松下電器と任天堂、次世代ゲーム機を主体とした家電戦略で提携

松下電器社長森下氏(左)と任天堂社長山内氏(右)

 松下電器産業株式会社(以下松下)と任天堂株式会社は12日発表会を開催。両社はデジタルネットワーク家電分野において、包括的に相互に協力し合うことで合意したと発表した。

 この提携において、任天堂はコンテンツ、グラフィック技術を、松下はデジタルネットワーク技術、デジタルAV技術、著作権保護技術などを相互に提供するという。
 具体的には、まず任天堂が、松下の著作権保護技術を使った専用DVD-ROMドライブを搭載した次世代ゲーム機「Dolphin(コードネーム)」を2000年末に全世界一斉発売。それとほぼ同時か少し遅れる程度の時期にDVDプレーヤーと次世代ゲーム機の融合機を松下が発売。さらに、時期は未定だが、高性能グラフィックス機能やデジタルネットワーク機能を活かした、デジタル家電の次世代プラットフォーム機「X-21(コードネーム)」を発売すると述べた。

 発表資料の中で明らかにされた次世代ゲーム機「Dolphin」の基本仕様を下表にまとめる。なお、製品のプロトタイプやイメージ画像などの発表はなかった。「Dolphin」については、米国で12日より開催される(現地時間)展示会、E3でも発表が行なわれる見込み。PC Watchでは記者が現地からE3レポートをお送りする予定なので、それについては別途レポートをお届けすることになるだろう。

CPUIBMカスタム・プロセッサ(PowerPCアーキテクチャ拡張)
動作周波数:400MHz
半導体プロセス:0.18ミクロン(銅配線技術)
グラフィックス米国ArtX社と共同設計フルカスタム・システムLSI
動作周波数:200MHz
半導体プロセス:0.18ミクロン(DRAM混載プロセス)
メモリユニット高速DRAMテクノロジー
メモリバス・バンド幅 3.2GB/秒
ソフト供給メディア松下電器DVDテクノロジー
強化コピープロテクト技術採用

 発表会の中で任天堂社長山内氏は、ゲームソフト市場の現状について説明。'98年から海外市場でCD-ROMソフトの違法コピーが蔓延しており、ゲームソフト市場成長の阻害要因となってきていると述べた。同社が独自に行なった8カ月前の調査では、違法コピーソフトの占める割合はラテン・アメリカではほぼ100%、ヨーロッパでは国により20~60%、米国でも20%にも上るという。こうしたコピーの安いソフトが出回ったことは、CD-ROM採用ゲーム機のハードの普及には役立ったが、「ゲーム市場はソフト主体のマーケット」であり、「ソフト市場が崩壊すれば、ゲーム市場全体がダメになる」と強調。コピーしやすいCD-ROMというメディアは、現在海外ゲーム市場にかつてない危機をもたらしていると述べた。

 こうしたことから、任天堂ではゲームソフトのプロテクトを強く求めており、そうした点からも今後のソフト開発にもっとも向くとして、松下の提唱するDVDの採用を決定。松下と次世代ゲーム機の仕様などを詰めるうちに、両社の持つ技術を、さらに包括的に提携することになったと、提携までの経緯を説明した。

 なお、上で述べたが、両社の提携による製品のリリース予定などを、記者会見の質疑応答の中で明らかになった部分も含めて一覧表にして以下に示す。

製品コードネームなど発売元発売時期備考
次世代ゲーム機
Dolphin(コードネーム)
任天堂2000年末に全世界一斉発売ネットワーク機能搭載。
DVDは専用ソフトのみ再生できる専用ドライブ(DVDドライブでの書き込みなどは今後検討していくが、当初発売するものは再生専用)。
グラフィックスエンジンはArtX社と任天堂の共同開発、製造はNECになる見込み。
ソフトの開発は当面任天堂と任天堂パートナー企業のみで行ない、サードパーティでの開発は現在までのところ考えていない。
Dolphin+DVDプレーヤー松下電器Dolphinとほぼ同時か、少し遅れて発売次世代ゲーム機DolphinとDVDプレーヤーの融合機。Dolphinは専用ソフトの再生のみ対応するが、こちらはDVDビデオ、DVDオーディオなど、すべてのDVDメディア再生に対応する。
X-21(コードネーム)未定未定デジタルCSを使ったデータ通信など、AV/パソコン機器などの中心に据える機器をイメージしているようだが、仕様なども両社のワークグループで検討しており、まだ未定であるという。

□松下電器産業のホームページ
http://www.panasonic.co.jp/panasonic-j.html
□ニュースリリース
http://www.panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn990512-2/jn990512-2.html
□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.nintendo.co.jp/n10/news/990512.html
□ArtXのホームページ(英文)
http://www.artxinc.com/index.html

('99年5月12日)

[Reported by hiroe@impress.co.jp]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp