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前回は、事実上野放し? で販売されているOEM版の問題について取り上げた。そのうち、ユーザーサポートが事実上受けられないことについては、それを覚悟して買う分には、実質的なデメリットはない(Microsoft製品は製品のアップグレードについて、基本的に市場でアップグレードパッケージを流通させる方法を選んでいる)し、Microsoftのサポートにお世話になったことなんかない、というユーザーも少なくないことだろう(かく言う筆者も、その一人である)。
しかし、アクティベーションの導入によりハードウェアの構成変更に制約が出ることは、すべてのユーザーが逃れられない問題である。そこで、今回はアクティベーションの実態について、取り急ぎ実験を行なってみた。Microsoftが情報を公開していないため、あまり系統だったテストではないが、参考になる部分はあるのではないか、と思う。
なお、今回の検証はあくまで筆者の環境での結果であり、ほかの環境での再現性を保証するものではない。一つの参考例と考えてほしい。また、結果についての個別の質問は、お受けできない。
●マザーボードとEthernetを中心に各デバイスを検証
表1:最初にインストールしたシステム | |
CPU | Pentium 4 2.0GHz |
マザーボード | Intel D845WNL |
メモリ | 256MB PC133 SDRAM |
ビデオ機能 | S315VT(カード) |
Ethernet | 3C905-TX(カード) |
サウンド | YMF744(カード) |
IDE-0 | IBM IC35L040A(HDD) |
IDE-1 | なし |
IDE-2 | LS-120(SuperDisk) |
IDE-3 | GD7500(DVD-ROM) |
今回、実験に用いたのはリリースされたばかりのWindows XP Home EditionのOEM版である。これをまず表1のような、D845WNL(D845WNのオンボードEthernet版)をベースにしたシステムにインストールした。Home Editionを使ったのは、インストール時にインターネット接続のチェックと、インターネットを経由してのアクティベーションおよびユーザー登録が組み込まれているからで、手っ取り早いからである。
また、表1でもわかる通り、最初のインストール時は、あえてオンボードのEthernetとサウンドを使わず(BIOSセットアップで無効に設定)、拡張カードを用いている。これはマザーボードを変えた際に、同じサウンドデバイス、同じEthernetデバイスであることを保証したかったからだ。特にEthernetについてはそれぞれのEthernetアダプタに固有のMACアドレスが割り当てられており、これがマシンを識別する際の重要なポイントになると思われる。Ethernetカードを用いることで、マザーボードを変更しても同一のMACアドレスを維持することが可能だ。
この表1の状態から、まずマザーボードのみをD845HVLに変えてみた(カード類は同じ)。D845HVLはD845WNLのmicroATX版とでも呼ぶべき存在で、拡張スロットが少ないことを除き全く同じ構成で、双子のような存在である(ただ少なくともBIOS上での型番表示は異なる)。そのせいか、Windows XP Home EditionがインストールされたHDDをそのまま接続しても、ちゃんと動作した。ただし、拡張スロットが減ったことに伴い、PCIバス上のサウンドデバイスおよびEthernetデバイスの論理的な位置が変わってしまった。その結果、拡張カードは再び検出され、ドライバの再インストールが生じたが、動作そのものに問題はない。当然、アクティベーションが問題になることもない。
D845WNとD845HVではあまりに似通っているかと思い、次に拡張カードの構成はそのままに、Intel 850ベースのマザーボードであるD850MDに変更してみた。今度は少なくともチップセット、BIOS、メモリが変わったことになる。
Plug&Play対応のOSがインストールされたHDDを、このようにチップセットの異なるマザーボードに無理矢理接続した場合、これまでならとりあえずOSが起動し、その後、チップセットの検出が行なわれ、何回かOSを再起動した後、すべてのデバイスが認識されるというのがお決まりだった。しかし、今回はシステムが起動しない。セーフモードも試みたが、やはりダメだった。
●アクティベーションを無効にさせないポイント
アクティベーション |
この状態から、まずEthernet、次にサウンドをカードからオンボードデバイスに切り替えてみたが、特に再アクティベーションを促すようなメッセージは現れない。さらにビデオカードをGeForce3に変更してみたが、それも問題なかった。そこで、再びFDISKにてCドライブのパーティションを解放し、この状態(D850MDで、オンボードEthernetとオンボードサウンドを用い、ビデオカードがGeForce3の状態)でWindows XPのクリーンインストールを試みた。するとOSが起動し、初めて再アクティベーションの要求が生じた。
それでも、最初にインストールした表1状態でのアクティベーションは、継続的に有効なハズ。そう思い、再びハードウェア構成を表1に戻して、クリーンインストールを行なった。今度はちゃんとInternet経由のアクティベーションが実施された。そこでもう一度、カード類はそのままで、マザーボードのみをD850MDに変更、Windows XPのクリーンインストールを行なったところ、オンラインでのアクティベーションは無事通過した。その後、再度Ethernet、サウンド、ビデオカードの順にハードウェアを変更していったが、どの段階においてもアクティベーションが無効になった旨のメッセージを見ることはなかった。最終的には、前回クリーンインストレールでアクティベーションできなかった構成に到達したわけだが、それでもアクティベーションが無効になることはなかった。
これらの経験でわかったのは、どうやら1つづつデバイスを変えていく分には、アクティベーションは無効にならないらしい、ということだ。たとえマザーボードが変更されようと、変更点を最小限に抑える限り、デバイスの変更であろうと、OSのクリーンインストールであろうと、アクティベーションの問題は生じない。一気に多くのデバイスを変更すると、異なるPCへのインストールとみなされアクティベーションにひっかかるようだ。というわけで、どんなに激しくハードウェアの構成を変えるユーザーでも、最初にOSをインストールした構成を覚えておいて、そこに戻せるようにしておけば、そこから1デバイスづつ変更していくことで、どんなハードウェア構成にも変化させられる可能性がある。
●「1台のPC」の実態とは
検証に使用したバラックPC |
すべての実験環境に共通しているのは、HDD(今回用いたWindows XP Home EditionはHDDのバンドル品である)、DVD-ROMドライブ、SuperDiskといったストレージデバイス、電源ユニット、マザーボード等を載せるフレーム、といった要素だが、HDDとフレームを除くすべてのデバイスは、簡単に交換できてしまう(HDDも簡単に変更できるのだが、それをやると今回はライセンス違反になる恐れがあるため、敢えてやらなかった)。もし、今回のWindows XP Home EditionがCPUのバンドル品であれば、すべてのユニットが交換可能だったハズだ。要するに、一番変えにくいのは、何のことはない、980円の特売で買ったフレームなのである。
実はWindows XPのプロダクトキーが書かれたCertificate of Authenticityラベルには、「このCertificate of AuthenticityラベルをPCの外側に貼らなければなりません」と英語で注意書きがしてある。とすると、1台のPCを識別するポイントは、このラベルが貼られる物体。すなわちケースこそMicrosoftが定義する「1台のPC」の実態なのだろうか。
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【10月31日】【元麻布】Windows XP OEM版の抱える問題点
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011031/hot171.htm
【10月30日】【本田】OEM版Windows XPのライセンスとアクティべーション
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011030/mobile124.htm
(2001年11月1日)
[Text by 元麻布春男]