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NEW PRODUCTS TESTREPORT

ATI Technologies
RADEON VE
安定した性能と低コストが魅力のスタンダードビデオカード
TEXT:本間 文 Bun Honma



RADEON VE(左)は、ハードウェアT&L回路とパイプラインを1本削った部分にグラフィックスコントローラとDACを二つずつ収めながら、RADEON(右)よりも二まわりも小さなパッケージを実現している
 ATI TechnologiesのRADEONファミリーのエントリーモデルとなるRADEON VE搭載ビデオカードがようやく日本市場にも登場した。昨年のCOMDEX/Fall直前に発表されたこのGPUは、RADEONの廉価バージョンで、VEとはValue Editionの略と言われている。つまりは、RADEONとVEの関係は、nVIDIAのGeForce2 GTSとGe Force2 MXと同じと考えればよいだろう。

 RADEONから大きく変わった点は、やはりハードウェアT&L機能を実現したCarisma Engineが省かれ、パイプラインも2本から1本へと減らされていることだろう。このため、3Dグラフィックス性能は大幅に低下するように思えてしまう。が、実際は1パイプラインあたり3テクスチャを同時に処理できることもあり、800MHz以上の動作周波数を持つCPUであれば、T&Lについては十分CPU側でこなせてしまう。

 このことは、最新の3Dベンチマークソフト3DMark2001でライバルとなるGeForce2 MX搭載カードと比較をした下のグラフを見ても分かるとおり、ハードウェアT&LなしのRADEON VEのほうがよい結果を示していることからも分かるだろう。しかしながら、実際のアプリケーションレベルで比較してみると、QuakeIIIのフレームレートなどでは、GeForce2 MXのほうがRADEON VEを上回る。


ベンチマーク環境
CPU:Pentium III 1.0BGHz、マザーボード:ASUSTeK CUSL2、メモリ:PC133 SDRAM 128MB(CL=3)、HDD:IBM DTLA-307030(Ultra ATA/100対応 30GB)、DVD-ROMドライブ:パイオニア DVD-115、OS:Windows Me(DirectX 8.0aインストール)

インターフェースは、Dsub 15ピンとDVI-Iに加え、S-VIDEO OUTも備えている
 そのことから考えると、この3DMark2001の結果は、環境バンプマッピングなど、GeForce2 MXがサポートできていないDirectX 8.0のファンクションを、RADEON VEがサポートしていることから生じたものと思われる。

 このため、テクスチャ処理を多用する3Dゲームなどのアプリケーションでもなければ、RADEON VEのパフォーマンスに不満を感じることはないはずだ。むしろ、メモリインターフェースが128bitとなり、DDR SDRAMを組み合わせた場合は64bit幅しかなくなるため、バンド幅が狭くなりアンチエイリアシングなどの処理を行なった場合に、パフォーマンスの低下が現われやすい。

 3D描画のクオリティにこだわるユーザーには、こちらのほうが気になるのではないだろうか。逆に、最近はビジネスアプリケーションやWebブラウジングに求められる3D処理性能が加速度的に大きくなっていることを考えると、ホビーユースよりはビジネスユースにシフトした製品と言えるだろう。

 RADEON VEには、このことを裏付けるかのような個性的な機能が搭載されている。それは、グラフィックスチップ内にビデオコントローラとDAC(動作クロック300MHz)を二つずつ内蔵し、外付けの回路なしにデュアルディスプレイ表示を可能にしている点だ。もちろん、TMDSトランスミッタも内蔵されているので、1チップでDVI-IとアナログRGBの2系統出力が可能になる。


メモリにHyundai製の5.5ns版DDR SDRAMを32MB搭載しながらも、実売価格は初値で15,000円前後と、コストパフォーマンスの高さはかなりのもの
 今回試用したビデオカードは、国内でも出荷が開始されたリテールパッケージ版と同じもので、DVI-IとDsub 15ピン、S-VIDEO OUTを持ったモデルだ。しかも、メモリにはHyundai製の5.5ns版DDR SDRAMを32MB搭載し、コアクロック、メモリクロックともに183MHzで駆動する。さらに、RADEON VEのドライバは2D処理に重点を置いて開発されているため、ビジネスアプリケーションなどでは、同社のRADEON DDR 32MBよりも高速に動作することもあるほどだ。

 また、RADEON VEは、デュアルディスプレイ対応のビデオカードでは老舗のAppian Graphicsが開発したHydraVisionを搭載。このマルチディスプレイ対応デスクトップ管理ソフトは、デュアル表示される画面以外にも仮想的なデスクトップを構築でき、最大九つの画面をアプリケーションごとに使い分け、ショートカットキー操作だけで簡単に切り換えることができる。

 さらに、ディスプレイを並べて置いた場合、その二つの画面に表計算のセル画面などをまたがせて表示することもできるなど、ビジネスシーンにおいては強力な武器となるだろう。価格も実売15,000円前後とさほど高くはないだけに、要注目の製品だ。


  • 製品名:RADEON VE
  • 標準価格:オープン(実売15,000円前後)
  • メーカー:ATIテクノロジーズジャパン株式会社
  • 問い合わせ先:03-5275-2786
  • URL:http://www.ati.com/jp/pages/jp_index.html
  • ビデオチップ:ATI Technologies RADEON VE
  • ビデオメモリ:32MB DDR SDRAM
  • 最大解像度:2,048×1,536ドット/1,677万色
  • インターフェース:ディスプレイ(Dsub 15ピン)、ディスプレイ(DVI-I)×1、S-VIDEO OUT×1
  • 対応OS:Windows Me/98SE/2000

    ■写真撮影
    若林直樹(STUDIO海童)

    □ATIテクノロジーズジャパンのホームページ
    http://www.ati.com/jp/pages/jp_index.html
    □製品情報
    http://www.ati.com/jp/pages/products/pc/radeon_ve/index.html
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