元麻布春男の週刊PCホットライン

興味深く感じたキーノートと余談


 今回のIDFについては、このコラムでも2回にわたり取り上げてきたが、これが最後。筆者が興味深く感じた最後のキーノートと、ちょっとした余談で締めくくりたいと思う。

●大きな方向転換を行なったI/Oデバイス

 最初に取り上げたIntelの本業回帰、次に取り上げたPeer To Peer Computingは、それぞれ初日と2日目のキーノートに関するものだった。最終日のキーノートにも、筆者の注意を惹くものがあった。それは、次世代のI/Oアーキテクチャに関するものだ。Intelは現在、ISA、PCIに次ぐ3世代目のI/Oアーキテクチャについて検討をしているという。それは、

1. 完全にシリアルであること
2. 基本的にPoint To Pointの接続であること
3. ピンあたりのバンド幅を最大にすること
4. 10GHz以上までスケーラブルであること
5. 柔軟であること
6. 複数の市場セグメントに対応できること

といった特徴に加え、光技術を用いたインターコネクトへの発展性を備えるという。また、AGPのようなIntelの規格ではなく、PCIのように業界全体に広く公開される規格になるとのことであった。筆者の注意をひいた最大のポイントは、ISA、PCIに次ぐ汎用のI/Oアーキテクチャを、Intelが開発しているという事実である。

 5年前、'96年秋のCOMDEXでのキーノートスピーチは、マイクロプロセッサの生誕25周年を記念し、当時IntelのCEOであったAndy Grove会長が行なった。Grove会長は、それまでのマイクロプロセッサの歩みをたどると同時に、将来のプロセッサのビジョンとして、マイクロプロセッサ2011というビジョンを示した。

【マイクロプロセッサ2011】
トランジスタ数:10億トランジスタ
動作クロック:10GHz
MIPS値:10万MIPS
酸化膜厚:20オングストローム
動作電圧:1V未満
線幅:0.07ミクロン

 この時、マイクロプロセッサ2011が用いられるコンピュータは、PCIのような汎用バスを持つのではなく、I/Oデバイスそれぞれに最適化されたバスやチャネルを持つようになるだろう、と述べられている。PCI以降、PCのI/Oは、グラフィックにAGP、入出力デバイスにUSB、ストレージにSerial ATAと、I/Oデバイスそれぞれに異なったバスやチャネルが採用されてきた。まさにGrove会長が述べた通りだったわけだが、今回のIDFで大きな方向転換を行なったことになる。

 もう1つ、この次世代I/Oの話を聞いて何となくわかったような気になったのは、Albert Yu副社長の役割だ。氏は、Paul Ottellini副社長と並ぶ形でIntelアーキテクチャグループのトップを務めていたのだが、i820のトラブルやMTHのトラブルの責任をとるような形で、Intelアーキテクチャグループを離れ、Optelectronics事業を担当すると発表されていた。今回、Intelが次世代I/Oの延長線上に光技術の応用を考えていることを聞き、Yu副社長の現在の役割がわかったように思えたのである。

●IDFにも不況の波?

空席が目立つプレスルーム
 さて、固い話はこれくらいにして、IDFのこぼれ話みたいな話をいくつか紹介しよう。まずIDFの規模だが、これまでずっと拡大の一途だったのだが、どうやら今回は横ばいのような感じだった(少なくとも大幅に参加者が増えた印象はない)。これは、最も参加者の関心が高いIA-32について、大きなトピックがなさそうだ、という事前予想に加え、やはり不景気の影響も否定しがたいところだろう。プレスルームも、ガラガラではないものの、空席も目立つ。ニューエコノミー真っ盛りの頃なら奪い合い? だったPCや、電話回線も、特に不足することはなかったようだ。

 不景気ぶりが現われたのはそれだけではない。ほんの些細なことだが、たとえば午後の休憩時間に、これまで必ず提供されてきたスナック菓子(ポテトチップやチョコレートバーの類)がなくなったのも、今回気づいたことだ。こういうところのわかりやすさ? が、いかにもアメリカらしい。


筆者がIDFで入手したCD
 筆者は今回のIDFで、Intelのクレジットが入ったCDを7枚入手した。この7枚は、たまたま筆者が入手したものであり、ほかにも筆者が手に入れていないものがあるかもしれない。

 入手したCDを紹介すると、カンファレンスのプレゼンテーション(プレスの関係で実際のプレゼンテーションと一致しなかったり、抜け落ちているセッションがあるのが辛い)と、Itaniumのリファレンス情報を集めたものが12cmCD-ROMで各1枚ずつ。InfiniBandに関する情報(ほとんどがPDF)、InfiniBand Architectureスクリーンセーバー、PDF形式のモバイル関連製品販促資料(チラシ)、IntelのPCA(Personal Internet Client Architecture)に関するものが各々8cmCD-ROM1枚ずつで合計4枚。8cmCD-R(変形)で、Intel Pressがこれから出版する書籍タイトルのサンプルを集めたものが1枚。

 整理すると8cmCD-ROMの多さが目につく。もちろん、それぞれの中身は8cmCD-ROMで十分入りきる容量ではあるのだが、こう8cmCD-ROMの配布が多くては、とてもスロットインタイプのCD-ROMやDVD-ROMドライブは買えないのである。


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【3月7日】元麻布春男の週刊PCホットライン
IntelゲルシンガーCTOがP2Pに入れ込む理由
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010307/hot133.htm
【2月28日】元麻布春男の週刊PCホットライン 特別編:IDFレポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010228/hot132.htm

(2001年3月8日)

[Text by 元麻布春男]


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