【速報】Intel 845 Bステップのパフォーマンスを検証する



 Intelからの正式発表を前に、秋葉原などでは先週末からすでにIntel 845 Bステップを利用したDDR SDRAM対応Pentium 4マザーボードが発売されている。

 これまでVIA TechnologiesのP4X266、SiSのSiS645というサードパーティベンダのチップセットによるDDR SDRAM対応Pentium 4マザーボードはリリースされていたが、Intel純正チップセットを搭載したDDR SDRAM対応マザーボードは、(Pentium III用を含めても)今回のIntel 845搭載マザーボードが初めてということになる。安定性重視の観点などから、本製品を待ち望んでいたユーザーも決して少なくないだろう。

 今回は、リリースされたばかりのIntel 845搭載マザーボードを取り上げて、そのパフォーマンスを速報としてお届けしていきたい。



●266/200MHzDDR SDRAMに対応したIntel 845 Bステップ

Intel 845 Bステップのノースブリッジ

 Intel 845 Bステップの特徴は、従来のAステップで対応していたSDRAMに加えて、新しくDDR SDRAMにも対応したことだ。

 従来のAステップを利用した場合にはSDRAMのみのサポートとなるのに対して、BステップではSDRAMとDDR SDRAMの両方がサポートされることになる。ただし、これは両対応のマザーボードが作れるということを意味しているのではなく、基本的にIntelがサポートするのはSDRAMないしはDDR SDRAMのどちらかのソケットが搭載されたデザインのみとなる。

 もちろん、Intelの保証外の使い方としてチャレンジするメーカーがあっても不思議ではないが、Intelがそうしたデザインガイドを配っていないため、登場するとしてもかなり後になるだろうし、すでに秋葉原などの自作市場ではDDR SDRAMとSDRAMの価格差はあまりない状況となっているので、そうしたデザインにチャレンジするメーカーがいるかどうかも疑問だが。

 というわけで、従来のIntel 845 Aステップから変わったところは、ノースブリッジのステッピングがAxからBxに変わったのが大きな違いと言える。ただ、DDR SDRAMを利用した場合にはメモリのバンク数が4バンクに制限されるので注意したい。このため、180ピンのDDR SDRAM用のメモリソケットは1ソケットで2バンクを利用するので、2ソケット×2バンク=4バンクという計算になるため、マザーボード上には2つしかメモリソケットは搭載されないことになる。

 しかし、マザーボードメーカーの中には、3ソケットを搭載しているIntel 845 Bステップをリリースしている場合もあるようだ(GIGA-BYTEのGA-8IRX、MSIの845Ultra-ARU、ASUSのP4B266などがこれに相当する)。この場合、3つのソケットを利用する場合には、3つのうち最低でも2つにはシングルサイド(片側にしかメモリチップが装着されていないメモリモジュール)を利用する必要がある。つまり、とにかく最大で4バンクとなるように使わなければならないので注意が必要だ。


●従来タイプのDDR SDRAMモジュールを利用する場合には若干の注意が必要

 利用できるメモリモジュールは、Intelが言うところのDDR200、DDR266を利用することができる。いわゆるDDR200、DDR266はメモリデバイスのことで、メモリモジュールとしてはPC1600、PC2100となるのだが、PC2100、PC1600という用語を使うのかどうかなどは明確ではない。すでにPC2100、PC1600という用語もそれなりに定着しつつあると思われるので、混乱を引き起こさないようにできれば統一してほしいものだ。

 また、Intelの説明によれば「DDR200およびDDR266のIntelによる追加スペックを提案し、認証されている」とのことで、実際Intelのメモリ関連のホームページ( http://developer.intel.com/technology/memory/index.htm )にはそのスペックが掲載されている。「従来のDIMMが動かないということはないが、動かない可能性もある。そういうことをなくすためにこの追加スペックを提案した」(Intel広報室)とのことで、新しいスペックに対応したメモリモジュールを使った方がより問題が少なくなるという立場だ。

 実際に、従来のDIMMで問題がでないかどうかは、これから様々なマザーボードが出そろってみないとなんとも言えない。たとえば、あるDIMMで問題がでたとしても、BIOS側でそのDIMMの情報を持つことで、問題を回避できるようになる場合もあり、正直なところなんとも言えない。

 IntelがDRAMレベル、DIMMレベルのそれぞれでテストをした結果というのがIntelのホームページ( http://developer.intel.com/technology/memory/index.htm )に掲載されており、とりあえずはそのあたりを手がかりにできるだけ動きそうなメモリモジュールを利用するのが最も安全かもしれない。あるいは、最近ではショップ側でメモリモジュール購入時にいくらかプラスすることで、いわゆる“相性”による問題が発生した場合でも交換するサービスを行なっているところもあるので、そうしたところで購入するというのも1つの手段だろう。

 とりあえず筆者は手元にあったPC2100で試してみることにした。メモリモジュールをIntel 845 Bステップマザーボードに挿してブートし、ウルトラエックス製( http://www.uxd.co.jp/ )のR.S.T.を利用してメモリ診断テストを実行し、問題なく動作しているかどうかを確認した。結論から言えば、PC2700のメモリモジュールを挿した場合のみ、テストプログラムがハングアップするというトラブルに見舞われたが、それ以外に関しては問題なく動作した。

【動作を確認したメモリ】
 メモリデバイス 
メルコ DD266-256MNanya NT5DS16M8AT-7X
メルコ DD266-128MMicron MT46V16MB-75
TwinMOS PC2700 256MBHynix HY50U28822AT-K×
Apacer 128MB UNB PC2100IBM N612804GT3B
ノーブランド PC2100(CL=2)Nanya NT5DS16M8AT-7X
ノーブランドNEC D45D128842G5

 今回はわずか6枚という少ないサンプル数であるため、これをもってさほど問題が少ない、あるいは多いなどとは断言することはできないが、DDR SDRAMが登場した当初はエラーが発生することが多かったことを考えると、格段に問題は少ないと言うことができるだろう。


●メモリバンド幅が向上することでSDRAM版に比べて大きな性能アップ

 これで、Pentium 4の純正プラットフォームにはIntel 850(Direct RDRAM)、Intel 845(DDR SDRAM版)、Intel 845(SDRAM版)という3種類のメモリをサポートする環境が整ったことになる。これら3つの違いはメモリの種類だけで、他の部分(AGPの仕様、サウスの仕様)などは全く同一である。したがって、これら3つのプラットフォームの性能の違いは、それぞれのメモリ性能の違いとほぼイコールであると考えていいだろう。それぞれのメモリが実現する帯域幅は以下のようになっている。

Intel 850Direct RDRAM(2チャネル)3.2GB/sec
Intel 845DDR SDRAM(266MHz)2.1GB/sec
Intel 845SDRAM(133MHz)1.06GB/sec

 このように、それぞれ、SDRAMから帯域幅が倍になっているのがDDR SDRAM、3倍になっているのが2チャネルのDirect RDRAMということになる。

 ベンチマークの結果は以下の通り。

■ベンチマークテスト結果

【動作環境】
マザーボードIntel D845BGIntel D845WNLIntel D850MDL
チップセットIntel 845Intel 845(Bステップ)Intel 850
メモリSDRAMDDR SDRAMDirect RDRAM
容量256MB
CPUPentium 4 2GHz
ビデオカードGeForce3(64MB、DDR SDRAM)
HDDIBM DTLA-307030
OSWindows 2000(ServicePack2)

グラフ1

 実際にメモリの帯域幅を計測するStream for DOS(StreamD)のようなテスト(グラフ1)を実行すると、SDRAMから大幅な帯域幅アップになっていることがわかる。StreamDは、CPUからメモリにデータを転送し、それにかかった時間を計測することでシステムバス、メモリの帯域幅を計測するテストだ。

 Pentium 4のシステムバス(3.2GB/sec)と同等の帯域幅を実現している2チャネルのDirect RDRAMが最もよいスコアをたたき出し、ついでシステムバスの2/3となるDDR SDRAMのIntel 845、システムバスの1/3でしかないSDRAMという順になっている。これを見てわかるように、理論値ほどはでていないものの、それぞれ、半分程度の帯域幅を実現しているのがわかるが、Direct RDRAMが理論値に比べて最もスコアが悪いということを付け加えておこう。

 さて、実アプリケーションによるベンチマークだが、バンド幅ほどの大きな差はないがアプリケーションベンチマークのSYSmark2001のOffice Productivity(オフィスアプリケーションを利用したベンチマーク=グラフ2)、Internet Contents Creation(コンテンツ作成系のアプリケーションを利用したベンチマーク=グラフ3)でも、SDRAMベースのIntel 845を大きく上回り、Direct RDRAMベースのIntel 850に若干劣るという性能であることがわかる。この傾向は他のベンチマーク(3Dゲームベンチの3DMark2001=グラフ4:Quake III Arena=グラフ5)でもほぼ同様の傾向であることがわかる。

グラフ2 グラフ3

グラフ4 グラフ5


●Brookdale-E/Gを見据えると今後のメインストリームとなるのは間違いない

 以上のように、DDR SDRAMをサポートしたIntel 845 Bステップは、そのスペック通り、SDRAM版のIntel 845を大きく上回り、2チャネルのDirect RDRAMをサポートしたIntel 850よりはやや劣るというスペックであることがわかる。すでに述べたように、秋葉原などの自作市場ではSDRAMとDDR SDRAMがほぼ同等になっていることを考えると、コストパフォーマンスも高く、性能だけでなく同時にコストパフォーマンス重視のユーザーであればDDR SDRAMサポートのIntel 845マザーボードはよい選択となるだろう。

 特に、Pentium 4の次世代チップセットと言えば、Direct RDRAMをサポートするTehama-Eと、DDR SDRAMをサポートするBrookdale-E/G/GLの3種類がある。前者が依然としてUSB 1.1コントローラしか内蔵されていないICH2であるのに対して、後者はUSB 2.0コントローラを内蔵するICH4に切り替わる予定であるという。これを見れば、Intelもどちらのチップセットがメインストリームであると考えているかは一目瞭然だろう。そうしたことからも、今後を見据えてDDR SDRAMのIntel 845チップセットを選択するのは理にかなっていると言えるだろう。

□関連記事
【12月17日】Intel、DDR対応の845 Bステップ正式発表
~Intelチップセット機能比較一覧公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011217/intel.htm

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(2001年12月17日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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