【周辺機器】

山田久美夫の

製品版「オリンパス・C-400L」実写レポート

OLYMPUS C-400L '96/10/5 発売予定
標準価格:74,800円

連絡先:オリンパス販売株式会社
Tel. 03-3251-8940(ダイレクトイン)

 10月5日発売の「オリンパス・C-400L」の製品版が、発売直前に入手できたので、早速その仕上がりをレポートしよう。

 今回の製品は、出荷時と同様に化粧箱に入って届けられ、出荷されるものと同一と説明されている。

 基本的に、以前レポートしたベータ機と大きな違いはない。また画質は若干向上しているように感じられたことを、まず最初にお伝えしよう。そのため、今回は主に画質と、製品版を使ってみて気になったところを中心にレポートしよう。細かな操作性や操作感などは、以前レポートしたものを参考にしていただきたい。


 本機は基本的に同社の人気コンパクトカメラ「ミュー」系列のデザインや操作性を採用しており、普通のカメラ感覚で扱える点が大きな特徴であり、メリットといえる。もっとも、サイズはそれなりに大きく、このデザインを採用するために、やや無駄なスペースが生まれていること点は否めない。しかし、同社として初のパーソナル機であり(以前のVC-1100シリーズは業務用途がメインだ)、開発期間が1年と短かったことを考えれば、初物としては、なかなかよくできたモデルといえるだろう。


CAMEDIA  撮影は基本的に光学式ファインダーを利用するタイプ。これは電池の消耗を軽減するのが主な目的だが、必要に応じて、背面のグリーンのボタンを押している間だけ、液晶モニター上をファインダー代わりに使えるようになっている(常時点灯は基本的にできないというが、できれば常時点灯できる隠しモードを用意して欲しかったなあ~)。

 液晶モニターは1.8インチのTFT型だが、見え味はあまり鋭くなく、彩度もやや低めでおとなしい感じだ。また、光学ファインダーとの位置関係などにより、指紋や鼻の油がつきやすい位置にあり、その痕跡が液晶モニター表面に残りやすい点はけっこう気になる。明るい場所での見やすさを考慮して、反射軽減のための艶消し処理をしているようだが、いくら拭いてもさほどきれいに指紋や油が取れない点はぜひ改良してほしい。

 画像の記録に要する時間は5~6秒程度で標準的。しかし、光学ファインダーでスイスイ撮影できるので、これでもけっこう長く感じる。上級機で画像サイズが遥かに大きな「C-800L」でも記録時間がほぼ同じなので、コストの関係もあるだろうが、もう少し短くして欲しかった。


 記録枚数は発表時と同じようにVGAモードで20枚。もちろん、内蔵メモリーのみの仕様だ。設計者に聞いたところ、交換式の記録媒体の採用も考えたが、媒体の選定とデバイスの供給時期などの関係で、今回は断念したという。とはいえ、やはり20枚は厳しい。ほんとうにあっと言う間になくなるという感じだ。

 そのため、今回の撮影中も、1日何回も屋外でリブレット20を取り出して転送することになった。もっとも、1コマ約15秒で転送できるため、20枚で5分なので、ギリギリ我慢できる範囲だが、そのために別途サブノートを持ち歩くのはあまり現実的ではない(私はデジタルカメラの画像転送と出先でのインターネットのチェックのためにリブレットを購入したわけだが・・・)。

 逆に感心したのは、電池の持ち。撮影時に液晶を使わないこともあって、パナソニックのアルカリ電池を使えば100枚以上は楽勝だ(ただし、ストロボを多用するとその限りではない)。これは画像の転送を含めての実質的な撮影枚数なので、なかなか立派なもの。もっとも、「リコー・DC-2L」はシャッター半押し時と撮影直後に液晶が点灯するにも関わらず、楽に100枚以上撮影できることを考えれば、当然かもしれないが・・・。


 もっとも気になる画質だが、これはもう、見ての通り。現行の35~40万画素クラスのモデルのなかでは、確実にトップクラスといっていいレベルだ。とくに、階調の再現性と、やや派手めだが見栄えのする色調は大きな魅力といえる。とにかく、善し悪しは別として、人間が見たときよりもきれいに写るデジタルカメラといえる。シャープネスもなかなかなもの。これは1ミリあたり100本以上という高解像度のレンズを採用しているという点が大きい。とくに、通常モードでは2m前後の距離で撮影すると、本当にシャープ。マクロ域でも最適な距離にあたると、ビックリするほどの解像度を示す。


公園 SAMPLE 1
かなり明暗比が高いシーンだが、ハイライトからシャドーまでよく再現されている。これだけでれば、立派! しかし、絞りが開き気味のため、被写界深度(ピントの合う範囲)が狭く、遠景はやや甘い。


港 SAMPLE 2
露出条件が厳しいシーンだが、白い船が白く写っており(普通はもっと露出アンダーになる)、しかも船のハイライトまで描写されている。また、明るい条件なので、絞りが絞られているせいか、遠景だがピントの甘さはさほど感じられない。


花 人形 SAMPLE 3
マクロモードで撮影したカット。撮影距離は目測で20~30センチだが、かなりシャープな描写となっており感心する。もちろん、このようなカットでも一時的に液晶モニターを使いフレーミングできるので安心。色再現性も良好だ。


 しかしながら、本機はオートフォーカスではなく、通常距離とマクロとの2段切り替え式のため、苦手な撮影距離が存在する。とくに気になったのは、風景のような無限遠撮影でのピントの甘さだ。日中ならば、絞りが絞られるので、被写界深度(ピントの合う範囲のことで、絞りが絞られると範囲が広くなる)でカバーできるが、曇天や夕夜景のように絞りが開く条件では、明らかにピンボケ状態になる。画質の素性が良いだけに、これはとても残念だ。これならば、最近のコンパクトカメラのように無限遠モードを装備して欲しかった。まあ、コストが許せば、このクラスでも「C-800L」と同様にAF機構が欲しいところだろう(「リコー・DC-2L」のピントの良さはAF機能の採用が大きな要素になっていることからも、それがわかるだろう)。

 また、デジタルカメラは普通のカメラと比較して、接写撮影をする機会が多いカメラといえる。これは液晶モニター上で画像を確認できるという機能があるからともいえる。本機の場合、マクロ時には20cmまでの接写ができるが、できれば、もうちょっと寄りたいところ。これは先のAF機能とも関係してくるが、画質が良いだけに、いろいろな被写体を撮影してみたいというのがユーザーの心理というものだろう。


メーター SAMPLE 4
近距離での撮影でこちらは通常モード。75センチまで寄れるので、通常はマクロモードに切り替えなくても大丈夫。日中の明るい条件のため、被写界深度も広く、シャープな描写となっている。


柱 SAMPLE 5
レンズが35mm判換算で35mm相当とワイドなので、こんな遠近感のある写真も撮れる。もっとも、光学ファインダーは実際に写る範囲よりかなり狭いので、こんなときには液晶モニターでその効果を確認するといい。


テーブル SAMPLE 6
撮影距離が約1.5m前後のこのようなカットがもっともシャープ。35万画素でこれくらい写れば文句ない。でも、得意な距離が限られるので、これがAFだったなあ~と思ってしまう。


 画像の記録は、標準的なJPEGフォーマットに準拠しており、専用ソフトだけでなく、JPEGファイルが開けるソフトなら、なんでも開くことができる。もちろん、インターネットブラウザーでもOKで、これはとっても便利だ。しかし、本機はJPEG圧縮時のブロックノイズが他機種よりもやや目立つ傾向がある。想像するに、ファイルサイズを固定し、その範囲で圧縮する方式を採用している。記録時のファイルサイズ自体は他機種とほぼ同等だが、他機種に比べ画像がシャープな分だけ情報量が多く、実質的な圧縮率を高くせざるを得なくなるのではないだろうか。

 これは、撮影枚数を保証できるため、カメラメーカーが好んで採用しているファイルサイズ固定式JPEG圧縮方式に原因がある。圧縮率固定式ならば、絵柄が細かな画像ほど圧縮時のファイルサイズが大きくなる(これは、同一画像に画像処理ソフトでシャープ処理を施して、同じ圧縮率でJPEG記録してみると、すぐに理解できる)。そのため、後者は限られたメモリー容量のなかに何枚記録できるかという撮影枚数表示がしにくくなるわけだ。個人的には、細かくシャープな絵柄ほど強く圧縮せざるをえない、ファイルサイズ固定式JPEGには賛成しかねる。とくに、今後、交換式の大容量PCカードが普及することを考えると、「最低でも何枚記録できます」という表記でもいいのではないかと思っているのだが・・・。


C-400L vs DS-7 比較レポート


C-400L


DS-7



C400L-車 DS7-車 比較例1:車
このようなメタリックな被写体は、やはりシャープな「C-400L」が得意とする分野。色再現もC-400Lのほうが自然だ。曇天の夕刻でのため、DS-7はオートホワイトバランス機能が色の判断を誤ったようだ(敏感すぎて、ときどきこのようなことがある)。


C400L-花壇 DS7-花壇 比較例2:花壇
発色はいずれも自然で、これは好みが分かれる世界。”素直なDS-7”、”きれいなC-400L”といったところか。花の細部の描写はやはりC-400Lが勝る。また、手前の柵を見ると、歪曲収差もC-400Lのほうが少ない。



C400L-猫の美術館 DS7-猫の美術館 比較例3:猫の美術館
このカットを見ると、それぞれの色傾向の違いがわかる。まず、DS-7はほんとうに見た目通りという感じ。それに対してC-400Lはそれぞれの色の彩度が高く、とくに原色系がとっても鮮やか。これは好みですね。



C400L-建物 DS7-建物 比較例4:建物
このカットを見ると、階調の再現性の違いがよくわかる。C-400Lは建物の屋根から壁のシャドー部まできっちり再現しているが、それに比べるとDS-7は若干再現域が狭く感じる。もっとも、かなり微妙な世界ですけどね・・・。



C400L-パラソル DS7-パラソル 比較例5:パラソル
同じ位置から撮影しているが、写る範囲はひとまわり違う。C-400Lのほうがやや広めで風景や記念写真などには便利。DS-7のほうが若干狭いが、普段使うにはこちらのほうが使いやすいかも。


 今回はごく短期間しか製品版が手元になかったので、一部の画像だけ、現在のランキングNo.1の「フジ・DS-7」と比較しながら撮影した。現時点で、画質だけを比較すれば、やはり「C-400L」に軍配があがりそうだ。もっとも、ランキングはトータルでのバランスを考えて決定するため、単純に画質だけの評価では決められない。しかも、フォトキナで見た”シャープな「DS-7」”という世界もある。デジタルカメラは、よくカタログに記載されているような”予告なき改良”がある分野でもあり、設計者の間では製品化後も、管理しきれないくらいのバージョンアップがあるという(!?)。そのため、ランキングもできる範囲で、各機種の最新版を使って決定したいと思っている(あくまでも、”できる範囲で”という世界だが・・・)。

 「ソニー・サイバーショット」の試用か発売を待って更新する予定で、約一ヶ月間も更新せずに来たが、製品が間に合いそうもないので、とりあえず、今回の製品版「C-400L」を含めて、近日中にランキングを更新する。もちろん、上位機種の順位変動は確実だろう。

【参考記事】
【9/15】オリンパス CAMEDIA C-400L試作機 実写レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/960827/olympus.htm
【8/30】プロカメラマン 山田久美夫が見たCAMEDIA、オリンパス CAMEDIA発表会インプレッション
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/960830/olympus.htm
【8/27】オリンパスが81万画素CCDのデジタルカメラを発売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/960827/olympus.htm
山田久美夫が選ぶ「デジタルカメラ・ランキング」(9月2日版)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/960902/digi5.htm

('96/10/4)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp