幕張メッセ(新館ホール9~11号館)
任天堂株式会社は25日から3日間、幕張メッセの新館ホール9~11号館において同社のゲーム機に関する展示会「NINTENDO SPACE WORLD 2000」を開催する。24日に発表された次世代ゲーム機「NINTENDO GAMECUBE」の展示は残念ながらないが、次世代携帯ゲーム機「ゲームボーイアドバンス」の実機が大量に展示されており、10作品のゲームを実際に遊ぶことが可能となっている。
会場には朝早くから数多くの来場者が詰めかけ、夏休みということもあり同社がターゲットとする親子連れが数多く訪れていた。来場者の列は午後になっても連なっており、相当の来場者数が見込まれる。
■ 「純粋にゲームを遊ぶためのハードがNINTENDO GAMECUBE」
宮本茂氏インタビュー
質問に細かく答えた宮本茂氏 |
インタビューに先立って行なわれた挨拶で宮本氏はSPACEWORLDにNINTENDO GAMECUBEが展示されない理由について「今年のビジネスをきちんとしなければならず、将来に関係する小売店や報道関係者には見てもらい、子供たちにはややこしいものを見せないためにGAMECUBEを展示しなかった」とコメントした。
インタビューではまず最初に、GAMECUBEのデザインに関する質問に答え、「誰がどんな状況で使うのかを考えてみたとき、コアなゲームファンを無視するわけではないが、より多くの人に使ってほしいと思い決定した。コントローラも複雑になっているが、わかりやすさをメインにしたいと考えた。このハードで5年間やっていくことになるが、もう5年もすれば親はほとんどがスーパーマリオ世代となるので、そういった意味からもファミリー層に受け入れられる商品にしたかった。もちろん (20歳代の) 若者層などユーザー層を広げていきたいと考えてはいます」とした。また、「これまでNINTENDO 64やゲームボーイなど、任天堂の商品が繋がらないかな……と考えてきたが、すべて後付けだった。今回はつながると言うことを根本的に見直し、GAMECUBEとアドバンスは同時にハード設計をしてきた。ファミリーで任天堂の商品を持っていると新しい遊びに出会える可能性もあると言うところをやろうとしている」と他製品群とのつながりを強調した。
また、'99年に発表のあった松下電器が制作を予定していると言われるGAMECUBE用ゲームが遊べ、DVD-Videoも見ることができるハードに関しては「松下さんの戦略であり、松下さんの発表を待たなければならないが、そういったハードをやるとおっしゃっている」と同社広報がコメントした。
メディアに関してはまず広報が、「8cmというサイズは子供の使いやすいサイズだと考えたし、子供が扱うものなので、盤面をつまんだり少々手荒い扱いをしても大丈夫なように配慮した。さらに、ゲームというものを考えたとき、(容量的に) はたしてフルサイズのDVDが必要なのか? そこで議論した結果、我々が目指すべき道は違うだろうし、足らなければ2枚使えばいいという結論に達した。また、あらゆるコピープロテクトを検討した結果、松下の保護技術が最高であるという結果に到達したため採用を決定し、8cmのディスクであれば、たとえコピープロテクトを破られても容易に量販できないと考えている」とコメント。
この件について宮本氏は「我々としてはケースに入れてほしかったが、松下さんの機器との互換性ということで話し合いになったし、その件に関してはそれなりの対応を考えています。ただ、メディアが回っていて上からキュッと押さえて傷が付いたからといってデータが飛んだりしませんし、数あるメディアの中では安全な方です。それにあんまり大きくすると、待ち時間が増えるばっかりなんですよ。これまで光メディアに踏み切れなかったのは本体のメモリ容量が小さいことが理由でしたが、GAMECUBEでは大容量のメモリを搭載できることになったので光ディスクを採用しました。後はロードをいかに早くするかですが、そこら辺のノウハウはすでに蓄積している。ロード時間の短縮は配慮していきたいですから」と付け加えた。
GAMECUBEに関してスペックを聞かれた宮本氏は「3Dゲームを作るにあたってポリゴンが動かなければならない。ただ、ポリゴンを表示するのにあたりいろんなことをしなければならない。ポリゴンの計算をさせたり、ポリゴンに光を当てたり、変形させたりさせるのですが、最近のハードは『テクスチャ張ったらポリゴン半分ね』と小さい声で言うわけです。そうやって何か処理をする度に半分になっていくんです。気づいたら1/10程度のポリゴンしか表示できなくなってしまう。さらにマシンの細い部分 (ボトルネック) があってそこにはいると処理がストップする。また、そういった絵を描くことに関してはグラフィックチップがやっているんですが、CPUがグラフィックチップの仕事を手伝ったりする。さらに、NINTENDO 64では音をCPUで作成しているが、これをするとCPUが音を出すのか、絵を描くのか、ゲームを動かすのか処理の取り合いになってしまった。
こういった点に関して今回はすべてシェアします。つまりポリゴン数だけではゲームは動かないんです。ゲームを動かしたときに、ポリゴンを表示する以外に衝突判定などいろいろな仕事があるんです。その仕事をGAMECUBEでは、できるだけきれいに分けたんです。だからひょっとするとGekkoのクロック数とかを見ると大したチップではないと思われるかもしれない。でも前述のようにゲームを作る上でのバランスは数年先まで最先端だと思う。今、現状あちこちにあるハードで24日のデモと同程度動いているハードは皆無です。
我々はべつにAV機器ではないとか言いたいわけではなく、コンセプトとしてゲームを作るためにハードを設計していると言うことです。売る方法も、デザインもすべてゲームを作るためにやっていることで、24日にデモした内容を見たら、GAMECUBEはAV機器と思いますよ。たいがいのことができるようにできてますから。でも、そういったことがやりたいわけではなく、ただゲームを作る上で面白いことができるハードなんです」とゲームづくりのためのハードを強調した。
また、開発ツールは任天堂社内や任天堂の周辺のメーカーにはすでに配られているが、サードパーティやライセンシ各社には9月のしかるべき時に発表会を開催するとしている。
ソフトに関しては「来年の5月まで明言できない」としながらも「現在同時発売5作品にはすべて関わっているが、その中の1作に特に深く関わっている」とコメント。また、NINTENDO 64に比べGAMECUBEはどういったアドバンテージがあるのかとの質問には「機能的に圧倒的なメリットがあると思いますが、それがどんな新しいゲームに繋がっていくか限定できないでいます。ただし、NINTENDO 64で3Dを作るときよりもGAMECUBEは飛躍的に進化している。NINTENDO 64がファミコンとすればGAMECUBEはスーパーファミコンというくらい違うものです。ソフトの作り方によってはそれ以上だろう」と答えた。
ソフトの価格については「現在未定」としながら、宮本氏としては「ソフトの価値が反映した価格にしたい。“何万円出しても欲しい”と言われるようなソフトを作ります」と意気込みを語った。
■“究極の2次元ゲームマシン”ゲームボーイアドバンスを展示
会場の一画に用意された「ゲームボーイアドバンス」コーナー |
ゲームボーイアドバンスでは32bit ARM with embedded memory (従来機はZ80) を採用しグラフィック処理能力も格段に向上している。だが、3D機能に関しては特に目新しい機能は用意されておらず、そういった意味でも前述の「究極の2次元マシン」と表わされているようだ。
画面は2.9インチTFT液晶で、解像度は240×160ドットと横長に変更されている。この画面サイズの変更により、ゲーム機のデザインそのものが影響を受けて、これまでの縦長のものから横長に変更されている。解像度が低いのは仕方がないかもしれないが、比較的見やすい画面となっている。
同社によれば、「ゲームボーイアドバンスが発売されても特にターゲットが変わるわけではなく、手軽に遊べることがコンセプトとなっている」とした。ただ、「ゲームボーイカラーが発売されたとき『別にカラーになったところでゲームはそれほど変わるわけではない』といった意見もあったが、実際に発売されてみれば、もうモノクロには帰れなくなってしまった。ゲームボーイアドバンスでも同様のことが起こる可能性はある」といった自信あふれるコメントも聞かれた。
会場でもっとも人気のあったのはやはり任天堂の「マリオカート アドバンス (仮称)」で、今回はゲームボーイアドバンスで唯一通信ケーブルをつなぎ、4人同時対戦を行なっていた。通信ケーブルを使った遊びとしては、現在は1対1でしか遊べないため、今回のような4人対戦の場合、ルータのような周辺機器が想定されるが、会場内ではカバーがかぶせてあり、残念ながらそれがどのようなものであるか見ることができなかった。25日の午前中では、45分待ちで3分程度遊ぶことができたが、土曜日以降はさらなる混雑が予想される。この横に置いてある、同じくカートレーシングゲームの「コナミワイワイレーシングアドバンス」も人気が高かった。こちらは対戦ではなく一人で遊ぶモードのみ体験することができる。
これまで延期が続いていた、携帯のインフラを利用してゲームが楽しめるシステム「モバイルシステムGB」も発表された。これはゲームボーイカラーやゲームボーイアドバンスの拡張コネクタに接続専用アダプタ「モバイルシステムGB」を接続することで可能となる。発売は12月14日で価格は5,800円。同時に遊べるソフトは「ポケットモンスタークリスタル (仮称)」。このアダプタを使うことで、“なぞのタマゴ”をゲットでき、これまで登場していなかったポケモンを手に入れることができるという。
24日の発表会で初めて公開された次世代携帯ゲーム機「ゲームボーイアドバンス」。ボタンが左右上面、側面に4つ用意されている | 手に取ったところ。それほど大きな印象はない | 背面。バッテリは従来の単3用電池2本のほか、新たに専用バッテリも用意されている。写真向かって右下にあるのが電源で、左下はヘッドフォン端子とボリューム |
[Photo by 若林直樹(STUDIO海童)] | ||
「マリオカート アドバンス」。開場して1時間程度でこの状況。お昼を過ぎるとさらに壮絶な状況に | 熱心に遊ぶ子供たち。子供の手に握られたゲームボーイアドバンスだが、それほど大きくは感じない。アドバンスからでているケーブルが通信ケーブル | モバイルシステムGBのコーナーでは遊ぶことはできないが、ステージではデモンストレーションを随時行なっている |
PHS、DDIポケット用「モバイルシステムGB」 | 携帯電話に対応した「モバイルシステムGB」 | |
[Photo by 若林直樹(STUDIO海童)] |
■ 大きなお友達も納得? 懐かしいゲームをあちこちで発見
任天堂はSPACEWORLDの位置づけを「発売日の近いソフトを手にとって遊んでもらう」としているため、会場にはNINTENDO 64用ソフトやゲームボーイカラー用ソフトが多数展示されている。一概には判断が付かないが、ゲームボーイアドバンスのコーナーよりゲームボーイカラーのコーナーの方が人気があるように見えた。
一つ残念なのは昨年は大きくブースを構えていた64DDが、今年は全く見ることができないこと。同社広報は「タイミング良く発表できるソフトがなかったため」としているが、少々寂しい感じは否めない。
会場でもっとも人気があるのは、やはり任天堂の看板ソフトとなる「マリオパーティ3」(NINTENDO 64)や「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 (仮)」(ゲームボーイ)などだが、中にはなかなかシブイソフトも展示されている。たとえばゲームボーイコーナーではビーピーエスがあのRPG「ザ・ブラックオニキス」を展示。その裏ではテクモの名作アクションパズル「ソロモンの鍵」のリメイク「ソロモン」が展示されている。「ソロモン」は同社の人気ソフト「モンスターファーム」のキャラクタが登場するので子供たちにも人気だったが、基本的には「ソロモンの鍵」なので知っている人には懐かしいものだろう。そのそばのアスキーのコーナーでは往年の名作3Dロールプレイングゲーム「ウィザードリィ」3作品が一気に展示されている。これまで発売されていた外伝ではなく本家本元だ。これらはゼビウスの作者として知られる遠藤氏が総合監修を行なっているという。
また、任天堂が一押しタイトルとして2001年の2月の発売を予定しているNINTENDO 64ソフト「どうぶつの森 (仮)」というソフトが出展されている。いろいろな動物たちがすむ不思議な森の中で動物たちとコミュニケーションをとりながら過ごす。実際の時刻に連動しながらゲームが進行し、季節によって数多くのイベントが用意されている。
で、このゲームのどこが懐かしいかというと、アイテムの一つにファミコンが用意されている。これを起動させると往年のファミコンソフトを遊ぶことができるのだ。今回のイベントで用意されているのは「バルーンファイト」、「アイスクライマー」、「くるくるランド」、「ドンキーコング」の4作でそれぞれ遊ぶことができる。
「マリオパーティ3」。子供が画面を食い入るように見つめている。もう少し画面が低い方がいいような気もしますな | コナミの「Dance Dance Revolution ディズニーダンシングミュージアム」の専用コントローラ | ゲームボーイ版「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実」。45分待って5分だけ遊べる |
あの「ザ・ブラックオニキス」が復活! | こちらはアスキーの「ウィザードリィ」。3作品ズラッと並んでいる |
□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□NINTENDO GAMECUBEのページ
http://www.nintendo.co.jp/n10/gamecube/index.html
□NINTENDO SPACE WORLD 2000のページ
http://www.nintendo.co.jp/n10/sw2000/index.html
□NINTENDO OF AMERICAのホームページ(英文)
http://www.nintendo.com/
□NINTENDO SPACE WORLD 2000のページ(NINTENDO OF AMERICA、英文)
http://www.nintendo.com/home/features/spaceworld2k/index.html
□関連記事
【'99年5月12日】松下電器と任天堂、次世代ゲーム機を主体とした家電戦略で提携
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990512/dolphin.htm
【'99年5月13日】任天堂が次世代コンシューマ機「DOLPHIN」を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990513/e3_01.htm
(2000年8月25日)
[Reported by funatsu@impress.co.jp]