クリントン政権がインターネットを 規制したがる理由
●大統領選挙の影響を受けるインターネット?
米国クリントン政権が押していた、オンラインでのワイセツ画像や文書を規制する法律「Communications Decency Act(CDA)」に対し、先週、フィラデルフィア連邦地方裁判所は違憲判決を下した。言論の自由に反するという理由だ。この結果に、プロバイダ各社やインターネット関係者は、ほっとむねをなで下ろした格好だ。しかし、安心してばかりもいられない。というのは、クリントン政権は、さらに最高裁で争う構えを見せているからだ。
クリントン大統領がワイセツ規制にこだわる理由は、サイバースペースを子供たちにとって安全で健全な世界にしたいというものだ。理由はごもっともなのだが、なにせ最高禁固2年とやたら罪が重いとか、責任の範囲がプロバイダにも及ぶとか、どうやって監視するのか不鮮明とか、ともかく現実を無視したような内容なので、猛反発を食らったわけだ。
クリントン-ゴアのコンビと言えば、リベラルなイメージと情報スーパーハイウェイ構想を掲げて、シリコンバレーの支持を集めて92年の選挙を勝ち抜いた。それが、なぜサイバースペースの発展を損なうような、こんな反リベラルな法律に固執するのか。
これにはいくつかの背景が考えられる。そのひとつは、民主党政権は大統領選挙の年に保守化するという原則ではないだろうか。これは、単純な原理で、リベラル寄り支持基盤を持つ民主党は、大統領選挙ではより広い支持を獲得するために、保守的な中間層にすり寄る必要が出てくるというわけだ。
つまり、この場合で言えば「ワイセツのはんらんを見過ごす、ハイテクかぶれのわけのわからない大統領」ではなく、「伝統的な家庭観を持ち、子どもたちの健全な育成に関心を寄せる大統領」という保守的なイメージを、選挙向けに強めたいとクリントン大統領が考えているのではということだ。
とはいえ、クリントン大統領が、今後も積極的にCDA支持を続けるかどうかはわからない。というのは、うかうかしていると、巨大票田カリフォルニア州を失う恐れがあるからだ。また、最高裁でも今回の判決が支持されるのではという見方が広まり始めている。
政治に翻弄されるインターネットの未来は、はたしてどちらへ転ぶのだろう。
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('96/6/17)
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