【周辺機器】

山田久美夫の

化粧箱付き製品版
「オリンパス・CAMEDIA C-800L」レポート

OLYMPUS C-800L '96/10/5 発売
標準価格:128,000円

連絡先:オリンパス販売株式会社
Tel. 03-3251-8940(ダイレクトイン)

 以前からベータモデルでは何度か紹介していた、待望の81万画素モデル「オリンパス・CAMEDIA C-800L」の化粧箱つき製品版が今回入手できた。ベータモデルよりもいっそう画質に磨きが掛かった製品版モデルの実力について、早速レポートしよう。もちろん、高画質なパーソナルモデルといえば、すでに57万画素の「Canon・Powershot600」が先行して発売されているため、今回の実写はこのモデルで同位置被写体を同じ位置から撮影したカットも同時に掲載し、お届けしよう。


一段と磨きが掛かった高画質モデル


 本機はオリンパス初のパーソナル機である「CAMEDIA」シリーズのフラッグシップである、パーソナル機では現在最高の81万画素CCDを採用した高画質モデルだ。現在主流になっているのは35~40万画素CCDのVGAクラスであり、CCDの画素数で2倍、画像サイズではその4倍にあたるXGAを実現している。57万画素のPowershot600がほぼSVGAサイズだったのに比べても、かなり大きなサイズだ。現在、報道を中心としたプロフェッショナル用デジタルカメラの主流が130~150万画素クラスであり、本機はこれまでのパーソナル機とプロ用機の中間に位置するが、かなりプロ用機の領域に近付いた画質が期待できるモデルといえる。

 CCDはデジタルビデオ用のものを流用しており、デジタルスチルカメラ用の全画素一括読みだし式のプログレッシブスキャンタイプではない(某社の欧州向けPAL規格用デジタルビデオのものと思われる)。また、カラー画像を撮影するためのカラーフィルターも、C-400Lなどが採用している最近主流の原色タイプではなく、補色タイプのものが採用されている。
 もちろん、ビデオ用の場合には画像を走査線一本おきにしか読み出すことができないので、そのまま使用すると、奇数と偶数列の走査線情報を読み出す際に時間差が生じるため、動体を撮影した際に画像のズレが生ずることになる。また、走査線一本おきの画像(フィールド画像)を利用し、その間を補完して画像を生成する方法もあるが、いずれにせよ、さまざまなデメリットがある。そのため、本機では機械式のシャッターで一度全画面を露光してシャッターを閉じ、その後に両方の走査線情報を読み出すという凝った方式で、動体撮影への対応と高画質化を両立している。この方式は以前からリコーDC-1やDC-2Lが採用しているもので、ビデオ用CCD採用機のスタンダードな方式となっている。
 最初から専用CCDを開発・採用できれば、こんな面倒な方法をとる必要はないが、現時点では高画素数の全画素読み出し式CCDはまだまだ需要が少なく、かなり高価なことを考えると、高画素数のビデオ用CCDを採用するのが、一番容易に、購入できる価格帯での高画質化が図れる方法といえるわけだ。

 このタイプのモデルで問題になるのが、走査線情報による画質低下をいかに抑えられるかという点だ。というのは、このタイプのモデルはDC-1にしろ、Powershotにしろ、滑らかなグラデーションがメインになる空などを見ると、この走査線読み出しが原因と思われる縞状のムラが見られることがある。しかし、本機、とくに製品版ではこのような傾向が見られず、安心して撮影できる。
 逆に、画像の細部、とくに斜め方向に明確な輪郭がある被写体では、PowershotよりもC-800Lのほうが、明確なジャギが見られることが多い。



81万画素らしさを体感できるシャープな画質

 81万画素と聞くと、やはり期待されるのが、その画質。これはもう、百聞は一見にしかず。とにかく、本ページのサムネール画像をクリックして、その元画像を見ていただけば、その迫力がすぐに理解できるだろう。
 とはいっても、画像サイズがXGAなので、ほとんどの人は画面いっぱい、もしくは、スクロールしないと見渡せない世界だと思う。つまり、インターネットエクスプローラでも、ネットスケープでも、当然のことながらモニター解像度での等倍表示になってしまうので、この状態ではさほど高画質な感じはないかもしれない。つまり、35万画素のVGAモデルなら、画面内に収まるけど、XGAモデルでは収まらずに部分表示されてしまうので、表示画像だけを見ると、実際に大きな画質の差は見られないだろう。どうも、81万画素!というと、画像サイズがVGAのままシャープになるような誤解や錯覚をしている人が多いけれど、それは間違い。そう、インターネット上で表示するには、すでにオーバースペックなのだ。
 もちろん、ビュワーや画像処理ソフトで縮小表示すると、画像の目が詰まって、かなりシャープに見えるが、逆に輪郭が強調され過ぎて、ギスギスした感じに見えることもある。つまり、モニター上で扱うには、十分過ぎる世界なのだ。
 それじゃ、普通のパソコンユーザーにとって必要ないじゃないか!と思われる人は、これをプリントアウトしたり、等倍表示してモニターから離れてみたり、画像処理ソフトでVGAに縮小リサイズしてみて欲しい。こうなると、従来のVGAサイズのモデルとは、全然違った、高画質な世界が堪能できる。もともと情報量が多いので、プリントのようにモニターよりも遥かに高い解像度が必要なケースや、離れて眺めた時、縮小リサイズのようにVGAながらもそれ以上の情報を凝縮した世界では、「ああ、やっぱり、81万画素はいいなあ~」と思えるだろう。


 もちろん、本機は単にCCDの画素数が多いだけの、数値上だけの”高画素”モデルじゃない。レンズもCCDの画素のサイズに見合った解像度を備えているし、C-400Lと違ってピント合わせがAF方式なので、撮影距離による画質の差がない点も大きな特徴だ。しかし、無限遠のピントに関しては「こんなものかなあ~」と思ってしまうカットもあり、ときどきフォーカスをミスるときもある。これは機構上致し方ないのかもしれないが、せめて、無限遠にピントを固定するモードくらいは欲しいと思った。
 階調再現性もなかなか優秀で、ハイライトの白飛びやシャドーの潰れもほとんどなく、なかなか美しい画像となっている。



ちょっと気になる派手な色調


 補色系CCDを採用しているため、色傾向は原色CCDの「C-400L」とは異なる。あのピュアな色再現は補色系には荷が重すぎる。そのため、あの色調の高画質モデルだと思って購入すると、落胆するかもしれない。
 けれど、この「C-800L」の色再現性もなかなか個性的だ。本機はベータ機ではナチュラル指向だったのだが、製品版では派手さを増している。しかも、彩度が低めの補色CCDの画像をもとに、無理に彩度を高めているようで、やや違和感を感じることも多い。C-400Lの色味に近づけようとしたのだろうが、これはやり過ぎでむしろ逆効果だ。このような素人向けの絵作りは、写真の美しさを知っているカメラメーカーとしては謹んで欲しいし、このクラスの高画質モデルをわざわざ購入しようという人はこの色調を好まないだろう。
 むしろ、今回比較したPowershot600のほうが自然で誇張がないぶん、好感が持てる。この色調ならこれを元に画像処理ソフトを使って、自分の意図に近くなるように彩度を高めることもできる。
 すでにベータ機は手元にないので、正確な比較はできないが、この点に関しては、ベータ機よりもむしろ後退していると思われる。

 誤解を招かぬように、ひとこと付け加えておくと、いくら81万画素モデルといえども、プロフェッショナル用の130~150万画素モデルの画質には遠く及ばない。とくに、ローパスフィルターのないコダックDCS系(キヤノンEOS-DCSを含む)の切れ味の鋭さや階調の豊かさとは一線を画す世界だ。「キヤノン・EOS-DCS3」(130万画素・198万円)のオーナーとしては、結構安心してしまうほどの違いがまだまだあるぞ!といってしまおう。



C-800L vs Powershot600 比較レポート

SAMPLE1
C-800LPowershot600
 両機では、同じ位置から撮影しても、これだけ写る範囲が違う。そのため、完全な比較というわけにはゆかないが、傾向は分かるだろう。このカットでは、周囲が暗かったこともあって、周辺が大きく入り込んでいるC-800Lは露出オーバー気味。日陰で撮影したこともあって発色も青みが強い。Powershotは適度な露出と色再現だ。また、C-800Lはちょっと後ろ側にピントが外れてしまった。この程度のピンボケは液晶モニターで確認できないので始末に悪い。


SAMPLE2
C-800LPowershot600
 結構意地悪なカットだが、露出は両機とも適正。しかし、色傾向はC-800Lのほうが鮮やかだが、ちょっとわざとらしい感じもある。解像度はほぼ同等だが、モニターで原寸大でみるとPowershotのほうが若干いい。しかし、同じサイズにプリントすると画像サイズが異なるため、ややC-800Lのほうが有利になる。


SAMPLE3
C-800LPowershot600
 以前のベータ版C-800Lはナチュラルな色調が魅力だったが、製品版はかなり原色系の彩度が高いものとなっている。こうして、Powershotに比べると、まるで別の花のよう。派手なほうが見栄えがするとはいえ、これはいかんせんやり過ぎ。補色CCDなのに無理にC-400Lに似せたのがまずかったのでは・・・。


SAMPLE4
C-800LPowershot600
 夕方に撮影したカットだが、これほど両機で色が違うとは思わなかった。C-800Lはもともと冷色系なこともあって、夕暮れのブルーがかなり強調されてしまい、空の色調などをみると不自然だ。一方のPowershotはオートホワイトバランスなどが完璧に働いた結果、日中に撮影したかのような、全く雰囲気のないカットになってしまった。個人的にはどちらも不満足だし、どんな感じに写るのか予想が付かないので、これらのカメラで本格的な作品を撮ることはかなり難しい。


SAMPLE5
C-800LPowershot600
 定点観測となっている煉瓦塀。レンズの収差を見るのに絶好の被写体だ。もちろん、C-800Lのレンズは5mmF2.8、Powershotは7mmF2.5なので、レンズの画角(写る範囲)がかなり違い、正確な比較にはならないが、C-800Lのほうが画角が広いこともあって、画面周辺部で直線の歪みが若干見られる。一方、Powershotは画角が狭いこともあり、歪みはさほど気にならない。試しに2枚の写真をPhotoshopでリサイズし、透かし合成してみたら、偶然ピタリを一致した。つまり、画面中心部だけで比較すれば、歪曲収差は全く同等ということだ。


SAMPLE6
C-800LPowershot600
 夕方近い時間帯に、暗い前景と明るい遠景を撮影したもの。デジタルカメラの苦手なシーンだ。ここでも、C-800Lはかなり青みが強い発色を示し、Powershotはあっけらかんとした味気ない風景になっている。撮影時には一度、遠景でフォーカスロック(AFでピントを合わせてその状態ですること)をしている。遠景のピントはいずれも甲乙付けがたいレベル。もう少しキッチリとしたピントが来てもいいような気がするのだが・・・。


SAMPLE7
C-800LPowershot600
  この手の赤がメインになるカットはC-800Lの独壇場。見た目よりもきれいな色に写っている。Powershotはちょっと色が浅い感じだ。また、コンテナ右側の光が当たっている面は、Powershotでは白く飛んでいるが、C-800Lではきれいに描写されている。この違いはとても大きい。


SAMPLE8
C-800LPowershot600
 このカットは色の違いが大きく、色味としてはC-800Lのほうがきれい。しかし、車の前面にあるVWマークや曲線ラインを詳細に見ると、Powershotのほうがジャギっぽさが少なく、細部が滑らかに描写されている。


SAMPLE9
C-800LPowershot600
 夕日に照らされた横浜・山手資料館の銘板。C-800Lはもともと青みが強く、それに黄色い光が混ざったため、グリーンに発色している。いくらなんでも、夕方でこの色はないだろう。一方、Powershotはオートホワイトバランス機能が馬鹿正直に作動して、夕方の光を台無しにしている。両機とも128000円と、一眼レフが楽に購入できる価格なのだから、カラーバランスのマニュアル設定か、そこまでゆかなくても、オートホワイトバランスのほかに、撮影時に光源(色温度)をプリセットできる機能くらいは欲しい。


SAMPLE10
C-800LPowershot600
 いつもの看板。同じ位置からでも、これだけ写る範囲が異なる。距離にして一歩弱くらいの違いがある。そのため、狭い場所での記念写真などは、C-800Lのほうが断然有利だ。また、Powershotはカメラメーカーの設計とは思えないほどファインダーの見え方が悪く、フレームがほとんどまともに見えないのは理解に苦しむ。そのため、このカットでも上方がギリギリになってしまった。もっとも、普通の人は枠ギリギリにフレーミングすることが少ないので、これでもいいのかもしれないが・・・。このカットでも、色再現性に大きな違いが見られる。


SAMPLE11
C-800LPowershot600
 ツタのグリーンはPowershotのほうがキレイ。コントラストも高めなのでメリハリのある画面になっている。一方、C-800Lはやや濁った感じだ。見た目の色は、ちょうどこの中間で、どちらかというとC-800Lに近い。解像度はほぼ互角だが、同じ表示倍率で比較してみると、ジャギっぽさが少ない分だけ、Powershotのほうが滑らかに見える。


転送時間は1コマ30秒見ておけば安心

 さて、画質はひとまずとして、操作性などに関して、気になった点を列記しておこう。基本的にボディーはC-400Lと同じもので、カラーリングがやや異なるだけで、別段、高級感があるわけではないのはやや不満だ。やはり価格差なりに、なんらかの外観上の違いが欲しくなるのは人情だろう。

 持った感じも「C-400L」となんら変わりはない。撮影枚数は内蔵メモリーが6MBもあるため、XGAサイズの画像ながらも30枚もの撮影ができる。C-400Lの20枚の5割増になるわけだが、この10枚の違いは大きい。とくに、C-400Lでは常に枚数を考えて撮影する必要があったが、10枚増えると精神的な余裕はかなり広がる。

リブレットにて転送中
 もっとも、私のように一度に多くの枚数を撮影する人は、必ずサブノートパソコンなどを使って、出先での転送を迫られることになる(私はこの目的のためにリブレット20を購入してしまったのだから・・・)。転送速度は、通信速度を57600に設定して1コマ約30秒、その2倍の最高速115200では約15秒で転送できることになる。私の場合には最高速ではやや不安定になったことがあったので、57600での転送をしたため、30枚で15分もの時間を要した。その半分にしても、ノートパソコンのセッティングなどで、所要時間は最低でも10分はかかる。
夕暮れ時、恋人たちでうまった横浜・港の見える丘公園のベンチで、リブレットにC-800Lを接続して画像を転送するその姿は、惨め以外の何者でもない。ふと、「設計担当者も、このような体験をしたことがあるのだろうか?」という思いが脳裏をよぎる。もし、一度でもこんな体験をしていたら、次期モデルには大いに期待ができるのだが・・・。もっとも、SSFDCという名称を改め「スマートメディア」となった、超薄型メモリーでは容量が少なすぎるので、きっと、大容量が期待できるコンパクトフラッシュを採用するのだろうなあ~と思っているのだが・・・。

 問題の電池の消費だが、今回の製品版は実質2日しか手元になかったため、その間に100コマ以上撮影し、転送したが、バッテリーの残量表示は減ることなく、そのまま。もっとも、ほとんど液晶モニターを使わなかったことと、ストロボ撮影が少なかったことも、好条件となっているが、いずれにせよ、電池の消耗はかなり少なそうだ。



本当の”高画質”とは・・・

 今回の実写でもっとも気になったのは、解像力ではなく、色や階調の再現性だ。C-800Lも、比較用として動じ撮影したPowershotも、12万8000円というかなり高価なモデルだ。つまり、普通の一眼レフなら楽に購入できるし、品のある高画質な高級コンパクトカメラだって手が届く価格帯だ。デジタルカメラは現時点でコストがかかるといっても、高いことには変わりない。ならば、もっときちんとした絵作りをするべきではないだろうか?
 とくに、このクラスは画質を最優先する、目の肥えたユーザーが購入時にターゲットにする機種だけに、解像度や機能だけでなく、画像としての美しさが、もっとも優先されてしかるべきだと思う。
 もともと日本人は解像度を最優先させる傾向があるが、実際に大切なのは極限の解像度ではなく、パッと見たときにきれいで自然な立体感を感じさせる、心地よい色調や滑らかな階調といえる。この点をきちんとクリアしない限り、このクラスの高画素数モデルは、単なる”高解像度モデル”であっても、真の”高画質モデル”と呼ぶに値しない。厳しい言い方かもしれないが、デジタルカメラはそろそろ、その世界に足を踏み入れてゆく時期に来ていると思う。
 その意味では、画素数は少ないけれど、35万画素クラスの「オリンパス・C-400L」や「フジ・DS-7」のほうが、よほど感性豊かな写りをするデジタルカメラといえる。なにやら、難しそうな話に聞こえるかもしれないが、なにも難しいことはない。モニター上に写った、各機種の画像を素直に見れば、誰もが、容易に理解できることなのだから・・・。


□オリンパスのホームページ
http://www.olympus.co.jp/

【関連記事】
□【9/24】おお、さすが81万画素!「オリンパス C-800L」 (山田久美夫の実写レポート in フォトキナ'96)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/960924/r_c800l.htm
□【10/4】製品版「オリンパス・C-400L」実写レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/961004/c400l.htm
□【10/7】山田久美夫が選ぶデジタルカメラ・ランキング(10月7日版)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/961007/digi5.htm

('96/10/21)

[Reported by 山田 久美夫 ]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp