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AMDの最新サーバー/ワークステーション向けCPU
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Athlon MP 1900+ |
AMDからAthlon MPの最新版となるAthlon MP 1900+(実クロック1.6GHz)とAMD-760MPの後継となるAMD-760MPXが発表された。すでにAMDはシングル向けのAthlon XP 1900+(1.6GHz)を発表していたが、デュアル向けのAthlon MPはそれから1カ月遅れということになる。
今回のレポートでは、このAthlon MP 1900+を利用したベンチマーク結果などからそのパフォーマンスについて考えていきたい。
●外見は特にAthlon XPと違いはないAthlon MP 1900+
今回発表されたAthlon MP 1900+は10月に発表されたAthlon MP 1800+の上位バージョンで、基本的にはクロックが上がったものだと考えてよい。
Athlon MP 1900+のコア。「AMP1900DMS3C」と明記されている |
従来のAthlon MP 1800+の実クロックが1.53GHzであったのに対して、Athlon MP 1900+は1.6GHzとなっており、その分の性能向上を期待することができる。コアの表記は「AMP1900DMS3C」となっており、Athlon XP 1900+の「AX1900DMT3C」と異なっていることがわかる。
「S」と「T」の部分が異なっているが、これはTcaseと呼ばれるダイの稼働保証温度が異なっているためだ。「T」となっているAthlon XP 1900+は最高で摂氏90度まで稼働保証がされており、「S」となっているAthlon MPは最高で摂氏95度までの稼働保証がされているのだ。Tcaseの値が高ければ高いほど、CPUにとってはマージンが大きくなるわけで、より過酷な環境でも安定動作が期待できる。
しかし、それ以外は、Athlon XP 1900+とほぼ同じに見える。内部のアーキテクチャもAthlon XPと同じQuantispeedアーキテクチャで、L2キャッシュの容量は同じ256KBと、基本的にはデュアルでの動作が保証されている以外はAthlon XPと同等の製品であると考えていいだろう。
●マルチスレッドに対応したビデオエンコーディングソフトウェアなどで大きな効果
すでに本連載でも何度かマルチプロセッサについて取り上げてきたが、そのたびに述べているように、マルチプロセッサ環境を利用するためには、
1) OSがマルチプロセッサに対応
2) アプリケーションがマルチスレッドに対応
の2つの条件を満たしている必要がある。OSとしては、Windows 9x系とWindows XP Home Editionはマルチプロセッサをサポートしておらず、Windows NT/2000/XP Professionalが必要となる。こうしたOSレベルでマルチプロセッサをサポートしている場合、複数のスレッドが並列実行されている場合には、それぞれのスレッドに各CPUのリソースが割り当てられるため、システム全体としての処理能力が向上する。さらに、アプリケーションがマルチスレッドに対応している場合には、単一のアプリケーションを実行している場合でも性能が向上する。
今回は、こうしたマルチスレッドに対応したアプリケーションとして、TMPGEnc( http://www.tmpgenc.com/ )を利用した。
TMPGEncは堀 浩行氏/プロジーグループによるビデオエンコーダで、MMX、3DNow!テクノロジ、ストリーミングSIMD拡張命令(SSE)、SSE2など最新の拡張命令にも対応しているほか、マルチスレッドにも対応しており、アプリケーションレベルでマルチスレッドの効果を実感できるアプリケーションの代表といえる。
今回は670MBのAVIファイルをMPEG-1にエンコード(変換)し、そのエンコードにかかった時間を計測した。OSはWindows 2000(ServicePack2適用済み)を利用し、ビデオカードはGeForce3(64MB DDR SDRAM)、メインメモリは512MBで、比較対象としてAthlon XP 1900+、Pentium 4 2GHz(いずれもシングル)、Athlon MP 1.2GHz、Pentium III 1.0B GHz(いずれもデュアル)を用意した。
【動作環境】
CPU | Athlon MP 1900+(デュアル) | Athlon MP 1.2GHz(デュアル) | Pentium III 1.0B GHz(デュアル) | Athlon XP 1900+ | Pentium 4 2GHz | |
---|---|---|---|---|---|---|
マザーボード | Tyan Tiger MP | Iwill DVD266 | EPoX EP-8KHA+ | Intel 850MD | ||
チップセット | AMD-760MP | VIA Apollo Pro266 | VIA Apollo KT266A | Intel 850MD | ||
メモリ | DDR SDRAM | Direct RDRAM | ||||
容量 | 512MB | |||||
ビデオカード | GeForce3(64MB、DDR SDRAM) | |||||
HDD | IBM DTLA-307030 | |||||
OS | Windows 2000(ServicePack2) |
結果はグラフ1の通りだ。たとえば、Pentium 4 2GHz、Athlon XP 1900+はそれぞれ335秒、333秒であるのに対して、Athlon MP 1900+(デュアル)はわずか201秒と大幅に時間が短縮されていることが確認できた。
●グラフ1
●グラフ2
今回はわずか3分のDVキャプチャファイルであったため、差はわずか101秒だが、たとえば30分のファイルを同じようにエンコードした場合、差は10倍になるわけで、その差は決して小さくない。具体的にどの程度向上しているのかを相対的にみるために、Pentium III 1.0B GHzを基準に、どの程度エンコードにかかった時間が短縮できているかを示したのがグラフ2だ。
Athlon MP 1900+(デュアル)は、Pentium III 1.0B GHz(デュアル)に比べて42.7%ほど処理時間を短縮しているのがわかる。こうした結果からも環境さえ整えばデュアルCPUの効果は絶大といえる。
●対応したアプリケーションを持っているユーザーにはお勧め
以上のように、ビデオエンコーディングソフトウェアのようなアプリケーションでは、デュアルCPUの効果が圧倒的に発揮されることが確認できた。
最近ではMPEG-2ビデオキャプチャカードなどが低価格になってきているため、テレビなどを録画してあとで編集というユーザーも少なくないだろう。仮に今回利用したTMPGencのようにマルチスレッドに対応したビデオエンコーダソフトやビデオ編集ソフトなどを利用している場合、その恩恵は決して小さくないということができるだろう。
すでに昨日AMDが明らかにしているように、Athlon MP 1900+の1,000個ロット時の価格は319ドル、国内価格も41,470円となっている。まだ、AMD-760MPXを搭載したマザーボードは市場に登場していないが、TyanのTiger MPは3万円を切る価格で入手することができることを考えると、CPU×2+マザーボードが11万円強で買える計算になる。
今回はXeonのテストはしていないが、Xeon 2GHzのマザーボードは安価なものでも9万円弱で、そもそもCPU単体でも7万円強となっている。このため、Xeon 2GHz×2+マザーボードのコストが25万円を軽く超える計算になる。こうしたことを考慮に入れると、Athlon MPのデュアルシステムは圧倒的にコストパフォーマンスが高いということができるだろう。
とりあえず、人とは違うマシンを自作したいユーザーや、ビデオ編集がメインというユーザーでマルチスレッドに対応したアプリケーションを使っているのであれば、まもなく登場するであろうAMD-760MPXやAthlon MP 1900+を考慮に入れる価値は十分にあると言えるだろう。
□関連記事
【12月12日】AMD、Athlon MP 1900+とAMD-760MPXチップセット
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011212/amd.htm
(2001年12月13日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]