Intelが200MHz Pentium発売

●互換MPU対抗で発売時期早まる?

 米Intel社は、今週の月曜、つまり6月10日(日本時間では6月11日火曜)に、Pentiumシリーズ最高峰となる200MHz版を発表すると、各ニュースサイトが報じている。
 もっとも、IBMがPentium 200MHz版をラインナップに加えたAptivaシリーズを発表するなど、すでに発売目前であることは知れ渡っているため、発表自体に、ほとんど意外性はない。しかし、IntelのMPU全体のロードマップを見直してみると、この時期のPentium 200MHz投入の持つ意味は面白い。
 まず、Intelは昨年のかなり遅い時期まで、Pentiumで200MHz版を投入することを公式には明らかにしていなかった。また、ラインナップに加えたあとも、今年頭までは200MHz版の投入時期は96年第4四半期となっていた。それが6月の発表に繰り上げられたのは、やはり互換メーカーへの対抗策の色彩が濃い。
 すでにPC Watchでも伝えられたように、米Cyrix社は先週、Pentium 200MHzを上回る性能という「6x86-P200+」を正式に発表した。Cyrixのこの発表は、Intelにとって脅威だ。もちろん、Cyrixの場合、生産数が限られ、また、この製品ではシステムクロックも現在のPentiumの66MHzよりも高い75MHzに引き上げられたことからシステムメーカーの搭載も簡単ではないため、実際の市場では、それほど現実的な脅威ではない。
 しかし、問題はブランドイメージだ。Cyrixの独走を許し、Windows 95プラットフォームの最速プロセッサという冠を、完全に奪われた場合、Intelの技術先進性というイメージの受けるダメージははかり知れない。技術系雑誌や新聞などは、このニュースを大きく取り上げるだろうし、いったん、「Cyrix=高性能」というイメージが作られてしまうと、それを打ち破るのは、面倒だ。
 では、理由はいいとして、Intelにとって200MHzはそんなに容易に達成できることなのだろうか。これも、じつはハードルはあるものの発表すること自体は難しい話ではない。というのは、MPUでは、高クロック製品というのは別に設計するのではなく、同じプロセスで同じマスクを使って製造された製品のうち、高いクロックで安定動作するものに、高クロックのラベルを貼るという場合が多いからだ。
 問題は、高クロック品の歩止まり……量的な部分にある。通常、最初は高クロック品の生産量は限られ、ラインがこなれてゆくと、じょじょに生産量が増えて行くという流れになる。つまり、200MHz品を発表することはできるが、それを量産するのが難しいわけだ。ロードマップを速めたことで、Intelはどれだけ安定出荷できるかが問われている。200MHz Pentiumを搭載したマシンがどんどん出てくるかどうかが、カギとなる。
 もっとも、Pentium 200MHzというのは、あくまでも中継ぎに過ぎない。というのは、MMX技術を採用したP55Cが今年末には待ちかまえているからだ。しかも、P55Cもじつはリリーフに過ぎない可能性がある。というのは、Intelはコード名「Klamath」と呼ばれる、MMX搭載の廉価版Pentium Proを、ハイエンドデスクトップ向けに97年早期に投入すると言われているからだ。

インテルのWWWサイト
Pentium 200MHz搭載機種を含むAptivaの記事
Cyrix 6x86-P200+の発表を伝えるPC Watchの記事

('96/6/10)


[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp