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IntelのSpringdaleとICH5とPrescottの正体


●まだ変動しているSpringdaleのスペックとスケジュール

 Intelの2003年のチップセット「Springdale(スプリングデール)」とICH5、そして新CPUコア「Prescott(プレスコット)」が徐々に見えてきた。

 現時点では、IntelはSpringdaleをDDR IIまたはDDR II+の400~533MHzサポートで、2003年中盤以降にリリースするつもりだと言われる。また、Springdaleは、新しいグラフィックスコアを内蔵し、これまで同様内蔵グラフィックスを使えるバージョンと使えないバージョンがあるようだ。サウスブリッジは次々世代のICH5で、新たに無線LANチップが加わるという。また、Springdaleの対応CPUは、0.13μm版Pentium 4(Northwood:ノースウッド)とPentium 4後継のPrescottで、システムバスは基本的にPentium 4と同じだと見られている。しかし、SpringdaleやPrescottについては、まだ不明な部分も非常に多い。

 まず、Springdaleのサポートメモリとリリース時期は、今も大きく揺れており、まだどうなるか見えない。また、PC業界からの情報とメモリ業界からの情報は食い違っている部分がある。

 そもそも、IntelはSpringdaleのサポートメモリについて、一部の台湾OEMに対して、夏頃にデュアルチャネルのDDRメモリになると説明していたらしい。しかし、同時期にIntelはDDR IIサポートを決めていたと見られるため、PCベンダーに対して出している情報はタイムラグがある。

 現在の状況では、SpringdaleのターゲットメモリはDDR II+ 533MHzに決まる可能性が高い。その場合、メモリ帯域は4.3GB/secとなり、シングルチャネルでNorthwood 533MHzシステムバスの帯域とマッチする。そのため、デュアルチャネルのラインは消えたか、デュアルにするのは内蔵グラフィックスを使うシステムのハイエンド構成だけになる可能性が高い。グラフィックスのメモリアクセスがないなら、メモリ帯域がシステムバスより広くても意味がないからだ。

 Springdaleのリリース時期は、サポートメモリのアベイラビリティによって変わる。Intelは、もともとは2.5V I/O電圧のDDR II 400MHzをSpringdaleでサポートするとしていた。業界関係者によると、このスペックなら2003年前半にリリースが可能になるそうだ。そもそも、Intelが2003年前半にSpringdaleを立ち上げたかったために、2.5V電圧に決まった(1.8V I/O電圧DDR IIは2003年後半でないと量産が難しいため)と言われている。Intelが、現在PC系OEMに説明しているSpringdaleのスケジュールは、このプランに沿ったものだ。

 しかし、最初からDDR II+ 533MHzをターゲットとしてI/O電圧も1.8V一本化で最初からいくとなると、話が違ってくる。DRAMベンダーの開発期間と製造プロセス技術を考えた場合、どうしても半年後ろへずれ込んでしまう。現時点では、Springdaleのスケジュールは、この後者の方になる可能性が高い。このあたりの最終決着が着くのは、まだちょっと先になるだろう。

●ICH5は3チップ構成に拡張

 次にICH5については、複数の業界関係者が9月頃からSerial ATAと802.11無線LANをサポートすると伝えてきている。そのため、チップセットは、MCHとICH、それに無線LANのMACチップを含めた3チップ構成になるという。これはIntelの無線LAN重視の戦略を反映している。例えば、MSI(Micro-Star Int'l)のVincent Laiマネージャ(Marketing Div.)は「Intelは来年前半はUSB 2.0のプロモートに多額の金をつぎ込む。そして来年後半からは、今度は無線LANのプロモートに金を注ぎ込む予定だ。Intelの構想は、ケーブルレスでネットワークできるようにすることだからだ」と説明している。

 ただし、ICH5に取り込む無線LANが、802.11aなのか802.11bなのかそれとも802.11a/bデュアルモードなのかはまだわかっていない。Intelは、ディスクリートチップでも802.11a対応製品の計画を前倒ししてきているからだ。

 SpringdaleプラスICH5では、他にも不明瞭な点がある。それは、3GIOへの対応とチップセット間インターフェイスだ。もともと、Intelはこの8月頃までは2003年の新しいMCHとICH5は、3GIO対応になると説明していた。あるOEMは「ICH5世代が最初の3GIO対応チップセットになるとIntelから説明を受けていた」という。しかし、Intelは、最近、ICH5については3GIO対応ではない可能性が高いと説明し始めたという。

 これには2つの可能性がある。ICH5とSpringdaleが、チップセット間インターフェイスにだけのクローズドな部分にだけ3GIOを使う仕様になったケースと、両チップセット間インターフェイスがHUB Link 2に変わったケース。前者の場合は、ICH5と既存のチップセットとの組み合わせはできないが、後者の場合はBrookdale系チップセットとICH5の組み合わせも可能になる。

