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●IntelがDDR266を来年1月からサポートへ
Intelが、DDRメモリへの傾斜を強めている。その証拠に、IntelはDDR266(モジュールはPC2100)のサポート計画を2四半期前倒しして、来年頭から開始する。また、2003年以降の次世代メモリ規格でも、DDR系メモリ(DDR II/III)との融和を図る可能性があると、複数のDRAM業界関係者が伝える。Intelの方針転換で、DDRへと向かう流れは、徐々に奔流になりそうな気配を見せ始めた。
IntelのDDRサポートロードマップ |
OEMメーカーによると、IntelはDDRメモリのサポート計画を変更したという。これまでは、来年1月に投入する「DDR版Intel 845(Brookdale-D:ブルックデール-D)」チップセットではDDR200(PC1600)のみをサポート、DDR266は来年中盤のグラフィックス統合チップセット「Brookdale-G(ブルックデール-G)」からサポートする計画だった。ところが、IDF直後にIntelは、来年1月のBrookdale-DからDDR266をサポートすると伝えてきたという。DDR266サポートの前倒しは、前からウワサはあったが、これで確実になった。
この決定で、ようやくIntelのDDRチップセットはメインストリームに乗った。“ようやく”というのは、ほかのPentium 4向けチップセットがいずれもDDR266以上をサポートしており、DRAMベンダー側もプロセス技術の移行によりDDR266への移行も進めているからだ。
今年後半から量産出荷されるチップセット、VIA Technologiesの「P4X266」はDDR266、SiSの「SiS645」とAliの「ALADDiN-P4」はそれぞれDDR333をサポートする。DDR333サポートは、実質的にはDDR333の量産チップと「PC2700」モジュールが登場して動作検証が進まないと意味がないので、現状ではDDR266で並んでいると言っていい。これらのチップが、システムレベルで搭載され本格的に登場するのは来年の第1四半期頃。Intelチップセットは、今回の決定でスペック上は同時期に互角になったことになる。
●今年春夏のつまづきでDDR傾斜が決定的に
ここまで、IntelのDDRサポートには紆余曲折があった。というか、IntelのDDRメモリへの姿勢は、これまで鮮明ではなかった。“いやいやながら”なのか“やる気あります”なのか……。揺れに揺れていた。
昨年、OEMメーカーに対してDDRメモリサポートのプランを説明した時は、Intelはベンダーに対して、それなりに「やる気あります」説明をしていたという。ところが、今年2月のIDFでは、Intelは“やっぱりRDRAMが主軸”宣言をしており、DDRサポートは「?」マーク付きの、いやいやモードに戻っていた。
だが、2月のRDRAM堅守路線も、今春にSDRAM/DDRメモリの価格がさらに暴落したことでまた変わり始めた。せっかくDRAMベンダー3社からRDRAM増産の約束をとりつけたのに、春のPentium 4+RDRAMプラットフォームの浸透が今1つ終わったことも影響している。このRDRAM浸透の失敗で、DRAMベンダー側の姿勢も変わった。あるDRAMベンダーのスタッフは、Intelの誘いに乗ってRDRAMの生産量を増やしたにもかかわらず空振りに終わったため、かなりのRDRAMチップの在庫を抱えてしまったとこぼしていた。また、複数のDRAM業界関係者が、すでに、RDRAMの生産量は業界全体で需要の縮小を見越して調整に入っていると伝える。
そして、先月のIDFでは、ついにIntelはメモリに関するアナウンスをしなかった。これまで、IDFの度にIntelはRDRAM路線の堅守をプレゼンテーションしていたのに、今回はそれがなかった。そこへ持ってきてのDDR266サポートで、IntelのDDRメモリへの傾斜はかなり決定的になったと言えそうだ。
●DDR266の追加仕様の策定も進めるIntel
Intelは、DDR200しかサポートしない理由を、表向きには、十分な動作検証や追加仕様策定のためだとしていた。DDR200はIntelの基準でサポートできるメドは立っているが、DDR266についてはまだ厳しい問題が残っている、というのが今年前半の彼らの見解だった。
実際、Intelは、DDR200→DDR266と段階的にサポートの準備を進めていた。Intelは、すでにDDR200についてはJEDEC(メモリの規格策定団体)の仕様への追加仕様(Spec Addendum Revision 1.0)を策定し、メモリベンダーの協力を取りつけている。これは、Intel版DDR200を新たに作ったわけではなく、JEDECで明文化されていなかった部分を仕様化したものに過ぎないが、DDR200についてはこれで準備が整った。そして、IntelはDDR266についても同様の追加仕様の策定を進めており、Revision 1.0を年内にリリースする予定であることを明らかにしていた。
しかし、この“DDR200かDDR266か問題”には、IntelのRDRAMとの調整があったことも確かだと思われる。つまり、あまりDDRメモリの帯域が上がると、RDRAMがメインストリームへと浸透する妨げになるというわけだ。特に、来年中盤のRDRAMチップセット「Tulloch(タラク)」では、RDRAM 1チャネル構成をサポートするからだ。Tullochによる廉価システムでのRDRAM 1チャネル構成では、帯域はPC800の場合1.6GB/secとなる。これは、DDR200の1.6GB/secとスペック上は同等(現行RDRAMは1チップ当たりのバンク数が多いので実効帯域は違う)、DDR266の2.1GB/secよりスペックでは劣ってしまう。
●ADTとDDR II/IIIの関係は?
2002年のPC用メモリでは、DDRメモリへの傾斜を強めたIntel。だが、DDRへの傾斜は、それにとどまらない可能性がある。というのは、2003年以降のメモリでも、DDR系メモリテクノロジへと向かう可能性があるからだ。
Intelは、2003年以降のメモリ規格を策定するため、トップDRAMベンダー5社とメモリ策定団体「ADT(Advanced DRAM Technology)」を結成した。ADTは、機密保持規定がメチャクチャに厳しい団体で、内部の情報はほぼ漏れてこない。例えば、現在、ADTにオリジナルメンバーのIntelとMicron Technology、韓Samsung Electronics、独Infineon Technologies、韓Hyndai Electronics、エルピーダ(最初はNECが参加)以外に、どのメンバーが参加しているかわからない。参加を検討したあるベンダーは、あまりの参加費用の高さと、機密保持規定の厳しさに断念したという。だが、ここに並ぶメンバーにRambusが含まれていなかったことから、流れとして非Rambusへ向かうのでは、という憶測が流れていた。
そして、2つの情報ソースによると、現在、ADTとDDR系メモリは融合の方向に向かっているという。この話は、まだ、全体像がつかめていない(裏が取れてない)ので確証はないが、両規格に何らかの歩み寄りがあるのは確からしい。
例えば、あるDRAM業界関係者は「DRAMベンダがDDR IIへと急ぐのは、DDR IIIの段階でADT IIとマージさせたいと考えているから」と語る。このことからは、ADTがDDRメモリ的なアプローチ、つまり、SDRAM系コマンドで広インターフェイス幅技術を採った可能性が高いことがわかる。また、別の関係者は「ADTは実質的にDDR IIにかなりよく似た規格になる。違いはほとんど転送レートと電圧だけだ」と言う。
実際、ADTとDDR IIIには公式情報だけでも明確な符合がある。ADTのターゲットメモリ帯域は6.4GB/secで、DDR IIIもターゲットの「DDR800」だと計算上の帯域は6.4GB/sec(64bit幅)になる。つまり、帯域は一致するのだ。
Intelのターゲットが6.4GB/secというのは、明確だ。まず、Intelのパトリック・ゲルシンガ副社長兼CTO(Intel Architecture Group)は、次世代DRAMは6GB/secオーバーになると3月に説明している。また、Intelのターゲットメモリ帯域は、常に次世代プロセッサのシステムバスと一致しているが、Intelの次期IA-64プロセッサ「McKinley(マッキンリ)」のシステムバスの帯域は6.4GB/secだ。
このあたりの次世代DRAMに関しては、もう少し状況が見えてきた段階で、またレポートしたい。
(2001年9月11日)
[Reported by 後藤 弘茂]