【法林岳之の非同期通信レポート】

法林岳之の非同期通信レポート 第6回

NETWORLD+INTEROP'96で見つけた注目ハードウェア 第1弾

TEXT:法林岳之


●これからのPCカードはマルチファンクション

 Windows World Expo'96のレポートでも紹介したが、今回のN+I'96でも数多くのマルチファンクションPCカードが展示されていた。なかでも最も充実していたのがモデムとEthernetの機能を持つ製品だ。

CEM28.8 CentreCOM LM28-PCM-T
 まず、Xircomが住友商事のブースで展示していたのがCEM28.8(写真左)だ。モデム部分はV.34準拠の28.8Kbps対応で、FAX部分は最大14400bps対応。Ethernet部分は10BASE-Tコネクタ付と10BASE-T/2コネクタ付の2種類が用意される。ケーブルはPCカードのエッジに接続するタイプで、モデムとLANのコネクタは別々になっている。Windows95/NTをはじめ、各種OS用ドライバも添付されており、幅広い環境で利用できる。なお、同社ではCEM28.8に続き、年内にモデム部分を33.6Kbps対応にしたものを国内で発売する予定で、ISDNカードとEthernet、33.6Kbpsモデムの3in1マルチファンクションカードなども開発中だそうだ。
 アライドテレシスも同様の製品としてCentreCOM LM28-PCM-T(写真右)を出展していた。価格は5万9800円の予定で、JATEの認定が終わり次第、出荷するそうだ。国内メーカーだけに、IBM PC/AT互換機だけでなく、PC-9800シリーズにも対応している点は要チェック。


GO CARD Thunder336LAN
 一方、すでに33.6Kbps対応を済ませた製品を展示していたメーカーもいくつかある。まず、ネットワークバリューコンポーネンツが展示していたのがデンマークのOlicom製のGO CARD TR/MODEM336(写真左)だ。OlicomはTokenRingカードの世界最大手メーカーとして知られている。国内認定品は9月から出荷される予定。
 同じ9月から出荷を予定しているのがNTTインテリジェントテクノロジThunderCard336LAN(写真右)だ。スペック的には他のカードと同じだが、LANとモデムの同時使用を保証しており、ネットワークに接続したまま、モデムで発信することが可能。


EP-400

 また、OEM供給が中心になるのかもしれないが、ADDTRONEP-400(写真左)は、他のモデム&LANカードとコネクタ部などで違いを見せている。PCカード側のコネクタは1つしかなく、二またに分かれた専用ケーブルを接続する。専用ケーブルの先はRJ11とRJ45のコネクタが付いており、それぞれを電話回線やハブに接続する。モデム部はV.34準拠の28.8Kbpsまでで、Ethernet部はNE2000互換となっている。持ち歩くケーブルが1本で済むのはいいが、片方の機能しか使わないとき、ケーブルが宙ぶらりんになってしまうのはあまり美しくない気もする……。

 この他にもマルチファンクションPCカードがいくつか出展されており、今秋の33.6Kbpsプロトコルの正式勧告に合わせて、ますます種類が増えて来そうな気配だ。気になる価格は実売で4万円を切るあたりが主戦場になりそうだ。



●ボイスモデムも出荷開始

 アナログ回線を使って音声とデータをやり取りするプロトコルがITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)で8月に勧告されることを受け、ボイスモデムもいくつか展示されていた。ただ、データ通信中に音声通話が必要な使い方がそれほど多くないため、ソフトウェアなどとセットで販売されることが多いようだ。

Sportster VOICE336 Office Porte Vice
 U.S.Roboticsの製品を国内で取り扱うインテグランは、Sportster VOICE336(写真左)を出展していた。この製品はVoice Viewという機能を搭載しており、電話を切らずに通話とデータ通信を切り替えながら使うことができるのが特徴。アプリケーションソフトと組み合わせることにより、パソコンにボイスメールボックスを作ることも可能。データ通信部が今秋勧告される33.6Kbpsプロトコルに対応している点も見逃せない。

 今年、日本法人を設立したマイクロコムもボイス機能を持ったOffice Porte Voice(写真右)を出展していた。こちらはインテルなどが提供していたDSVD(Digital Simulatous Voice and Data)というプロトコルに準拠したもので、音声通話とデータ通信を同時に行なうことが可能。モデム本体にはスピーカーだけでなく、マイクも含まれている。同社ではQuickCAMなどの小型カメラと組み合わせ、3万円程度で販売するとしており、かなりお買得感の高い製品になりそうだ。ISDN並みの高速通信ができるわけではないが、簡易テレビ電話や対戦ゲームなど、応用範囲の広い製品と言えるだろう。


ROCKWELL Modem Chip

 また、モデムチップセットのメーカーとして最大手のRockwellは、33.6Kbpsプロトコルとボイス機能に対応した新しいモデムチップセットRCV336ACF/SPを展示していた。33.6Kbps対応プロトコルは今秋、ITU-Tで勧告される予定だが、すでに国内メーカーもいくつか対応製品を先行発売している。今秋以降はこのチップセットを使った製品が数多く発売されることになりそうだ。


[Reported by 法林岳之]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp