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●ようやくデジタルカメラを買い換え
このコラムを読んでいただいている方ならご存知の通り、筆者がメインにしているデジタルカメラは富士写真フィルムのFinePix1700Zだ。すでに2世代近くも前になるモデルゆえ、今となってはスペック的に見劣りするが、なかなか適当な後継機が見つからず、これまで使い続けてきた。しかし、ようやく後継モデルが見つかった。それは、同じ富士写真フィルムのFinePix6800Zである。
なぜFinePix6800Zなのか。率直に言えば、その決め手になったのはサイズだ。筆者は今年の正月、特売になっていたコダックのDC280J Zoomを購入したのだが、手にしてまず思ったことは、カメラが大きいということ。コンパクトサイズに分類されるこのカメラを大きいと感じていてどうする、と言われそうだが、そう感じてしまったのだからしようがない。画質的にも、より小型のFinePix1700Zを明確に上回っているとは思えなかったため(画素数では上回っているのだが)、メインカメラは相変わらずFinePix1700Zのままだった。
FinePix6800Zにしようと決めたのは、2月に開かれた発表会に出席し、カタログをもらった時だ。筆者は、普段カメラ関係の業界とは無縁なので、こうした発表会に出ることもないのだが、この時はたまたまPC Watch編集部から発表会のスケジュールを聞き、出かけてみた。そして、使っていたFinePix1700Zとほぼ同じ外寸で、スペックアップされていることから、このカメラでいいかな? という気になったのである。
大きさはほぼ同じだ |
また、新しい世代のカメラのほとんどが、USB接続をサポートしていることも、スマートメディアのカメラに対する抵抗感を薄めた。これまでは、PCとのデータ交換に際し、カメラからメディアを取り出して、USB接続のリーダを使うか、PCカードアダプタを用いてノートPCのPCカードスロット経由で読み出すしかなかったが、USB接続に対応したカメラなら、ケーブル1本でPCと接続すれば済む。これなら、ある程度大容量のメディアさえ使っていれば、事実上メディアをカメラから取り出す必要がなくなる。データが消失する心配もない、というわけだ。
●FinePix1700Zの不満点
筆者がFinePix1700Zで不満だったのは、マクロモードの使いにくさと、光学式ファインダーならびに液晶モニターの視野率の問題だ。仕事柄、マザーボードや各種の拡張カードを扱ったり、展示会等で見る機会が多いのだが、この時メモ代わりにデジタルカメラでチップの型番等をスナップすることが少なくない。FinePix1700Zでは、型番がちゃんと読める写真がとれたかどうか、シャッターを押しながら確信が持てないことが多かった。おのずと、「下手な鉄砲も……」式にある程度のコマ数を撮っていたのだが、ヒット率はそれほど高くなかった。皮肉なことにこの不満は、FinePix40iを短期間試用した際に、マクロが撮りやすくなっているのに気づいてから、余計に感じていた。
光学式ファインダーと液晶ディスプレイの視野率の問題とは、見えている絵と、実際に記録される絵が同じ構図にならない、ということ。マクロ撮影の際により顕著になる。このコラムに用いる写真も含め、筆者は自らWeb掲載用の写真を撮ることが結構ある。非可逆圧縮のJPEGだけに、極力トリミング等の操作をしたくないのだが、視野率が100%でないことで写って欲しくないものが写っており、トリミングをせざるを得ない、ということが珍しくなかった。それを回避するため、頭の中で補正しながら撮影すると、今度は写っていなければならないものが切れたりして、なかなかうまくいかない(普通に撮影する分には、切れることはないのだが)。一眼レフタイプでない上、ズームレンズを採用していることを考えると、光学式ファインダーの視野率はある程度あきらめざるを得ないとしても、液晶ファインダーでの撮影はマクロ時であっても100%に近い視野率が欲しい、というのが筆者の願いであり、新しいデジタルカメラが欲しい、という欲求の源となっていた。
もちろん、発表会でもらったFinePix6800Zによるサンプルプリントの品質の高さに全く影響を受けなかったとは言わないが、決め手になったのは大きさとバッテリだと思う。その証拠? に、実は最初は下位モデルであるFinePix4800Zを買おうと思っていた。FinePix6800ZとFinePix4800Zの差は、搭載しているCCDが、前者が総画素数330万画素の2世代目のスーパーCCDハニカムであるのに対し、後者はFinePix4700Z等と同じ総画素数240万画素の初代のスーパーCCDハニカムである、ということ(価格差は28,200円)。画質という点ではFinePix1700Zでも足りる筆者にとって、FinePix6800Zはオーバースペックだと考えたのである。
にもかかわらず、高価なFinePix6800Zを買うことにしたのは、発売日が理由だ。FinePix6800Zの発売日が3月4日とされていた(その後11日にずれた)のに対し、FinePix4800Zの発売日は4月25日。これでは3月26日からのWinHECに間に合わない。せっかく新しいカメラを購入する以上はWinHECに持っていきたい、と考えてFinePix6800Zにしたのである。そうである以上、確実な入手を期して、ヨドバシカメラで予約までした。予約時の価格は89,800円で、カタログの標準希望小売価格の128,000円に対し約30%オフであった。
●第一印象はかなり良好
実際に、FinePix6800Zが入手できたのは、3月9日のこと。前日に電話があり、9日の開店時から販売する、という連絡を受けた。筆者が店頭に出向いたのは、お昼過ぎだったと思うが、問題なく入手することができた。予約者に限らず、購入者にはレンズクリーニングペンのサービスと、128MB スマートメディア(アイ・オー・データ製)の割引販売(19,800円を19,500円)が行なわれているようだ。筆者がヨドバシカメラで購入したのは、同店のポイントを購入時に充当するためで、実際に支払ったのは89,800円のおおよそ半額というところである。
さて実際に入手したFinePix6800Zだが、FinePix1700Zに比べ男性的な印象を受ける。外寸はほとんど変らなくても、FinePix6800Zの方がボディにつけられたRが小さく、容積的にはFinePix1700Zよりかなり大きくなったようだ。ただ、ポルシェデザインの恩恵かどうかは別として、女性など手があまり大きくないユーザーには、FinePix6800Zの方が持ちやすい、という意見を聞いた。
沈胴式の3倍ズームレンズは、35mmカメラ換算で36~108mm相当のもの。FinePix1700Zのものとは明らかに異なるが、FinePix4700Zのものと基本的には同じもののように見える。ストロボがポップアップ式なのもFinePix4700Z譲りだが、デザイン処理上か、位置が中央寄りに移動している。ポップアップ式のストロボは、好き嫌いがわかれるところだが、電源投入時に毎回ストロボのチャージが行なわれないという点で、おそらくバッテリ寿命の延長に寄与しているハズだ。もちろんポップアップ式でないストロボであろうと、これを防ぐにはストロボを発光禁止の設定にしておけばよいのだが、筆者はこのシリーズのカメラ(FinePix1700Z、4700Z、6800Z等)は、基本的にすべてオート設定で使うもの、と考えており(同じ富士写真フイルムのカメラでも、FinePix4900Zはそうではない)、ポップアップ式ストロボが似合っていると思う。
というわけで、筆者はこのカメラがシャッタースピードや絞りをマニュアル設定できないことを不満に思っていない。マニュアルで使いたいのなら、ほかのカメラを選ぶべきだと考えている(FinePix4900Zは筆者が嫌いな電子ビューファインダなので、選ばないが)。カメラ任せのオートに加え、人物/夜景/風景/モノクロの4種が選べるシーンポジションオート、露出補正/ホワイトバランス補正/感度補正/マニュアルフォーカス等をサポートしたマニュアルの3モードで十分だ(シーンポジションオートに、シャッタースピードを高速よりにシフトさせるスポーツモードがあれば、なお良かったとは思うが)。オートでポンと撮り、パッと見て(Photoshop等で処理することなく)素人目にきれいな写真が撮れる、ということでなければ、このシリーズのカメラはいけないと思うし、筆者が望んでいるのもそんなカメラだ(この点でプロとは要求が全く異なる)。
筆者にとって肝心のマクロモードでの撮影にしても、基本的にはオートでポン、であって欲しい。その点で、FinePix6800Zは1700Zより進歩していると思う。少なくとも、シャッターを押した際に、撮れたか失敗したかの感覚は、はるかにつかみやすい。あえて注文を出すとすれば、あと半分、10cm程度まで寄れたらなお良い(マクロモード時の最短撮影距離は20cm)。光学式ファインダーの視野率は、やはり良いとはいえず、とりあえず被写体が切れることがないよう、安全モードに振ってある。すでに述べたように、しようがないことではあるのだが、標準価格が10万円を超えるカメラだけに、もう一息頑張って欲しい気もする。液晶モニターを用いた撮影での液晶モニターの視野率は、100%ではないと思うものの、合格点が与えられる水準には達している。
撮影した写真の画質にも、個人的には不満はない。オートでポンと撮って、それなりにきれいな写真が撮れる確率が高いカメラだと思う。全体にFinePix1700Zよりナチュラルな感じになった印象だが、それで文句を言う人はいないだろう(筆者は1700Zのハデな絵も嫌いではないが)。残念ながら富士写真フイルムご自慢のFDiサービスによるプリントは利用したことはないものの、手持ちのカラーインクジェットプリンタ(エプソンPM-800C)でA4サイズに出力しても、問題はない(FinePix1700Zでは、A4に出力するとアラが目立った)。世間で35mmの銀塩カメラを超えたと言われることを、いまさらながら実感させられた(35mmフィルムからA4まで伸ばすと、粒子等が結構気になるものだ)。ただ、CCDの実画素数に近い2,048×1,536ピクセル(300万画素モード)時と、ハニカム画像処理による2,832×2,128ピクセル(600万画素モード)時の画質差は、A4のプリントでも小さく感じられた(600万画素モードの方が、シャドウ部の階調表現がより自然だとは思うが)。データハンドリングの容易さ(データ量が半分で済む)も考慮すると、筆者は300万画素モード(プリント用途)とVGAモード(メモおよびWeb用)を常用することになりそうだ。
FinePix1700Zでサポートしておらず、FinePix6800Zがサポートしている機能に、簡易動画撮影がある。だが筆者は、この機能を使うことは、おそらくないだろう。その理由は、動画の圧縮CODECがMotion JPEGであるからだ。Motion JPEGの再生用に、FinePix6800ZにはQuickTime 4.0のランタイムが付属しているのだが、筆者はこれをインストールしたくない。ソニーや東芝のようにMPEG-1、あるいはMPEG-4になってくれれば良いのだが。
グレードルで充電、データ吸出しもできる |
ただし、クレドールとUSBケーブルを単品で入手しようとすると、補修部品として扱われており、取り寄せには数週間を要すると言われ、まだ入手できていない。これらが入手できた時点で、またレポートしたいと思う。
□関連記事
【2月1日】富士フイルム、ポルシェデザインの縦型デジタルカメラ「FinePix6800Z」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010201/fujifilm.htm
【2月8日】プロカメラマン山田久美夫の FinePix6800Z定点撮影画像
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010208/yamada.htm
(2001年3月14日)
[Text by 元麻布春男]