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NEW PRODUCTS TESTREPORT

ソニー
VAIO MX PCV-MXS1
Net MD対応ドライブと独自設計サウンド回路を搭載した本格AV機
TEXT:天野 司 Tsukasa Amano


フロントパネルの液晶画面には、HDD上のデータベースやCDDBを参照して再生中の曲名を表示したり、FM文字放送を表示したりすることが可能 背面部には右下にアンプ部と直結するスピーカーとLINE IN/OUT端子が並ぶ。また、右上部にはFMアンテナ端子と、光入出力端子が用意されている
●一新されたパーツ構成

 ソニーが発売したVAIO MX PCV-MXS1は、個性的なVAIOシリーズの中でも、オーディオ機能を重視したVAIO MXシリーズの最新機種だ。本機では、Net MDへの対応や筐体デザインの一新などをはじめとして、従来機から大幅なリニューアルがなされている。

 まず、その外観から見てゆくと、ミニタワーサイズのボディは、これまでのパープル系ではなく、シルバーグレーを基調としており、前面部にはクリアパーツに覆われたガンメタリックのパネルが配置されている。これにはAV機器と並べても違和感がないようにという狙いがあるのかもしれないが、一般的なAV機器ともまた異なり、独特の雰囲気を持つデザインと言える。

 本体上部のシーリングパネル内部には、DVD-ROM・CD-R/RWコンボドライブが配置されている。また、本体下部には下方にスライドさせることで開く小窓が存在し、この内部にはPCカードスロット、メモリースティックスロット、USB、IEEE 1394、さらにオーディオ入出力端子などが収められている。

 MXS1最大の特徴となるのがフロントパネルの中央部で、ここには後述するオーディオ用のMDドライブと、PCの動作状態を表示する大型の液晶パネル、さらに各種オーディオ機能などを制御するためのプッシュスイッチ類が並ぶ。この液晶パネルはグリーンのバックライトを採用しており、同系色のライトで光る各スイッチの機能表示と相まって非常に美しい。

 背面部には、PS/2やUSB、シリアルなど一般的なインターフェイスが並ぶほか、金メッキされたRCA音声入出力、スピーカー出力端子、FMアンテナ入力や光デジタル音声入出力など、MXシリーズならではの端子も並ぶ。

 今回評価した試作機のマザーボードには「P4B-LX」とのプリントがなされていたが、この型番から類推すると、これまでのVAIOシリーズ同様ASUSTeK製のカスタムボードと思われる。このボードはIntel 845チップセットを搭載したmicroATXフォームファクタのもので、オンボードでEthernetおよびIEEE 1394コントローラが実装され、CPUとしてSocket478タイプのPentium 4 1.5GHz、メインメモリとして256MBのPC133対応SDRAMが搭載される。このほかPCIスロットには、PCカードスロットとモデムが一体となったカードと、テレビチューナーを搭載したMPEG-2ハードウェアエンコーダカードが装着されている。こうした拡張カード類はこれまでのVAIOに搭載されていたものとほぼ同等の構成と言えるだろう。

フロント下部の小窓を開くと、PCカードスロットやメモリースティックスロットが現われる 写真では取り外してあるが、電源はCPUの横に設置される。また、アンプは底面部に取り付けられるほか、SDASはPCIカードではなく、独自形状で本体前面下部に設置されている

●統合されたデジタルオーディオ環境

 VAIO MXシリーズで重視されているオーディオ機能だが、今回のMXS1では、MD、CD、FMラジオ、メモリースティック、光デジタルオーディオ、アナログオーディオ、HDDなどのさまざまな音楽記録デバイスをすべて統一的に扱うサウンド回路「Sony Digital Audio System(以下SDAS)」を中心に構成される。

