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2つの電圧を持ち複雑な次世代メモリDDR II


●CPUのFSBで必要なメモリ帯域が決まる

 Intelが必要としているメモリ帯域は4.3GB/secと6.4GB/secだ。これは、CPUのFSB(フロントサイドバス)の帯域とマッチする帯域だからだ。具体的に言うと、次期IA-64プロセッサ「McKinley(マッキンリ)」のFSB帯域が6.4GB/sec、Pentium 4 533MHz FSBの帯域が4.3GB/secだ。メモリのインターフェイス幅が、SDRAM/DDR系と同じように1チャネル64bitとするなら、各CPUアーキテクチャに必要なメモリの、ピン当たり転送レートと帯域は下の図「DRAM技術とメモリ帯域とCPUアーキテクチャ」のようになる。

DRAM技術とメモリ帯域とCPUアーキテクチャ
CPUバス帯域メモリ転送レート
次期Celeron3.2GB/sec400MHz
Pentium 4(533MHz)4.3GB/sec533MHz
McKinley6.4GB/sec800MHz


 もともと、Intelの戦略ではどの帯域もRDRAMワンアーキテクチャで実現するつもりだった。RDRAMは16または18bit幅インターフェイスでPC800なら1.6GB/sec、PC1066(高速版RDRAM)なら2.1GB/secの帯域をカバーできる。現在のPentium 4の帯域3.2GB/secは、RDRAM PC800の2チャネルで対応しており、Pentium 4 533MHz FSBの4.3GB/secもRDRAM PC1066の2チャネルで対応する見込みだ。McKinleyもRDRAMで PC800 4チャネルで対応する計画だった。

 しかし、IntelはRDRAMをDRAMのメインストリームにすることに失敗してしまった。そこで、先週のコラム「Intelが2003年の「Springdale」でDDR IIをサポート」でレポートした通り、IntelはDDR IIを採用しようとしている。DDR IIの転送レートは400MHz~533MHz。だから、Intelは、2003年のメモリとして採用するDDR IIメモリは、できれば533MHzにしたいと考えていると見られる。もちろん、DRAMベンダー側が、フルに533MHzを採れない場合には、400MHzと533MHzの2本立てになる。DDR IがDDR200とDDR266の2本立てでスタートしたのと同様だ。

●Intelのスケジュールに合わせてDDR IIを2.5Vで立ち上げへ

 ところがIntelは、2003年のチップセット「Springdale(スプリングデール)」でDDR IIを使うと決定した時、転送レートは400MHzまでしか考えていなかった。これは、Springdaleを2003年の前半、春頃に立ち上げるというスケジュールを優先したためだったらしい。2003年前半だと量産ベースではDDR II 400MHzがやっとなので、400MHzに合わせるという話だったようだ。

 そこで、DRAMベンダーもこのスケジュールに合わせてDDR IIの製品計画を調整した。何を調整したかというと、I/O電圧だ。

 DDR IIの電圧は、かなり関係者の間では論議を呼んでいるらしい。先週のコラム「IntelのSpringdaleとICH5とPrescottの正体」で紹介した通り、DDR IIのスペックにはI/O電圧が1.8Vと2.5V(現行のDDR Iと同じ)の2タイプがあるからだ。

 もともとDDR IIは1.8Vメインでいく予定で、今年7月のPlatform Conferenceでもそう説明された。それどころか、1.8V一本化という話も出ていた。しかし、あるDRAMベンダーによると、Intelのスケジュールに合わせるため2.5Vで立ち上げるという話になったらしい。それは「2003年前半で量産に持っていくとなると、現行のプロセス技術では1.8Vは難しい。必ず(must)2.5Vにしなければならない。生産技術などを考えると、1.8Vに持っていけるのは2003年後半、次のプロセス技術へ移行してから」(あるDRAM業界関係者)という事情があるからだ。

 もう少し詳しく説明すると、DRAMベンダーの主力プロセス技術は、2003年前半だと0.13μmプロセス。これだと、2.5VでないとPC向けの量産品としては難しい。1.8Vで量産に持っていけるのは、2003年後半に0.12μmプロセスが立ち上がってからという話だ。そのため、IntelはSpringdaleでサポートするDDR IIは2.5Vにすると決めたらしい。しかし、ハイエンドワークステーションなどで使いたいIBMなどはDDR II 1.8Vを望んだと言われる。また、DDR IIは1.8Vでないと533MHz出ないという話もある。そのため、結局DDR IIは今のところ、電圧がデュアルスタンダードになっている。

 しかし、DDR IIに2つの電圧スペックがあることは、混乱も招いている。まず、DRAMベンダーは、2.5Vと1.8Vで別なダイ(半導体本体)を開発しなければならないという。これは、同じダイでいけると言っていた関係者もいるため、ベンダーによって事情が異なる可能性もあるが、開発や検証の負担が増えることだけは確かだ。

 メモリモジュールやシステムも同様だ。ある関係者は「1.8Vしかないなら話は簡単。しかし、中途半端に2.5Vと1.8Vが並存すると、モジュールの基板も6層ではなく8層にしないとならないといった弊害が出て、コストがアップする。半年早めるために、ユーザーが不利益を被ることになる」と指摘する。Intel内部でも、システム設計をやっている部門は、できれば1.8V一本で立ち上げたいと言ったという情報もある。

 結局は、これは、スケジュールとのトレードオフの問題だ。「2.5Vが“アリ”なら、確かにデバイスは早く出せる。だから、基板のコストが上がってもDDR IIを早く出すのか、それとも安定性とコストを狙って、遅らせて足並み揃えて出すのかといった議論になる」とある関係者は言う。

●まだわからないDDR IIの電圧スペック

 しかし、この話も変わる可能性がある。というのは、Intelの姿勢が変わってきたように見えるからだ。

 前回のコラム「RDRAMで懲りたIntelの路線変更で揺れる次世代メモリ規格」でレポートした通り、今、DDR IIをどのスペックで立ち上げるかが揺れている。今のIntelの動きを見ていると、最初から533MHzを考えていて、そのためにDDR IIの拡張規格DDR II+でアクティブターミネーションを入れることを推進していると見られる。実際、現在のSpringdaleの計画にはDDR II+ 533MHzサポートが入っているといわれる。

 だが、IntelのプラットフォームがDDR II+で立ち上がるとなると、DRAMベンダー側がデバイスを用意できる時期がずれ込む可能性が高い。アクティブターミネーションを入れた新しいデザインを開発するタイムラグがあるからだ。そうすると2003年前半には間に合わず、2003後半にずれ込むかもしれない。つまり、結局0.12μmの1.8Vで立ち上げになる可能性がある。実際、ある業界関係者は「結局、DDR II+の1.8Vで一本化されるのではないかと見ている」と言っている。

 こうした状況で、DDR IIへの流れは固まりつつあるものの、まだ時期やスペックが明確でない状況が続いている。まず、デスクトップPCではベストケースだと2003年前半、確実なラインだと2003年後半に立ち上がり、2004年に本格的な普及期を迎える形となる。サーバー&ワークステーションでは、もう少し時間がかかるため、2003年中にシステムの開発が始まり、2004年春頃に実際のシステム製品が登場するという流れになるらしい。


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(2001年11月21日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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