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一ヶ谷兼乃の |
■国内外で評判の高いPDA 「iPAQ」
海外ではすでに評価の高いコンパックのPDA「iPAQ」の日本語版が、国内でも発売され人気を呼んでいる。ご存知のとおり、iPAQは、「Pocket PC」と呼ばれる、Windows CE 3.0を搭載した手のひらサイズのコンピュータである。スケジュール管理や住所録、その他便利なユーティリティなどを利用することができるものだ。
Pocket PCは、すでに国内でも複数のメーカーから数機種発売されているが、その中でもiPAQは高い人気を得ている機種である。購入前、知人から英語版を見せてもらったり、日本語版の試作機を触る機会があり、iPAQの魅力を感じ始めていた筆者も、正式発表と同時に店頭で予約し、発売日に入手することができた。
すでにPC WatchやケータイWatchでも、iPAQの記事は掲載されているが、筆者なりのiPAQの使用感をレポートしよう。
■iPAQでなければならないわけ
筆者はずいぶん前からPDAの類を利用してきた。さまざまな機種を使ってきたが、実用的なものとしては、ヒューレットパッカードのHP200LXが最初であったように記憶している。その前にも、いわゆる電子手帳を使っていた時期もあったが、あまり馴染めなかったというのが正直なところ。
HP200LXの後に使ったのがPalm OSを搭載したPDAである。これは結構長い間使用していた。もちろん、同じ機種をずっと使っていたわけではなく、新しいPalm OS搭載機種が出ると、それに乗り換えるということを繰り返していた。
Palm OS搭載PDAは、住所録やスケジュール管理、ちょっとしたメモ帳代わり、といったような使い方をし、モバイルでの電子メールやホームページのチェックが必要な場合には、B5サイズのノートPC、もしくはWindows CE搭載のハンドヘルドPCを使用していた。
結果的に筆者は、いつもPDAとインターネット端末の2つを持ち歩いていたわけだが、できれば1つにしたいという願望はもっていた。確かにPalm OS搭載PDAでも、メールやホームページのチェックは可能なものの、筆者にとってはあまり快適とは言えなかったのだ。
そこで、その解決策として注目していたのが、Pocket PCであった。実はその他にもシャープ「ザウルス MI-E1」を購入し、試してみたものの、ザウルスのインターフェイスに馴染めず、使い込む前に諦めてしまった。
Pocket PCは、昨年から数機種が発売されていたが、購入して持ち歩こうと思うほどの製品は見当たらなかった。特にネックとなっていたのは、P-in Comp@ctのようなCFカード型のPHSが直接挿せないことだ。ほとんどの機種では専用のケーブルを使って携帯電話を接続するようになっている。
専用ケーブルを使ってPHSや携帯電話と接続するというのは、忘れ物が多い筆者にとっては致命的で、肝心なときにケーブルが無い、という事態になりかねない。
その後、P-in Comp@ctを直接挿すことができるNTTドコモのPocket PC「G-FORT」が発売された。動作速度や綺麗な液晶画面など、申し分のないスペックではあったものの、特徴の1つになっているデザインが気に入らず、残念ながら見送りとなった。
そこで次のターゲットとなったのが、iPAQである。本体にCFカード型PHSを直接挿せるわけではないが、拡張用のジャケットを使うことによりCFカードが利用可能で、デザインも受け入れられないものではなかった。
現在ではモバイル環境でのメールチェック、ホームページ閲覧や、住所録、スケジュール管理などを、iPAQ 1台で実現している。正確には住所録などの個人情報関連は現在移行中というところだが、最終的にはiPAQにすべて移行しても問題ないと考えている。
■iPAQを使ってみて感じたこと
筆者が購入したのはコンパック「iPAQ Pocket PC H3630」である。iPAQには内蔵メモリが32MBと64MBの2モデルがラインナップされているが、H3630は32MB版である。今のところ64MB版は出荷されておらず、出荷予定は7月初旬となっている。
iPAQを購入してしばらく使ってみると、とても使いやすくできている、と感じることが多々あった。具体的には、これはiPAQに限らないことだが、USBケーブルでパソコンと接続できること。クレードルに差し込めば充電も、パソコンとのデータのやり取りも同時に行なえるというのはとても便利だ。ジャケットを着けたままでもクレードルに挿せるところも気に入っている。
その他にも、さまざまな条件下でも見やすい液晶画面や、処理速度が速く、きびきびとした反応など、道具としての基本性能の高さも気に入っているのだが、詳細については今回は割愛させていただく。
iPAQは完成度が高く、気に入っているとはいうものの、使っているうちにいくつか不満点も出てきてしまうのはしかたのないところ。その不満点を、どうやって満足できるレベルにまで持って行ったのかを説明していこう。
iPAQ本体とジャケット | iPAQ本体。スリムかつ角が滑らかなために非常にコンパクトに感じる | ジャケットを装着したiPAQ。実際の寸法は厚みを増しているが、角の部分が滑らかにカーブしているので、それほど大きさを感じない |
■不満その1 「ケース」
iPAQは、PDAなので当然持ち運びすることが多い。金属質なイメージのシルバーボディは、擦り傷程度であればそれほど目立たないと思うが、やはり、なるべく傷が付かないように使いたいものだ。また、持ち運びするときには、液晶画面もできるだけ保護する必要があるだろう。
iPAQには本体を収めるための簡単なソフトケースが付属する。しかし、このケースはジャケットを付けたまま装着することができない。筆者は、ジャケットをつけたまま持ち歩くことが多いので、このケースを利用することができないのだ。そこで何か良いケースがないかと探してみたが、コレだというものが見つからないまま数週間が過ぎていった。
しばらくすると、筆者が他の機器でもケースを愛用している「エクストリーム リミット(http://www.extreme-limit.co.jp/J_index.htm)」から、iPAQ用のボディスーツが発売されたので、早速注文した。確かに売り文句どおり、本体のみでも、ジャケットをつけた状態でも、うまく収まってくれるし、液晶画面もしっかり保護される。
ボディスーツにiPAQ本体だけを入れた状態。本体だけでも、しっかりホールドしてくれる | ジャケットを装着したiPAQをボディスーツに入れた状態。この状態でも収まりがいいが、iPAQのコンパクトさは失われているといってもいい | ジャケットに入った状態でもiPAQの各センサーやボタンを操作できるようにし、機能性を失わないデザインになっている |
各ボタンやACアダプタを接続するコネクタ部分はボディスーツに入れたままの状態でも操作、充電が可能 | 液晶画面のカバーは、堅い素材の板が入り、補強されている。カード類を入れるポケットも用意されていて便利 |
ただし、このしっかりした作りは、確かにiPAQを保護してくれはするのだが、大きさに不満が残ってしまった。ひと回り以上大きくなったイメージを受けるのだ。とりあえず、求めていた条件はクリアしているので、しばらく使ってみることにしているが、もっとコンパクトなケースが出てくることを願っている。
■不満その2 「メールソフト」など
次に不満を感じたのが、メールソフトである。Pocket PCには、標準でPocket Outlookが内蔵されているが、いくつものメールアカウントを持っている筆者にとって、Pocket Outlookのメール機能は物足りないものであった。常用しているノートパソコンなどでも、Outlook系のメールソフトは使っていないので、なじみがないのも一因だろう。
市販ソフトやオンラインソフトを次々と試してみたが、最終的に使いやすいと思ったのはnakka氏作のフリーソフトウェア「nPOP (http://www.nakka.com/soft/npop/)」であった。Pocket PC向けに画面がレイアウトされているため、非常に見やすく、使いやすいものに仕上がっている。
メールボックスにアクセスすると、まずヘッダ情報だけを受信して表示する。本文を読んだほうがいいと判断したメールにユーザーがチェックを付け、チェックされたものだけ本文をダウンロードするという方式のメールソフトだ。
そのほかにもメールソフトを探してみたところ、Windows CE上で動作するメーラーはいくつか見つかったのだが、多くはハンドヘルドPC用で、Pocket PCを前提に設計されたものが少ないというのが印象だ。今後、Pocket PCで利用できるメールソフトがリリースされていくとは思うが、筆者はこの「nPOP」で十分満足している。
iPAQにインストールしたオンラインソフトには、nPOP以外にも、レジストリエディタのPHM Registry EditorやTascalSoftのTascalLha、TascalGauge、Cambrige vxUtilといった定番ソフトがある。また、iPAQを購入したときに標準添付されているソフトもいくつかあるが、メモリの容量的な問題もあって、ACCESS社のブラウザ「NetFront」とJRトラベルナビゲータしかインストールしていないが、現状では不自由していない。
後述するが、現在はメモリの問題が無くなっているので、英語版のMicrosoft Windows Media Player 7.1も試しにインストールしている。
次にインストールしたいと思っているものは英和和英辞書系ソフトで、iPAQ上で動作するものを現在物色中である。
■不満その3 「搭載メモリ容量」
最後に不満を感じたのがメモリ容量である。ご存知のとおりPocket PCの多くは、32MBのメモリを搭載している。この32MBのメモリを、プログラムを動作させるためのメモリ空間と、プログラム本体やデータを格納するストレージとして利用しなければならない。
