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GeForce2 MXの対抗馬となるか?
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●RADEON VEとは?
RADEON VEは、ATI Technologiesが2001年2月に投入を開始したばかりの最新ビデオカードである。昨年夏に登場したRADEONがハイエンド向け製品であるのに対し、RADEON VEは、メインストリームをターゲットにした製品である。RADEON VEの最大のウリは、RADEONでは不可能な1枚でのデュアルディスプレイ環境を実現していることだ。
RADEON VEチップは、セカンダリ出力に必要なセカンドRAMDACのほか、ビデオ出力を可能にするビデオエンコーダやDVI出力を可能にするTMDSトランスミッターを内蔵している代わりに、RADEONの特徴の1つであるハードウェアT&Lエンジン(Charisma Engine)が省略されている。Charisma Engineが省略されたことで、発熱も減っており、ヒートシンクのみで安定動作する。また、RADEONやRADEONの低クロック版であるRADEON LEと比べるとチップ自体のサイズも小さくなっている。
RADEON VEは、コアクロック/メモリクロックともに183MHz(メモリはDDR動作なので366MHz相当、5.5nsのDDRメモリを実装)だが、ビデオメモリのバス幅がRADEONの半分の64bit幅に減らされているため、メモリバンド幅はビデオ入出力機能付きRADEON 64MB版の半分となっている。
上がRADEON VEチップで、下がRADEON LEチップ(RADEONチップもサイズは同じ) | 左から、RADEON 32MB DDR、RADEON LE、RADEON VE |
RADEON VEシリーズには、搭載ビデオメモリ容量や出力端子の仕様の違いによっていくつかの製品が存在するが、日本では、ビデオメモリとして32MBのDDRメモリを搭載し、出力端子としてD-Sub15ピン端子とDVI端子、S端子を装備したモデルが正規リテールパッケージとして販売されている。DVI→D-Sub15ピン変換コネクタも付属しているので、2台のCRTにまたがったデスクトップ画面やCRTとテレビにまたがったデスクトップ画面など、自由度の高いデュアルディスプレイ環境が実現できる。また、HydraVisionと呼ばれるデスクトップ画面管理ツールが付属していることも特徴だ。HydraVisionによって、仮想デスクトップ機能やデスクトップ画面全体への最大化機能などを実現できるので、非常に便利である(詳しくは後述)。
RADEON VEは、アナログRGB端子、DVI端子、S端子の3つの端子を標準装備している | DVI→D-Sub15ピン変換コネクタも付属 |
●32bitカラーモードでは、GeForce2 MXに匹敵する3D描画性能を実現
まずは、2D/3D描画性能を計測してみることにした。RADEON VEは、メインストリーム向けの製品であり、実売価格15,000円~17,000円程度で販売されている。比較対照用として、同程度の価格で販売されているRADEON LE、RADEON DDR 32MB、GeForce2 MX搭載ビデオカード(SUMA PLATINUM GF2 MX TwinView)とMillennium G450(32MB DDR版)を用意した(ビデオドライバはWebサイトで提供されている最新バージョンを利用)。テスト環境は以下の通りである。
また、RADEON LEは、デフォルトの設定ではHyperZ機能が無効になっているのだが、レジストリを変更することで、HyperZ機能を有効にできる。そこで、HyperZ機能が無効の状態と有効の状態のそれぞれでベンチマークテストを行なった。なお、RADEON VEはCharisma Engineが省略されているが、HyperZ機能はデフォルトで有効になっている。
【テスト環境】
CPU:Pentium III 733MHz
マザーボード:ASUSTeK CUSL2(Intel 815Eチップセット)
メモリ:PC133 SDRAM 128MB(CL=2)
HDD:Seagate Barracuda ATA ST313620A(13.6GB)
OS:Windows 98 SE+DirectX 8.0
(1)2D描画性能
2D描画性能の計測には、Ziff-Davis,Inc.のWinBench99 Version 1.1に含まれるBusiness Graphics WinMark99とHigh-End Graphics WinMark99を用いた。計測は、1,024×768ドット16bitカラー(65,536色)で行なった。
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RADEON VE RADEON LE RADEON LE(HyperZ有効) RADEON DDR 32MB GeForce2 MX Millennium G450 |
2D描画性能については、Millennnium G450が多少高い数値を出しているが、それ以外の製品はほぼ横並びである。どのビデオカードも2D描画性能については、十分な性能を持っているといえる。
(2)DirectX環境での3D描画性能
DirectX環境での3D描画性能の計測には、MadOnion.comの3DMark2000 Version 1.1を用いた。3DMark2000は、ハードウェアT&Lエンジンに対応したベンチマークプログラムである。なお、3DMark2000は、DirectX 7ベースのベンチマークプログラムだが、RADEON VE付属のドライバをインストールすると、自動的にDirectX 8.0もセットアップされるので、今回は全てDirectX 8.0をセットアップした状態でベンチマークを行なった。
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RADEON VE RADEON LE RADEON LE(HyperZ有効) RADEON DDR 32MB GeForce2 MX Millennium G450 |
前述したようにRADEON VEは、ハードウェアT&LエンジンのCharisma Engineを内蔵していないので、3DMark2000でも、「D3D Hardware T&L」を選択することはできない。そこで、RADEON VEとMillennium G450では、「Pentium III」最適化を選択して計測を行なった。
結果はグラフの通りで、16bitカラーモードでは、GeForce2 MXとMillennium G450の間ぐらいの3D描画性能だが、32bitカラーモードでは、GeForce2 MXとほぼ同等の性能を出している。32bitカラーモードに強いというRADEONの性格はそのまま受け継いでおり、ハードウェアT&Lエンジンを内蔵していないことを考えると、かなり健闘しているといってよいだろう。
また、HyperZを無効にした状態でのRADEON LEと比較すると、1,280×1,024ドット32bitカラーモードまではほぼ同等の性能であるが、1,600×1200ドット16bitカラーモード以上では、RADEON LEのほうが性能が高くなる。高解像度多色環境になるほど、広いメモリバンド幅が要求されるが、RADEON VEではメモリバス幅が半分の64bit幅になっているため、メモリバンド幅が足りず、性能が低下するのであろう。
(3)OpenGL環境での3D描画性能
OpenGL環境での3D描画性能の計測には、id Softwareの3DゲームQuake III Arenaを利用した。Quake III Arenaは3Dシューティングゲームだが、フレームレート(1秒間に何フレーム表示できたか)を計測するテストとしても利用することが可能だ。
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RADEON VE RADEON LE RADEON LE(HyperZ有効) RADEON DDR 32MB GeForce2 MX Millennium G450 |
Quake III Arenaの結果は、GeForce2 MXに比べると全体的に劣る。それでも、Millennium G450に比べると高速であり、30fps程度のフレームレートが出ていれば、ゲームプレイに支障がないことを考えると、1,024×768ドット32bitカラーモードまでは、十分快適にプレイできるといえる。
●1台で3つのディスプレイに同時に出力可能
次に、RADEON VEの最大の売りであるデュアルディスプレイ機能について検証してみたい。
RADEON VEでは3つの端子を装備しているが、そのうち同時に利用できる組み合わせは、
どちらをプライマリディスプレイにするかも自由に設定できる |
それに対し、RADEON VEでは、プライマリ用・セカンダリ用ともにドットクロック300MHzの高性能RAMDACを内蔵しているので、セカンダリディスプレイにも最大2,048×1,536ドットリフレッシュレート60Hzという超高解像度出力が可能だということも利点だ(1,600×1200ドットなら最大100Hzでの表示が可能)。
●デュアルディスプレイ環境をさらに快適に利用できるHydraVision
HydraVisionは、Appian Graphicsが開発したデスクトップ画面管理ツールで、複数の仮想的なデスクトップをワンタッチで切り替えられる仮想デスクトップ機能や2画面にまたがったデスクトップ画面への最大化機能など、デュアルディスプレイ環境をさらに快適に利用するためのさまざまな機能が用意されている。仮想デスクトップ機能は、デュアルディスプレイ環境でも利用でき、最大9枚のデスクトップを切り替えることができる。
HydraVisionの設定画面。デスクトップ画面についてのさまざまな設定が可能だ。アプリケーションごとに動作を変えることもできる | 仮想デスクトップ機能を実現できるMultiDesk機能。最大9枚のデスクトップを切り替え可能 |
HydraVisionが組み込まれると、ウィンドウの右上に表示される最小化ボタン、最大化ボタン、閉じるボタンの左側に、HydraVision最大化ボタンとHydraVision設定ボタンが追加される。通常、デュアルディスプレイ画面で、アプリケーションの最大化ボタンをクリックしても、片側のディスプレイにしか最大化されないが(2つのデスクトップにまたがるように最大化するには、ウィンドウ枠をドラッグ&ドロップで広げる必要がある)、HydraVision最大化ボタンをクリックすれば、ワンタッチで2つのデスクトップにまたがる最大化がおこなえる。また、ダイアログボックスの表示位置を自動制御し、2つのデスクトップにダイアログがまたがらないようにする機能も便利だ。
ホットキーにさまざまな機能を割り当てることもできる | ウィンドウの右上に、HydraVision最大化ボタンとHydraVision設定ボタンが追加される。タスクバートレイの「1」というアイコンをクリックすると、仮想デスクトップが切り替わる |
RADEON VEは、GeForce2 MXなどに比べると3D描画性能はやや劣るが、一般的な用途には、2D/3D描画性能ともに十分な性能を持っている。特に、柔軟なデュアルディスプレイ機能は魅力的である。画質的にも優秀なので、大型ディスプレイを2台持っているユーザーにはお勧めしたい。
□Akiba PC Hotline!関連記事
【3月3日】3台のディスプレイに出力できる廉価ビデオカード「RADEON VE」登場
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010303/etc_radeonve.html
(2001年3月12日)
[Reported by 石井英男@ユービック・コンピューティング]