●NorthwoodもじつはHyper-Threadingを搭載済み

 Prescottについては、しばらく前からNorthwood後継のCPUが2003年に登場すると、業界筋から伝えられていた。このPrescottは、サーバー&ワークステーション市場で登場する次々世代Xeon「Nocona(ノコーナ)」と基本的に同じCPUコアを使うものと思われる。

 Prescottについては笠原一輝氏のレポート「2003年半ばにNorthwood後継のPrescottと対応チップセットをリリース」にある通りで、IntelはOEMに対してPentium 4アーキテクチャの拡張であることと、Socket 478をサポートすることしか明らかにしていない。しかし、Noconaが「スレッドレベルパラレリズム(TLP:Thread-Level Parallelism)」技術をインプリメントされることから、PrescottもTLP技術をインプリメントされると見られる。

 ただし、いくつかの理由からPrescottは単なるNorthwoodのHyper-Threading(Intelの第1世代のTLP技術)インプリメント版ではないと考えられる。

 まず、その理由のひとつはHyper-Threadingは、すでにNorthwoodコアにインプリメントされている可能性が高いからだ。この件については、ある業界関係者がIntelからそのような説明を受けたと伝えてきている。ただし、通常のPC系OEMに対しては、Intelはそうした説明をしていないため、この情報については、裏が確実に取れてるわけではない。

 しかし、NorthwoodコアにHyper-Threadingがインプリメントされている可能性は高い。というのは、現在のHyper-Threadingのトランジスタコスト、つまり、ロジックトランジスタ数の増加は5~10%程度とそれほど大きくないからだ。微細化によりロジックトランジスタの総面積が小さくなっているNorthwoodなら、Hyper-Threadingのインプリメントのコストは比較的小さく、総ダイサイズ(半導体本体の面積)のうち5%以下だと推測される。

 また、Northwoodと同世代の0.13μmプロセスの大容量L3搭載Xeon MP「Gallatin(ガラティン)」は、Hyper-Threadingをインプリメントされている。このことからも、NorthwoodにTLPがインプリメントされている可能性が高い。というのは、Intelは伝統的にCPUコアのデザインをできる限り統一しようとする傾向があるからだ。これは、デザインを統一した方が高速化のためのクリティカルパスつぶしが容易になるためだと思われる。つまり、CPUコア自体は、GallatinもNorthwoodも共通デザインで、どちらもHyper-Threadingがインプリメントされている可能性が高い。そもそも、Intelは、テストチップ機能のために将来のフィーチャを入れ込むこともしばしばある。1世代はテストだけで、次の世代からその機能がイネーブルされるなんてことが結構あるのだ。

●Prescottは0.09μm世代のCPUか

 もちろん、NorthwoodコアにHyper-Threadingがインプリメントされていたとしても、それがPentium 4でHyper-Threadingがイネーブルされることを意味してるわけではない。おそらく、Pentium 4ではこの機能は当面は殺されたままになるだろう(AMDに急迫されない限り)。ただし、NorthwoodコアのXeonについてはイネーブルされる可能性がある。

 実際、ある情報筋は、IntelがHyper-Threadingに関して、現在Microsoftとの交渉を行なっている最中だと伝えている。焦点は、Hyper-ThreadingイネーブルのCPUが、MicrosoftのOSライセンスで2CPUライセンス形態に数えられるかどうかだという。これは、デュアルプロセッサワークステーションでは重要な問題になると思われる。というのは、Hyper-Threading CPUをデュアルで搭載すると、ソフトウェア上からは4CPUに見えてしまうからだ。つまり、2CPUまでのライセンスでいいのか、4CPUライセンスが必要になるのかというえらい違いの問題が発生する。こうした話が伝わってくるということは、Hyper-Threadingの導入はかなり近いことになる。

 もちろん、これもXeonラインの話で、今のところデスクトップPentium 4については、当面はHyper-Threadingがインプリメントされていたとしても、Intelはイネーブルにするとは一切伝えていない。しかし、NorthwoodコアにHyper-Threadingがインプリメントされているとしたら、Nocona/Prescottのコアは、単純なHyper-Threading対応版ではない可能性が高い。つまり、もっとHyper-Threadingに合わせてマイクロアーキテクチャが拡張されている可能性がある。例えば、実行ユニットの数を増やすといった改良が行なわれているかもしれない。

 それからPrescottについてもうひとつ推測できるのは、次世代プロセス技術0.09μmで製造される可能性だ。2003年後半はちょうどIntelのプロセス世代交代の時期で、Intelの次の0.09μmプロセス(ノード世代としては0.10μmと同世代)「P1262」の量産アウトプットを始める年となっているからだ。だとすると、Prescottは、システムバスがNorthwoodと共通であっても、現行のマザーボードガイドライン(Flexible Motherboard)のマザーボードで、サポートできない可能性が高い。


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(2001年11月16日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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