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2年サイクルで革新するIntelのプロセスロードマップ

●業界の予定より早いIntelのプロセスロードマップ

 2000年12月、Intelは0.07μmのテクノロジノードまでのプロセスロードマップを明確にした。それによると、0.13μmの「P860/P1260」が2001年、0.10μmの「P1262」が2003年、0.07μmの「P1264」が2005年だという。つまり、これまで通り、律儀に2年サイクルでシュリンクするスケジュールになっている。

 しかし、これは半導体業界の当初の予定よりかなり速いペースだ。例えば、半導体業界がまとめたプロセス技術ロードマップ「International Technology Roadmap for Semiconductors (ITRS)」の'99年版では、2002年に0.13μm、2005年に0.10μm、2008年に0.07μmとしていた。3年サイクルでプロセスが移行するペースだった。

 ところが、Intelは0.13μm以降のプロセスも2年サイクルで行く計画でいる。ITRSより各1年づつ前倒ししており、その結果、0.07μmはITRSの'99年ロードマップより3年も前倒しになった。そのため、ITRSの最新アップデイトでは、2001年に0.13μm、2004年に0.09μmとやはり前倒しになった。イケイケのIntelに引きずられて、みんなで歩調を合わせてクレージーなペースを続けることになったようだ。

●2年サイクルに加速してDRAMを追い抜く

 今でこそ、Intelのプロセス技術は最先端を走っているが、じつは、ちょっと前まではそうではなかった。'95年の0.35μmまでは、Intelのプロセスの微細化は、DRAM系半導体メーカーに比べて、ワンテンポ遅れていたのだ。というより、半導体の微細化はメモリメーカーが先行し、MPUなどロジック系デバイスを作るメーカーはそれを追いかける格好だった。メモリがプロセス技術のドライバーだったのだ。しかし、CPUの性能競争の結果、その状況は変わった。今ではロジックが最先端の半導体プロセス技術をまっ先に使うようになりつつある。

 例えば、Intelの0.8μmプロセス「P650」の量産開始は'91年で、DRAMベンダなどの'89年より2年遅れていた。同様に0.50μm「P852」は'93年で1年遅れ。ようやく追いついたのは'95年の0.35μm「P854」からだ。しかし、そのあとはIntelは業界のプロセス微細化の最先端に躍り出て、0.18μm以降は追い抜く勢いになっており、業界を完全に引っ張っている。

 これをサイクルで見ると、業界は3年サイクルでプロセスを縮小していたのが、Intelは0.80μmから2年サイクルに加速したので追いついたわけだ。そして、その結果、半導体業界全体が従来の3年サイクルから2年サイクルに加速してしまったようだ。また、今、0.13μmでIntelのペースにくっついているのは、台湾ファウンダリとIBMあたりで、完全にロジックが先行する形になっている。

◎プロセス微細化の推移
プロセス0.80μm0.50μm0.35μm0.25μm0.18μm
業界全般'89'92'95'97'99
Intel'91'93'95'97'99

●加速することで微細化トレンドを維持

 ただし、これには理由がある。0.5μmまではプロセスは約3年ごとに約60数%づつ縮小してきた。ところが、0.5μm以降は、プロセスの縮小のペースが約70数%づつと小さくなっている。もっと具体的に言うと、1.2→0.8→0.5までは約63%づつ縮小してきたのに、0.5→0.35→0.25→0.18では約72%づつしか縮小していないのだ。この約72%というのが、「10GHz CPUを実現するIntelの0.03μmトランジスタ技術」と「IntelのPentium 4チップセットがSDRAMサポートへ転進」のコラムで触れた×0.7の法則だ。だから、微細化トレンドを維持しようとすると、2年に加速する必要が出てくることになるわけだ。

 もっとも、CPUの性能を大きく左右するゲート長に関しては、Intelのプロセスはテクノロジノード(設計ルール)以上にシュリンクしている。下の表を見るとわかる通り、0.35μm以降はゲート長はテクノロジノードよりも小さくなっている。これも、Intelだけでなく、ロジック系半導体メーカー全般の特徴となっている。

◎Intelのプロセスのゲート長
名称P854P856P858P860/P1260P1262P1264
プロセス0.35μm0.25μm0.18μm0.13μm0.10μm0.07μm
ゲート長0.35μm0.20μm0.13μm0.07μm0.05μm0.03μm

●2年サイクルはムーアの法則を守るため

 では、今の微細化のトレンドがもし維持できなくなり、もっと緩やかなペースになったらどうなるのだろう。答えは明快だ。ムーアの法則に沿ったCPUの性能向上が果たせなくなるのだ。

 ムーアの法則では、半導体の集積度は18カ月で2倍になることになっている。これをCPUに当てはめるとCPUの性能は18カ月で2倍のペースで上がってゆくことになる。18カ月で2倍のペースだと、5年で約10倍、10年で約100倍に上がることになる。

 これまでは、ほぼこのルールに沿ってきた。Intel Microprocessor Research Labs(MRL)のFred Pollackディレクタ兼Intel Fellowのプレゼンテーション「New Challenges in Microarchitecture and Compiler Design」の資料を見ると、過去10年間は実現できたという。'90年に486が33MHzだったのが2000年にはPentium 4が1.5GHzを達成し、クロックは約45倍だが性能は約100倍になった計算になるそうだ。Pollack氏の資料によると、20倍分はプロセス技術と回路技術で、4倍分はアーキテクチャで、1.4倍分はコンパイラ技術で達成されたという。つまり、20×4×1.4=112倍というわけだ。

 Intelの目的は、このムーアの法則を今後も維持することだ。そのためには、2年サイクルで約70%のシュリンクを続けなければならないというわけだ。Pollack氏によると、Intelは、あと10年は基本的にムーアの法則を維持できる見込みがついたらしい。そして、2010年のCPU「Microprocessor 2010」では、Pentium 4 1.5GHzの100倍の性能、20GHzのクロックを達成し、おそらく、CMP(チップマルチプロセッサ)やスレッドレベルパラレリズムなどの技術も盛り込むことになるという。

●ライバルをけ落とすIntelの高速化

 ただし、Microprocessor 2010までの道のりは平坦ではない。微細化のハードルはどんどん高くなっている上に、2年サイクルになったために製造機器や技術の開発はますます忙しくなっている。業界関係者に聞くと、とてつもなく過酷なレースだという。だが、レースを過熱させることは、Intelにとっては利益がある。それは、どんどん脱落する企業が出てきて、ライバルが絞られてくるからだ。

 最先端プロセス技術の導入は、半導体メーカーと製造装置メーカーが協力しないと実現できない。そのため、半導体メーカーにとっては、プロセスの微細化トレンドの先端を走ることは非常に負担が大きい。豊富なエンジニアリングリソースと資金を持っていないと、このレースを乗り切ることはできない。

 例えば、0.13μmではIntelはライバルのAMDに半年以上先んじることができる。2年でプロセスが入れ替わる今のサイクルで、半年先を行ける利点は非常に大きい。Intelは、プロセス微細化を加速することで、ライバルも振り落とそうとしているように見える。

 もっとも、今ではTSMCやUMCといった台湾ファウンダリもIntelに追いつき、ほぼ同じペースで走っている。そのため、ファブレスCPUメーカーでも、うまくやればIntelと互角に戦うことが可能になりつつある。ファブレスCPUメーカーは、今後もなくならないだろう。

◎Intelのプロセス技術オーバービュー
名称P648P650P852P854P856P858P860/P1260P1262P1264
量産開始'89'91'93'95'97'99200120032005
設計ルール世代
(μm)
1.000.800.500.350.250.180.130.100.07
ゲート長(μm)1.000.800.500.350.200.130.070.050.03
SRAMセル面積
(平方μm)
220111442110.65.62.09??
電源電圧5.0V5.0V3.3V2.5V1.8V1.5V1.3V?0.85V?
メタル層2層3層4層4層5層6層6層??
アルミアルミアルミアルミアルミアルミ銅?銅?
ウェハサイズ(mm)150150200200200200200/300300300


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(2001年1月19日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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