 一般的なサウンドカードの場合、たとえデジタル入出力が行なえるデバイスであっても、さまざまな要因から内部で再サンプリングが行なわれており、ソースとなるデジタルデータに手を加えずに扱うことは非常に難しい。一方、SDASでは、こうしたデータの変更が発生しないよう、各デジタルオーディオデバイス間で自由にデータをルーティングできる専用の入出力回路を設計しており、音質劣化のないデジタルデータのやり取りが可能だ。またオーディオ機器のようにPLLによる同期回路を採用することで、高音質を保つための配慮もなされている。そしてこれらのデータは、新たに採用された20W+20Wの内蔵アナログオーディオアンプ、6バンドのパラメトリック・イコライザー、木製キャビネットを採用した2ウェイスピーカーなどを用いて再生されるのである。

アンプ部は、従来のデジタルアンプではなく、アナログアンプとなっている。これは音質を追求した結果のようである SDASの基板。各デバイスとの入出力端子が備えられているほか、左側には日立のSH-DSPも見える

●オーディオ機能を一元管理するSonicStage Premium

SonicStage Premium。CDからMDへのダビングも、もちろん可能で、デジタルソースのままで処理される
 こうしたオーディオハードウェアを扱うのが、SonicStage Premiumと呼ばれる専用のオーディオアプリケーションだ。これは、MXS1に搭載されたすべてのオーディオデバイスを共通のユーザーインターフェイスによって統一的に扱うソフトで、CD/MD/メモリースティックやHDDに録音されたデータの再生、コピー、そしてFMラジオの受信およびエアチェックなどを行なうことができる。

 PCならではの機能もふんだんに取り入れられており、たとえばCDの再生であれば、CDを挿入すると自動的にCD TEXTやCDDBのデータを用いてアルバムデータや曲名一覧を表示することも可能だ。このソフトでは、HDDも一つのオーディオデバイスとして扱われ、CDのデータをWMAやMP3、ATRAC3などの形式でHDDにレコーディングして、これを再生することもできるようになっている。もちろんこの場合、曲名データなどもそのままHDD内に記憶される。

 そして、ここで注目したいのがMDの扱いだ。従来のVAIO MXでもCDやFMラジオ、HDD上の楽曲ファイルなどをソースとして、MDへ録音を行なうことが可能だったが、MXS1では、このMDへの対応が大幅に強化されている。

 もっとも大きな強化点が、ソニーの提唱する「Net MD」への対応だ。これは、USB経由でMD機器-PC間でデジタルデータを入出力するための規格で、MXS1では、このNet MD対応のMDドライブが搭載されている。MDではATRACと呼ばれる独自の圧縮フォーマットを使用しているが、Net MDではPC上でATRAC形式にエンコード、小型化したデータをUSB経由でMDドライブへと転送するため、従来よりも高速な転送が可能となる点が大きなメリットだ。MXS1ではこのエンコードはソフトウェアで行なわれるが、通常のMDプレイヤーで再生可能なATRACはもちろん、ほぼ同等の音質でATRACの2倍の時間記録できるLP2や、さらにその2倍の時間の記録が可能なLP4といった各種のモードも利用できる。

Sonic Stage Premiumでは、FM放送のエアチェックも可能だ。なお、FM文字放送にも対応している
 実際に約1時間11分のCDをWAV形式でHDD上に録音し、各形式でMDに録音するという一連の手順を自動で行ない、その時間を計測してみたところ、ATRACステレオでは35分30秒、LP2ステレオでは11分45秒、LP4ステレオでは9分9秒となった。またこの際、HDDへの録音形式をよりサイズの小さいものに変更すれば、録音時間をさらに短縮することが可能となる。たとえば、ATRAC3 66kbpsでHDDに録音し、LP4ステレオでMDへと録音した場合は7分25秒という具合だ。

 Net MDは著作権保護機能「OpenMG」にも対応しており、規定されたコピー回数内であれば音楽配信サービスなどからダウンロードされた楽曲データであってもMDに記録することが可能だ。もちろんOpenMG対応のMGメモリースティックにも対応しており、同様にダウンロードした楽曲データをMGメモリースティックにダビングして、ポータブルオーディオプレイヤーなどで楽しむこともできる。

 このほかSonicStage Premiumでは、MP3データをCDに書き込むMP3CDなどにも対応しており、PCにおける、これまでにない総合的なオーディオ環境を実現していると言える。

