Windows WORLD EXPOで、ビル・ゲイツ氏が
キーノートスピーチ

●GUIに代わる次世代インタフェース「Active Desktop」をデモ


 「パソコンは今、もっとも重要なコミュニケーションツールになりつつある。電話や無線、テレビよりも大きく世界を変えると確信している」
 スモークとともにステージに登場したビル・ゲイツ会長は、こんなセリフでキーノートスピーチを切り出した。ゲイツ氏が、こう語る根拠は、いうまでもなくインターネットの成長だ。何かが普及するときに、ある臨界点を超えるとそのあとは爆発的にに普及するというケースがしばしば見られる。ゲイツ氏は、インターネットがまさにそのポイントに差し掛かろうとしていると指摘、その結果、インターネット革命が起こり、それがパソコン自体も変えようとしていると語った。
 パソコンが変わって行く方向のひとつはハードウェアだ。ゲイツ氏は、Microsoftが提示しているSIPCを例にとって、より多くの機能が使いやすい形でパソコンに組み込まれて行くビジョンを示した。
 パソコンの変化のもうひとつの方向は、OSやツール、アプリケーションなどあらゆるソフト製品でのインターネット/イントラネットとの統合だ。ゲイツ氏は「カギとなるのは統合化」と断言し、その例として、開発中のInternet Explorer 4.0のフィーチャである「Active Desktop」をデモンストレーションを通して解説した。

 Active Desktopというのは、簡単に行ってしまえば、HTMLベースであらゆる情報やリソースを表示することで、「ユーザーがもっと簡単に情報を探し出せるようにする」技術だ。ただし、デモを見る限り、Active Desktopは、単一のテクノロジーではなく、デスクトップをアクティブなものに変える技術の総称のようだ。これは、ActiveXがWWWをアクティブなものに変える技術の総称であるのと同じだと思われる。

 デモでは、Active DesktopとしてWindows 95の全画面がHTMLページとなり、その上に各ドライブやファイル、そして各種情報などがグラフィカルに表示されている新しいデスクトップを見せた。イメージ的には、Webブラウザで表示されるHTMLドキュメントが、デスクトップ全面に拡大されたものを思い浮かべればいいだろう。このデスクトップの上では、リンクボタンをクリックすることで、自分のパソコンやサーバー上のドライブやフォルダなど各リソースにアクセスできる。またActiveXを使い、株価情報をデスクトップの一角に、つねにリアルタイムに表示させるといったこともできる。

 印象的なのは、ゲイツ氏がこの「ページとリンクというメタファ」がGUIの次のインターフェイスとなると明確に言い切った点だ。これは大きな意味がある。というのは、これまでMicrosoftは一貫してアイコンベースのGUIを浸透させようとWindows戦略を進めてきた。そして、その戦略がWindows 95でようやく完成したばかりだというのに、それをあっさり脱ぎ捨て、インターネットで台頭してきたページとリンク型インタフェースを全面的に採用しようとしているのだ。Microsoftの柔軟性と転換の速さが、見事に示されていると言えるだろう。

 このほか、ゲイツ氏はイントラネットの重要性を、Microsoft社内の例を引いて説明、企業の情報共有の核となるエクスチェンジサーバーについても、かなり時間を割いて説明した。また、エクスチェンジに関しては、Webコネクタによってイントラネットに融合される未来を見せた。このほか、開発ツール類についても触れ、Javaコンパイラの名称が「Visual J++」であることも明らかにした。

 さて、最後に、スピーチ全体のおおざっぱな印象をまとめておこう。ここ半年あまり、ゲイツ氏のキーノートスピーチのトランスクリプトは、ほとんど目を通してきたが、今回のスピーチをそれらと比較すると、おだやかな雰囲気が感じられた。昨年12月7日のインターネット宣言からこっちの各スピーチは、言葉の端々に気負いがあり、それなりに攻撃的に感じられた。それは、インターネット市場で出遅れたという焦りがそうさせていたのかも知れない。
 ところが、今回のスピーチでは、そうした影はなくなった。面白味がなくなったとも言えるかも知れないが、Microsoftが自信を回復したことを示しているのだろう。もっとも、その分、また憎まれ役になることはますます増えるに違いない。実際、「イントラネットはビジネスチャンスだ」というゲイツ氏の締めくくりのセリフに対して、「Microsoftにとってのビジネスチャンスってことじゃないの」というささやきも会場から聞こえた。

PC Watchの「Windows WORLD EXPO/TOKYO 96レポート」

('96/6/27)


[Reported by 後藤 弘茂]

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