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●SmartVision Proがよみがえる日
IDFに出かける前のこのコラムで、筆者はそろそろマシンの乗り換えを図っていること、できればこのタイミングでTVチューナのステレオ化を考えていることを書いた。この時試したのは、値下がりが伝えられたATIのRADEON 64MB。リテール版が持つVIVO(Video In/Video Out)の機能を用い、すべてをマウスでコントロールできなくなることを承知の上で、TVチューナを外部(どうせ接続することになるビデオデッキ)にしてはどうだろうか、ということを検討してみた。できれば、Windows 2000での安定動作をしてくれれば、と期待したのだが、残念ながらうまくいかなかった。その時のコラムの最後で、問題なく動作するWin9x系のOSでRADEON 64MBを使っても良いが、PCIバス対応でスタンドアローンのTVチューナカードも試したいと書いた。これにはちょっとした理由がある。
このコラムを毎週読んでいただいている方なら覚えているかもしれないが、ちょうど1年ほど前、筆者はこのコラムでNECのSmartVision Pro(PCIバス対応のPK-UG0-X026)を取り上げた。その時の結論は、付属のソフト(Pure DIVA)が利用可能なデスクトップ解像度が限られており、筆者の用途には向かない、というものだった。以来、SmartVision Proは箱にしまわれ、仕事部屋の片隅で眠ったままだった。もったいない話だが、使い道がなかったのだからしようがない。
しかし、思わぬところから、SmartVision Proをサルベージするチャンスが訪れた。それは、TVチューナカードをサポートしたビデオレコーダーソフト、WinDVRの存在だ。WinDVRは、TVの表示、タイムシフト再生、MPEG1/MPEG2によるリアルタイムキャプチャ(録画)といった機能をサポートしたInterVideoのソフトウェア。Windows 9x系だけでなく、Windows 2000にも対応する。筆者が愛用しているAll-In-Wonderが持っている機能は大抵サポートしている上、日本で使えるiEPG機能とそれによる番組録画機能を備えている(ステレオ音声のサポートは、組み合わせるTVチューナカード次第)。WinDVRは、カノープスがTVチューナカードとセットで販売している(WinDVR PCI)ほか、InfoMagicがWinDVR ARENAという名称で、ソフトウェア単体での販売を行なっており、筆者が購入したのもこのパッケージだ。
さすがにInfoMagicのWebサイトに行くと、動作確認済みTVチューナのリストがあり、そこには他社のチューナカードと並んで、筆者が死蔵しているNECのSmartVisionの名前がある。実は、InfoMagicもTVチューナカードとWinDVRをセットにしたパッケージ(WinDVR ARENA MAX)を販売しているのだが、Webの写真を見る限り、これがNECのSmartVisionそっくり。メーカー名こそ書いていないものの、「信頼の日本製TVチューナカード採用! 」と記されており、どうもそれらしい。というわけで、筆者がWinDVRに期待したのは、眠ったままのSmartVision Proの復活と、RADEON 64MBで果たせなかったWindows 2000での安定動作だ。
●WDMドライバでWindows 2000に対応
まずインストールだが、SmartVision ProはWindows 2000をサポートしていないため、Windows 2000に対応したドライバがない。しかし、幸いなことに、Windows 98 Second Edition用のドライバがWDMに準拠しており、サポート対象外ではあるものの、これがそのままWindows 2000で使える(というか、WinDVRはこのドライバで動く)。WDMだからといってWindows 9x系とWindows NT/2000でドライバを共用できるとは限らないが、どうやらSmartVision Proのドライバは共用可能な幸せな例のようだ(Microsoftの言葉を借りると、WDMを用いれば共用可能なドライバを書くことが不可能ではない)。
セットアップ済みのWindows 2000のシステムにSmartVision Proのカードを挿すと、自動認識されるので、SmartVision Proに添付されていたCD-ROMに入ったWindows 98 Second Edition用のドライバを指定してやれば大丈夫。SmartVision Proに付属していたアプリケーション類をインストールする必要はない。後はWinDVR ARENAのインストールをすればこれで作業は終了だ。
デスクトップに作られたショートカットのアイコンをダブルクリックすると、WinDVRは何事もなくWindows 2000上で起動する。初回はチャンネルの設定をしなければならないのだが、ここに問題がある。チャンネルのオートスキャンがうまく働かず、全チャンネルが登録されてしまう。どうやら、チャンネルのキャプチャがうまくいっていないようで、たとえば深夜等で放送を止めたチャンネルを一旦表示してしまうと、操作が重くなる現象も見られた(チャンネルのスキャンはインストール後、1回やれば済むことで、最近は24時間放送が増えているので、大きな問題ではない)。
TVを表示した際の画質やステレオ音声への対応はハードウェア、つまりTVチューナカードしだい。SmartVision Proは国産のカードであるだけに、ステレオ音声のサポートに問題はないし、画質にも大きな不満はない。しかし筆者の環境では、MX TVと放送大学の受信品質が、現在仕事マシンで使っているAll-In-Wonder 128より見劣りし、MX TVと放送大学の受信品質は通常のTVやビデオでも必ずしも満足のゆくものではないのだが(もちろん、この理由がアンテナにあることは言うまでもない)やむを得ないことだろう。
●仕事マシンのOSは決定できず
iEPG(インターネットによるプログラムガイド)による録画予約も問題なく動作する。難点は録画が終了した後もプログラムが終了せず、そのままになってしまうことだが、意外にこの仕様になっているTVチューナカードは多い。録画時の画質設定は、3種類のプリセット設定に加え、ユーザーがカスタム設定することも可能だが、普通にWindows上で録画した番組を見る分には最もデータレートの低い「普通」のプリセット(ビデオ2,000kbps、音声224kbps)で十分だろう。動作はかなり安定しており、この種のデバイスをWindows 2000上で動かした際には珍しくないエラー(青画面)に遭遇することはなかった。
強いて難点を挙げれば、前回終了時に選択していたチャンネルは記憶しているものの、ウィンドウの位置やサイズは覚えていてくれないことだ。つまり、起動のたびに640×480ドットのウィンドウサイズで、画面中央にTV表示ウィンドウが現われる。ほかにも重箱の隅をつつけば、不満がなくもないが(チャンネルサーフィン時の画質など)、大きな問題はない。以前、Windows 98 SEでテストした際、チャンネルをアップダウンさせる際にノイズが出ていたように記憶していたのだが、今回のWindows 2000のテストではこの問題は生じなかった。
というわけで、SmartVision ProのTVチューナカードにWinDVRを組み合わせるというアイデアは、なかなか良い結果を残した。システム構成を変えながらテストすることが必要だとは思うが、このくらい動いてくれたら仕事マシンにも使える。RADEON 64MBの時は、次の仕事マシンはWindows 9x系に決まったようなもの、などと書いたが、その気持ちは揺らぎつつある。逆にこれでWindows 2000に決まり、と言えないのは、DVD再生に関する問題が解消していない(おそらくWindows XPまで解消しない)ため。DVDのマルチチャネルオーディオ再生(S/PDIF出力)やdtsの対応がないことを我慢してWindows 2000にいくか、Windows 98 SEにとどまるか、まだ決めかねている。
●テストマシン構成
CPU: Pentium III 600EB MHz
Motherboard: Intel VC820
Memory: 256MB PC700 RDRAM
Graphics: ELSA ERAZOR X2 (GeForce 256)
Sound: Labway X-6000 (YMF744B)
LAN: Intel PRO/100+ Management Adapter
Removable: LKM-F934-1 (2倍速SuperDisk)
HDD: Maxtor 5T040H4
DVD-ROM Drive: 東芝 SD-M1212
□「WinDVR ARENA」製品情報
http://aserve.procen.net/infomagic/products/view.asp?I_compname=InterVideo&I_groupname=WinDVR+ARENA
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【2月28日】【元麻布】値下がりしたRADEON 64MBを試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010228/hot131.htm
(2001年3月21日)
[Text by 元麻布春男]