パラメトリック・イコライザーの設定画面。本格的なオーディオ機器並みのエフェクトが利用できる MXS1のウリの一つであるMDドライブはNet MD機器のためUSB接続となっている

●Windows XPにより多機能ながら安定した環境を実現

 オーディオ機能がウリのMXシリーズだが、MXS1ではVAIOシリーズではもはやおなじみとなったテレビチューナーを搭載したMPEG-2ハードウェアエンコーダカードを用いる「Giga Pocket」も搭載されている。エンコーダカードもRXシリーズなどで定評のある「YUZU」が採用されており、ほかのVAIOシリーズなどと比較しても遜色のないテレビ録画/再生機能が利用できる。

 このように多彩な機能を持つMXS1のOSには、Windows XP Home Editionが標準搭載される。従来、Giga Pocketのタイマー録画などのように、長時間にわたる信頼性が必要な機能を持つ機種では、積極的にWindows 2000を搭載してきたVAIOシリーズだが、これと同様のWindows NT系のカーネルを採用しつつ個人向けに設計されたXP Home Editionは、まさにVAIOシリーズに最適な環境を提供してくれるはずだ。

 今回のVAIO MXS1の最大の魅力は、何と言ってもNet MDを用いたMDへの高速録音だろう。シリコンオーディオプレイヤーも普及してきたとはいえ、やはり現時点でのポータブルオーディオの主流はMDであることは確かだ。これをPCで簡単に作成するという意味において本機の右に出るものはないだけに、現在ポータブルMDプレイヤーを使っている人には強くオススメしたい製品だ。

・製品名:VAIO MX PCV-MXS1
・標準価格:オープン(実売250,000円前後)
・問い合わせ先:ソニーマーケティング株式会社
・TEL:03-5454-0700
・URL:http://www.sony.co.jp/
・CPU:Pentium 4 1.5GHz
・チップセット:Intel 845
・メモリ(最大):256MB PC133対応 SDRAM(512MB)
・HDD:約80GB(Ultra ATA/100)
・DVD-ROM・CD-R/RWコンボドライブ:DVD-ROM読み出し最大8倍速、CD-R書き込み最大8倍速、CD-RW書き換え最大8倍速、CD-ROM読み出し最大32倍速
・ビデオチップ:nVIDIA GeForce2 MX
・ビデオメモリ:32MB SDRAM
・最大解像度:1,600×1,200ドット/1,677万色
・サウンドチップ:Sony Digital Audio System
・モデム:56kbps(V.90/K56flex対応)
・キーボード:109キー(PS/2接続)
・拡張スロット(空き):AGP×1(0)、PCI×3(1)、PCMCIA Type2×1(CardBus対応、空き×1)、メモリースティックスロット×1(1)
●インターフェイス
 ・本体前面:USB×1、IEEE 1394(S400、4ピン)×1、ヘッドホン×1、マイク×1
 ・本体背面:USB×1、IEEE 1394(S400、6ピン)×1、キーボード(PS/2)×1、マウス(PS/2)×1、シリアル(D-Sub 9ピン)×1、パラレル(D-Sub 25ピン)×1、ディスプレイ(D-Sub 15ピン)×1、ディスプレイ(DVI-D)×1、LINE IN×1、LINE OUT×1、スピーカー×1、S/P DIF IN(光角型)×1、S/P DIF OUT(光角型)×1、モデム(RJ-11)×1、10BASE-T/100BASE-TX(RJ-45)×1、FMアンテナ(F型端子)×1
 ・MPEG-2リアルタイムエンコーダーボード部:S-VIDEO/VIDEO IN(専用端子)×1、S-VIDEO/VIDEO OUT(専用端子)×1、LINE IN×1、LINE OUT×1、アンテナ(F型端子)×1
・本体サイズ(W×D×H):192×382×346mm
・重量:約11.5kg(本体のみ)
・OS:Windows XP Home Edition
・付属ソフト:SonicStage Premium for MX、Giga Pocket Ver.4.3、DVgate Ver. 2.4など


■写真撮影
若林直樹(STUDIO海童)

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報
http://www.sony.co.jp/sd/products/Consumer/PCOM/PCV-MXS1L5/
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011012/sony4.htm


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