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一ヶ谷兼乃の

【特別編】:光ファイバー接続インターネット導入記 ~後編~

 昨日に引き続き、一ヶ谷兼乃氏による「光・IP通信網サービス」導入レポートをお送りします。全3回の完結編となります。(編集部)


■さっそくパフォーマンスチェックを開始!

 めでたく工事は完了したが、やはり気になるのは実際の通信速度である。ONU設置時の通信速度チェックでは、回線速度は1.7Mbps程度の値であったが、測定を行なったPCの処理速度がボトルネックとなっている可能性があるため、改めて筆者の所有している機器で再測定を行なってみた。測定に使ったのは、筆者宅で最もパワーがあるデスクトップPCである。簡単なスペックとしては、Pentium III 1GHz、メモリ512MB、Ultra ATA/100のIDE HDD、Windows 2000 Professionalといったものだ。

 このPCに、NTTから提供されているPPPoEを実現するためのソフトである「フレッツ接続ツール」をインストールし、パソコンをONUに直結した状態で通信パフォーマンスのテストを行なった。この環境であれば、PCの処理速度がボトルネックとなることはなく、純粋に通信部分だけの速度をチェックできるはずである。測定に利用したプロバイダはリムネットだ。


■振るわないパフォーマンス

フレッツ・スクエア インフォメーションサイト

 通信パフォーマンスの測定に利用したのは、フレッツユーザーのみがアクセス可能な「フレッツ・スクエア インフォメーションサイト」に用意されている通信速度チェック用のページ「FLET'S Trial 速度を確認してみよう」と、「ADSL実験室(http://webclub.kcom.ne.jp/tm/ogata/adsl/)」である。

 前者のフレッツ・スクエア インフォメーションサイトは、フレッツ・ISDNやフレッツ・ADSL、光・IP通信網サービスのユーザーでなければアクセスできないページで、フレッツ関連サービスのニュースをはじめとして、ユーザーに対してさまざまな情報やコンテンツが公開されている。「フレッツ・スクエア インフォメーションサイト」は地域IP網上にあるといってよく、筆者宅から光ケーブルのアクセスラインを通り、地域IP網を経由して接続するため、アクセスラインと地域IP網のパフォーマンスを測定するには最適なサイトといえる。後者の「ADSL実験室」は、各プロバイダへの通信速度を同一コンテンツで測定できる便利なページだ。

 最も結果が良かったのは3月初旬の昼間のパフォーマンスである。要するに筆者の回線が開通した直後だ。地域IP網やプロバイダに比較的負荷のかかっていない時間帯である。下記は3日ほど測定して平均をとった実際の値であるが、参考程度の大まかな値としてみて欲しい。

●昼間の測定結果
・FLET'S Trial : 約5.2Mbps
・ADSL実験室 : 640Kbps~4.2Mbps

 そして最もパフォーマンスが低くなったのが、3月下旬に測定した深夜のものである。

●深夜の測定結果
・FLET'S Trial : 約1.75Mbps
・ADSL実験室 : 140Kbps~1.8Mbps

 もちろん、そのほかの時期、時間帯にもこまめにパフォーマンスを計測してみたが、元々10Mbpsというアクセスラインの太さを考えると、ちょっと期待はずれな数値である。また、サービス開始から日が経つにつれ、徐々にパフォーマンスが低下しているのも気になる。開通した直後の3月上旬の時点では、夜間でも4Mbpsを超える速度がでていたものの、3月下旬になってからは昼間でも平均2Mbps程度が限度である。

 夜中でも条件によっては1Mbps程度のパフォーマンスが得られるフレッツ・ADSLとの価格差を考えると、割高なサービスだと言わざるを得ない。

 ほかのユーザーのケースを調べたわけではないが、少なくとも「FLET'S Trial」までの速度が伸びなければ、その先にあるインターネットコンテンツにアクセスした際のパフォーマンスが伸びるはずもない。この部分のパフォーマンスはNTT東日本が管理している部分である。しかし、ベストエフォートという前提であり、試験サービス中であることを考慮に入れても、10Mbpsと表記されているサービスのスループットがこの程度では、さすがに失望してしまう。特に、開通直後は価格に見合ったパフォーマンスが得られていただけに残念である。工事費用やコストがかかるとはいえ、同じ地域IP網を使ったほかのサービスとのパフォーマンスと価格のバランスを考慮して欲しいところだ。

 また、プロバイダをリムネットからDIONに変更して同様なパフォーマンスチェックを行なってみたが、ほとんど差は感じられなかった。リムネットよりDIONのほうが数パーセント程度良いパフォーマンスを示したが、大きな違いは見られなかったのだ。やはり、筆者宅から地域IP網までのパフォーマンスがボトルネックとなってしまい、プロバイダ間での差が感じられないのではないかと推測できる。

 ここからは、筆者が光・IP通信網サービスを1カ月弱利用して感じたことをいくつか述べてみたい。


■ブロードバンドルータでLANを構築

 筆者は地域IP通信網を使ったサービスを利用するのは今回が初めてである。そのため、PPPoEを使ってプロバイダへログオンするのも、初めての経験であった。何事も体験してみないとピンと来ない性格なので、今回は非常に有意義な経験ができたと思う。

 筆者は、自宅内でLANを構築し、ネットワーク上にストレージやプリンタを接続して利用している。そのため、PCをONUに直接接続し、フレッツ接続ツールをインストールして利用するという形態をとらず、いわゆるブロードバンドルータを利用してLANとONUを接続している。インターネットへのアクセスは、ブロードバンドルータ経由で光・IP通信網に接続して行なっている。

 ブロードバンドルータを使うメリットは、LANとインターネットアクセスラインの整合性をとるだけでなく、インターネット側からの不正なアクセスを防ぎ、セキュリティを高めるという意味もある。筆者にとってなくてはならないものだ。

 ところがブロードバンドルータを利用することで1つ問題が発生した。通信速度チェックで利用した「フレッツ・スクエア インフォメーションサイト」は、フレッツユーザーしかアクセスできないということは前述しているが、このとき、PPPoEを使って、決められたアカウントとパスワードを入力する必要があるのだ。

 ONUとパソコンを直結し、フレッツ接続ツールを利用して接続しているユーザーなら何の問題もなく利用できるのだが、筆者のようにブロードバンドルータを利用している環境だと、「フレッツ・スクエア インフォメーションサイト」へアクセスするたびにルータの設定を変更する必要があり、とても不便なのだ。できれば、筆者のような環境からもフレッツ接続ツールを利用しているユーザーと同様に、アクセスできる仕組みが欲しいところだ。


■リムネットが突如サービス中止を発表

 ところで、この連載の中で、パフォーマンスをチェックするプロバイダとしてリムネットを利用していたが、そのリムネットが急遽、光・IP通信網サービスの中止をホームページ上で発表した。筆者は発表の翌週になってから、リムネットユーザー向けに配信されているメーリングリストによって、初めてその事実を知ることになった。ユーザーには個別のメールによる連絡など1度もないままの、一方的なサービス中止である。すぐにユーザーサポートに電話をかけ、詳しい情報を聞いてみたが、現ユーザーに対してはすぐにサービスを終了するのではなく、ユーザーと個別に話し合いをしてサービス提供停止の期日を決める、ということであった。

 近々に担当者からその連絡が来るということであったが、今だにその連絡がない。ホームページでは、品質(ここでは実際の通信速度)を保つためには料金の見直しが必要ということなっている。入会前に どの程度のパフォーマンスを予定しているのかと質問したときには「わからない」としか返答を受けなかったため、品質というものがどの程度のものを予定していたのか知りたいところだ。

 同じ光・IP通信網サービスに対応したサービスを提供しているDIONでは、4月からサービス向上のために、アカウントを変更する必要がある、という連絡を3月中にきちんと行なっていた。皮肉にも、ちょうど同時期に発生したイベントであっために、ユーザーに対する対応の差がハッキリと表れた結果となった。


■ブロードバンドルータを使うならスループットの高いものを選びたい

 先ほど筆者は、ブロードバンドルータを利用していると書いた。筆者宅での光・IP通信網サービスの通信速度は、1.5Mbpsから2Mbps程度である。現在発売されているブロードバンドルータが一般的にどの程度の処理能力を持っているのは不明だが、余裕をもって4~5Mbps程度のスループットが期待できる製品でないと、ブロードバンドルータが通信速度のボトルネックとなってしまう可能性がある。

 現在発売されているブロードバンドルータの製品仕様には、ほとんどの場合スループットについての記載はなく、どの製品を利用すればいいのか判断しにくい。

マイクロ総合研究所「NetGenesis OPT」

 筆者宅では、先日の連載で紹介したルートテクノロジ「CAS2040」を利用しているが、この製品のスループットは8Mbps以上と公表されている。これまで何機種もブロードバンドルータを評価してきたが、同機種はその中でも特にスループット性能が高いという印象がある。CAS2040をフレッツ・ADSLや光・IP通信網サービスで利用するためには、最新のファームウェアにアップデートする必要があるが、筆者のニーズには現状で最も適した製品のひとつであるといえる。スループット性能に着目した製品としては、マイクロ総合研究所の「NetGenesis OPT」も発表されているが、今後さらに種類が増えていくのではないだろうか。


■現状では厳しすぎるコストパフォーマンス

 最後に、やはり気になるのが、光・IP通信網サービスのパフォーマンスだ。残り3カ月弱の試験期間中に、よりパフォーマンスが低下するのか、もしくは改善されるのか、ある意味今後が楽しみである。

 あくまで目安であるが、電話局から2km以内の場所であれば比較的良好なパフォーマンスが得られる可能性が高いうえ、通信コストも安いフレッツ・ADSLのほうが、現状ではお勧めだといえる。

 フレッツ・ADSLであれば、追加料金で固定のIPアドレスを割り当てるサービスを行なっているプロバイダもあり、ユーザーの利用目的によっていろいろなサービスを選ぶことができる、という大きな魅力がある。また、電話回線さえあれば、ユーザーがそれほど苦労せずに導入できるという点もADSLの大きな魅力であり、一般的なインターネットインフラとしても重要なポイントである。

この工事風景を見る限り、一般家庭への導入はまだまだ難かしそうだ

 今回、光・IP通信網サービスの工事を実際に体験した限りでは、少なくとも一般家庭に光ケーブルを引き込むのは簡単だとは思えない。ただ、集合住宅などで一括してインターネットアクセス環境を導入するための手段としては、有効な手段のひとつではないだろうか。

 昨年、まだ試験サービスであった「ADSL接続サービス」を申し込み、利用し始めたときには、かなり現実味があり、すぐにでも普及する可能性がある、という雰囲気を感じたものだが、この光・IP通信網サービスに関しては、今すぐというよりは、近い将来にならないと普及しないのではないかという印象を受けた。光ファイバーの場合、ケーブルを継ぎ足すだけでも細心の注意が必要になるし、メタルケーブルに比べると非常にデリケートな扱いが必要となるということも、こういった印象を受ける原因のひとつになっていると思う。

 光・IP通信網サービスの試験サービスが終了し、そのまま正式サービスが開始されたとしても、現在と同じ料金体系で同じパフォーマンスしか得られないというのであれば、はたしてこのまま継続する価値があるだろうか? というのが筆者のホンネである。

□NTT東日本「FLET'S Official Site」ホームページ
http://www.ntt-east.co.jp/flets/index.html
□NTT西日本「フレッツ・シリーズ」ホームページ
http://www.ntt-west.co.jp/flets/index.html
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【2000年3月28日】ADSL導入記:開通まで待たされても、つながれば快適!
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【2000年4月28日】OCN常時接続からADSLへの完全移行を目指す ~
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【2000年12月26日】高コストパフォーマンスIPルータ「CAS2040」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001226/dgogo20.htm
【2001年4月4日】光ファイバー接続インターネット導入記 ~前編~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010404/dgogo22.htm
【2001年4月5日】光ファイバー接続インターネット導入記 ~中編~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010405/dgogo23.htm


[Text by 一ヶ谷兼乃]


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