元麻布春男の週刊PCホットライン

アクティベーション導入で、Windowsのライセンス料は下がるべきだ


●ウイルスメールで自動更新の必要性を感じる

 前回は、筆者個人にとってもっともショッキングだった出来事について触れたが、今回はそれに次ぐものを取り上げたいと思う。それは、コンピュータウイルス(ワーム)だ。コンピュータウイルスについては、これまでも何度も流行を繰り返してきたが、この11月末の流行は、かなり規模の大きなものであったようだ。その証拠というわけでもないが、ついに筆者のところにもウイルスメール(Badtrans.B)が届いたのである。

 基本的に筆者のメールアドレスを知るもののほとんどは、PC関連の専門家ばかりで、みなインターネット関連ソフトウェアのアップデートパッチについてはよく知っているし、アンチウイルスソフトもちゃんと組み込んでいる。そんなわけで、フロッピーディスクなどの媒体経由でコンピュータウイルスに触れた経験はあったのだが、電子メール経由でコンピュータウイルスに触れたことはなかった。

 今回、筆者にウイルスメールを送りつけてきたのは、筆者の実の妹である。筆者と異なり、妹はPCに関しては完全に単なるユーザーであり、コンピュータリテラシーは決して高くない。筆者周辺のウィークリンク(Weak Link)は、妹だったというわけだ。

 早速、コンピュータウイルスに感染していることを告げるべく電話をしたのだが、その電話がつながらない。筆者が電話した時点で、すでに友人からの連絡があり、妹はIEをアップデートすべくモデムを接続していたため、電話が話中だったのである。56KbpsモデムでIEのアップデートをダウンロードするには膨大な時間がかかる。電話をしてもずっと話中になるのも無理からぬところだ。結局妹は、何とかIE 5.5のService Pack2を入手することに成功したし、筆者のアドバイスを聞き入れて、市販のアンチウイルスソフトを購入した。

 だが、これで妹からのウイルスメールが根絶できるかというと、必ずしもそうとは限らない。根絶を確実なものにするには、妹が将来もIE等のソフトウェアのアップデートを持続し、アンチウイルスソフトのパターンファイルの更新を忘れないことが保証される必要がある。問題は、これが可能か、ということだ。すでに述べたように、妹はコンピュータの専門家でもなければ、マニアでもない。

 以前、筆者は、Windows XPについて触れた際、自動更新などは、すべて無効にしたい、という風に述べた。筆者はこれについて改めるつもりはない。もし仕事マシンを更新し、Windows XPベースに変更したら、おそらくすべてのバルーンを無効にし、自動更新の類は全部無効にするだろう。しかし、インストールデフォルトを、決してそうすべきではないことは、この11月末の経験で分かったつもりだ。IEなどのソフトウェアについて、システムがインターネットに接続された際に、バックグラウンドで毎回アップデートをチェックし、もしアップデートがあった場合は、ユーザーに告知した上で、ダウンロードし更新する、ということをデフォルトにするしかないだろう(もし、日本の電話が米国のようにローカルコールフリーなら、夜中等にこっそり接続させてもよいのだが、さすがにそれは行き過ぎかもしれない)。いずれにしても、アップデートは自動的に問答無用に行なう、ということを(絶対に「無効にする」オプションが必要だが)基本にせざるを得ない。

●Windowsのライセンス料は高すぎる

 さて、筆者が忌み嫌うバルーンや自動更新だが、それらを引き起こすイベントのうち、プロダクトアクティベーションについては、止むをえないか、と思うようになっている。なぜハードウェア構成の変更をするのに、いちいちMicrosoftにお伺いをたてなければならないのか、という疑問がなくなったわけではないし、アクティベーションが好きなハズはない。1台のPCという概念の曖昧さも、以前指摘したとおりだ。それでも、ある一定の条件を満たした場合、プロダクトアクティベーションを認めても良いと思っている。

 筆者がアクティベーションと引き換えに要求したいのは、Windowsのライセンス料そのものの引き下げだ。Microsoftはプロダクトアクティベーションを行なう理由として、カジュアルコピーの撲滅をうたっている。筆者もこれには同意する。もし、プロダクトアクティベーションがカジュアルコピーを追放できるのであれば、MicrosoftはOSのライセンス料について、本来得られるだけの額が入手できるハズである。

 逆に言えば、今までのMicrosoftが課してきたライセンス料は、カジュアルコピーによる損害が盛り込まれていたハズだ(企業である以上、それが当然の論理である)。プロダクトアクティベーションにより、失われてきたライセンス料が失われなくなるのであれば、今後ライセンス料に含まれていた損害相当額は減じてしかるべきだろう。だが、少なくともWindows XPの今の価格を見る限り、損害相当額が減じられたとは思えない。

 PCの価格はこの数年で劇的に低下した。かつてPCといえば、30万円程度が相場だった。しかし、今は10万円を切るPCでは、もはやニュースにもならない。ノートPCだって15万円を切るものを見つけることは難しくないのである。にもかかわらず、OSのライセンス料が劇的に低下した様子はない。

 Microsoftは、ソフトウェア開発費用の大半が人件費で占められており、価格を引き下げる余地はない、といいたいのかもしれない。だが、それはファブレスが多い、シリコンバレーのIT企業のほとんどに当てはまることだ。そして、そういう企業の多くが血を流しながら、製品価格の低下に努めている。そうした切迫感がMicrosoftからはあまり感じられない。

 あるいは、PCの革新を担いつづけるために、多くの研究開発費が必要だ、と言いたいのかもしれない。確かに、研究開発費は必要だろうが、だからといって、野放図に研究開発費を使ってよいというものではないだろう。そもそも企業における研究・開発というのは、自らの利益、自らの将来に対して行なうものであって、業界全体の利益だとか、ユーザーの利益とかいうものが目的であるハズがない。

 つまり、企業の研究開発による成果は、必ずしもユーザーが望むものとは限らないのである。もし、PC全体のイノベーションのため、などと言うのなら、研究開発部門は、外部に切り離すべきだ。研究開発を理由に、高い粗利益率を要求するのは間違っている。ならば、研究開発は、本来あるべき一定の粗利益の枠内で行なって欲しい。少なくとも、PCの将来を理由に、高価格や事実上の独占状態を正当化すべきではないと思う。

【11月29日】【元麻布】Windows XPを「使える」ようにする
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011129/hot176.htm
【11月29日】【元麻布】Windows XPのアクティベーションを検証
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011101/hot172.htm

バックナンバー

(2001年12月27日)

[Text by 元麻布春男]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp

Copyright (c) 2001 impress corporation All rights reserved.