特別編:対決!Pentium III 1GHz vs Athlon 1GHz
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また、Athlon 1GHzに関してもCPU単体のサンプルを入手したので、通常このコーナーで利用しているハードディスクやビデオカードなどを利用したベンチマークを行なうことができた。これにより、両社のギガヘルツCPUを環境を合わせて比較することが可能になったので、そのベンチマーク結果なども併せて公開する。
●巨大なファンが印象的
さて、今回入手したPentium IIIのサンプルシステムの本体左側面には大きな吸気口が設けられ、その内部には実に巨大なファンが取り付けられていた。これは、今回のマシンに取り付けられていたPentium III 1GHzのCPUクーラーが、ファンのないヒートシンクのみのタイプであるためだと思われるが、それにしても実に巨大なファンだ。
本体左側面には巨大な吸気口が設けられている | 吸気口の内部には巨大なファンが設置される | ケース内部はCPUの周りだけ囲われている |
マザーボードにはIntelのVC820が採用されており、メインメモリにはPC800(Direct RDRAM、400MHz)の128MBが搭載されている。Pentium IIIは、ダイナミックマーキングエリア(Pentium IIIの数字などが書かれている部分)に「1.000G」と書かれており、このPentium IIIがFSB 133MHzであることを示している(余談だが、「100」と書かれたAthlon 1GHzのダイナミックマーキングエリアに比べると、「1.000G」はぐっとくるものがある)。電圧はIntelのホームページで公開されている通り1.7Vと、CoppermineコアのPentium IIIの標準である1.65Vと比べて喝入れ仕様になっている。
Pentium III 1GHz。CPU自体にはファンを備えず、巨大なヒートシンクが装着される |
●予想通りPentium III 1GHzがAthlon 1GHzを上回る
今回比較に利用したのは前述のPentium III 1GHz搭載システムと、Athlon 1GHz、秋葉原で先週より販売が開始されているASUSTeK COMPUTERのK7VのmicroATX版であるK7V-RM、メモリはPC133 SDRAM 128MBで構成されたシステムだ。ビデオカードには両システムともにカノープスのSPECTRA5400 Premium Edition(RIVA TNT2 Ultra、32MB)を利用し、ハードディスクはOSごとに用意し、日本語Windows 98 Second EditionにはWesternDigitalのAC14300、英語版Windows NT 4.0+ServicePack4.0にWesternDigitalのAC29100、英語版Windows 98にはIBMのDHEA-34330を利用した。このため、CPU、チップセット、メモリ以外の部分は共通であり、両CPUを純粋に比較することができる。
利用したのは普段このコーナーで利用しているZiff-Davis,Inc.のWinstone99 Version1.2に含まれるBusiness Winstone99とHigh-End Winstone(以上英語版Windows NT 4.0上で実行)、同じくZiff-DavisのWinBench99 Version1.1に含まれるCPUmark99とFPU WinMark、MadOnion.comの3DMark99 MAXに含まれる3DMarkと3D CPUMark、同じくMadOnion.comのMutimediaMark99(以上日本語Windows 98 SEで実行)の7種類のテストを使用した。また、今回はBAPCoのSYSMark2000(英語版Windows 98で実行)も併せて実行した(ベンチマークの詳細な説明に関しては「冬季CPU購入ガイド~Intel、AMDの現役全41種類CPUベンチマークデータ付き~」、SYSMark2000に関しては「特別編:Athlon 1GHz搭載マシンレビュー」を参照のこと)。
Winstone99 | WinBench99 | |||
---|---|---|---|---|
Business Winstone 99 | High-End Winstone 99 | CPUmark 99 | FPU WinMark | |
Athlon 1GHz | 40.9 | 35.4 | 82.2 | 5,440 |
Pentium III 1GHz | 42.3 | 36.3 | 86.2 | 5,290 |
3DMark99 MAX | MultimediaMark 99 | ||
---|---|---|---|
3DMark | 3D CPUMark | ||
Athlon 1GHz | 6,672 | 14,536 | 2,342 |
Pentium III 1GHz | 7,202 | 14,461 | 2,641 |
【SYSMARK 2000】
SYSMARK 2000 Rating | Internet Content Creation | Office Productivity |
|
---|---|---|---|
Athlon 1GHz | 165 | 167 | 163 |
Pentium III 1GHz | 181 | 188 | 178 |
Bryce 4 | CorelDraw9 | Elastic Reality 3.1 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
Run Time | Rating | Run Time | Rating | Run Time | Rating | |
Athlon 1GHz | 93.22 | 188 | 112.75 | 183 | 52.53 | 191 |
Pentium III 1GHz | 87.22 | 200 | 111.13 | 188 | 45.73 | 219 |
Excel 2000 | NaturallySpeaking Pref 4.0 | Netscape Communicator | ||||
Run Time | Rating | Run Time | Rating | Run Time | Rating | |
Athlon 1GHz | 78.35 | 159 | 115.64 | 142 | 89.01 | 173 |
Pentium III 1GHz | 64.22 | 194 | 100.12 | 164 | 78.66 | 198 |
Paradox 9.0 | Photoshop 5.5 | PowerPoint 2000 | ||||
Run Time | Rating | Run Time | Rating | Run Time | Rating | |
Athlon 1GHz | 109.37 | 162 | 95.94 | 114 | 84.7 | 184 |
Pentium III 1GHz | 103.19 | 170 | 72.59 | 151 | 75.01 | 185 |
Premiere 5.1 | Word 2000 | Windows Media Encoder 4.0 | ||||
Run Time | Rating | Run Time | Rating | Run Time | Rating | |
Athlon 1GHz | 75.9 | 181 | 112.02 | 145 | 67.71 | 165 |
Pentium III 1GHz | 74.98 | 183 | 105.81 | 154 | 60.33 | 185 |
ベンチマークの結果だが、Athlon 1GHz搭載マシンのレビュー時に予想したように、Pentium III 1GHzがAthlon 1GHzを上回る結果となった。これまで、本連載では700MHz対決(Athlon 700MHz vs Pentium III 733MHz)、800MHz対決(Athlon 800MHz vs Pentium III 800MHz)と2度に渡り、Athlon vs Pentium III対決を行なってきたが、いずれもAthlonが総合力でPentium IIIを上回るという結論だった。しかし、今回のテストでは、Pentium III 1GHzが整数演算処理を多用するBusiness Winstone99、CPUmark99などでAthlon 1GHzを上回ったほか、浮動小数点演算処理が多用されるアプリケーション(High-End Winstone99、FPU WinMark、3DMark99 MAXなど)でもAthlonとほぼ同等か、上回るという結果を残した。つまり整数演算能力ではPentium IIIが上、浮動小数点演算能力ではほぼ同等と言え、総合力でPentium III 1GHzがAthlon 1GHzを上回っていると結論づけることができるだろう。
こうした結果がでた理由は、既に本連載でも繰り返してきたように、AthlonのL2キャッシュがオフダイ(CPUダイとは別に搭載されている単体のSRAMをL2キャッシュとして利用する)であるためだ。Athlon 1GHzではL2キャッシュはCPUコアクロックの1/3の333MHzで動作している。これに対してPentium IIIでは既にL2キャッシュがオンダイ(L2キャッシュとなるSRAMがCPUコアに内蔵されている)になっており、L2キャッシュのクロックはCPUコアと同等、つまり1GHzということになる。このL2キャッシュのクロックの差が、Pentium IIIがAthlonを逆転した理由と言えるだろう。
●高速なメモリを利用することで性能向上が期待できる
今回Pentium III 1GHzを搭載したシステムにはIntelのVC820というDirect RDRAMを採用したマザーボードが利用されていたので、CPUをVIA TechnologiesのApollo Pro133A(VT82C694X)を搭載したSOLTEK COMPUTERのSL-67KVに乗せかえ、メインメモリをPC100 SDRAM、PC133 SDRAMに変更してベンチマークをとってみた。その結果が以下のグラフだ。
結論から言えば、PC100<PC133<PC800(Direct RDRAM)という結果になった。これをCPUにPentium III 600B MHzを利用した場合と比べてみると、高いクロックのCPUであればあるほど高速なメモリ(PC133やDirect RDRAM)の性能を引き出しているというのがわかるだろう。Pentium III 600B MHzの時はメモリがPC100であっても、PC133であってもスコアはほとんど変わっていない。これに対して、Pentium III 1GHzになると明らかにメモリの違いにより大きな差が出ている。
これは、Pentium III 600B MHzに比べてクロックが高速なPentium III 1GHzは、L2キャッシュにヒットしなかった時のペナルティが大きいためだろう。このため、メモリが遅いほどCPUの処理能力が低下するし、高速なほどCPUの処理能力が向上することになる。こうなると、高速なメインメモリに関して、再評価を行なう必要があるだろう。今回の結果から言えることは、ギガヘルツクラスのCPUの持つ本来の力を発揮させるには、高速なメモリが必要になるということだ。こうしたことから、仮にギガヘルツCPUのシステムを購入するときには、最低でもPC133 SDRAM、できればDDR SDRAMやDirect RDRAMを搭載したシステムを選択すべきと言えるだろう。
【Pentium III 1GHz】
CPUmark 99 | FPU WinMark | |
---|---|---|
PC100 | 77.9 | 5,320 |
PC133 | 82.9 | 5,320 |
PC800 | 86.2 | 5,290 |
3DMark | 3D CPUMark | |
PC100 | 6,898 | 12,998 |
PC133 | 7,219 | 13,978 |
PC800 | 7,202 | 14,461 |
【Pentium III 600B MHz】
CPUmark 99 | FPU WinMark | |
---|---|---|
PC100 | 43.0 | 3,030 |
PC133 | 44.2 | 3,030 |
PC800 | 44.1 | 3,030 |
3DMark | 3D CPUMark | |
PC100 | 5,451 | 8,893 |
PC133 | 5,657 | 9,103 |
PC800 | 5,485 | 9,023 |
●やはり本命はThunderbirdコアを採用したAthlonか?
最後にPentium IIIの入手性に関して触れておく。現在のPentium III 1GHzの出荷状況は非常に限定的であり、これまでに実際の製品を発表しているのは米国のDell Computer、IBM、HewlettPackardの3社のみだ。日本では、上記3社の日本法人も含めて発表すらされておらず、残念ながら現時点では入手は不可能だ。この状況がいつ改善されるかは、現時点では明確ではない。しかし、今回編集部でPentium III 1GHzを搭載したサンプルシステムが入手可能になったということは、少なくとも国内にサンプルが回ってきているということを意味しており、まもなくいずれかのOEMメーカーから発表される可能性もあると言える。現時点で入手できる最高クロック・最高パフォーマンスのCPUがAthlon 1GHzであることは間違いないが、Pentium III 1GHzを搭載したシステムも、早期に日本でも発売されることを期待したい。ぜひともPCベンダの方々にはがんばってPentium 1GHz搭載マシンを出荷していただきたいものだ。
今回のベンチマークでも明らかなように、AthlonはCPUコアクロックに比べて、L2キャッシュのクロックが遅いことが性能面でのボトルネックとなっている。既に後藤氏のコラム「AMDはThunderbirdで1.1GHzを投入へ-AMDロードマップ解説-」でも触れられているように、AMDはこの状況を覆すべく、L2キャッシュをオンダイにしたAthlon 900MHz以降を5月から出荷する見通しだ。さらに、1GHzのThunderbirdは6月に投入される。L2キャッシュがCPUコアに対して1/2クロックだったAthlon 700MHzが、オンダイのPentium III 700MHzを性能面で上回っていたことを考えると、L2キャッシュがオンダイになったThunderbirdコアのAthlonもPentium IIIを上回ることは十分予想できる。
ただ、AMDが次世代メモリと言えるDDR SDRAMをサポートするのは、9月にも登場すると言われているAMD-760チップセットからになる。既に述べたように、ギガヘルツクラスのCPUを生かすには高速なメモリが必要であり、そうした意味では秋に登場すると言われているThunderbird 1.1GHz+AMD-760+DDR SDRAMが、性能面から見たAMDの本命となる可能性が高い。パフォーマンス重視のパワーユーザーとしてはこちらを待つというのも悪い選択ではない。
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Akiba PC Hotline! Hothotレビュー
【3月10日】番外編:ギガヘルツ時代の始まりを告げるAthlon 1GHz
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000310/hotrev52.htm
【3月17日】特別編:Athlon 1GHz搭載マシンレビュー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000317/hotrev53.htm
(2000年4月4日)
[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]