そのため、いろいろなアプリケーションをインストールすれば、当然、あっという間に32MBのメモリを食いつぶしてしまうのだ。
メモリ増設サービス前のメモリの状態。必要最小限のソフトだけをインストールしてある |
iPAQでMP3データが聴けたり、動画が再生できるといっても、データが無いと意味がない。数MBというサイズであっても、本体メモリにデータを納めようとすると、Pocket PCには致命的なファイルサイズであり、そのような使い方をするのであれば、最低限コンパクトフラッシュなどのストレージメディアを使用する必要がある。
しかし筆者は、ジャケットのCFスロットにP-in Comp@ctを常に挿しておきたい。そのため、真剣に64MB版iPAQへの買い替えも検討したが、出荷が遅れているという情報が入ってきており、しばらくは32MB版のiPAQのメモリをケチケチと節約しながら、使っていくことにした。
住所録へも最低限必要なメンバーのみ登録したり、いろいろと工夫したものの、やはりストレスがたまる使い方であることには違いない。
そこで見つけたのが64MBへのメモリ増設サービスだ。現在、iPAQのメモリ増設サービスを行なっている業者は、筆者が知っているだけでも3社存在する。もちろん、この手のサービスを受けると、メーカ保証が受けられなくなるというリスクはあるが、32MBのままで使うストレスと天秤にかけ、結局サービスを受けることにした。
お願いしたのは、岡山にある「PDA工房 (http://www.u-systems.co.jp/pda/)」である。発送してから、増設作業が完了して受け取るまでどれくらいの時間が掛かるか気にはなったが、筆者の場合は土曜日に発送して、翌週の火曜日には手元に届いた。6月12日現在の料金は15,800円(送料別)だ。
週末を挟んでいることを考えると、非常に早い対応である。問い合わせしたところ、16時頃までに届いたものは即日作業を行ない、当日中に返送しているということであった。
メモリ増設サービス後のメモリの状態。64MBになり、空きメモリにも余裕がある |
PDA工房では、これらメーカー保証の受けられなくなった作業後のiPAQに関して、PDA工房作業部分に関しては1ヶ月間の無料保証、それ以外に関しては有料になるものの、できる限りの保証を行なってくれるという。ユーザーにとっては、非常にありがたいシステムだ。
念のため、戻ってきたiPAQは一度ハードウェアリセットをかけてから、発送前にあらかじめCFカードにバックアップしておいたデータをリストアしてみたが、問題なく使用できている。
64MBになったiPAQは、やはり快適である。メモリの残容量を気にせず、いろいろなソフトを試すことができるし、ちょっとした画像やサウンドデータを持ち歩くことも可能だ。メモリ増設を行なって、まだ1週間ほどしか経っていないが、今のところ残メモリの心配をしたことは一度もない。これでやっと、iPAQをガンガン使い込んでいける状態になったといえる。
■満足のいくものとなった 「iPAQ」
iPAQを購入して1ヶ月程度過ぎたが、その間、64MB化したり、いろいろなソフトを試したりして、なんとか使っていけそうな感触を得ている。筆者はPalm OSを搭載したPDAを数年間利用してきただけに、Pocket PCがしっくりと馴染んでいるわけでばないが、念願のインターネット端末としての機能も1台のPDAで実現でき、満足している。
Palm OS搭載PDAや他のPocket PCは、低価格化が進んでおり、iPAQはPDAとして比較的高価な製品であるが、結果的に満足度の高い買い物となった。
その満足度に最も貢献しているのが64MBというメモリ容量である。今回iPAQを使ってみて、筆者の使い方では32MBというメモリ容量は少ないものであることがわかった。他のメーカーからも64MBメモリを搭載したPocket PCの発売を期待したいところだ。
ところで、これからメモリ増設サービスを受けようという方に、簡単なアドバイスをひとつ。iPAQには、ヘッドホンコネクタやボタンのキシミといった初期不良が見られる場合があるので、まずは自分のiPAQが正常な状態であることを確認しておくことが重要だ。それはメモリ増設後にはメーカー保証が受けられなくなるからである。
ヘッドホンコネクタの不具合は、コネクタにヘッドホンを差し込んで、抜いたとき、本体スピーカから音声が再生されないといったもので、簡単に確認することができる。iPAQオーナーは改造する前に確認しておくといいだろう。
□関連記事
【4月11日】コンパック、ジャケット着脱式Pocket PC「iPAQ」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010411/compaq.htm
(2001年6月11日)
[Text by 一ヶ谷兼乃]