCIA Card2】

 K56flexとx2 Technologyという2つの規格に準拠した製品が登場したことで、市場に混乱を招いている56Kbpsモデムだが、混乱しているのはユーザーだけではない。メーカー内でも奇妙なねじれ現象が起きている。

 その顕著な例がIBMだ。IBMは6月に発表したAptiva Tモデルに56Kbpsモデムを搭載しているが、これはLucent Technologiesのチップを使ったもので、今夏にはK56flexへのアップグレードを予定している。国内で販売されるオールインワンパソコンで最も人気の高いAptivaシリーズがK56flex対応モデムを搭載したことは非常に意義が大きいのだが、6月24日にはプロバイダ事業のIBMインターネット接続サービスがx2 Technology対応の56Kbpsアクセスポイントの設置を発表した。そして、今回のショーではThinkPadのコーナーにx2 Technology対応56Kbps PCMCIAモデムが展示されていた。

 つまり、デスクトップモデルを買えばK56flex、ノートパソコンを買えばx2 Technology、PCMCIAカードはx2 Technologyというサポート状態になってしまったわけだ。もちろん、プロバイダ事業が両方の規格のアクセスポイントを設置すれば済むことだが、パソコン本体で統一が取れていないのは何とも不思議だ。

 さて、気になる製品の方だが、従来から販売していたPCMCIAプッシュポップモデムと同じように、Megahertz(現在のU.S.Robotics Mobile Communications)が開発したXJACKを採用している。また、ThinkPadコーナーではこの他にもPCMCIA ISDNカードも展示されていたが、こちらは128Kbps同期通信モードに対応したもので、Windows95/NTに加え、OS/2 Warp4にも対応しているのが特徴。



マルチファンクション化を進めるTDK

 世界最大のPCカードメーカーでもあるTDKは、新たに2種類のPCMCIAマルチファンクションカードを参考出品していた。ひとつはデジタル携帯電話+LANカード、もうひとつはデジタル携帯電話+33.6Kbpsモデムカードだ。

デジタル携帯電話+33.6Kbpsモデムカード
【TDK DVP3314H】
デジタル携帯電話+LANカード
【TDK デジタル携帯電話+LANカード】

 PHSデータ通信サービスが普及したことで、デジタル携帯電話カードの売れ行きは今ひとつと伝えられているが、全国各地で利用できるメリットがあるため、企業ユースなどでは相変わらず人気が高い。この2つの製品も主に企業での利用を考慮したものだろう。

DF5600
【TDK DF5600】
DV5600
【TDK DV5600】

 また、つい先日、正式に発表されたばかりのK56flex対応56Kbpsモデム2機種も出品されていた。K56flex対応プロバイダの一覧表を配布するなど、かなり熱心に取り組んでいる。出荷は7月末を予定しているそうだ。



宝和産業がISDNターミナルアダプタを出品

 ISDN関連機器のメーカーは相変わらず増え続けているが、新たなメーカーが登場した。宝塚に本社を置く宝和産業というメーカーだ。今回のショーでは外付けISDNターミナルアダプタのHTA-128DSU、ISAバス用ISDNカードHIT-128の2機種を出品していた。

HTA-128DSU
【宝和産業 HTA-128DSU】
HIT-128
【宝和産業 HIT-128】

 いずれもMP/128Kbps同期通信モードに対応したものだが、外見から判断するとHTA-128DSUは台湾のAlpha Telecom社からのOEM供給品のようだ。同じ製品をNTTアドバンステクノロジ128@ATという名称で販売しているが、価格はそれよりも1万円安い3万9800円に設定されている。HIT-128の方はSpecial Priceで1万5000円とかなり安い。

 しかし、ISDNターミナルアダプタは液晶ディスプレイに代表されるように、外見を含めた高機能化が進んでいる。はたして低価格までどこまで頑張れるのだろうか。



これからはUSBだ!

 さて、冒頭でも触れたように、NECがUSBを装備したISDNターミナルアダプタを発売したことで、いよいよUSBが現実的なインターフェイスとして利用できそうな状況になってきた。そこで、USB関連の製品も2つほど紹介しよう。

i・Station
【ナナオ i・Station】
USBHawk
【新潟キャノテック USBHawk】

 ナナオは同社のEIZOシリーズのディスプレイの下に取り付けるUSBハブのi・Stationを出品していた。同社ではディスプレイの下に取り付けるi・Sound V1という製品を販売しているが、こちらはUSBハブとスピーカーが一体化されたもの。今後のUSB関連製品の増加を考えれば、ユーザーにとっても非常に便利な製品と言えそうだ。価格や発売時期は未定となっている。

 一方、新潟キャノテックはセントロニクス準拠のプリンタポートとUSBポートを接続するケーブルのUSBHawkを参考出品していた。通信速度は1.2Mbytes/秒、長さは2.5メートルとなっている。既存の資産を活かす製品として注目できそうだ。


[Text by 法林岳之]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp