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●3つのOSをMcKinleyワークステーション上で動かす
ポール・オッテリーニExecutive Vice President, General Manager, Intel Architecture Group |
McKinleyのデモは、IDFの直前に完成したA0ステップチップを使ったもの。Intelのポール・オッテリーニ氏(Executive Vice President, General Manager, Intel Architecture Group)のキースピーチの中で、実際にMcKinleyワークステーション上でOSやアプリケーションを動作させるデモが行なわれた。動作したOSは、64bit版Windows(Whistler:ウイスラ)、64bit版Linux、HP-UXの3つ。A0ステップでアプリケーションレベルの動作デモを行なうことで、シリコンの順調な立ち上がりを印象づけた。
McKinleyは、現在OEMへのサンプル出荷準備が進行中で、今年末までにパイロットリリース、来年プラットフォームリリース、つまり搭載マシンの正式出荷が行なわれる予定だという。99年の春のIDFで、IntelはMcKinleyのスケジュールについて、サンプル出荷が2000年の遅く、量産出荷が2001年遅くのスケジュールと説明していたので、多少の遅れはあるがほぼ予定通りに進んでいる。
McKinleyの技術的な側面については、まだ詳細は明らかになっていない。現在明らかになっているのは、Mercedより実行ユニット数が増え、システムバスの帯域が3倍(6.4GB/secと見られる)になったこと、Mercedでは外付けだったL3キャッシュ(前回のレポートでL2とあるのはL3の間違い)がOn-Dieになったこと、Merced用ソフトウェアとの互換性があることなど。こうした情報は、すでに'98年の「Microprocessor Forum」に公開されており、現時点ではほとんど新情報がない。より詳しい情報は、IDF最終日のキーノートスピーチ待ちとなっている。
ただし、今回のIDFで公開されたMcKinleyシステムの情報からは、多少のスペックがわかる。まず、McKinley用チップセットIntel 870のシステムバスは従来通り4プロセッサまでのシェアード型で、CPUコントローラチップ「SNC(Scalable Node Controller)」に接続される。CPUのクロックはまだ公開されていない。しかし、IntelはMcKinleyのクロックについて「1GHz+」がターゲットとしていたので、クロックはPentium 4より低いはずだ。消費電力は多い。IDFのセッションでのMcKinleyシステムのサーマルデザインを見ると、消費電力はプロセッサダイで130W、VRM(Voltage Regulator Module)が約32Wとなっている。Pentium 4と比べてもかなり多い。
●登場前に存在意義を失ってしまったMerced
McKinleyを解説するプレゼンテーションシート。新情報はほとんどない |
そのため、今回のMcKinley登場で、Mercedの製品としての意義は限りなく薄れてしまった。MercedはIA-64アーキテクチャへの移行の助走のためのパイロット製品に近い。もっとも、それだけでもIntelにとってMercedの意義は大きい。というのは、命令セットが全く異なるIA-64への移行は、難事業であり時間がかかるからだ。移植を進ませるためには実際のプロセッサが必要で、そう考えるとMercedの存在は重要だ。また、MercedとMcKinleyでは、コードの互換性は保たれている。
ただし、McKinleyでは実行ユニットなどが拡張されているため、互換性は保たれているとはいえ、最適化となると話は異なる。つまり、McKinleyはMerced用にコンパイルされたコードを実行できるが、McKinleyの真のパフォーマンスは、McKinley用にコンパイルされたコードでないと発揮できないと思われる。リソースが違ってくるので、プレディケーション(Predication)をどれだけやるかといった、最適化アプローチが異なってくるためだ。
ただし、McKinleyの寿命もそれほど長くはない。というのは、McKinleyは0.18μmプロセスで登場するからだ。McKinleyが登場するときには、Pentium IIIもPentium 4も0.13μm版が登場している。もちろん、McKinleyの0.13μm版「Madison(マディソン)」と「Deerfield(ディアフィールド)」の開発も平行して進んでいるはずで、それらが登場したら、McKinleyは置き換えられてしまうだろう。もっとも、McKinleyと後継プロセッサではバスに互換性があるため、簡単にマイグレートはできるという。
●Tualatinの前倒しはない
McKinleyのデモ風景。左のマシンがLinux、中央のマシンがWindows、右のマシンがHP-UX |
このほか、オッテリーニ氏はモバイル製品のスケジュール概要も明らかにした。詳細は、笠原氏がレポートする予定だが、それによると、0.13μm版Pentium III(Tualatin:テュアラティン)の登場は今年後半だという。そのため、先週伝えた、Tualatinが前倒しになるという可能性は薄いと見られる。情報が交錯して申し訳ないが、現在のIntelのロードマップは流動性が高く、変化の兆候を的確につかむのは難しい。
(2001年2月28日)
[Reported by 後藤 弘茂]