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IntelがRDRAM路線に揺り戻し?
~i850後継RDRAMチップセットを計画~


●Intelの計画に次期RDRAMチップセットが存在

 Intelが「Intel 850」後継のRDRAMチップセット計画を復活させたようだ。複数の情報筋によると、Intelは2002年前半にPentium 4向けにRDRAMベースの新チップセットを計画しているという。これまで、IntelはOEMメーカーの多くに対しても、i850後継のRDRAMチップセットはないと説明していた。

 情報筋によると、このチップセットは、i850のマイナーバージョンアップではなく、別設計のチップだという。複数の業界関係者によると、新チップセットは「4i」と呼ばれるRDRAMのローコストデザインをサポートするようだ。また、RDRAMの高速規格である「Long Channel 1,066Mbit/sec RDRAM(Hastings:ヘイスティング)」、通称1ギガRDRAMをサポートする可能性も高い。ただし、当初i850後継チップセットでサポートするはずだった、RDRAMの1チャネル構成をサポートするかどうかはわからない。

 ある情報筋からは、この次世代RDRAMチップセットは今年半ばに登場する予定だった第2世代RDRAMチップセットの「Tulloch(トゥルッシュ)」だという情報も入っている。しかし、現段階ではまだコードネームは、明確になっていない。もっとも、Pentium 4系RDRAMチップセットのコードネームは「T」で始まる傾向があるので、新チップセットもそうである可能性は高い。

 ただし、不明なのはコードネームだけではない。今のところこのチップセットを、Intelがどの程度真剣に進めているのかすらもわかっていない。つまり、単なるバックアッププランなのか、それとも開発が具体的に進行しているのか、まだ一切が不明だ。というのは、通常チップセットはOEMメーカーにかなり前から概要が知らされ、デザインガイドなども比較的早期に提供されるのだが、このチップセットに関しては時期が来年ということもあり、ほとんどのOEMには存在すらアナウンスされていないからだ。少なくとも、OEMメーカーに通常配布している資料には登場していないという。


●一時は消滅していたRDRAM次期チップセット

 Intelはこれまで、デスクトップパソコン向けのPentium 4プラットフォームでは、i850の後継のRDRAMチップセットはないとOEMメーカーの多くには説明してきた。昨年夏までは、Intelは今年第3四半期にTullochを出し、RDRAMプラットフォームを拡大して行く計画でいた。しかし、Pentium 4用のSDRAM/DDR SDRAMベースの新チップセット「Brookdale(ブルックデール)」の登場とともに、TullochはキャンセルになったとOEMは伝えられた。そして、i850後継のRDRAMチップセット計画はなく、Tullochの開発リソースもBrookdaleに回されたと説明されたという。つまり、RDRAMへのサポートは先細りになると、Intelは暗に認めていたのだ。そのため、このコラムでもIntelはPentium 4プラットフォームをRDRAMからDDR SDRAMへとシフトしたと判断していた。

 だが、まだ詳細は不明ながらもRDRAMチップセットのプランが存在することが明らかになったことで、状況は変わった。少なくともIntelはRDRAMプラットフォームのサポートを消滅させていくわけではなさそうだ。

 これはどういう意味を持っているのだろう。DDR SDRAMはやはりモノにならないと判断して、RDRAMへ揺り戻しつつあるのだろうか。おそらくそうではない。狙っているのはDDR SDRAMとRDRAMの両天秤路線だろう。この背景には、政治的な理由と技術的な理由があるものと思われる。


●Intelにとって都合がいい両天秤路線

 Intelにとってもっとも重要なのはCPUが売れること。今のターンで言うなら、Pentium 4が順調に浸透することだ。だがそこには障壁がある。それはメモリだ。

 IntelはPentium 4プラットフォームは、メモリ帯域の広いRDRAMオンリーで行こうと最初は考えていた。SDRAMでは、Pentium 4の特色が発揮できるマルチメディア系アプリケーションで性能が引き出せないからだ。ところが、RDRAMがうまく立ち上がらなかったために、この計画は狂った。RDRAMは、Pentium 4プラットフォームのコスト高の原因の1つとなり、また、ある程度以上Pentium 4を普及させようとするとメモリが足りなくなるというPentium 4のアキレス腱になった。

 そして、Pentium 4のRDRAM依存は、メモリベンダーに対するIntelの弱みとなってしまった。Intelにしてみれば、自分たちの製品が売れるかどうかの決定権をメモリベンダーに握られてしまったことになる。そして、困ったことにIntelと多くのメモリベンダーの利害は構造的に対立する。Intelにすれば、CPUの普及のために新規格メモリは安ければ安いほどいいわけだが、メモリベンダーにとっては、新メモリはできるだけプレミアを取りたい。そうしないと、このメモリ事業赤字から抜け出せないからだ。

 Intelは、これに懲りたのだと思う。もし、IntelがPentium 4のプラットフォームはDDR SDRAMで決まりだと宣言すると、今度は同じことがDDR SDRAMで起きてしまう可能性がある。今は、DDR SDRAMはMicron TechnologyのSDRAMと同価格宣言で、初めから低価格戦争になりそうな気配があるが、ほかのDRAMベンダーは新メモリでは多少のプレミアを取りたいというのが本音だ。そのため、Micronにもし何かが起これば、例えばRDRAMとの裁判でMicronが負けた場合には流れが変わる。

 しかし、IntelにSDRAM/DDR SDRAMをサポートするBrookdaleがあり、RDRAM系チップセットも開発継続するとなると、IntelはSDRAM、DDR SDRAM、RDRAMという3つのメモリ選択肢をPentium 4について持つことができる。SDRAMは性能的に望ましくないとしても、DDR SDRAMとRDRAMを競わせることができるわけだ。そうすると、Intelはメモリベンダーに弱みを握られることがなくなる。逆にリーダーシップを再び取れるようになる。

 というわけで、Intelにとっては、DDR SDRAMとRDRAMの両天秤は非常にロジカルな展開となる。Intelに望ましい状況は、ともかくDRAMベンダーが競って新規格のメモリ価格を引き下げてくれることだからだ。そうすると、もう少しBrookdaleが見えてきたあたりで、将来RDRAMチップセットをちらつかせるようになるのではないだろうか。


●技術的にも当面はRDRAMのサポートを続ける必要がある

 技術的にもRDRAMのサポートを続ける意味はある。それは、IntelはRDRAMの立ち上げに膨大な投資をし、バリデーションをやってきたからだ。Intelの目からみれば、JEDECの緩い規定で誕生したDDR SDRAMより、ぎちぎちのRDRAMの方がプラットフォームとしてより安心できるだろう。それに、2チャネルで3.2GB/secの帯域は、当面はDDR SDRAMが追いつけない。RDRAMのコストが下がって、クロックが上がりさらに性能が上がる可能性があるなら、少なくともパフォーマンスデスクトップとワークステーションでは魅力的だ。

 それから、DDR SDRAMの立ち上げには時間がかかる。これは、Intelが考えているレベルでのバリデーションを行なった上での立ち上げという意味だ。

 Intelは、Brookdale-DDRのスケジュールをかなり慎重に設定している。最初は、今年の冬商戦に間に合うかもしれないと言っていたのが、今は、やっぱり来年第1四半期の頭だと説明しているようだ。チップセットベンダーやマザーボードベンダーの今のDDR SDRAMの盛り上がりからすると、「なにをそんな悠長な」というスケジュールだ。

 しかも、BrookdaleのDDR SDRAMサポートは非常に控え目だ。サポートするのはDDR200(PC1600)オンリで、DDR266(PC2100)は当初はサポートしない。それも、Unbufferedで2DIMMまでとしている。つまり、3DIMMや、SDRAM DIMM混在はサポートしないようだ。これも、DDR266と3DIMMでスタートしようとしているマザーボード市場から見ると、異常におとなしくみえる。

 こうしたBrookdale-DDRの仕様からわかるのは、IntelがDDR SDRAMについてかなり慎重になっていることだ。バリデーションや安定したデザインガイドを用意するのにかなり時間がかかると踏んでいるようだ。ある業界関係者は、DDR SDRAMに消極的と言うより、Intelの求めているクオリティの実現に時間がかかると見ているのだろうと言う。つまり、DDR SDRAMの立ち上げに手間取る可能性があるという理由からも、RDRAMは必要なのだ。また、DDR200(PC1600)だと、帯域は1.6GB/secとなるので、帯域にこだわるIntelとしては、Pentium 4のシステムバス帯域3.2GB/secにマッチするRDRAM2チャネル構成は残したいところだろう。

 それから、もう1つの理由として、RDRAM側の技術の進展がある。Rambusは低コストのRDRAM規格「4i(4インディペンデントバンク構成)」デザインを策定、この仕様に沿ったメモリがSamsung Electronicsから登場した。また、メインメモリ用のロングチャネルで、現在よりも高速の1.066Mbit/sec RDRAM(PC1000?)が来年には登場する。つまり、コストが下がり、メモリ帯域は4.2GB/secに上がる方向にあるわけだ。そうすると、この2つの新技術をサポートする新チップセットが必要となる。

 もっとも、4iの方はバンク構成の変更だけなので比較的マイナーチェンジで対応できる。そのため、第3四半期に登場するi850のマイナーバージョンアップ版(mPGA478対応版)でサポートする可能性があると言う業界関係者もいる。そうしないと、今年後半にSamsungが予定している4iの量産立ち上げに間に合わないからだ。

 いずれにせよ、メモリをめぐるIntelのあわただしい動きには要注意が必要だ。


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(2001年2月9日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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