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NECは、PCサーバーやスーパーコンピュータなどの生産拠点であるNEC甲府を報道関係者向けに公開した。NEC甲府は、同社のコンピュータ事業を支える基幹生産拠点で、IntelのItanium(アイタニウム)を16個搭載した戦略的サーバー「AzusA」のサンプル生産もすでに開始していることなどを初めて明らかにした。NECソリューションズの小林一彦執行役員常務も駆けつけ、同社のコンピュータ事業戦略などにも言及した。
中央高速甲府南インターから約5分に位置するNEC甲府。NECのコンピュータ事業の基幹工場だ |
NEC甲府では、先頃、米Crayとの提携を発表し、米国への出荷も可能となった最高峰のスーパーコンピュータ「SX」、そしてACOS(エイコス)の名称で親しまれるメインフレームコンピュータ、HPのCPUおよびOSを利用したUNIXサーバーであるNX7000シリーズ、IAアーキテクチャーのPCサーバーであるExpress5800シリーズの生産などが行なわれている。
また、イトーヨーカドーが展開するIYバンクが採用する店舗設置型の金融端末、デジキューブと三和銀行などが合弁で設立したミックスキューブのマルチメディア型金融端末なども同工場で生産されている。とくに、ミックスキューブのマルチメディア端末は、3月8日に、東京・渋谷および岩本町のデイリーヤマザキ店頭に2台の端末が試験的に出荷開始されたばかり。今後、量産化される。
NEC甲府の生産ラインは、パソコンの基幹生産拠点であるNEC群馬とともに先進的な生産体制をとっていることで有名である。現在、統合SCM(サプライチェーンマネジメント)システムの構築を推進中で、これが稼働すれば生産効率で2倍、棚卸回転率でも2倍の体制を実現できるという。
同社の生産ラインをExpress5800を例に追ってみよう。
ユーザーは、NECの営業、ディーラーを通じて、あるいは大手企業ユーザーを対象にしたプレミアムウェブ直販サイト「121Bizwin」などを通じて、製品発注する。この発注情報は同社の営業システムである「ARISS(アリス)」により、NEC甲府に発注される。ARISSは、生産管理システム「MPS」などと連動、ユーザーやNECの営業担当者は、これを見て、部材の有無、工場での生産キャパシティなどをもとにして納期を確認することができる。
NEC甲府では、受注情報などをもとに、部材発注や生産指示を行なう。従来これらの仕組みは、月単位で行なわれていたことから、所要変動に対応できにくいといった問題があった。だが、現時点では、1日単位での体制へと移行しており、需要動向と生産量に大きなブレが生じない体制をとっている。
また、部品に関しては、基本的には、部品ベンダー側が資材の在庫責任を持った上で納入できるJIT(ジャスト・イン・タイム)方式を採用、同工場で取り扱う資材点数の7~8割がこの仕組みを採用している。なお、IntelのCPUに関しては、1週間単位での納品体制となっている。
生産ラインに関しては、すべて「かんばん」方式を採用している。
かんばんによる生産指示が行なわれると、午前9時と午後3時30分の、日に2回のトラック便を利用して、部品メーカーの倉庫から部品が運び込まれ、これを「水すまし」と呼ばれる部品補充担当者が、その指示にあわせて部品をラインへ配送する。従来は自動倉庫に一括して納入されていたものが、「ストア」という形で、生産フロアで在庫管理を行なっているのが特徴だ。自動倉庫から自動的に部品が配膳される体制に比べると、ゴチャゴチャした雰囲気があるが、この方が柔軟に生産要求に対応できるという。
また、多頻度納品を実現しながら、物流コストの削減を図るために、共同物流ルートを開拓することで空きトラックを効率的に活用、混載多頻度納品体制により、トータル物流コストの削減を達成している。
8ライン用意されたExpress5800の製造ラインは、ミニタワー用3ライン、ミドルタワー用5ラインで構成され、いずれもセル方式という個別仕様に対応できる生産ラインとなっており、20モデル200品種の生産が可能となっている。
その後、組立工程、検査工程、梱包工程と流れるが、かなり人手がかかっている雰囲気だ。だが、これも従来のベルトコンベア方式では不可能だった個別生産に対応するための適した仕組みだという。また、いずれの工程の間には仕掛かり品が大量に残らないような仕組みとしている点も特徴だ。
モジュール組み立て、検査ラインでは完全自動化によるマザーボードの生産が行われている。これは、導入したばかりのアジレント社製(ヒューレット・パッカードから分社)検査マシン。現在は本格導入前の最終検査段階 | 検査は、外観検査、X線検査、導通検査、機能検査の順番で行われる。人手による検査も重要な検査項目 |
「お客の引きに同期できるラインづくりを目指した。多品種の製品をどのラインでも製造でき、しかも1台でも対応できるのが特徴。これらの仕組みによって、製造リードタイムの削減、棚卸し削減、製造コスト削減、フロアスペースの削減につながっている」とNEC甲府の桑田幹雄社長は言う。
フロアスペースの削減では、同工場全体で、'97年には26,900平方メートル必要だったものが、今年は21,450平方メートルと、5,500平方メートルもの削減に成功している。
生産されたExpress5800は、その後、東京・府中にあるDOCと呼ばれる物流センターを通じて、BTOへの最終対応、そして、パソコン、周辺機器などと出荷前の組み合わせが行なわれ、ユーザーのもとに届けられることになる。
3月にサンプル出荷が始まったItaniumを搭載したAzusAの内部。ちょうど中央部分にItaniumが搭載されている |
北米市場にはHPを通じて、欧州には仏BULLを通じてそれぞれOEMで供給されることが決定している。AzusAは、日本、欧州市場では、その名称ががそのまま使用される公算が強いが、米国ではAZ.USAといった企業などとの商標問題があり、別の製品名になる可能性がある。
実は、今回のAzusAの生産ラインを公開は、IntelがItaniumの量産については正式発表していないだけに、NECが先行して量産体制を整えたことを意味する。それだけ、NECが同製品にかける意気込みが伝わってくる。
今回公表したAzusAの生産ラインは、特定ベンダー向けのサンプル出荷用のもので、すでに2月から生産を開始、3月に入ってから一部ベンダーなどに出荷しており、現在、月50台の生産能力をもつという。
検査工程では、実際にLinuxを稼働させ、16CPUの場合、8CPUの場合、4CPUの場合でのパフォーマンスを検証していた。
余談ではあるが、NECは、IntelのItaniumの次期CPUである「McKinley(マッキンレー)」を搭載したサーバーの名称を「ASAMA」にすることに決定した模様である。 どちらも日米を代表する山の名前だが、ASAMAのなかにMcKinleyが搭載されるという複雑(?)な関係になる。
これらの名前の由来は、NEC甲府のある方角を意識したものであるともいえる。関係者によると、AzusAの命名時には「KAIJI(甲斐路)」という候補もあったらしい。
NECソリューションズ・小林一彦執行役員常務は、「AzusAのAが2つに対して、ASAMAは、Aが3つ。つまり、安全基準のトリプルAを意味し、安全性は、さらに高まる」と本気とも冗談ともつかない話題を披露した。
NECのなかで最高性能を誇るスーパーコンピュータ「SX-5」もNEC甲府で生産されている。
これまで、米Crayとの訴訟問題を発端にした米国における大幅な課税措置により、事実上、米国市場には進出できなかったが、先頃、Crayとの提携を発表、CrayへのOEMを通じて、米国市場への本格再参入が決定したばかり。NEC甲府での生産にも拍車がかかるというものだ。
32のチップを搭載したSX-5の心臓部は、同工場で設計および生産が行なわれ、これだけで10GFLOPSの性能を実現する。また、配線を40ピンを一度で接続できるように、設計変更をおこなっており、これにより、リードタイムを4分の1以下に短縮したという。
NX7000シリーズでは、HP製のCPU、OSを採用しており、この生産ラインではHPロゴが印刷されたダンボールが目立つ |
一方、今回のNEC甲府の見学会では、NECソリューションズの小林一彦執行役員常務も駆けつけ、同社のコンピュータ事業の取り組みなどに言及した。
小林執行役員常務は、サーバー、ストレージ戦略において、1)データサーバーセンター、2)アプリケーションサーバー、3)インターネットアプライアンスの三層構造のプラットフォームプロバイダを目指すとした。
なかでも、同社における各種OSの位置付けでは、Linuxの考え方として、「サードパーティ各社は、メーカーごとに少しずつ異なるLinuxのドライバに対して、ポーティスング、サティスフィケーションを行なう必要があり、その手間に追われている。それに対して、Windows 2000は、ひとつのポーティングですべてのIAサーバーで利用できる。サーバー1台の価格で見れば、100万円と110万円の差だが、サードパーティの手間の分がLinuxのシステムの上に上乗せされる公算が強い。LinuxはWindowsに比べて安いというのは間違いで、こうした開発コストなどを考えれば、ユーザーの負担は大きくなるはずだ」と指摘、Windows 2000を事業の主軸とする方針を強調した。
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【3月2日】後藤弘茂のWeekly海外ニュース
Intelが次世代IA-64プロセッサ「McKinley」システムを展示
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010227/kaigai01.htm
(2001年3月16日)
[Reported by 大河原 克行]