MicrosoftのマルチメディアAPIセミナ
●DirextX 2とActiveMovie 米Microsoft社でDirectXのエバンジェリストのリーダーをつとめるアレックス St. ジョン氏は、遠目から見るとビヤ樽と間違えそうなほどの巨漢だ。しかも、その体にはユーモアまでたっぷり詰まっていて、昨年10月に東京で開催した「Windows 95 Game Developer Seminar」で来日した時も、ジョークの連発で会場を湧かせた。そして、今回も開口一番「Game Developer Seminarに来た人も、ひげがなくなっちゃったから、僕だとわからなくなったんじゃないの?」とジョークが飛び出した。もちろん、ひげがなくてもあれだけの巨体は見間違えようがない。 ジョン氏が登場したのは、Windows Worldと併催された「Microsoft DirectX 2 & ActiveMovie Advanced Workshop」というセミナーだ。タイトルの通り、DirectX 2とActiveMovieという、Microsoftのキーテクノロジをテーマに行われた。 DirectXは、ご存じの通りWindows用のマルチメディア拡張API群で、グラフィックスを高速化するDirectDraw、サウンドをコントロールするDirectSound、対戦型ゲームプレイを可能にするDirectPlay、ジョイスティックなど入力デバイスをサポートするDirectInputなどで構成されている。正式版は、昨年の10月に「Microsoft Windows 95 Game Software Developers Kit (SDK)」として登場しており、キーワードとしては馴染みのある人も多いだろう。しかし、それがいつの間にか「DirectX 2」にバージョンアップしていたことを知っている人は多くはあるまい。 Microsoftは6月13日に「Microsoft DirectX 2 API SDK」の配布を開始した。変更のポイントは、おもにDirectDrawにいくつかの機能拡張を加えたほか、新たに3DグラフィックスAPIである「Direct3D」を加えたことにある。バージョンをわざわざ変えたのは、出遅れていたDirect3Dを加えて、ようやく本来意図していた姿になったためだろう。 Direct3Dは、3Dグラフィックスアクセラレータの機能を活かし、各ボードで共通に使える3Dゲームやアプリケーションの土台となる技術だ。もともと3月頃に最終版が出荷される予定だったのだが、3ヶ月も遅れての登場となった。今回のセミナでも遅れたことに関する説明はなかった。 さて、セミナの内容だが、ジョン氏のジョークが同じなら、その内容もそれほど進展がなかった。ただし、今回はDirectX対応ゲームが揃い始めたことで、デモは華やかだった。とくに、3Dゲームをアーケード並の3D性能を持つ3DFXなどのグラフィックスチップ搭載マシンで実行したデモは、かなりのインパクト。また、DirectPlayを使った対戦ゲームもジョン氏らが実演して見せた。全体に、現実味が増した感があり、いよいよWindows 95対応ゲームの時代が来たと感じさせる効果はあった。 後半は、もうすぐ正式版が登場する予定の動画用の新API、ActiveMovieがテーマ。こちらでは、MPEG1やINDEO4形式のビデオのソフト再生をデモ。またネットワーク経由でMPEG1ビデオをプレイするデモも見せた。このAPIがDirectMovieではなくActiveMovieと名づけられたのは、ひとえにこのネットワーク上のストリーミングビデオ再生に対応できるという特徴からだ。 ActiveMovieは、QuickTimeのMOVファイルにも標準で対応しており、そのデモもあった。ただし、将来対応する予定のMacintosh版ActiveMovieは見ることができなかった。 DirectXやActiveMovieなど、Windows 95のマルチメディア拡張は、もともとWindows 95発売時に揃っていて当然だったAPIだ。それが遅れたために、Windows 95でゲームやインタラクティブメディアの市場を花開かせるという当初の計画は遅れに遅れた。今回APIが揃うメドが立ったことで、ようやく今年のクリスマス商戦にぎりぎりでゲームを揃えられる情勢になったようだ。 PC Watchの「Windows WORLD EXPO/TOKYO 96レポート」 ('96/6/27)
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[Reported by 後藤 弘茂]