プロカメラマン山田久美夫の

定点撮影画像レポート
「FinePix6800Zとライバルたち」



 画像は元データからほぼ同じ範囲になるように切り出したものを使用しており、加工は加えていません。(編集部)


 今回、定点撮影については、「富士フイルム FinePix6800Z」と同時に、昨年春の新製品であり先代モデルにあたる「FinePix4700Z」。さらに、現在のパーソナル機で唯一、400万画素CCDを搭載している「オリンパス E-10」でも同時に撮影した。

 ここではこの定点撮影から、とくに実質的な解像度についてレポートしよう。

 まず、実写結果を見ると、「FinePix6800Z」の600万画素モードでの解像度は、これまでに定点撮影をしてきたレンズ交換式デジタル一眼レフを除く、数多いデジタルカメラのなかでも、トップといえるほどの高解像度を実現している。

 また、スーパーCCDハニカムの場合、その構造と演算処理の関係で、通常形式のCCDに比べて、画素数以上の解像力を実現できると説明されている。そこで今回は、ハニカム330万画素機である「FinePix6800Z」との比較対象として、400万画素機である「E-10」を選んだ。その結果、解像度の点では、「FinePix6800Z」は「E-10」と同等か、垂直水平方向に関しては、やや上回る解像度を実現していた。

 この実解像度は、感覚的には、500万画素前後のモデルに匹敵するレベルといえるだろう。そのため、本機の本当のライバル機は、今後登場する既発表の2/3インチ500万画素級CCDを搭載したパーソナル・ハイエンドモデルになりそうだ。

 ただ、ハニカムCCDの場合、その構造上、垂直水平方向の解像度に比べ、斜め方向の解像度が低めになる。また、画像生成時の演算処理の関係もあって、画像のなかでも、斜め45度方向のラインを見ると、補間処理による像の乱れが見られる。その点、「E-10」は通常タイプのCCDであり、このような傾向が見られず、クセのない素直な画像を実現している。

 また、細部を見ると、「FinePix6800Z」のほうが「E-10」よりもノイズが多めだ。もっとも今回はベータ版での撮影であり、製品版では多少改善される可能性もありそうだ。

 また、「FinePix6800Z」の300万画素モードで撮影した画像も「E-10」とほぼ同等か、「E-10」のほうが若干高い解像度を実現している。もちろん、「FinePix6800Z」の600万画素モードよりも、300万画素モードのほうが実質的な解像度が低下していることを考えると、画像データが巨大になるとはいえ、解像度を重視するのであれば、600万画素モードで撮影する意味は十分にありそうだ。

 ちなみに、昨年春に発売された、初代のハニカムCCD搭載機「FinePix4700Z」は、ハニカム配列とはいえ、CCDの画素数が240万画素と少な目なこともあって、先の2モデルと比較すると、見劣りのする結果となった。

 一方、昨年のハニカムCCDで気になった、ハニカム特有のザワザワしたノイズ感は、「FinePix6800Z」で大幅に軽減されている。もちろん、パソコンの画面上で等倍以上に拡大すれば、ノイズが感じられないことはないが、これだけ拡大して利用することは、実用上、あまり現実的とはいえないだろう。

【宝くじ売り場前】

6800Z(晴天時)
2,832×2,128ピクセル、Fineモード
6800Z(曇天時)
2,832×2,128ピクセル、Fineモード
E-10
2,240×1,680ピクセル、SHQモード
4700Z
2,400×1,800ピクセル、Fineモード

 また、今回は「FinePix 6800Z」で、曇天時での定点撮影も実施した。これは、本機の機構上、絞り優先AE機能のように、レンズの絞り値をユーザーが意図的に制御することが難しいためだ。

 レンズは絞りを絞り込む(F値が大きくなる)ほど、光学回折現象により、理論的な解像度が低下する。これは通常の35mm一眼レフのようにレンズに求められる解像度がさほど高くない場合には、極端に絞り込まない限り、それが問題になることは少ない。

 しかし、本機のように比較的小型で高密度なCCDの場合には、CCDが要求するレンズ解像度がきわめて高いため、絞り込みによる解像度低下が、実写時の解像度にも影響を与える可能性が高い本機の場合、絞り値はリニアに変化するわけではなく、F2.8とF7.0の二段階しかない。そのため、通常、定点撮影をおこなう晴天時には、絞りが絞り込まれた状態になる。

 今回の実写結果を比較すると、絞りが絞り込まれた晴天時よりも、絞りが開放(一番明るい状態。本機ではF2.8になる)のほうが、わずかながら解像度が向上する傾向が見られた。

【銀行入り口】

6800Z(晴天時)
2,832×2,128ピクセル、Fineモード
6800Z(曇天時)
2,832×2,128ピクセル、Fineモード
E-10
2,240×1,680ピクセル、SHQモード
4700Z
2,400×1,800ピクセル、Fineモード

 ただし、この現象は、理論上発生するものであり、どんなカメラでの実写でも同等の現象が見られるわけではない。つまり、この現象が実写で明確に見られるのは、レンズの基本設計と製造技術が優秀で、絞り開放時からきわめて高い解像度を実現しているモデルに限られるわけだ。逆にいえば、もともとレンズの収差により、絞り開放時の解像度が低下している場合には、レンズを絞り込むことで、収差が軽減され、実質的な解像度が向上するレンズも少なくない。

 なお、この現象を避けるためには、絞りをあまり絞り込まずに撮影する必要がある。だが、そうすると、被写界深度(ピントのあって見える範囲)が常に狭い状態で撮影することになるうえ、日中の明るいシーンではシャッター速度がきわめて高速になるため、機械式シャッターを併用している機種では制御が困難になる。
 また、絞りを開くために、減光用フィルターを挿入することも考えられるが、フィルターの精度によっては、かえってレンズの解像度を低下させる可能性もある。

 もうひとつは、1ピクセルあたりの画素サイズが大きいCCDを使う方法がある。こちらは画質面でのメリットが大きいわけだが、その反面、同じ画素数でもCCDが大きくなるため、CCDの単価が高くなるうえ、レンズも大型になるため、カメラを小型化しにくいという欠点がある。

 本機の場合、これらの諸条件を考えると、価格やサイズ、画質や実用性などあらゆる要素を考え合わせると、現時点での折衷点として妥当なものといえそうだ。


 今回使用した、山田久美夫氏の定点撮影実写画像は、下記のリンク先より元データがご覧になれます。(編集部)

「FinePix6800Z」定点撮影画像(晴天時)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010208/yamada.htm
「FinePix6800Z」定点撮影画像(曇天時)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010209/yamada01.htm
「CAMEDIA E-10」定点撮影画像
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010209/yamada02.htm
「FinePix4700Z」定点撮影画像
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010209/yamada03.htm



□オリンパスのホームページ
http://www.olympus.co.jp/
□関連記事
【2月1日】富士フイルム、ポルシェデザインの縦型デジタルカメラ「FinePix6800Z」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010201/fujifilm.htm
【2000年6月15日】オリンパス、400万画素デジタル一眼レフカメラ「CAMEDIA E-10」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000822/olympus.htm
【2000年3月2日】FinePix4700Zは240万画素機!? 富士フイルムが実解像度を公表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000302/fuji.htm

(2001年2月9日)


■注意■

[Reported by 山田久美夫]


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